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やり直し悪役令嬢は、幼い弟(天使)を溺愛します 2023/7/15コミックス2️⃣巻発売!  作者: 軽井広@北欧美少女ノベル5巻が8/25から発売!
第三章 学園と第二の王子

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Ⅵ 全学舞踏会

 そして、いよいよ舞踏会が始ろうとしていた。

 華やかな音楽が流れはじめ、着飾った在校生と新入生のどちらもがそわそわする。


 普通なら、ダンスのパートナーは、親しい異性ということになる。

 婚約者がいれば、当然、少なくとも最初と最後はその人と踊るというのがマナーだ。


 わたしの場合だったら、アルフォンソ様になるわけだ。

 でも、今回はちょっと事情が違う。


 あくまで新入生と在校生をはじめ、全学の親睦を深めることが目的になる全学舞踏会だ。

 だから、最初から上級生・下級生のペアで組むことになる。この舞踏会をきっかけに、先輩・後輩のカップルが誕生することも珍しくないとか。

 

 ともかく、わたしも下級生と踊ることになる。


 アルフォンソ様が、恥ずかしそうにこそこそとわたしの方にやってくる。


「クレア……僕と……踊ってくれないか?」


「ありがとうございます。でも下級生と踊るのが決まりでしょう?」


 うっ、とアルフォンソ様は詰まり、そしてしょんぼりと帰っていった。

 ……ちょっと悪いことをした気もするけど、ルールだし。


 それに……下級生と踊れるということなら……フィルと踊りたい!

 いちおう学内の有名人であるわたしと踊れば、フィルも良い意味で注目を浴びるだろう。


 わたしはフィルに声をかけようとして、思いとどまった。

 ダンスの誘いは男性から女性に申し込むもの。

 面倒なことだけど、これも舞踏会の決まりの一つだ。女性は誘いを受けるか断るかの選択肢はあるけれど、自分から声をかけることはしないのが原則。


 わたしはちらっとフィルを見る。

 フィルは首をかしげる。

 もう一度、ちらちらっとわたしはフィルを見た。


 そして、フィルは頬を赤くして、くすっと笑った。


「クレアお姉ちゃん……ぼくと一緒に踊ってくれる?」


「もちろん! 喜んで」


「よかった」


 フィルは嬉しそうに、天使のように微笑んだ。

 やがてフィルはわたしの手をとる。


 音楽が穏やかで明るい雰囲気のものに変わる。

 これが一曲目だろう。


 舞踏会定番の、特に春によく用いられる曲だ。

 フィルがステップを踏み始める。


 わたしはフィルのリードにあわせて、軽やかに踊る。

 自慢じゃないけれど、わたしのダンスの腕前はなかなかのもので、相手の力量に多少の問題があっても、なんとかしてしまえる。


 一方のフィルは、とても頭が良くて、なんでも優秀な子だ。でも、ダンスは同い年の子の平均よりはずっと得意だと思うけど、わたしには及ばない。


 フィルが「うーん」と困った顔をして、ダンスのステップを続ける。わたしはさりげなくフィルをフォローしながら踊っていたけど、そのことにフィルも気づいたようだった。


「……お姉ちゃん……ぼくなんかが相手でよかったの?」


「もちろん! フィルより素晴らしいパートナーなんていないわ」


「でも……ぼくよりもっと上手い人と組めば、お姉ちゃんだってもっと実力を発揮できると思う……」


 わたしは微笑んだ。


「そんなことは大事なことじゃないの。わたしはフィルと一緒にいられて楽しいもの」


「けど……」


 あくまで心配そうなフィルに対して、わたしはとびきりの笑顔を見せる。


「そんな顔しないで。楽しい舞踏会なんだから。もしフィルが自分のダンスに不安があるなら、これから毎日でも練習に付き合ってあげる」


 ダンスは貴族のたしなみの一つで、それが得意で損することはない。

 それに単純に、フィルに何かを教えてあげられるというのは、わたしにとっての喜びだ。お姉ちゃんらしいし。


「これからは毎日一緒にいられるものね」


 フィルはぱっと顔を輝かせ、ようやく明るい表情を見せた。


「ありがとう。お姉ちゃん」

 

 そして、曲が終わり、ダンスは一区切りとなる。

 わたしたちを見ていた人たちから、拍手を受けて、フィルは恥ずかしそうにうつむいた。

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