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やり直し悪役令嬢は、幼い弟(天使)を溺愛します 2023/7/15コミックス2️⃣巻発売!  作者: 軽井広@北欧美少女ノベル5巻が8/25から発売!
第二章 王太子という名の危機

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エピローグ 始まりの終わり

 わたしは王太子の監禁から解放された。

 なぜかといえば、魔女崇拝者のクロウリー伯爵が逮捕されたからだ。彼がわたしを狙っていた犯人で、王太子や王妃はクロウリー伯爵の陰謀に気づきつつも、その証拠をつかめていなかったらしい。

 

 そういうわけで、わたしの身の危険はなくなった。

 けれど、わたしは魔女候補であることに変わりはない。


 王宮から屋敷に戻れることになって、翌日の夕方に、わたしたちは飛空艇の発着場に立っていた。

 王太子と王妃がわたしを見送ろうとして、夕日を背景に立っている。その後ろにはたくさんの従者たちがいた。

 

 王太子がわたしに頭を下げる。


「今回のことは悪かったよ、クレア」


「いいんです。わたしを守るためだったんですから。でも、最初から相談してほしかったですけど」


「ああ、今後はそうするよ」


 今後、か。

 それは……ないと思う。


「あの……殿下、それに王妃様。最後にお伝えしておきたいことがあるんです」


「なにかな」


「わたしは王太子の婚約者を辞退しようと思うんです。わたしは魔女になるかもしれませんし……聖女様を探すべきです」


 わたしはきっぱりと言った。

 もともと、わたしは王太子の婚約者という立場に未練はない。

 それに、王太子の婚約者であれば、政争に巻き込まれることもあると思う。

 クロウリー伯爵がいなくなっても、王太子派とサグレス王子派の権力闘争は続いている。


 ところが、王妃様は微笑むと、首を横に振った。


「悪いけど、クレア。あなたには王太子の婚約者でいてほしいの」


「な、なんでですか?」


「わたしがあなたを気に入ったからよ」


「そ、それだけ?」


「あなたなら、きっとわたしよりも上手く王妃を務められるわ。それに、あなたのお父様が婚約破棄なんてお許しにならないでしょう?」


 それはそのとおりだ。わたしと王太子の政略結婚は、リアレス公爵家の権力を強くするために行われる。

 とはいえ、王太子サイドから断られているなら、話は別。だから事前に話しておいて、夜の魔女となるかもしれないことを理由に断ろうとしていたのに。

 

 王妃アナスタシアはくすっと笑った。


「聖女は国王の配偶者。預言にはたしかにそう書かれているわ。そして、その素質を持った子がいる」


 王妃はちらりとシアを見た。シアはうつむく。

 王妃はシアの才能に気づいているのかもしれない。


「なら、預言に従わないと……」


「何でもかんでも預言のとおりにする必要はないの。それとも、あなたは預言に従って、夜の魔女になるつもり?」


 ぐっ、と詰まる。

 たしかに予言通りなら、わたしは夜の魔女になってしまう。だから、わたしは預言にあらがわないといけない。


 そして、王太子と王妃も、預言に従わないつもりなんだ。

 

「預言はあくまで預言。それが魔法の奇跡で生み出されたものでも、人の手で変えることはできるはず。私はあなたを見て、そう信じることにしたの。だから、あなたはアルフォンソの婚約者でいなさい」


「でも……」


 わたしは王太子をちらりと見る。王太子はわたしに関心なんかないはずで……。

 ところが、王太子はうつむいた。


「クレアには……僕の婚約者でいてほしい」


「え?」


「君は理想の婚約者ではないかもしれないが、でも、僕にとって必要な存在だ」


「……殿下」


「その殿下って呼び方も変えてほしいな。アルフォンソ、と呼んでほしい」


 わたしはびっくりして、王太子をまじまじと見つめた。王太子は頬を少し赤くして早口で言う。


「婚約者同士なんだ。そんなに他人行儀になる必要はないだろう?」


「わ、わかりました。アルフォンソ様?」


「うん、それでいい」


 王太子はぱっと顔を輝かせ、あどけない笑みを浮かべた。

 飛空艇アガフィヤ号が轟音を上げる。その機関が本格的に動き始めたらしい。


 出発の時間だ。


「また会おう、クレア。学園に入れば、ずっと一緒だ」


「は、はい……」


 わたしは結局、婚約破棄を強く主張できないまま、飛空艇に乗り込んだ。フィル、アリス、レオン、そしてシアが一緒だ。


 飛空艇が空に浮かび、そして、どんどんと王太子たちの姿は小さくなっていく。

 わたしは甲板に出て、そして、欄干によりかかり、王都の風景を眺めた。

 

 この華麗で巨大な都市に次来るのは、わたしが13歳になったとき。

 王立学園に入学するときだ。


 わたしの隣にフィルがやってくる。

 フィルはわたしの真似をして欄干に寄りかかろうとして、小柄すぎてうまくつかめず、バランスを崩しそうになった。

 そんなフィルをわたしが抱きとめる。


「気をつけないと危ないよ」


「う、うん……」


 フィルは宝石みたいな瞳で、上目遣いにわたしを見つめる。

 やっとフィルと一緒の、お屋敷での平穏な生活が戻ってくる。

 

「王太子殿下は婚約を破棄してくれなかったんだね」


「そうみたいね」


 どういうわけか、王妃と……王太子自身に気に入られてしまった。

 前回の人生とは真逆だ。

 まあ、でも、悪くない。


 王太子との婚約が破滅の原因だと思っていたけど、本当の理由は……わたしが夜の魔女であることだった。


 フィルががっかりしたように目を伏せる。


「王太子殿下が婚約者じゃなくなったら、ぼくがお姉ちゃんのお婿さんになろうと思っていたのに」


「え?」


「そうしたら、ぼくがクレアお姉ちゃんとずっと一緒にいられるでしょ?」


 最初はびっくりしたけど、わたしは微笑ましくなった。

 よく小さい女の子が「将来はお父さんと結婚する!」なんて言うけれど。

 きっとフィルも同じような感覚で言っているんだと思う。


「そうね。でも、フィルは可愛いからお婿さんというか、お嫁さんみたいな感じかも」

 

 言いながら、わたしはフィルの黒い艶のある髪を撫でる。

 フィルは頬を膨らませる。


「本気にしてない……」


 だって、フィルはまだ小さな子どもだから。だから、そんなことを言うだけなんだと思う。

 きっと、いつか、フィルにはわたしより大事な人ができる。


 でも、今は、わたしはフィルと一緒にいられて幸せだ。


 でも……学園に入学したら、わたしはフィルとしばらく会えなくなっちゃう。

 わたしが学園に入学すれば、屋敷を離れる。年下のフィルは学園に入学するまでのあいだはお屋敷にとどまる。

 だから、しばらくは一緒にいられない。

 

 わたしがその不安をフィルに言うと、フィルはくすっと笑った。

 

「ぼくね……王立学園に飛び級で入るつもりなんだ」


「そうなの?」


「そうすれば、お姉ちゃんと一緒にいられるから」


 そっか。その手があったか。

 わたしは嬉しくなって、フィルを抱きしめる。


「ありがとう、フィル」


 フィルは恥ずかしそうに、でも、嬉しそうに頬を緩めた。

 さあ、学園入学はそんなに遠くない未来のことだ。


 わたしが破滅した学園。

 フィルだけじゃなくて、シアやアリス、レオンたちも一緒についてくる。そして、王太子と……サグレス王子も、同じ学年になるはずだ。


 今回の人生では、どんな学園生活が待っているんだろう?

 わたしは不安と期待を抱えながら、飛空艇の遥か下の、カロリスタ王国の風景を眺めた。

これにて第二章は完結で次話から学園編の予定です。たぶん明日も更新します!

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また、年の差ラブコメ『追放された万能魔法剣士は、皇女殿下の師匠となる』も本日より下記で連載開始なのでよろしくお願いいたします!


https://seiga.nicovideo.jp/comic/51727



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