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やり直し悪役令嬢は、幼い弟(天使)を溺愛します 2023/7/15コミックス2️⃣巻発売!  作者: 軽井広@北欧美少女ノベル5巻が8/25から発売!
第二章 王太子という名の危機

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XXXVI 一緒にお昼寝!

 翌日も、わたしとフィルは同じ部屋で過ごしていた。

 王太子の命令で閉じ込められているから、外には出られないし。


 何もすることがないから、退屈だ。

 鉄格子のはめられた窓からは、穏やかな日の光が差し込んでいる。


 もう昼ごはんを食べ終わって、二時過ぎだった。

 この部屋には、そこそこの数の本が置かれている。小難しい本に偏っているけど。

 フィルはそういう本を気に入って、飽きずに読んでいた。


 何もしないよりはマシ、ということで、わたしも歴史の年表を開いて覚えていたけれど、とても眠くなってくる。

 うつらうつら、としているうちに、いつのまにかフィルが目の前に来ていた。


 小柄なフィルがわたしの目を覗き込む。

 宝石みたいな目に見つめられて、わたしもフィルを見つめ返す。


 フィルは首をかしげた。


「……お姉ちゃん……眠いの?」


「ええ……」


 とても、とても眠い。

 このままお昼寝してしまいたいような……。


 ……そっか。

 べつにお昼寝したって、悪いことはない。

 

 わたしは眠い目をこすり、そして、近くにあるわたしのベッドを手のひらでぽんぽんと叩く。


「フィル……一緒にお昼寝をする? 」

 

 フィルはわたしの言葉にきょとんとして、急に顔を赤くした。

 ふるふるとフィルは首を横にふる。


「お姉ちゃん……それは……」


「嫌?」


「い、嫌じゃないけど、恥ずかしいし、それに……」


「でも、お屋敷で一度、一緒にお昼寝したでしょう?」


「そうだけど……」


 フィルは上目遣いにわたしを見た。


「……お姉ちゃんは、ぼくが隣で寝ていても、何も思わない?」


「嬉しいな、とは思うけど」


 わたしはそう言って、微笑んだ。

 フィルは照れたような表情を浮かべた。


 どうしてフィルが、遠慮しているのか、わからない。お屋敷でお昼寝、と言ったときは、あっさりとうなずいたのに、今回はどうしたんだろう?

 でも、フィルが嫌というなら、やめておこうかな。


 と思ったら、フィルは首を縦に振った。


「お姉ちゃんが……そうしたいなら、いいよ」


「いいの?」


「うん。ぼくも……お姉ちゃんのそばにいたいし」


 そういって、フィルは天使みたいな綺麗な笑みを浮かべた。

 わたしは嬉しくなって、フィルを抱きしめようかと思ったけど、思いとどまった。


 そんなことしたら、フィルが恥ずかしがって、お昼寝はしない、と考えを変えちゃうかもしれないし。

 

 わたしとフィルはならんでベッドの上に寝た。


 天蓋付きのベッドは豪華で、しかもかなりの広さがある。さすが王宮。


 わたしとフィルはそれぞれ横向きに寝ていて、互いを見つめ合う格好になっている。

 そっと、わたしはフィルに手を伸ばし、フィルのつややかな髪を撫でた。


 フィルはくすぐったそうに身をよじる。

 わたしはひとしきり、フィルの髪を撫でると、フィルは顔を赤くしていた。


 そして、フィルは小声でつぶやいた。


「王太子殿下は……ひどいよね」


「え?」


「クレアお姉ちゃんの気持ちも考えないで、こんなところに閉じ込めて、お姉ちゃんを困らせて……ぼくならこんなことしないのに」


 わたしはくすっと笑った。


「ありがとう。フィルがわたしの婚約者だったら、良かったのにね」


 わたしは冗談のつもりで言ったのだけど、フィルは真顔でうなずいた。


「うん、ぼくもそう思う」


 その表情はあまりにも真剣で、瞳はまっすぐにわたしを見つめていて、わたしは一瞬、動揺した。

 まあ、たしかにフィルが婚約者なら、こんな問題は起こらなかったわけで。そのとおりなんだけど、婚約者ということは、将来は結婚するということだ。


 フィルはまだ10歳の子どもだし、そのあたりのことがあんまり理解せずに喋っているのかなあ、と思う。

 

 わたしはフィルの頬に触れてみた。その頬はとても温かくて、柔らかかった。


「フィルは婚約者じゃないけど、わたしの弟で、それにわたしのことを必要としてくれているから。それで十分嬉しいの」


 わたしの答えに、フィルは「うん」と小さくうなずいた。

 フィルはわたしのことを必要としてくれている。


 なら、王太子は?

 わたしのことを必要としているのかもしれない。でも、それはフィルがわたしのことを必要とするのとは、理由が違う。多分……もっと政治的な理由だ。

 それを突き止める必要がある。


 そんなことを一瞬考えて、でも、目の前のフィルがくしゃみをしたので、すぐにフィルに意識が戻る。

 わたしは起き上がって、フィルに毛布をかけた。

 そして、自分もその毛布の中に入る。


「お、お姉ちゃん……?」


「一緒の毛布にくるまると、一緒にお昼寝している感じがしていいかなっと思って」


 わたしがいたずらっぽく微笑んでみせると、フィルは「お、お姉ちゃんがそれでいいなら」と言って、受け入れてくれた。

 わたしはふたたびフィルの髪を撫でていく。

 ああ……フィルが可愛いなあ。

 そんなことを考えているうちに、急速にわたしは眠くなってきて、そして意識が途切れた。

 

 部屋の来客にも気づかずに、わたしは眠りへ落ちた。


……すみません。予告に反して、仕掛けの都合上、王太子視点は次回にしました。次回こそ……!


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― 新着の感想 ―
[良い点] なんだかフィルはもういっぱしの男っぽいですね。 無自覚誘惑にドキドキしつつちゃっかり堪能する辺りが侮れない! そしてせっかくの天蓋ベッドなんだからカーテン引いとけば良かったのに~! いつ…
[一言] 王太子はアホか。太るぞこれ
[一言] 囚われているだけあって、部屋の出入りも制限できないなんて、女の子なのに大変( ;∀;)
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