表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やり直し悪役令嬢は、幼い弟(天使)を溺愛します 2023/7/15コミックス2️⃣巻発売!  作者: 軽井広@年下お姫様に甘えられる大正ロマン結婚生活1巻が予約受付中
第二章 王太子という名の危機

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/107

XXⅣ レオン少年

 前回の人生で、レオンという子は、わたしと仲が悪かった。わたしとは主従関係なのに、互いに顔も見たくないと思っていた。


 理由はいろいろとある。まず、レオンは生意気だ。幼かったわたしに、レオンはいつも楯突いて馬鹿にするようなことを言った。

 それでも、わたしがレオンを従者とし続けたのは、お父様の命令だったからだ。

 マルケス男爵の子息であるレオンは、公爵の娘のわたしの従者にふさわしい生まれだ。もしそうじゃなかったら、わたしはすぐにレオンを首にしていたと思う。


 もう一つは、わたしの側に問題があったと思う。レオンは、死んだアリスの後任だった。

 アリスが死んで悲しくて、わたしはついレオンにつらく当たってしまった。そのうえ、いつも優しかったアリスと、レオンを比べて愚痴を言っていた。

 そうすれば、レオンからも嫌われて当然だ。

 

 わたしは、いま、目の前にいる11歳のレオンの青い瞳をじっと見つめる。

 レオンは気味悪そうに後ずさった。


「あー、お嬢様?」


 前回のレオンはわたしと一緒に学園に入学した。そして、やっぱり、レオンもシアに好意を持った。

 わたしが殺されたとき、大勢の人たちがわたしに殴る蹴るの暴力を振るったけど、レオンもその一人だったと思う。

 まあ、わたしはレオンに嫌われていたから。


 とはいえ、今回の人生でわたしが破滅を回避するには、レオンに好かれておいた方が良さそうだ。

 シアやフィルほどの重要性はないけど、破滅はどこからやってくるかわからない。


 わたしはにっこりと微笑んで見せる。


「あら、レオンじゃない。元気?」


「それなりには」


 むすっとした表情で、レオンが言う。

 ……可愛くない。

 顔立ちは端正だし、幼いながらに美少年なんだけど。

 

「こんなところで油売ってると、旦那様に叱られますよ」


「大丈夫。やるべきことはやってるから、いいの」


 勉強も行儀作法の練習も、前回の人生で経験済みのことばかりだし、簡単にこなせてしまう。

 浮いた時間は……フィルとの時間に使える!

 なんて幸せなんだろう。

 

 レオンは呆れた様子だった。


「だからって、なんでお嬢様が厨房なんかに……」


 そこでレオンはぴたっと足を止めた。

 鍋から漂う美味しそうな匂いに気づいたんだろう。


 まじまじと鍋の中身を見つめていた。

 フィルが首をかしげて、レオンを見つめている。


「……食べる?」


「べ、べつにいりません……!」


 と、そこでレオンのお腹がぎゅぎゅっと鳴った。

 わたしとフィルに見つめられ、レオンが顔を真赤にする。


「ち、違いますから……!」


 と、またレオンのお腹が鳴る。

 レオンも見習いとはいえ、使用人の一人だ。

 勉強している時間の方が長いとはいえ、仕事だってしているから、それなりに疲れるし……お腹も減るんだろう。


 彼は、頬を膨らませて涙目でわたしたちを上目遣いに睨んだ。

 ……お、ちょっとだけ可愛いかも。


 フィルがお皿に乳粥をすくい、そして、レオンに手渡した。


「あげるよ?」


「ま、まあ、せっかくなので、頂いておきます」


 というと、レオンはさじで乳粥をすくって、口に運んだ。

 途端にぱっと顔を輝かせる。


 美味しかったんだろう。

 ……年齢相応の子どもだなあ、と思う。


 16歳になったレオンは、わたしにとっては嫌味なだけの少年だった。でも、それはそのときのわたしにそう見えていただけで、視点を変えれば、もっと違った風に見えていたのかもしれない。


「これを作ったのは……?」


「ぼくだよ」


 おずおずとフィルが手を挙げる。

 レオンはフィルをじーっと見つめると、ぽつりとつぶやく


「おまえ、すごいな……!」


 と言ってから、レオンははっと口に手を当てた。

 一つしか年齢の違わない子どもとは言え、フィルは王族出身の次期公爵。使用人がタメ口をきいていい相手ではない。


 でも、フィルは首をふるふると横に振り、微笑んだ。


「おまえ、って呼んでくれていいよ?」


「ですが、フィル様は次の公爵様ですし……」


「でも、いまはただの10歳の子どもだから」


 そして、フィルがわたしを見上げる。つられて、レオンがわたしを見る。

 わたしは肩をすくめた。


「いいんじゃない。べつに、二人ともまだ子どもなんだし。子どもらしい話し方をすれば?」


「そういうクレアお嬢様も子どもですけどね」


 とレオンが言う。

 いちいち余計な一言を、と思ったけど、レオンが恥ずかしそうにぷいっと顔をそむけているのを見て、微笑ましくなった。

 照れ隠しでそんなことを言っているんだ。


 フィルは嬉しそうに、レオンに手を差し出した。


「よろしくね……えっと……」


「レオンです。レオン・ラ・マルケス」


「レオンくん、よろしく」


「……よろしく……お願いします」


 レオンは乳粥の皿を置くと、おずおずと手を差し出して、フィルの手を握った。

 フィルはくすぐったそうに笑い、レオンも顔を赤くしていた。


 フィルに友達ができるのは、姉であるわたしとしても嬉しい。


 けど……わたしがレオンに好かれようと思っていたのに、レオンとフィルが仲良くなっただけのような……。


 ま、そのうち、なんとかなると思う。今回はアリスも死んでいないし、レオンとアリスと比べて不満を持ったりなんてこともしないし。


 順調、順調、と思っていたら、レオンがわたしを振り向いた。


「あー、お嬢様。大事な用事を言い忘れるところでした」


「用事? なに?」


 上機嫌に尋ねたわたしは、次の瞬間、凍りつくことになる。


「王太子殿下がいらっしゃってますよ。お嬢様の婚約者の、王太子殿下です」


 レオンはなんでもなさそうに、そう言った。

ついに殿下の登場です。



日間ランキングの上位になるように、更新を頑張ります。




・ブックマーク




・評価の「☆☆☆☆☆」ボタン




で応援いただきますとととても嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] この流れで婚約破棄ルート希望!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ