辺境伯
「答えろ」
「俺が許してくれと言ったら、お前は許したか」
「それは、だから」
「だから、許さないだろう、な、そうだろう」
「だから、お前には死んで貰う」
壁際に銀色に輝く鎧がある
「あれを、よく見ていろよ」
手刀真空切り、縦に手を振る、見ていても何も起こらない、と思ったが、ピシっ、縦に線のようなものが現れる、線の幅が上の方から広がって行く、そして鎧が真っ二つに両側に分かれる、ガチャンと音を立てて倒れた、そして、分解してバラバラになった、それを見て辺境伯は、目玉が飛び出さんばかりに、目を見開いている
「ああーあーうー」
よだれを流し出した
「お前も、ああいう風になるんだよ」
そう言うと
「ひえー」
そう言ってへなへなと座り込む、股間が濡れている
「覚悟はできたかな」
そう声をかけると、
「ひっ」
そう声を出すと、気絶してしまった、兵士たちも見ていそれを見ていて、何人かが同じように股間を濡らしていた
「くさいな、嫌なにおいだ、それにしても全員此処にいるのかな」
確認してみる、全員いるようだ、異空間からロイドの、両親たちが付けられていた、首輪を出す、解呪をして危険はなくなっている、が俺以外は外すことができない、それを辺境伯と兵士全員に嵌める、これがお仕置きだ、兵士達には気絶している者はいないが、抵抗はしなかった、シルビーと手分けして、全員に装着し終わると
「良し、これでいい、全員よく聞けよ、二度は言わないからな、まず一つ目、その首輪は一度嵌めたら,絶対に外す事が出来ない、外そうとすると死ぬようになっている、二つ目、悪い事をすると毒を仕込んだ針が飛び出す」
「そんな、恐ろしい」
「たすけてくれ~」
そう言って首輪に触っている、そこで首輪の内側が、ちくりとするようにするように念を飛ばす
「ぎゃーいたい」
「ぎえー、助けて」
「大丈夫だ、死にはしないが、チクリとしたろう、それが針のある証拠だ、悪い事をすると毒針がグサッと刺さる、分かったな、辺境伯とやらにも言っておけ、殺すのは勘弁してやるが、今度悪い事をしたときが死ぬ時だとな」
そう言って出て行こうとして、忘れ物をしていた事を思い出した、兵士や辺境伯の恐慌ぶりに、狙い通り以上の効果があった事で、忘れていた、今回の騒ぎの元になったやつの事
「誰か、王子がいつ来るか、知っている奴はいるか」
聞いてみる、すると、隊長と呼ばれていた男が、首輪に触りながら
「王子なら、もうすぐに来るよ、あいつには罰はないのか」
「そうだよな、じゃあ、待つか、一番の悪をそのままじゃ、お前たちが可哀想だよな」
「そうだ、あいつのお陰で」
「王子だけ自由だと、お前たちも何をされるか分からんからな、そこで此処に一つ首輪がある、つけるのは簡単だ、お前たちが王子に付けるか、どうする、その方がお前たちも安心だろう、でなきゃ、自分達が危くなるぞ」
「そうだ、あいつの事だ、又悪い事を命令されたら、俺達は死ななきゃならねえ、あいつには絶対つけなきゃ、俺達の命がかかっている」
そんな話をしているとき
「帰って来たそうだな、だが、それにしては静かじゃないか、それに、うっ、なんだ、この匂い」
顔をしかめてそう言いながら、以前見た事のある男が入って来た、俺の顔を見ると驚愕の表情で
「お前は、グロージン王国の時の、どうしてお前がここにいる、お前たち、こいつを捕らえろ、早く」
叫んだが、捕まったのは自分だった、首輪鵜を持った兵士達が、王子を捕まえると首に装着してしまう
「何をする、これは何だ」
兵士たちの時より強めのチクリの念を送る
「痛い、いたあい、何だこれは」
「今後、悪い事をすると、もっと深く針が出てくるそうです、今後悪い事は出来ませんよ」
「何を馬鹿な、そんな事があるか、早く彼奴を、ぎゃあーいたい、たすけてくれー」
転げまわっている」
「悪かった、もうしない、悪い事はもうしない、たすけてー」
悲鳴が止まった
「痛いけど、針が引っ込んだ」
元々針なんてないのだが、痛感を刺激しただけだ
「分かったか、今後神様が悪い事と判断したら、針が首をつらぬいて、おまけに毒で死んでしまうぞ」
「ひえー、たすけてくれー」
「悪い事さえしなきゃ、大丈夫だ、せいぜい長生きしな」
兵士達は我が事のように、怯えた目で見ている
「じゃあな」
俺はシルビーとその場を去ることにする、誰も何も言わず、追って来る者もいなかった、街に出る、商店は店を開き、朝と違って、冒険者や工夫の姿は少なくなっているが、代わりに女の人たちが目立つ
「何かリリーにお土産でも買っていくか」
「そうですね」
まずは一件落着、辺境伯の治政にさほど影響はないだろう、国境での争いも当分なさそうだし、兵士の数が減っただけだ、街の人達に迷惑は及ばないと思う、悪い事、王子もカラバル辺境伯もこれから、善悪をどのように解釈して、生きていくのか、身から出た錆とは言え大変な事だと思うが、実際は死なない事をいつ気がつくか、其れまでに幾らかは善人になっていると良いのだが、そんな事を考えながら、街をブラついていると
「止めてください、何をするんですか」
女性の声がする、酒場兼食堂と言った風合いの店の中からだ、覗いてみると五人の騎士と、二人の女性が居る
「放して、私達は店のものではありません、食事に来た客です」
「酌をするくらい良いではないか、怪しいものではない」
「それでも、お嬢様が嫌だと言って居るのです」
若い娘が騎士に抱きかかえられ、年かさの女性が抗議している、傍に店の主人らしき男も居る
「騎士様、この方はお客さんなので」
「良いではないか、酌をするだけだ」
「そうは言っても、お客様に迷惑は」
「迷惑だと貴様、我らを誰だと思って居る、第一王子様警護の我らが迷惑だと、おのれ」
王子も王子なら、部下と言うか警護の騎士迄、こんな出来の悪い、この国は駄目だな、先が思いやられる、長い事は無いだろう、こんなのが国の中枢に生息していては
「はい、そこまで、騎士が平民相手に、威張る場所が違うだろう、腰抜けに限って、威張り散らすんだ」
「貴様、今何といった」
「五人揃って、腰抜けと言ったんだ」
娘たちを放し五人が揃ってがっと音を立て立ち上がった
「護衛の騎士が、昼間から酒か、程度が知れるな」
「これは、王子の許しを得ての事だ、だいたい貴様許さん」
「ほお、王子さまはお嬢さんに絡んで来いと、立派な王子様だな」
「もう許せん、貴様、表に出ろ」
「店に迷惑だ、くらいは分かっているんだな」
先に立って外に出る、王子が警護もなく一人で来るのは、おかしいと思って居たが、後ろ暗い話だから、警護の者達を,こんなところに置いて、一人で行ったのだな
「さあ、やるか、シルビーここは俺がやるから」
「はい」
そう言って離れていく
手刀真空切り、一人、二人、三人、四人、五人の服の前が開く、男の象徴迄丸見えだ
「な、何だ、貴様、何をした、くそお」
懸命に前を隠している
「おいおい、剣を構えなくては」
「貴様、くそ」
男の急所を片手で隠しながら、片手で剣を向けてくる、非情に笑える光景だ
「おい、両手剣を片手では、真剣にやろうよ」
騎士のズボンは、タイツのようにピッチリにできている、前を切られたズボンは弾けた様になって、一物が飛び出してしまう、隠すのに必死だ、周りで見ていた街の人達が、最初はクスクス笑いを堪えていたが、今はゲラゲラと大笑い、腹を抱えて笑って居る、構えた剣を端から叩き落としていく、ふるちんで戦意喪失か、元の酒場に逃げ込もうとしたが、戸を閉め切って開かない、入り口に五人で蹲ってしまった、命より恥ずかしさの方が勝るとは知らなかった、被害にあって居た女性たちは、無事に逃げたようだ、これだけ恥を掻いたんだ、もう良いだろう、騎士達に背を向け
「シルビー、帰ろうか」
肩を並べてある気出すと
「あのー」
「えっ」
酒場の陰から先程の女性二人が出て来た
「助けていただき、ありがとうございました」
「いや、理不尽な奴は許せない性分でね、怪我はないね」
「はい」
「じゃあ、よかった、気を付けて帰りなさい」
「あのー、お礼をしたいので、うちに寄ってくださいませんか」
「お礼なんて、気にしないで」
「それと、出来ましたら、おねがいが」
何故か真剣な女性たちを見て、シルビーの顔を見ると頷いている
「分かりました、お供しましょう」
「ありがとうございます」
女性たちの後を附いて、暫く歩いて行くと、古めかしい屋敷の前に来た、その門内に案内され、通された部屋に入ると、奥にいた老人が座っていたが、ジッと栄太を見ている
「良くやった、正しく微塵も魔力を感じない、この方なら」
そう言って若い方の女性の顔を見る
「説明は」
「まだです」
「そうか、では、私から話そう」
そう言って栄太に向き直る
「私はブランガル・シェレスと申します、この館の主です、体を悪くしましてな、座ったままで失礼するが、聞いていただきたい」
「どうぞ、そのままで」
「ありがとうございます、zituha,この館の地下に、昔から誰も入れない部屋があるのです、何代にも渡って入れる人を、探しているのですが、、いまだ見つかりません、僅かでも魔力を持った人は駄目なのです、娘のマリアと私は、この家の血筋で、人の魔力の有無が分かるのですが、マリアは貴方を見て魔力の無いのが分かって、来ていただいたようです、私が見たところでも貴方には魔力を全く感じません、こんな人は初めてです、貴方ならもしかしたら、部屋に入れるるかもしれません、どうかその部屋に入り、中に何があるか確めて来て欲しいのです、これは我が家に生まれた者の使命だと言い伝えられ、その為魔力の有無を見分けられるものが、生まれるのようです、それでマリアが貴方を見つけた訳ですが、どうかお願いできないでしょうか」
「分かりました、良いですよ、そういう事なら、別に俺が入れるようならば、入って来ましょう」
「本当ですか、本当によろしいのですか、中に何があるか分からないのですよ、本来なら初めて会うお方に、頼めることではないのですが」
「大丈夫、ご心配は無用です、俺はそう言うのは嫌いじゃないし」
「そうですか、ありがとうございます、マリア、行って下さるそうだ、神力の間に御案内しなさい」
栄太が愕然とした
「今、何と言った」
「神力の間と言いましたが、何か」
これは導かれている、俺が此処に来る事は必然だったようだ、願ってもない事になった訳だ、流石にショックだった、動悸が激しい、深呼吸をして気を落ち着かせる
「いえ、大丈夫です、分かりました、行きましょう」
深くうなずき、マリアの後を附いて行く、屋敷の一番奥、其処にあった階段を降りる、両側に二つずつ部屋が並んでいる、突き当りが何故か全面扉になっている、防火扉のような大きなその扉を開くと、中にもう一つ扉があった
「この扉から先は、誰も行けないのです、今まで誰がどうやっても開かないのです」
俺が手をかけ引いてみる、とびらは簡単に開いた、俺の予想通りだ、マリアが悲鳴に近い声で
「ええー、本当に開いてしまったぁ」
そう言って中を覗こうとしたが、何かに遮られるらしく入れない、俺が腕を伸ばして入れてみる、抵抗なく腕が入る、マリアはそれを見て固まっている
「なるほど、俺はひれそうだな、では、行ってくるか、シルビー待っていて」
我に返ったマリアが
「よろしくお願いします」
深々と頭を下げている
「はい、気を付けて」
「行ってきます」
相変わらずシルビーは、俺の言う事に素直だ、何の心配もしてい無い様だ、これが全幅の信頼というやつか、などと場面にそぐわない、呑気な事を考えていたが、半分はワクワク間でいっぱいだ、はっきりしない神らしき存在が、明らかになる、俺はそう思って居るからだ、中は真っ暗だった、入り口の扉を閉じる、暗視を発動し前に進んでいく、廊下の続きで同じ幅の通路が続いている、やがて正面が突き当りになり、その右手に扉があった、ノブに手をかけ押すと抵抗なく開いた、躊躇なく入って行く、中は薄暗かったが不思議な事に、今にも消えそうな蝋燭が蝋燭ゆれている、誰が灯したのだろうか、その向こうに案の定奇麗な女の人が寝ている、きっと神様だろう、近づいていくと突然、脳の中から何かが抜けたような感覚があった
「ようやく来てくれたか、高杉栄太、其処の長い蝋燭を灯してくれぬか」
言われたとおりにする
「貴方がチャッピーと名付けた者は、返してもらいましたよ、もう必要はないでしょう、この世界で一人ぽっちは可愛そうなので、貸したけど、もう必要ないわね、シルビーが居るし、仲間もできた」
「それは、寂しくなるな、何時でも困ったとき、チャッピーが居るから、落ち着いて居られたのに、でも、俺のものじゃないし、仕方ないのか、チャッピー、黙って行かないで、何か言ってから行って欲しかったな
「ごめんなさい、もう、仲間の所に行ってしまったようね」
「そうなのですか、じゃあ、しょうがない、ところで、貴方は神様なのですか」
「人族入ってそう言うようね、正確には名前なんてないから、でも名無しじゃ話づらいから、神で良いわよ」
お読みいただきありがとうございました




