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栄太の漫遊記  作者: ベン マウント
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調査の旅

毎日が落ち着いた日々になった、すべて順調。トラブルなし

王都までの浮動機による、交通を確立するため、ウィン、ロイドが本格的に動き出した、俺達はコースの下見に出る事にした、シルビーと二人でだ、キャンピングカー並みに改造した、小型の浮動機バスを使ってだ、リリーも附いてきたがったが、学校があるのであきらめて貰った、一緒なら楽しいのだけれど、期間がどのくらいになるかもわからない、馬車で一か月かかる区間の調査だ

大袈裟な見送りは嫌なので、夜中、ジルとエリーそれとガルトにだけ告げて出発した、周りには何れ調査に出る事は伝えてあるので、朝になったら皆に出発したことを伝えて貰う、事になっている


シルビーと二人だけの旅は、初めてだ、と言うより瞬間移動ばかりしていて、旅と言う気分を味わった事が無い、だから、ワクワクしている、シルビーもご機嫌が良さそうだ

朝日が昇って来る、地球とあまり変わらないように思う、しかも四季があり日本の気候によく似ている、そのせいか、生活習慣に慣れてしまうと、いつの間にか異世界人と言う事を忘れそうだ、草原の向こうに光が差してきた、浮動機バスは、道なき道を進む、王都に向けて一直線に、最初は従来の馬車や人が行きかう、道と並行して進んだが、従来の道は徐々に離れて行った、街や村を繋ぐのが道だから、街や村はそれぞれ街を、村を作る理由があって出来上がる、王都に向けて作られていないから、真っ直ぐに進む俺達と離れて行って当然だ、勿論どこかで従来の都へ行く道と、交差するか、再び並行していくか、其れも、今回の調査の内だ

今はもう道は見えない、目の前に森が見える

「森の中は歩かなくては、通り抜けられな」

シルビーが楽しそうに言う

「そうだな、降りて歩こう」

浮動機バスを異空間に収納すると、待ってましたとばかりに、シルビーが腕に捕まって来る、そのまま二人並んで下草の少ない所を選んで進む、何処か人里が近いのか、けもの道なのか道に近い跡が、真っ直ぐに伸びている、脳内に索敵地図を浮かべながら進む、範囲を絞り、狭い範囲を精密に反映させ、暫く進んでいくと、少し先に魔物が居る事を示す、赤い点が点滅している、腕を放したシルビーが腰の剣を抜く

「オークみたい」

シルビーも同じく察知した様だ

「のようだな」

剣を少し上げ、私がと言う仕草をする、頷くと、シルビーは気配を消した、姿はは見えるが気配を絶ったのだ、相手に近づいて行っても、姿が見えるまでは存在に気付かないだろう、暫くすると、ぎゃ、ぶす、ぎゃあ、しゅぱ、瞬間そんな音が聞こえて来た、そのまま進んでいくとシルビーが一人立っていた、六匹のオークが死体となって転がっている

「久しぶりのオークね、クロードの街は安全過ぎて、この世界に魔物が居る事を忘れそう」

「そうだな、移動もこうして歩く事が無かったから、よけいに感じるな」

「本当、これから、どんな魔物に行き会うのかしら」

楽しそうに言う

「女の人が楽しそうに言うセリフじゃないな」

「そうかしら、女の人らしくした方が良いのかしら」

「いや、そんな事は無いヨ、何をしようと、俺の愛するシルビーはシルビーだからね」

ちょっと照れ臭いがそう言うと

「よかったぁ、愛してるよ、栄太さん」

そう言って抱き付いて来た、オークの死体が転がる中で、俺達は何をやっているのだ、誰も居ないから良いか、おふざけはそのくらいにして、用心しながら進んでいく、すると小さな森だったらしく、その後は、この星では何というのか知らないが、シカに似た獣、ウサギに似た物を見かけるだけで、通り抜けてしまった、すぐ先の草原の向こうにに畑が見え、更にその更に先に小さな集落が見える、まっすぐ行くとあの村にぶつかるのか、此処は少し迂回しないと、この場所を脳内地図に記憶する、特に寄る必用もないので、村を迂回して進もうとしたとき

「きゃー」

悲鳴が聞こえた、急いで声の方に駆け付ける、数人の男が囲む中で、一人の女性が引きづられていこうとしている、周りの村人らしき人達は、おろおろしながら何もしないでそれを見ている

「何をしている」

声をかけると、身なりの良い男たちのリーダーらしい男が

「何だ貴様は」

「何をしていると聞いているのだ」

「関係ないものが、よけいな口を挟むな、生意気に、領主様に逆らうのか」

「別に逆らってはいないよ、大の男が五人もで、悲鳴を上げる女の人を連れて行くのを見たら、訳を知りたくなるだろう、俺の住んでいる街では、そういう事は盗賊とか、山賊とか犯罪者しかやらんからな」

「貴様、盗賊、山賊と一緒だとぅ、許せん、お前たち、この男を遣ってしまえ、ついでにその女も領主様に土産だ」

「シルビー、土産にされちゃったぞ、どんな味がする土産か味合わせてあげな」

「いいの、痛がると思うけど」

と聞いてくる

「手加減するんだよ」

余りにのんびりした会話に、男たちは襲うのを忘れ、動きを止めて俺達を見ている

「貴方たち、味合わせてあげる、痛いけど貴方たちが望んだのだから、さあ、いらっしゃい」

シルビーが戦闘モードになった、新しい業を試す気だ、剣に念を込め鉄をも両断する業物になるのだ、色々試していたが、実践ではどうなるか、剣を抜いた、男たちも剣を抜いたが、女だからと一人だけ前に出て、シルビーに向かっていく、其れを軽く躱すと、その男の尻を蹴りつける、男は前につんのめって、顔から地面に突っ込んだ、それを見て男たちが驚きの表情で、顔を見合わせていたが

「全員で掛かれ」

声がかかると、一斉にかかって行く、その群れの中をシルビーが、通り過ぎるように抜けると、男たちは全員地面に転がっていた

「ぐぬぬぬ~、もう許さん、立ち上がった男たちは、再度いっせいに切りかかった、が、今度は男たちの持つ剣が、鍔元からポロリポロリと落ちていく、柄だけ握った男たちが、呆然と立ち尽くしている、シルビーは剣を鞘に納めて

「そんな安物の剣じゃ駄目ね、さて、次は貴方達の首が、そうなるのよ、どうする、味わいたい?」

我に返った?男たちは、目をぱちくりさせていたが、シルビーが再び剣を抜く素振りを見せると

「わー」

悲鳴のような声を上げると、一目散に逃げて行ってしまった、黙ってそれを見送っていると

「ありがとうございました、、ですが、このままでは済まないでしょう、あの領主が黙っているわけがない、私達はもっと程い目に合うでしょう」

「事情を話して貰えませんか」

「はい、簡単な話です、この村の税金が足りないから、娘を差し出せと言う事です、二年続きの不作で,もうどうしようもない、こんな事もあろうかと、一年分はためてあったのですが、二年続くと流石に、村中出し合っても足りなくて、ついにはこんな事に」

「不作が続いたことは、領主もわかっているんだろう」

「それは勿論、其れを考慮してくれるような、良い人ではありませんよ、それに彼女は以前から領主に狙われていたのです,良い機会と言うわけです」

「どう言う奴なんだ」

「ジルド男爵、親が公爵とかで、都から離れている事を良い事に、やりたい放題、領民は泣かされっぱなしです、都に直訴したくも、見張られているんでしょうね、何人か都に向かったのですが、帰って来た者は一人もいないんです、奴らに殺されたのでしょう、そんな訳だからもうどうしようもないんです、言いなりになるしか無いのです」

諦めきっている、可哀想に、聞き捨てならない事ばかりだ、王都から離れるとこんな事が横行する、王様が懸念して居た事だ、だから、交通の便が良くなることに、大喜びしていたのだ

「分かりました、俺が何とかしましょう」

「何とかするって、相手は貴族ですよ、それに後ろに大貴族が居る、一人や二人で何とかなる筈がないでしょう、もう気休め良いです、もう諦めていますから、お気持ちお気持ちはいのですが、何の関係もない貴方達にまで迷惑はかけられない、早く逃げてください、必ず仕返しに来ます、そうなれば、貴方達の命はありませんよ」

「そうですか、分かりました、俺達が居ると返って迷惑になるかもしれません、シルビー、行こう」

「奴らが来たら、俺達の逃げた方向を教えてください、逃げ足には自信がありますから」

「今からですか、もう日が暮れます、明日の朝くらいまでは大丈夫だと思うので、今夜は村に泊まって、朝早くに行かれては」

「ありがとうございます、私達は旅慣れています、大丈夫ですから」

心配そうに言う、村長らしき人を残し、歩きだす

「見えなくなるまで、普通に歩こう」

「分かっている、分からないように戻るんでしょう、栄太さんが放って置けるはずないもの」

「わかるぅ」

「分かるわよ、私を誰だと思って居るのよ、栄太の妻なんだから」

冗談を言いながら歩く、村はかすかに見えるだけになった、浮動機バスを出す

「この辺に泊まるか、見張りも兼ねて」

「そうね、此処からなら遠目を聞かせれば、丸見えだから、良いわね」

中に入ると、ワンルームマンションのようになっている、風呂まで完備だ、食事は異空間から出す、時限停止空間だから,出来立てが出てくる

「食事をしたら、交代で風呂に入ろう」

「そうね、見張っていないと、何が起こるか分からないものね」

食事を済ませ、風呂に入り

「シルビーは寝なさい、俺は一晩くらいは寝なくても平気だから」

「は~い」

素直に言う事を聞く、俺の事は知り尽くしているから、俺の心配はしない、ベットからすぐに寝息が聞こえて来た、見張りながら、新しい業を練習することにしよう、手刀真空切りとでも言えば良いのか、手刀の先を真空にして斬る、かまいたちの鋭いものと思えばよい、指先二メートルくらいまでは、ミリ単位で調整できる、つまり着ている服だけを斬る事も可能な筈だ、切れ味は念を強くすれば、斬れないものはない、と思って居る最強の武器だ、念を込めない以上は出現しないし、何時でも出現可能、都合が良すぎる武器だ、形がないから相手は警戒もしない、異空間から玉ねぎに似た野菜を出すと、部屋の隅に置く、丁度二メートルほどの距離だ、手刀真空切り、僅かに手先を振って野菜を狙う、傍に行って観察する、狙った通り皮一枚分が切れている、何度も試してみる、微妙な距離の調整は大成功、今度は、そっと外に出る、近くにあった、直径に十センチほどの立ち木を切ってみる、シュンと簡単に切れた、豆腐を切る様だ

「おっと、危ない」

斬った木が斃れて来た、慌てて抑える、そしてそっと倒して地面に置く、シルビーが目を覚ましてしまう処だった、バスの中に戻り、その後は何もなく朝が来た





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