魔導通信機
「いくら王様が脅しても手を引かないぜ」
ロイドがそう言って俺を見る
「何故だ、まだ何も言ってこないが」
「俺と言うか赤星星団の、情報網は大陸中に張られて居る事は知っているな」
「ああ、前に聞いた」
「集まった情報を分析してみたら、ダラム公爵は早く言えば、王位を狙っているのさ」
「だから何があろうと、クロードの街を攻めてくると言うのか」
「そうだ、すでに兵集め用意している」
「王様の意思は無視するつもりか」
「王様に味方する貴族と、ダラム公爵を押す貴族は、今のところ半々て処だが、俺の調べではダラム公爵の後ろに、ガルドン帝国が見え隠れしているんだ俺」
「ガルドン帝国は、浮動機に強い興味を持っている、流石帝国を築くだけあって、先を見る力は抜群だ、まさに世の中を変える発明だからな、それで、ダラムを唆したんじゃないか、ダラムの子分にラクサム辺境伯と言うのがいる、こいつはガルトン帝国との国境の、辺境伯なんだ、恐らく奴がダラムと帝国をつないで居る」
「そういう事なら、確実に攻めてくるな」
「そうだ、だが、事はクロードの街だけの問題じゃなくなる、もしもの時は帝国が乗り込んでくる事になるから、この国全体の危機にもなりかねん」
「攻めてくるまで、どの位だと思う?」
「出兵の用意を始めているとはいえ、兵を整え食料その他、三か月はかかるだろう」
「分かった、対応する時間は十分だな、早速力を貸してくれ」
「分かったって、何をすれば良い」
「ちょっと待ってくれ」
【チャッピー】
【なんだ】
【シルビーに転移の能力、コピーできるか】
【今は無理だ、完全に栄太の妻になれば、栄太の出来る事はほとんど、コピーできるがな】
【完全にって、分かった】
異空間から箱を取り出す
念話の変換機、電話の交換機のようなものだ、試作だがこの際使ってしまおう
「この部分に手を当てて、此処へ血を一滴」
ロイドは栄太の言う通りにする
「良し、これでロイドの許可が無いと、この機会は使えない、其れとこれ」
腕輪、金製と銀製はいくつも出て来た
「宝飾屋でも始めるか」
「いや、これは秘密兵器だ、あんたのところの支部はいくつある」
「大陸の主要都市全部、三十二」
勝っている暇がない、創造して空異空間から出す
「この腕輪は、今回手伝って貰う報酬だと思ってくれ、念話の腕輪だ、そしてこれが交換機本部に置くと良い」
何を言っているか分からず、呆然としているロイドを無視して説明する、自分でも確立していない、計画を確認も兼ねて話している
「これはあんたがする、交換機から連絡、こっちは交換機と連絡」
支部からは交換機に連絡、交換機から各支部に連絡できる、交換で整理された情報がロイドに入る
「大体理屈は分かったが、配っている時間がない」
「だから、ダラム公爵関係、ラクサム辺境伯関係、ガルトン帝国関係に取り敢えず配る」
「それにしたって、時間がかかるぞ」
「それは、任せろ」
取り敢えず全部異空間に戻す
「昼食はどういたしましょう」
ガルトが聞きに来た
「ああ、頼む、ロイドの分も」
「かしこまりました」
ガルトは王様から何らかの使命を与えられている筈だが、放っておこう、王様が害になる事をするはずがない、むしろ害を取り除くためだと思う、ガルドは相当に腕が立つはずだ、おくびにも出さないが俺はそう見ている、この際それは置いておいて
ロイドと共にギルドに来ている、以前にロイドは紹介してあるので、事の次第を話す、ウィンが
「貴重な情報ありがとうございます」
そう言ってロイドにお礼を言った、額にしわを寄せ
「そうか、無事にはすまないか」
そう言って腕を組み考え込む、今まで黙って聞いていたグレンが
「栄太、お前が、馬鹿に落ち着いていると言う事は、何か策があるのだろう」
「う~ん、まあ、やってみなくては分からないが、兵がここまで来ることはないだろう」
「本当にお前は規格外だよな、相手は大貴族だぜ、それどころか、帝国が相手になるかもしれないってのに、それを聞いて、納得する俺達もどうかと思うけどな」
グレンが呆れ乍ら言う
「王様には、どうする」
「一応伝えておいて、間際まで動かないように言っておいてくれ」
「わかった伝えておくが、俺たちはどうする」
「ウィンは此処で指揮を執っていないとまずいからな、グレンは手を借りるかも」
「分かった、無理はするな」
「じゃあな」
帰り道
「お前、実質この街のボスだな」
「災いごとの時だけね、政は御免だよ」
「そうか、そうだよな、そう言う奴だ、何だか面白くなってきた」
翌日、毎日予定がある暮らしではないので、目的が出来れば即実行だ
「まず、ロイドが長期間休暇がとれるようにするか」
「どうするのだ」
今は研究室にいる、今回もシルビーには同行してもらう、リリーには夕べたっぷりと、癒しのエネルギーを貰っ、そして言い聞かせてある、寂しいだろうが我慢してもらおう、毎日孤児院に通っているそうだ、リリーにとっては保育所に通うようなものか、同年代の子供が大勢いるから嬉しいらしい、孤児院と言えば、戦争にでもなれば、また、孤児が増える事になるのだ、貴族や国の一部の人間の思惑で、不幸しか生まない戦争を、良く簡単にやる気になるものだ、全く腹が立つ、全能力を駆使してでも止めてやる、そして二度とそんなことを考えないように、お仕置きだ、覚悟しろ
「ロイド、あんたの拠点の部屋を、思い浮かべてくれ、シルビー俺に捕まって」
ロイドの額に手を当てる
「思い浮かべているか」
「浮かんでいるよ」
「では、其処へ行くぞ」
何を言っているんだ、と聞く間もなく、突然眩暈のような感じがして、思わず目をつぶる、治まったので目を開ける、違う部屋の中にいた
「はあ~、俺の部屋あ~」
叫んでしまった、悲鳴に近いかもしれない
「どうなっているんだ」
「男にしては片付いている方だな」
ロイドを無視して部屋を見回して呟いている
「時空魔法、転移、瞬間移動、本当にお前は何なんだ」
「ほめてくれてありがとう、さっさと本部に案内して」
「ほめてないよ、信じられん、何でも有りか」
自棄のように扉を開けて歩き出す
「全く、転移するならすると説明しろよ」
呟きながら歩いている、部屋から出ると、賑やかな街並みが続いた通りに出た
「栄太さんと付き合うなら、何があっても驚かない、覚悟がいりますよ」
寄り添うように寄って来たシルビーが小声で言う、当の栄太は物珍しそうにキョロキョロしながらついてくる
「ああしているところをみれば、何の変哲もない、只の男なんだがなぁ、中身はとんでもない奴、俺はもう、驚くのに疲れたよ」
肩を落として力なく歩いていく、シルビーが口を押えて笑いながら後を追う
大きな建物の入り口に着くと、ロイドは急にシャキッとして
「ここだ」
そう言うとドアを開け入っていく、栄太とシルビーは顔を見合わせ、頷きあってあとを着いてあとを行く、
中には何十人もの人が働いていた、その中でロイドに気がついた人達が、急いで立ち上がり
「総長、お帰りなさい」
口々に言っている、その声を聴いた全員が、立ち上がって挨拶している、、後ろにいる俺は恥ずかしくて、如何して良いか分からない、ロイドの傍に行くと
「情報関係の担当の部屋はあるか」
そう聞いた、片手をあげて、挨拶に答えていたロイドが
「こっちだ」
近くのドアを開き賑やかな部屋を出る、廊下を少し歩きドアを開ける
「ここだ」
中に十人ほど人がいる部屋に入る
「総長、予定よりずいぶん早いお帰りで」
「いや、また、すぐに出かける、よな?」
俺の顔を見る
「そう、だね」
その時
「失礼します、総長お帰りなさい」
グレンに似たタイプの、大男が入って来た
「うん、だが、すぐに出かけるぞ」
「そうですか、やはり簡単にはいきませんか、では急に戻って来たのは、何故です」
「それは、俺から説明しよう」
そう言った栄太を見て
「何だ、お前は」
ロイドが慌てて
「私の友人、栄太さんだ、こちらはシルビーさん、二人とも私も敵わない猛者だ、こいつは副長のサミル」
「はぁ、猛者ですか、サミルです」
疑わしそうに、疑惑の眼で見返してくる
「栄太です、よろしくお願いします」
「シルビーです」
「詳しい事はいずれまた、急いでいますから、情報収集の担当者は」
「重要な部署だから、サミルがトップで部屋にいる全員だ」
「では、此処に集まってください」
近く机の周りに集まってもらう、一旦廊下に出て、交換機と腕輪を異空間から出す、部屋に戻ると机の上にそれを置く、交換機には受話器に似たものを付けてある、何事だろうと見守る人達に説明する
「これは、遠く離れた場所と、連絡が取れる魔動器です、腕輪を嵌めた人は、腕輪に触れながら念話で伝え念話で聞こえます、この機械は、念話できたものを、声に変えて聞こえ、声で送れるように作ってあります、説明では分かりずらいので、実際使ってみましょう」
ロイドに事前に似ん書させた、腕輪を渡す
「外に出て、頭の中でこの機会を思い浮かべ、腕輪に触れながら、聞こえるかと念じてみて」
「分かった」
外に出ていく、サミルに受話器を渡し、耳に当てるように言う、交換機に五十程嵌め込んである、小さな魔石の一番目が点滅する
「聞こえる、総長聞こえます」
サミルは、驚愕の表情で俺を見ている
「分かりましたね、使い方」
「分かりました、こいつは凄い、これさえあれば、でも、どのくらい離れた」
「大陸中、どこからでも」
「そいつは凄い、凄い、凄いぜ~」
「腕輪によって、この魔石の光る位置が変わります、それによって誰からの連絡かが分かります、連絡をしたいときは連絡をしたい相手の、魔石に触れて話してください、それと、総長が認めた人以外、それと、腕輪は使う事はできません、もし他人の手に渡ったとしても、それは只の腕輪になってしまいます」
ロイドが戻ってきた
「栄太、凄い機械だな」
「便利だろう」
「便利なんてものじゃない、何と言うか、何と言えばいいかわからん、それほど凄い」
「一応の説明はしておいた、次に行くか」
「おー、分かった、サミル後を頼むぞ」
「もう行くんですか」
「時間が無くてな、すまんが、みんな頼むぞ」
皆を見回してロイドが軽く頭を下げる
「言い忘れましたが、この機械はこの部屋だけの秘密でお願いします、外部に洩れたら争奪の戦争になりかねません」
「分かってます、絶対秘密厳守を徹底します」
「それから、担当を決めて一日中、この機械を見張ってください、何時連絡が入っても良いように」
「それはそうですね、分かりました」
部屋の人達に見送られて、裏口らしき所から本部を出る
「悪いな、騒ぎになるから、裏口で」
「俺もその方が良いよ、仰々しいのは嫌いだ」
ロイドの部屋に戻る
「ガルドン帝国の首都はガルトラだったよな」
「じゃあ、其処の支部の近く、人目に付かない場所、無いかな」
暫く考えていたロイドが
「あった、支部が借りている倉庫の中」
「じゃあ、其処を思い浮かべて」
「分かった」
目を瞑り、真剣な顔をしている、黙ってシルビーが俺の腕に腕を絡める、レモンのような香りがする、ロイドの額に触れる、グラリとした感触が体を包む




