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12話 なぜかライバル視されてます

 外に出たアレスがしばらく大通りで待っていると、モニカとリリベルが二人して冒険者ギルドから出てきた。


 モニカはきょろきょろ周囲を見渡すと、ギルドの対面にある建物に背を預けたアレスを見つけ、慌てた様子で駆け寄ってくる。


「アレスさん……さっきはホントにありがとうございました」


 アレスのすぐ前まで来ると、モニカは申し訳なさそうにお礼を言う。

 今までの反省からか謝りこそしなかったが、自分の事情で迷惑をかけたことを気に病んでいる様子がありありと見て取れた。


 それでは謝っているのと変わらないじゃないか、と苦笑いを浮かべそうになったアレスは、あえてとぼけたように返す。


「ん? お礼を言われるような覚えはないなあ……。だから、そのお礼は受け取れないよ。さっきは自分に降りかかる火の粉を振り払っただけだしね」

「そ、そんなこと――」

「いや、俺はいつも通りやりたいことをやってるだけだから、モニカもいちいち気にしてないで好きなようにしてればいいと思うよ?」

「そう……なんでしょうか……?」


 気にする必要はないと言うアレスに、モニカは考え込むようにうつむくが、やがて、なにかいいことでも思いついたかのように顔を上げた。


「じゃ、じゃあ! さっきのお礼は、わたしがどうしてもアレスさんに言いたかったから言わせてもらいました!」

「なるほど、そうきたか。なら、俺もどういたしましてと言っておこうかな」

「ありがとうございます! ……えへへ」


 ずいぶんと前向きなお礼に変わったことを確認して、アレスがそれを受け入れると、モニカは嬉しそうな笑みを見せた。


「それで、ちゃんと受けたかった依頼は受けられた?」

「はい! 予定とは違う依頼になっちゃったんですけど、お友達になったリリベルちゃんと一緒に依頼を受けられることになりました!」


 そう言ってモニカ紹介するように振り返ると、そこには彼女の後ろをゆっくりとついて来ていたリリベルの姿があった。


「どうも、アレスといいます」


 アレスが先に名を名乗る。

 だが、リリベルは名乗り返さず、じろじろと胡散臭いものでも見るような目を向けてくるだけだった。


「あんた、結局なんなのよ?」

「……? モニカの召喚獣だけど?」

「そういうこと聞いてんじゃないわよ! ……いったいなんの目的でモニカに近づいたのよ?」


 なにやら、リリベルはアレスのことを疑っているようだ。


「まあ、簡単に言えば……自由な生活をするため、かな」

「あんた、精霊でしょ? そんな理由で精霊が人間の召喚獣になる訳ないじゃない! ホントはなにかとんでもない代償をモニカに求めてるんでしょ!?」


 やましいところのないアレスが正直に答えるが、リリベルは納得しなかったようだ。

 この調子ではアレスがなにを言っても信じてもらえそうにない。


 そこに、モニカが助け舟を出し、アレスの説明を始める。


「アレスさんはホントに、この世界で暮らすためだけにわたしの召喚獣になってくれたみたいなんです」

「モニカ、あんたこの召喚獣のこと、そんなによく知ってるの?」

「あ……その、いえ、昨日会ったばかりなので、そこまでは……。龍王さまで、すごい魔法が使えて、とってもやさしいってことくらいしか知らないです……。で、でも、アレスさんはいつもわたしのことを助けてくれるんですよ?」

「は!? りゅ、龍王!? 龍王なんて大物が召喚獣になるなんて訳がないじゃない! 絶対モニカは騙されてるわ! 上手い話に裏があるのは商人の間じゃあ常識なの! きっとなにか企んでるのよ!」


 モニカの擁護の甲斐なく、リリベルはアレスに敵愾心のこもったまなざしを向ける。


 リリベルにそこまで疑われるようなことをしてしまっただろうか、と首を傾げるアレスだったが、その疑問はすぐに解消されることになる。


「いい? モニカを都合よく利用しようってんなら、わたしがただじゃおかないわよ! さっきだって、別にあんたが余計なことしなくたって、モニカのことは私がちゃんと守ってあげられたんだからね!」


 どうやら、先ほどのカトリーナとの一件で、自分ではモニカのことを庇い切れず、アレスが事態を収めたことが悔しかったらしい。

 そして、なぜかモニカに関してのことでアレスをライバル視しているように見えた。


「さ、行くわよモニカ。こんな怪しいやつ、近くに置いといちゃだめよ?」

「えっ、ちょ、リリベルちゃん、ちょっと待ってください!」


 リリベルがモニカの手を引いてアレスを置いて行こうとするが、モニカは歩き出さず、抗議の声を上げる。


「アレスさんは、アレスさんは悪い方じゃないんです! リリベルちゃんも少しの間だけでも一緒にいればきっとわかってくれると思います……だから、今回だけでも、アレスさんについて来てもらいたいんですが……ダメでしょうか……?」

「……」


 必死にアレスのことを庇うモニカに、リリベルは少し悔しそうに黙り込んだ。


「……わ、分かったわよっ! モニカがそんなに言うなら、今日だけなら、そいつと一緒にいてやってもいいわよ!」

「……っ!? ありがとうございます!」


 リリベルはまっすぐ見つめてくるモニカから目をそらし、仕方なさそうな態度で了承する。

 そして、嬉しそうに喜ぶモニカを見て複雑そうな表情を浮かべると、アレスを睨みつける。


「私はあんたのこと、認めたわけじゃないんだからね! フン!」


 リリベルはそう言い捨てると、モニカの手を引いてさっさと歩き出した。


 そんなとげとげしいリリベルの態度を見て、アレスはやれやれと言いたい気持ちになりつつも、なんとなく微笑ましく思いながらついて行くのだった。

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