俺、初モンスターと遭遇する。
切り開かれた舗装された富士エベレスト山を登っていると、道の先に何かが見えた。
「何だあいつは?」
父親が警戒したように、目を細め言った。
道の先にいる相手と、今いる場所の距離感がイマイチ掴めないので、相手がどのぐらいの大きさでどこにいるのか、よく分からなかった。
しかし、馬で近づいて行ってみると、その相手は近づけば近づくほど巨大になっていった。
「くそう、モンスターのお出ましかよ」
そのモンスターの大きさは十メートルは下らない、巨人であった。
「嘘っ、あんなモンスターいるのかよ」
俺が言うと、父親はさも当然と言った様子で頷いた。
「あれぐらいのモンスターはこの世界にはよく、出現する。お前も覚えておいた方がいい」
父親が言った直後、兵士の一人が「ここは私のお任せください」と言った。
「カボス、お前の実力を見せて見ろ」
「はい、団長」
カボスと呼ばれた男は、父親の声に答え、一人前に進み出た。
「お父さん、あの人、一人で大丈夫なの? 皆で戦った方がいいんじゃないの?」
「いや、まずは一人で戦い、それを皆で分析する。それが俺達の闘い方なのだ」
「そうなの? もしかしてチームワークが悪かったりするの?」
「いや、そういうわけではない。だが、わしらは皆で力を合わせて闘うということも出来るが、個人でも十分に強い。だから、相手のモンスターが初めて会うモンスターである以上、まずは相手の特性を知らねばならぬ。もしかして、広範囲を攻撃する能力を持っているかもしれんからな。もしそうだったとしたら、下手すればわし達は、初撃で皆死んでしまう可能性だって否定は出来ない。だから、まず相手のことを分析して、相手がどんな能力を持っているのか、どんな攻撃を仕掛けるのか、どのぐらいの速さがあるのか、どのぐらいのパワーがあるのかを見極めなければならない。そしてその上で瞬時に相手モンスターとの戦い方を導き出し、それを実行に移すのだ。それがわしらの闘い方なのだ」
「でも、それでカボスという人が死んだらどうするの?」
「それは仕方がないことなのだ。彼ら兵士とわしは一心同体、ある時は彼が、トカゲのしっぽの役割をする。またある時はわしが、その役割をする。もし、その時わしが死んだとしたら、すぐさま新たに、騎士団団長に変わり、そいつの指示に従うことになるのだ。これがわしら王国の騎士団なのだ。
「くっ、そんな」
「大丈夫、カボスは負けはしない。あいつはわしの右腕だ。素早さだけで言うならば、わしを遥かに凌駕しておる。じゃから、あいつが初めての敵の偵察には一番良いのじゃ」
「そうなんだ。少し安心したよ。カボスさん頑張って!」
「おう!」
カボスさんは、こちらを振り向かずに、俺の声に答えた。
カボスさんは、被っていた兜を脱ぎ捨て天に放り投げた。
「あれが、落ちたと同時に、カボスは動くぞ!」
父親の言葉通り、兜が地面に落ちた直後、カボスさんが動いた、というか消えた。
「流石カボス、王国騎士団随一の速度の持ち主、あいつの足は音速を超える!」
次にカボスさんが俺の目に移った時、カボスさんは相手の巨人の首元にいた。
カボスさんは、何か紐のようなものを取り出し、首に巻きつけた後、その場を離れた。
「ぐ、ぐええぇえええ」
相手モンスターの断末魔のような声が山に木霊した。
「カボスさん、格好いい。必殺仕事人みたいだよ」
俺が言うと、父親が「カボス油断するな!」と言った。
「えっ!?」
俺はどういうことか分からなかった。
しかし、父親は、何やら異変に気づいていたようだ。
「あのモンスター、あれが本来の姿じゃないな」
「本当? お父さん」
「ああ、見てみるがよい」
お父さんに促されて、あの巨人を見てみると、あの巨人がぱっくりと二つに割れて、中から一サイズ小さな巨人が姿を現した。
「マトリョーシカかよ!」
俺は巨人に向かって盛大に突っ込んだ。




