父さんの昔、モンスターと闘った時の話を聞く。
「そう言えば、父さん」
「何だ? ゴリザよ」
「今までどんなモンスターと闘ったことあるの?」
「そうだな。色々なモンスターとわしは闘ったことあるな。一番印象に残っているのは、というか苦戦したのは擬態するモンスターだったな」
「擬態?」
「ああ、あいつはやっかいだった。鳥でありながら、擬態をするから、攻撃を当てるのに時間がかかり、体力を浪費したな。当時よく、倒せたものだと思うぞい。あれは奇跡だった。今闘ってもすんなり勝てる相手ではなかろう」
「そんなに強かったの?」
「うむ。まず時速200キロ以上で飛ぶし、機敏で旋回機能が凄いので、攻撃が当てにくい、そしてただでさえ当てにくいのに、空や大地、木の色と同化するから、肉眼であいつと捉えることはほぼ不可能だ。しかも、あいつはある不思議な音を発して、耳を一時的に麻痺させるから、音で飛んでくる方向を探すのも難しい、唯一は風を切る音で判断するしかないが、あいつはモンスターでありながら、初級の風魔法も操れるので、風で居場所を判断するのも難しい、更にあいつのくちばしには超猛毒があるんだ。ちょっとかすっただけで、クジラをも一瞬で麻痺させるほどの強力な毒があるのだ」
「いや、強すぎるだろ。どうやってそんな相手に勝ったの? お父さん」
「うん。それはさっき言った通り本当に偶然なんだ。わしが全てを諦めて、剣を天空に力強く放り投げたら、ちょうど落ちてきたその剣の軌道にちょうど鳥が飛んできて、ぶっ刺さったっていうわけなんだよ」
「本当に偶然じゃないか!」
「だから言っただろう? 奇跡だったって。たぶん一等の宝くじを当てるよりも難しい確率で相手を倒したかもしれない。だが、だが、運も実力のうち、そのおかげ俺の命は助かり、俺はセレナと出会うことが出来て、お前も生まれてくることが出来たのだ。だから、俺は例え運だったとしても、勝てたこと、モンスターを駆逐出来たことをに何の、後悔もない。運であろうと、わしは生き残ったのだからな」
「そうだよね。運だって大事な要素だよね。この世界で生き残るには。俺もお父さんに似て運が良ければいいなあ」
「それはわしが保証するぞい。おぬしは運が良い。なんたってわしの息子なんじゃからな。そしてお前は勇者なのじゃからな」
「うん。ありがとう。お父さん」
「おう」
「でも、お父さん、そのモンスター鳥との戦いの時は、何人で戦ってそして何人生き残ったの?」
「その時は、モンスター討伐隊が組まれていて、モンスターをこの世から駆逐するべく、国ぐるみでモンスター退治を行っていた。その当時、わしはまだ一兵士だった。モンスターを退治する為に、国から選りすぐりの、エリートが3万人集められた。わしもその一人だった。とはいえ、わしはそのエリートの中でも最下位じゃったがの」
「えっ、選りすぐりのエリートが三万人もいるの? この世界の人口は一体どのぐらいいるの?」
「実の所、全ては解明されておらん。この山と同じく、機械では侵入不可な所がたくさん、数えきれないほどあるのでな。しかし、分かっている、この王国だけで言うならば、360億人以上この王国にはいる」
「ちょ、多いよ。人口過度だよ」
「そんなことはないぞ。ゴリザよ。この世界は広い、広すぎるのだ。仮に10兆人この王国にいたとしても、まだまだ全然余裕のよっちゃんだ。それほどまでにこの星、そしてこの大陸は広いのだ」
「広すぎるよ! 宇宙かよ! じゃあ納得だよ。そんなクソ恐ろしい鳥のモンスターが発生したって。でもそんな星に生まれた魔王ってどんだけ、だよ。どんだけ恐ろしいんだよ」
「畏怖するでない。魔王は人々の恐怖の心を食べ、更に強力になって行くのだからな。それにお前はその魔王に対する、唯一の人物、勇者なのだ。恐れるでない。後数日もすれば、セレナは新たなわしの子供を生むだろう。そうすれば、兄弟が出来る。仲間が増える。仲間と共に、モンスターを、そして魔王をやっつけるのだ。お前なら、わしと、新たな子供と、お前と、そしてここに共にいる兵士達と力を合わせれば、例えどんなに強いモンスター、魔王だって、やっつけることが出来るさ」
「父さん……そうだね。俺、頑張るよ。一緒に力を合わせて、この世界を平和に導いて行こう」
「うむ。頑張ろうぞ。我が息子ゴリザよ」
「あ、そういえばさっきの話の続きを聞いていなかったな。三万人のエリート兵士は結局どのぐらい生き残ったの?」
「わしだけじゃ。わしだけが生き残ったのじゃ。後の兵士達は皆、あの鳥のモンスターの毒牙にかかって、皆、屍となった」
「そんな……でも、でもそのモンスターはもう出現しないんでしょ? やっつけたんだから」
「さっき言った通り、モンスターというのはコバエのようにどこからともなく出現する。実の所モンスターの出現理由、出現箇所はまだまだ詳しくは分かっていない。もしかしたらこの山からかもしれないし、他にも同じような、山や、モンスターの好むエネルギーが発生している場所から出現しているのかもしれない。この世界自体、現時点で人間が入ることが出来ない場所が、まだまだたくさんある。未開の地がまだまだあるのだ。だから、そのどこかからモンスターは出現しているのかもしれない。だが、一歩一歩、進んではいる。この世界の謎は少しずつだが、解き明かされてきている。だから、前に進もう。前に進むことによって、モンスターをこの世から消す為の手段が必ずや見つかるはずなのだ」
「うん。そうだね」
「そう言えば、お前の質問に答えていなかったな。現時点で分かっていることは、モンスターと言うのは一匹でも発生することがあるということだ。その場合はそのモンスターを倒せば、この先永遠に出てこないと思われる。まあ、それはあくまでも推測の域を出ないが。現時点での推測の話しだ。それらのモンスターは、商品であるところの一点物で、二度と同じ種類は出現しない。しかし、そうでないモンスターもいる。そのモンスターは、それこそコバエのように、ゾンビの様に次から次へと倒しても倒しても、出現する。だからお前の質問には、分からないとしか現時点では言えないんだ。だが、あの鳥のモンスターを倒した後、あれから一度もあの鳥モンスターには会ったことがないから、あの鳥は一点物ではないかと、考えられている。そしてそうであって欲しいとわしは願っておる。いくらわしがあの時よりも10倍以上強くなったとしても、あの鳥のモンスターと闘って、勝てるという保証はない。これはわしの今の実力を客観的に見て判断した結論だ。だからもしあの鳥のモンスターと出会ったならば、3万人の兵士の敵などと、思わずに、真っ先に逃げるのだ。生きていれば、生きてさえいれば、方法はいずれ見つかるかもしれないのだからな」
「そうだね。あの鳥をどこかの密室に誘導して、閉じ込めたり出来れば可能性があるかもしれないしね」
「それだ!!」
俺の言葉に父親は握った右手を左手にポンと力強く置いた。
「その手があったか。お手柄だぞ。我が息子よ。その方法なら、その方法なら、確実に毒や、総攻撃でやっつけることが出来るかもしれない。なぜならば、あいつは防御力はあまりないからだ。わしの落ちて来た剣で死ぬぐらいだからな。よーし、この先生の父親を奪還したらすぐさま、国にその作戦を報告するぞ。これで、光明が見えてきた。やはり、道はある、道はもうないと思っていても、どこかに道は探せばあるものだな」
父親は上機嫌で言った。




