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俺、走れるようになった。

「じゃあ、セレナ、本当に行ってくるな」

「ええ、あなた気を付けて。そしてどうかご無事で」

 父親と母親が軽く頬に口づけをした後、俺と父親は先生にも別れを告げて、病院の外に出た。

 うわ。病院の外はこんな風になっていたんだ。まるでこのどこかの要塞とでも言えそうな感じの病院だった。とは言え要塞というのは広さの意味での話であり、敷地内は綺麗に清掃が行き届いていて、スペースも整理されていて、清潔感漂う、そして季節感を感じる、風の吹き抜けるいい、病院だった。

「いい所だね。そしてものすごくこの病院広いね」

 病院の広さはまるでどこかのテーマパークにでもいるかのような広さだった。視界に病院の建物全てが映らない。まだまだ、奥にはたくさんの病棟があるようだった。

「ここはセレブ、特に王国の人、御用達の病院なんだよ」

「へえ、そうなんだ。だからこんなに広いのか。凄いね。金かけているね」

「そうだな」

 ふふっと俺達は笑いあった。

 病院を出て少し歩くと、そこには駐車場と思しきスペースがあり、そのスペースの横には別のスペースがあった。

「あそこの土のあるスペースが馬専用のスペースだ。そしてその隣のコンクリートの所が車を止めるスペースだ」

「えっ!? この世界に車もあるの?」

「ああ、もちろんあるさ」

「じゃあ、生き物の馬よりも、車の方が早いんじゃないの? それに車の方が機械だから扱いやすそうだし」

「そんなことはないよ。むしろ馬の方が早い場合の方が多い、特に今から行く、富士エベレスト山は険しい山道で、舗装された道路などは一切ない。そして、未だその山の全容は解明されていない」

「えっ、解明されていないの?」

「ああ、そうだ」

「でも、どうして」

「それには理由がいくつかある。その一つが強力なモンスターが出現することだ。モンスターが番人役をしていることによって、一般の人や、科学者は富士エベレスト山に立ち入ることがほとんど出来ないでいる。そして二つ目の理由があの山には強力な磁場があり、更に現在の科学では解明できない、不思議な結界とでも呼べるエネルギーが山全体を覆っていて、空からの侵入も不可能だ、ヘリコプターでいけば、その結界と磁場によって墜落してしまう。あの山に向かって爆撃をしかけた軍もいるがその攻撃は全て反射され、自分の元に帰ってきて、攻撃を仕掛けた者はほとんどの者が亡くなった。つまり険しい、凸凹とした山に入るのは、車などの機械ではなく、馬の方が適しているというわけなのだよ」

「へえ。そうなんだ。それにしても結界……か。何だか凄い所だね」

「ああ、そうなんだ。だからお前も心してかかれよ」

 とは言え、心してかかれと言われても俺はまだようのやっと二日前に、この世に生を受けたばかりだし、歩けるようになったばかりなのだ。これで俺が何かの戦力になれるとは到底思えない。いや、そうとも限らない。俺には多少なりとも地球で学んだ雑学、豆知識がある。それがこの世界で役に立たないと誰が言えよう。俺だって役に立つことが出来るかもしれない。そして俺は勇者なんだ。他の人よりも成長が早いと医者も言っていたじゃないか。つまりこの旅で俺は大きく成長することだって不可のじゃないかもしれないのだ。俺の心にやってやるぞ、という決意がふつふつと湧きあがってきた。

 そして、俺は太陽に向かって走り、吠えた。

「やってやるぞぉおおおお、ゴラァアアアアア!!」

 と、そこで気づいた。

「俺、俺走っているよ! 父ちゃん!!」

「すごい、すごいぞ。ゴリザよ! 我が誇りの息子よ!!」

 俺は父ちゃんに駆け寄って行き、父ちゃんと熱い抱擁を交わした。

「っと、こんなことをしている時間はないな。時は刻一刻と過ぎ去っているのだ。一刻の猶予もないのだ。さあ、行くぞゴリザよ」

「うん、父ちゃん!!」

 俺は父親と共に、馬が待機している駐車場へと向かって行った。


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