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42:城塞都市ナイニタル 広場 領主補佐:ダクシャ(1)

「これほどとは」


 ナイニタル領主のヴィシュヴァが興奮に打ち震えている。目前に多大なる戦果が並べられているのだ。乳兄弟であるダクシャも同じ心持ちで立っている訳だが、補佐役としては単に感嘆しているだけではいけない。気持ちを引き締めていた。これから、そうこれからが大仕事なのだ。しかしやはり――


(これほどの大仕事とは)


 ため息をつきたくなる大戦果であった。



☆☆☆☆☆



 ヌワコットからの援軍を得て、ナイニタルはムグール<侵攻軍>を撃退した。それはもう徹底的な撃退であった。湖岸から大鎧での奇襲という離れ業で敵軍を完全に敗走させた。

 雑兵たる歩兵こそ「蹴散らした」ににすぎず、そのほとんどが散り散りに逃げ去っただけではある。しかしそこは、当日夕刻を待たず追撃騎兵隊を編成して、現在落ち武者狩りを決行中である。ナイニタルの専業軍人たる騎兵が2隊、連携を取りながら追走している。よほどの組織的抵抗が無い限り、無事国境外まで追い立てることが出来るだろう。壊走した兵士は武器を放り出していることが多く、水や食料も放棄していた。途中の村落にも警戒を呼びかけながら、場合によっては人手も確保しながらの追撃となれば、手間はかかるが結果は期待できる。いずれそれなりの成果報告が届くことだろう。既に敵兵1000名のうち100名ほどの捕虜がいた。彼らは城壁戦の際での怪我や、資材の荷崩れ等で混乱しているまま置き去りにされた者たちだ。下級兵士や戦奴(アスプリシュヤ)といった者たち。逃亡や騒乱反乱への注意は必要だが、この手の扱いは慣れている、ひとまず城の地下牢に叩き込んでから取調べだ。


 問題は、撃破した敵主力だ。


 大物ぞろいだった。飾っていただけの大将機、大鎧<ラーヴァナ>と、随伴機たる大鎧<ラークシャサ>2機はほとんど無傷での鹵獲となった。多少の土ぼこりを受けてはいるが傷ひとつない。ナイニタルにとって、我が領主にして乳兄弟たるヴィシュヴァ殿にとっては高祖父の代より願っていた機体である。それを目前にしヴィシュヴァは目を潤ませている。


 それ以外に、弩砲等で大破しているとはいえ修復も見込めそうな5機の<ラークシャサ>がある。他にも、脚や腕を切り飛ばされ、中破小破している10機の獣機<ハンダル>に10機の獣機<シュリガーラ>、これは破損の状態が良好ゆえに即時修復が可能だろう。ましてや部品部材が敵の放棄した補給物資と共に回収されているのだ。


 つまり敵の機体を全て――28体全てを都市内に回収することが出来た。ナイニタル建国以来の大成果である。戦が始まる前までは、3機の大鎧を保有し、2機を雇用していたに過ぎない都市国家が、一気に10倍近い戦力を保有したことになる。もちろん、修理の可否に多大な経費と時間を有することではある。それでも腕の良い機体整備職人(パペッター)の一団を雇い入れれば、ナイニタルはこの地区随一の勇を称えることが出来るだろう。


 そしてある意味一番の戦果。大物の捕虜。敵大将の将軍ドヴィジャを生け捕りにしている。ムグール帝国第一王子、その第二妃の兄という立場の王族である。この扱いも大いに考えさせられる。もし身代金による解放となれば、その血筋を鑑みて、金銀財宝が山のように届けられることだろう。鹵獲した資材と共に、このナイニタルを大いに潤してくれるに違いない。


 しかしこの戦果、はたして我がナイニタルのものになるのだろうか? 何しろ今回の戦働き、槍働きの第一人者は援軍を率いた白い服の男、アルマムベトに他ならない。そして騎兵隊長トリグラフ殿か。


 振って沸いたようなこの好機だが、何がどこまでどうなるのか、どうすべきか、非才なるこの身に余る状況であるように思えてならないのだ。苦労性のダクシャは、喜びに打ち震えているヴィシュヴァの分だけ、こっそりと深い深いため息をついた。実務が待っている。


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