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『この街で、俺はもう一度生きる』ーー異議あるか?  作者: satomi


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160.

160.


「カルロ、妖精さん達からのリクエストよ。自分たちサイズのプリンを作ってほしいんだって」

「はぁ?こんどはずいぶんちっさいプリンだなぁ?」

「甘く見ると痛い目見るわよ?」


 今度は最初からカルロ商会の特注ガラス容器を使った。合計50個用意。通常のプリン1個分の分量で全部できそうだ。

 直径が1センチの容器。…小さい。

 こ、これは…思っていたよりもずっと繊細な作業。油断すると容器全部がカラメルソース……。

 油断は禁物。カラメルとそうでない部分の比率なんかも考えて作業を進めなければ……。

 

 蒸し器に入れる時にも慎重にピンセットでの作業となる。手先が器用に産んでくれたことに感謝だな。

 弱火で蒸す。ひたすら待った。

『まだ~?』

『蒸気だよ!虹できるかな?』


 完成品をいざ試食!

『固い……プリン?』

『カラメルが苦いよ~』

「って妖精さん達から苦情が……。蒸し時間も考えないとダメなんだね。プリンは奥が深いね」


 試作中も繊細な作業だというのに妖精が邪魔をする。俺はピンセットとか使って慎重に動いてるのに、器をひっくり返すし、プリンの端を探して邪魔するし。


 結果は

『なんか食べ足りないよ……』

『カラメル少ない……』

「カルロ兄ちゃん、何か妖精さんに不評だよ?」

「なんでだぁぁぁぁぁ!」

「叫ぶんじゃないわよ。妖精さんが嫌がるでしょ?そうねぇ、もっと小さい容器ならどうかな?何個も食べられるけど?」

『『たくさん食べたい!!』』

「だそうよ?特注だからもうちょっと待ってね?直径5ミリの容器を100個くらい用意しましょうか?」

「マジかよ……」

「仕事よ!」

「商会長の仕事って……」


 1週間後に容器が完成し、妖精さん用のプリンの試作が始まった。またしても邪魔してくる。……しかしそんなことで折れる俺じゃない!俺は根性を見せた。

 カラメルソースは焦がさず、中まで火(熱)を通し、かためる。

 この1週間俺はイメージトレーニングを重ねたんだ。絶対に大丈夫。

 

 完成品についての感想は……。

 妖精さん達が大喜び。

『ちっちゃい!かわいい‼』

『プリンの赤ちゃん!』

『レモの匂いするよぉ』

 と点滅をしながら大喜び。


 レモに「よかったね~」と言われ、街の子供達にも「カルロ兄ちゃん、スゴイ!」と言われた。

 俺の凄さが回復?

 セレン大使は「うっ、幸せ過ぎて胃が……」と言う次第。リアムは通常営業というのか「セレン大使の幸福過剰胃痛についてのデータをいただきました。カルロさんの“成功率指数”が上昇しました」と。

「指数つけんなよ!」

「叫ぶなと何度言えば済むの?」

「ごめんなさい」

「全く、やればできるだろうに……」

「俺の商会……プリンまみれ……」

『わ~い、プリンがいっぱい~』

『おかわり~』

「まだまだあるわよ?ゆっくり食べてね?」

『『はーい♪』』



161.


 カルロ商会内にも学校にも“プリン係”が存在する。

 カルロ商会内の展示コーナーでのプリン係のお仕事は以下の通り

 ・ケース磨き

 ・宝石の見守り(妖精さんの暴走防止)

 ・プリンの赤ちゃんの宝石を展示の中央に置く

 ・レモのお願いを守る

 ・翻訳機能が発動したら妖精さんの言葉を聞く

 ・妖精さんが持って帰ろうとしたら止める

 ・カルロの大声を注意する(最重要)


 子供達にこの係は大人気で

「今日はぼくが見守り係!」

「ケース磨いたよ!キラキラピカピカ!」

「妖精さん、持って帰っちゃダメだよ?」

「レモ兄ちゃんが言ってたもん!」

 

 この反応にルチア―ナさんは単純に

「妖精さんは子供が好きだから助かるわ」と言ってるのに、カルロは

「俺の商会の治安をなんで小学生が……」

 と、グチグチ言っている。


 商会でのプリン係は実働部隊という感じだ。


 では学校での“プリン係”はどうかというと……

 主な役割は以下の通り

 ・今日の妖精さんニュースをまとめる

 ・絵画の時間はプリンの赤ちゃんの絵を描く

 ・図工の時間はプリンの模型を作る

 ・学級日誌に「今日のプリンの赤ちゃん宝石」欄を作る

 ・翻訳機能で聞いた妖精さんの言葉を記録

 ・レモ兄ちゃんの話題を共有(重要)


 子供達は学校では

「今日の妖精さんはプリン3個食べたって言ってたよ~!」

「宝石が甘い匂いした!」

「レモ兄ちゃんが真っ赤になってた!」

「ミュートがセレン大使の肩に乗ってた!」


 先生はそれを見て一応「(可愛いんだけど)はいはい、落ち着いてね~」と言う。


 学校でのプリン係は情報部隊。特に研究・記録・広報という感じ。


 そんなプリン係に対して妖精さん達は

『プリン係、すき!』

『今日もよろしくね!』

 と点滅して受け入れて歓迎している。


 これが不満なのはカルロだけ。

「何で学校まで……プリン係?」

「諦めなさい!」

「……はい」



 絵画の時間はプリンの赤ちゃんの宝石と妖精さんを描く人でいっぱい。

「はい。絵画の時間にプリンの赤ちゃん描いていいですか」

 というしつもんに先生が軽い気持ちでOKしたのが運の月。

「宝石の光ってどうやって描くの?」

「レモ兄ちゃんの匂いって何色?」

「私は妖精さんが点滅してるところを描きたい!」

「順番に見に行きますから、静かにしてね~‼」

 そんな中何故か人気なのはカルロが不憫そうにしている姿。


 放課後には絵を持った子供たちがマルコ商会にやってきてマルコに絵を見せようとする。

「見てみて~。今日のプリンの赤ちゃんの絵!」

「妖精さんがね、こうやって光ってたの!」

「……可愛いけど、仕事が……胃も痛い……」

「皆さん、順番に見せて下さいね。説明してくれると嬉しいな」

 カイ、お前はなんて優秀なんだ!



 子供達はプリン係になると、自分で描いた絵を展示コーナーに貼り始めた。

「なんで俺の商会が美術館……?」

「街の文化よ、諦めなさい!」

『わ~い』

『かわいい~!』

『これわたし~!』

「妖精さん達が嬉しそうじゃない!」

「……はい」



162.


「カルロ!明後日は第1回プリン大食い大会よ!さぁ、プリンを大量に仕込むのよ!」

「それって、どういう?」

「はぁ、わかってないわねぇ。妖精さん部門とヒト部門に分かれての競技よ。公正を期すためにも妖精用とヒト用の両方のプリンをあなたが作るのよ!」

「はぁ?」

「仕事よ?商会長として光栄よねぇ。だってこの大会の主催者ってカルロ商会だもの」


 そういうわけで、カルロは妖精用にプリンを500個。ヒト用に1000個用意した。疲れ果てた。

 当日何故だかカルロもエントリーしていた。

「カルロ商会主催だもの。商会長がエントリーしなきゃねぇ?」というルチア―ナさんのお言葉。


 カルロ的にヒト部門にはレモもエントリーしてるし、優勝はレモだろうと踏んでいた。

「優勝しなさいよ?」というルチア―ナさんのお言葉。

「はい」としか答えられないカルロ。


 そんな中で大会はスタートした。まずは妖精さん部門。

 ほぼ光っていることしかないけど……。

 ・常に『プリンすき!』って言ってる子

 ・『端どこ~?』と探し続ける子

 ・ミュートのように無表情で淡々と食べる子

 ・レモの匂いに弱い子

 ・カルロの声に驚いて止まってしまう子(減点)

 と、けっこう個性的。


 勝敗の基準は……

 食べた数は勿論、点滅の安定度、レモの魔力にどれだけ反応したか、カルロの声でどれだけ中断したか(重要)によって決められる。


 妖精さん部門の優勝はミュート‼

 ミュートは無表情で淡々と食べ続け、点滅も乱れずセレン大使の肩の上で食べ続けた。他の妖精さんが応援しても、カルロの大声でも動じなかった。


 妖精さん曰く、『ミュート、はやい……』『こわい……(尊敬)』

 と、妖精さん部門はミュートの圧勝。



 ヒト部門では、誰もがレモ優勝だと思っていた。

 しかし、蓋を開けてみるとレモはプリン一つ一つを味わって食べる派だった……。


「プリン美味しい~♪」

「レモさん、大食い大会ですよ?誰が一番たくさん食べるかです!」

「え~プリンを雑に食べるなんてプリンに失礼だよぉ~」

 そういうわけで、大食いには向いていないことが始まってからわかった事実。


 ルチア―ナさんに「仕事」と言われやる気が出たカルロ。

 自分が作ったプリンを自分が食べるという複雑な気持ちになるが、子供達に応援されると頑張ろうと思う。

「なんで俺が……違う、俺は勝つぞ!」


 マルコもエントリーしていた。

 しかし、胃痛持ちなので途中でリタイアの可能性が大きい


 小学生も普段なら子供部門と大人部門に分けられるのに、今回は違うから謎のやる気発生。

 給食の余ったプリンを食べるために培った(?)スピードは速い。

 ただし、途中で笑ってしまう。


 セレン大使もエントリーしていた。

 出たくなかったが、妖精さんに「でて~」と言われると断れなかった。プリン一口で幸福過剰胃痛に。ミュートは肩に乗って応援。


 結果ヒト部門の優勝はカルロ。

 優勝の副賞はプリン1年分。

「はぁ?俺は1年毎日のようにプリンを作るのか?」

「そして、自分で食べるのよ!」

「カルロさん、余ったらプリンください~」

「余るだろうからプリンやるよ!」

「わ~い」

「カルロ兄ちゃん、すご~い!」

『ミュート、さいきょう~!』

「……胃が……」

「マルコさんの胃が混沌指数に耐え切れなくなってるんですね」


 街の人としては……

「来年もやるのかい?」

「ぜひ、これをこの街の文化として根付かせていきたいです」

「そうか!文化か‼」

「はい‼」

「……俺の商会……プリン文化……」



163.


 翌日には、祭りの後片付けという大仕事が残っていた。

 カルロ商会主催なのだから、プリンの容器は当然カルロ商会自慢の高級ガラス。キラキラ具合に妖精さん達が大喜び。

「洗い物が終わったらもっとキラキラだよ~」

『レモが洗った容器はキラキラキラキラ』

「俺も洗っているんだが……」

「カルロさんの不憫指数が上昇中です」

「リアムはデータ取ってないで働けよ」

「働いてますよ?残ったプリンを妖精さん達にプレゼント。プリンだって、痛んでしまいますからね」

『わ~い』

『リアム、いい人』

『プリン~』

「こらこら、プリンくれるからって変な人について行ったりしたら、ダメですよ?レモさん泣いちゃう」

『レモが泣くのヤダ~』

『変な人にはついてかない!』

 カルロは考える。プリンあげたら妖精さん懐く?

「ほら、余ったプリンだ。俺が作ったんだ」

『カルロが作ったの?』

『何で美味しいの?』

「カルロさんの不憫指数爆上がりです」

「俺にもプリン~」

「レモは洗い物終わったらな!」

 レモは物凄く頑張った。レモのために妖精さん達が洗い物が早くできるようにちょっとした魔法もかけてみた。

「はぁ、洗い終わったぁ。プリン~!」

「おまっ、早くね?マジで終わってるし……。ほら、プリン。余ってるの結構あるんだよな~」

「プリン天国~♪」

「レモさんの幸福指数上昇中です。これがセレン大使だったら大変なことになっていますね」

「そこまでかっ!」

「皆さん、無駄口を叩く暇があったら片付けましょう。ああ、効率が悪い」

「カイもぶれないねぇ」


「ヒト用のプリンも結構余ってるんだよなぁ。そういえば二コラいなかったんじゃないか?」

『二コラいなくてつまんなかったぁ』

「二コラ君は風邪っぽいから家に置いてきたってルチア―ナさんが言ってましたよ。今日の最初に会った時に」

「そんじゃあ、お見舞いに二コラにもプリンを……。プリンは甘いし。多少喉が痛くてもつるっといけるだろう」

「それじゃあ、二コラ君のところまで届けますね」

「任せたぞ(これでなんちゃら指数とか言われない)」

『『僕らも行くもん!』』

 リアムと妖精さん達が二コラのお見舞いに行くことになった。

「妖精さん達風邪、うつらないといいね~。気を付けてね~」



 妖精さん達はしっかりと風邪がうつったらしい。

『頭痛いよぉ』

『鼻水~』

『喉痛い~』

「……妖精さんの内科なんてないんだろ?」

「そうですね。そういうわけで、つるっといけるプリンを作ってあげてください!」

「なんで俺が……」

「仕事よ!」


 そう言われると俺は動き出す。20個くらい作ればいいのか?うーん、スポドリみたいのあればいいんだけど。砂糖水か?塩もちょっと足してそれっぽくしたやつを、二コラに試飲してもらおう。

「二コラ、これ風邪ひいた妖精さん達に飲んでもらおうと思ったんだけど、どうだ?」

「うーん、ちょっとしょっぱい。もっと甘く~」

 甘くね。砂糖を多めにしてみた。

「どうだ?」

「甘すぎて気持ち悪いよ~」

 どうやら、砂糖と塩のバランスが重要なようだ。



164.


 試作に試作を重ねて二コラにOKが出されるスポドリが完成した。

『うーん、暑いよぉ』

「カルロ兄ちゃんが作ってくれたよ~。きっとスッキリするから皆も飲んでね!」

『二コラが言うなら飲む~』


『あー、なんかスッキリー』

『喉もいい感じになったー』

「まだ調子に乗ったらダメだよ!これ飲んで、ゆっくり休まないとダメだからね!」

『『は~い』』



 数日後完全復活を妖精さん達は成し遂げた。

『元気でもプリン~』

『プリンはいつでも~』

「はいはい、俺は毎日のようにプリン作ってる。もうレシピも頭の中。手順までしっかりとな」

『カルロがちょっとスゴイ~』

『カルロはプリン職人~?』

「宝石職人だ!」

『キラキラ職人?』

 妖精さん達が期待に満ちた目でカルロを見る。

「まぁ、最近じゃ『宝石加工と言えばレモ』って感じだけどな」

『レモすご~い』

『カルロもスゴイの?』

「多分な?」

 プリンの赤ちゃんの宝石が近くにあるのでコミュニケーションができでいる。

『カルロのキラキラ見てみたい』

「うーん、俺のうちにあったかなぁ?あとは売った。商会だからな。」

『『キラキラ収集庫』あったりして~?』

「俺の宝石捨てるのかよ?」

 捨てられるのか……なんか悲しいな。

『カルロが落ち込んでる~』

『プリン食べる?』

「俺が作ったやつ……」

『カルロが作ったプリン、美味しいよ』

『二コラも言ってた!』

「お、おう」


 カルロが作った宝石は『キラキラ収集庫』にあって、現在はきちんと展示コーナーにあることをカルロはわかっていない。ちゃんと見てないから……。



『カルロのキラキラ集めた』

『頑張ったよ~!』

 カルロが展示コーナーを見ると、カルロの過去の作品が棚に並んでいた。

「俺が作った宝石……。複雑だな。持ち主は捨てたんだよな……」

『違うよ~、勝手に持ってきたらルチア―ナとレオナに怒られた』

『ルチア―ナとレオナが持ち主の人に許可取ってるんだよ~』

 ルチア―ナとレオナはスゲーな。いったい何人から許可もらったんだ?かなりの数が集まってるけど……。

『カルロ、キラキラ職人でプリン職人~!』

 プリン職人じゃあない。流れだ。俺じゃないと作れないらしい。ヒトサイズのは作れるだろうけど、妖精さんサイズのは俺じゃないと無理らしい。


『カルロ、泣いてる~?』

「違う、目から鼻水が出てるんだ!」

『カルロ、面白―い!目から鼻水でる~!』

「カルロさん、良かったですね~。キラキラ可愛いから妖精さんが飾ってるんだよ~」

「カルロ兄ちゃんの宝石すごいねぇ!」

「カルロさんの自尊心指数が上昇しています」

「リアム…うるせーよ!」

「目から鼻水出す人は黙ってなさい?私とレオナちゃんの苦労の結晶なんだから!」

「……はい。なんだかお手間をかけてしまってようです」

「わかればよろしい」



165.


 ……草木も眠る丑三つ時……ではない!ただ単に二コラが学校に行って遊び相手がいない時に、妖精さん達は街中にいる大好きな赤ちゃん巡りツアーに行く。

『ここの子前より大きくなった?』

『成長した~!』

『わ~い!』

「あー、だー」

『『『『‼‼‼‼』』』』

『なんか言ってる?』

『わかんないよー』

「あらあら、妖精さんが来てるの?良かったわね、嬉しいんでしょ?」

「あー」

『嬉しいって』

『私も嬉しい。かわいい!』

「ヨダレいっぱい元気ねぇ?」

『ヨダレいっぱいだと元気なの?』

『わかんな~い』

『難しいことはリアムとかカイなら知ってるかも~』

『そうだね~』


 こうして次のところへと行った。

「あら、ハイハイしてるの?頑張るのよ!」

『僕らも一緒にする~!』

 一緒にハイハイをしてみた。面白い。


『あ、この子は産まれて少ししか経ってないの~?』

『眠ってる~』

「赤ちゃんは寝るのが仕事みたいなもんだもの」

『『『『‼‼‼‼』』』』

「そうですよね~」

『あ、この子も寝てる~』

『仕事なんだって~』

『お仕事中なんだ~』


『この子起きてるよ!』

『なんでもにぎってる~』

『楽しそうだよ!』

『あとでやってみようよ!』


『この子、見えてるんだよね?ぼくのこと。じーっと見られて照れちゃうよ』

『そういう遊びなの?楽しそうなの~』

『あとでやるの~』



 赤ちゃん巡りツアーはこんな感じ。さあ、静かになった作業場では……仕事です。

 

「レモさん、この宝石はどうでしょう?」

「んーと、この濁りを活かしていったらいい感じになりそうだよ~」

「その方向でカッティングしていきますね」

 カイの研ぎ澄まされた工具で宝石を研磨していく。

「レモ…お前さぁ、本気で図面みたいなの描いたことないのかよ?」

「うーん、昔は描かされたかもしれないけど、最近はないなぁ」

「お前が本気で図面描いたらどうなるんだ?」

「カッティング教科書ですかねぇ?」

「カイに聞いてねーよ、でもそうなるだろうな。若しくは巡礼者増加か?T国に怒られる」

「描かなくていい?まるっきり同じ石はないし。カイに伝わるから大丈夫じゃないですか~?」

「まあなぁ」


 静かな時間は終えた。二コラの帰還(?)。

「ただいまぁ~。プリン食べよ~!カイ兄ちゃん切って~!」

「まず、手を洗って、うがいです。それからです」

『わ~い!二コラ~!』

「妖精さん達にもただいまぁ」

「そいつらは、今まで二コラがいない時間は街中の赤ちゃん巡りツアーだ!」

『大きくなってた』

「成長してたんですね」

『聞いてー。カルロの声真似で赤ちゃんの声真似ー!』

『あー、だー』

「俺はそんなんじゃねぇ!」

『カルロ、大声~!』

『面白~い!』

『ヨダレいっぱいは元気なの?』

「カイ兄ちゃん、妖精さん達が「ヨダレいっぱいは元気なの?」ってきいてるよ?」

「赤ちゃんに限るってやつだなぁ。ヨダレがバイキンが体の中に入らないようにしてるんだよ」

『カイ、頭いい!』

「ん?なんだ?俺をそんなに見ても面白くないぞ?」

『じーっと見る遊び~』

「それで、なんだ?レモと俺の顔を触りまくってるのは?」

『触るあそび~!』

「で、なんで俺の足元を高速でハイハイしてるんだ?赤ちゃんはもっとゆっくりだろう?」

『ハイハイ遊び~‼』

「レモさんの肩では妖精さんが寝てますね」

『ねんねしてるの!』

「カイの指は妖精さん達に大人気だね~」

『にぎにぎ遊びだよ~!』

「この状態じゃ仕事ができませんね」

 と、カイが工具を置くと

『カイの工具キラキラ~!』

「これは仕事道具だから展示コーナーに持ってたらダメ!」


「あれ?カルロ兄ちゃんどうしたの?」

「いや、目から鼻水が……クソっ止まらねぇ!」

『カルロ、面白~い!』

『目から鼻水~!』

『赤ちゃんと同じ~!』


「プリンはカイが切る必要ないくらいある。一人1個は食べれる!」

『『『『わ~い!』』』』

「カルロさんの不憫指数の低下」

「リアムはこんな時にデータ取るなよ!」


 こうして作業場の静かな時間は混沌の時間に変わっていった。



166.


『カルロ、赤ちゃん~!』

『目から鼻水~!』

「ちょっと、俺はまだ仕事がッ‼」

 妖精さん達はカルロをカルロの部屋のソファに寝かせようとする。

『赤ちゃん、寝るの仕事~‼』

「カルロさん、こっちは二コラもいるから休んでください(前はよく寝てたし)」

「カルロ!諦めなさい。文化よ」

 どこからか現れたルチア―ナさんに言われた。

「はい…。俺の商会が……」

「カルロさんの威厳指数が低下しています」

「言われなくてもわかる‼指数化するな~!」

『カルロ、大声~!』

『赤ちゃん~!』

『かわいい~!』

「良かったわね威厳はなくなりつつあるけど、妖精さんには好かれるようになって」

「畜生!目から鼻水が止まらねぇ!」

『わ~い!赤ちゃんごっこ~!』

『カルロもねんね~』

「おとなしく寝なさい。仕事よ!」

「……はい」

 カルロさんはソファで仮眠をとることにした。以来というもの、妖精さん達の前で「仕事をしなきゃ」などというと、寝かされるようになった。


「カルロさんが作ったプリンは美味しい~」

「やっぱそう思うのは俺だけじゃなかったんだぁ~」

「これにはカルロさんの魔力が混ざっています」

「「へぇ~」」

「カルロさんの魔力は美味しいの?」

「私にはわかりかねます。あ、マルコ商会の方での仕事となりましたので……」

「「いってらっしゃ~い」」

「カイは働き者だよねぇ~」



 マルコ商会の方はマルコ商会で、街中の子供達が今日のプリンの赤ちゃんの宝石の報告会を開いていた。俺としては、学校が終わったら真っ直ぐに家に帰りましょうね。なんだけど。いや、街でチンピラになりかけてた俺に言えた義理じゃないけど。


「はい、今日も甘い匂いがしました。給食を食べる前だったのですごくお腹がすきました!」

 学校は?公認?

「展示コーナーのキラキラは整頓しました。毎日ぐちゃぐちゃなるのは、妖精さん達が見てるのかなぁ?」

「プリンの赤ちゃんの宝石大好きだから……」

「好き好き×2だもんね」

 プリンと赤ちゃん?

「レモ兄ちゃんが近づくと甘い匂いが強くなるように感じました」

 これを日誌に書いてるの?

 なんかマメだなぁ。



 なんかざわついている。……もしや‼

「レモ様はこちらにはおられないのか?」

「カイ~、助けて~!」

「マルコ商会長!」

 商会長が困ってるんだけど?レモの教本は宗教本としてT国でベストセラー。結果、巡礼者が後を絶たない。

 ああ、まさか!あの光の塊は……‼

「おお、なんて神々しい。レモ様の使い?」

「オッサンたち誰だか知らないけど、この街の妖精さん達だよ!どうしたんだろう?」


 まさか、さっきうっかりマルコ商会で『仕事』してくるって言ったから?

『カイ~!』

『お仕事、ねんね~』

 俺の仕事は寝ることじゃない!

「カイ~、とにかく助けて~!」

『カイはねんね忙しいの!』

「……え?……ねんね?」

「カイ~、助けてよぉぉぉぉぉぉ!」

「はい、えーとまず、レモさんはココにはいません。お引き取り下さい」

「それじゃあ、どこにいるんだよ?」

 セレン大使……よくこいつらのビザ申請通したなぁ。


「ただいまぁ~」

 レモさん、こんなところに帰って来られても……混乱が加速するだけです。

「なんて神々しいんだ!」

「え?光ってるの?ちゃんと風呂に入ってるのになぁ」

 光ってるんですよ、彼らの目には。テカってるんじゃないですよ。

「レモ兄ちゃん!今ねぇ、プリンの赤ちゃんの宝石の報告会してたの!」

「なにそれ~?」

「みんなで警備してるから、情報共有っていうの?なんかそんな感じ~」

「頑張ってるんだね~」

「うん‼」

「……プリンの赤ちゃんの宝石……聖遺物?」

「違います!」

『プリン~!』

『赤ちゃ~ん!』

『ねんねしてるの?』

『あ、カイのキラキラ~』

 これは迂闊だった……。見つかった……。

「俺の大事な道具だから展示コーナーに持ってたらダメだ」

「キラキラ……聖遺物?」

「違います!」

 説明が面倒そうだ。


「レモが……。巡礼者が……。子供達が……。妖精さん達が……。胃が……。カイ…はどこ?」

「マルコ商会長、落ち着いてください。とりあえず、深呼吸を。胃薬を用意します」



167.


 今日は街のお祭り俺もっていうか、みんな頑張ろう!っていうのに、レモ……眠そう。

「え~?朝早いよ~」

『レモ寝るの~?』

『仕事~!ねんね~!』

「ねんね~」

「レモさん、起きて下さい。今日あなたがすべきことは宝石加工の実演です!」

『キラキラ~?』

「ジュースとフルーツソースも売るからなー!」

「「うっす!」」

 男くさい……。



 カルロ商会では

「いーい?祭りでは場所取りが重要よ?うちがこのお祭りで売るのはプリンとスパイス。ハーブスパイスクッキーも売りたかったけど、実際に売って回ってるのがマルコ商会の人間だからねぇ。そういう理由で向こうも色々売れないはずよ。ゼリーは無理ね」



 レオナ商会では

「うちが売るのは、工芸品とか雑貨よ!輸入品だから丁重に扱うのよ!」

「「はいっ」」


 その他にも、パン屋・チーズ屋・ハーブ屋・古道具屋・小さな工房など出店していた。



 お祭りは広場で行われ、3商会は噴水のすぐ近く、その他は噴水からちょっと離れた場所に出店することとなった。

「パン屋としては噴水のすぐ傍よりもこっちの方が有難い。パン、売れるといいなぁ」

「うちもだな。湿度管理が難しいんだよ、チーズってやつは。昼までには売り切りたいんだよ」



 妖精さん達は噴水の水に大はしゃぎ。

『お水~!』

『冷たい~!』

『吹き出てくる~!』

『面白~い!』

『展示しちゃえ!わ~い!』

 謎の展示コーナーが噴水の縁に完成。

 子供達はお祭りを楽しんでいたけど、噴水の周りでは妖精さん達の観察会。

「今日の祭りの匂いを記録しなくちゃ!」

「レモ兄ちゃんの周りが光ってたよ!」

 プリン係?


 巡礼者は噴水を見て、

「レモ様の加護を……」

「この水は……聖なる……?」

 俺は止めた。俺は主催者じゃないのに、何でこんなに疲れてるんだろう?


 カルロ商会では、カルロが寝かされていた。

『カルロ、仕事~!』

『ねんね~!』

 誰も止めない。噴水の前で寝かされているので、水がかかっている……いいのかな?


 ちょっと離れている間に俺のブースではカイの工具が……。

『カイのキラキラ~』

『展示~!』

 と、噴水の縁に並べられてしまった。

「ああ、研ぎ直しですね。せっかく研いだのに……」

 流石にカイも凹んでいる。奪われてしまったのがいけなかった。



 隣のブースから声が聞こえる

「ちょっとは起きなさいよ!」

『カルロ、仕事中~』

「はぁ」

『プリンの赤ちゃんの宝石置くの~!』

「わかったわよ~」

 ルチアーナさんも妖精さんには敵わないんだなぁ。


 ここだって、レモ目当ての巡礼者が列を成してるけど……。

「レモ様……神々しい」

「ええ?ただ、加工してるだけだよ?」

「ご謙遜をするなんて。謙虚な……」

 カイは工具を妖精さんに奪われちゃって凹んでるし…。


「今日も街は平和ですねぇ」

 セレン大使……。

 俺の胃痛は酷くなってきています。

 セレン大使の肩にはすかさずミュートが乗る。

「ああ、幸福過剰胃痛が……」

『二人は胃が痛い仲間なの~?』

 仲間っていうのか?分類は違うけど?



168.


 ああ、祭りの後の虚しさっていうか。片付けが進まねー‼


 噴水の前にカルロが転がっていた。もうビチョビチョ。気が付こうよ?熟睡?

「カルロ!いい加減に起きて片づけを手伝いなさいよ!」

 狸寝入りというセンも出てきた。片付けってなんでこんなになんかイヤーな感じするんだ?


 うちの商会は……

 うがーっ、妖精さん達と巡礼者がごった返し?

 巡礼者さんもレモを崇めるなら、片づけを手伝ってくれよ!

「レモ様が神々しくも片づけをしてらっしゃる」

 そんなこといいから、手伝えよ!

『レモ、ねんね~?』

「これ終わって、家帰って夕飯食べて風呂入ってからかな?」

『わかった~!』

 レモの言う事は聞くんだよなぁ。会話に“仕事”というワードを入れないように気を使うけど。妖精さん達これからどこ行くんだろう?

 俺は追ってみた。

 

 レオナ商会だった。

『レオナはねんね?』

「私はしないわよ。ほら、大人だもの」

『レオナ、大人~』

「売れ残ったものは商会に持ち帰り帳簿にしっかりと書き残すこと!」

「「「はい!」」」

 爽やかだ。いいなぁ。俺のとこは男くさいからなぁ。


 小商会は早々に帰っているところもあるし、小さいからこそ小回りが利いて良いようだ。

「はぁ、パンが売れ残った……」

「あの、うちの売れ残ったフルーツソースは使えませんか?明日はそのパン食べれないかな?食べれないならうちが買い取ります。うちの職員男ばっかりでやたらと食べるんですよー」

「それは助かります。お願いします!」

 交渉成立。職員は報酬なしでの参加だったが、パンという報酬ができた。余ったフルーツソースをかければ美味!

 俺はこの吉報をもって俺のブースへと戻った。

「マジっすか?」

「コラ!言葉遣い!」

 アレクの教育はまだ続いていたのか……。

「本当ですか?この祭りに参加することは楽しみにしていたんですけど、無報酬……。と思っていたので、非常に嬉しいです!」

 そいつは良かった。

「えーと、持ちきれないから各自パン屋さんに行って受け取って来い。早いもの順だ!」

 言ってすぐ若いな……走っていった。

「レモはプリンがいいんだろ?カルロ商会にあるかなぁ?」

『プリン~!』

「妖精プリンはないかもしれない」

 妖精さん達が落ち込んでしまった。

「カルロ商会に言ってきていい~?」

「まぁ、仕方ないな。妖精さん達もあそこにプリンの赤ちゃんの宝石あるんだろ?」

『『『『『プリンの赤ちゃん~‼』』』』

 元気になった。


「俺はカルロ商会で工具の研ぎ直しです……」

 ああっ、カイはすごい凹んでる。

『カイのキラキラ~?』

『展示してるよ~?』

「だからダメになったんだよ‼」

『カイが珍しくプンプン~!』

『珍しい~』

『大声、カルロと一緒~』

『カイ、赤ちゃん?』

「違うから、あのねカイは怒ってるんだよ?勝手に工具持っていったでしょ?カイはいいよって言った?レオナは勝手に持っていったらダメって言ったんだよね?」

『言った~』

「うん。それじゃあ皆でカイにゴメンなさいしないとダメだよ!もうしちゃダメだよ!プリン分けてくれなくなっちゃうかもしれないよ?」

『ヤダ~』

『『『『ゴメンなさい‼』』』』

『プリン分けてくれる?』

「商会長、変なわからせ方しないでください」

「いやぁ、ありうるからさぁ」



169.


 Sanctuary Silentに行った。

 ここのところの喧騒でなんだか疲れ果てていた。静かな空間へと吸い寄せられるかのように俺はため息交じりで店の戸を開けた。


「なんだよ?お前まで来やがって。クソっ、俺とレオナの場だったのに」

 マスター的には自分もいるという感じだろうな。

「マスターもいるわよ?」

 俺は膝から崩れ落ちそうになった。ここでも結構うるさい。

「ところで…。カルロは着替えないのか?妖精さん達の仕業で服がビチョビチョだろう?」

「放っておけば乾くだろうと思って」

「乾かねーよ」

「乾かないわよ」

「乾きませんよ」

「ああ、カルロは赤ちゃんだから一人で着替えられなかったのね?」

「ほう、赤ちゃん?」

「妖精さん達に赤ちゃん認定されているのよ。ほら、すぐ大声だし、目から鼻水出すし?」

「なかなかに面白い特技ですね」

 マスター、なかなか辛辣ですね。


「ここのところずっと騒がしかったので喧騒を逃れてここへ吸い込まれるように来ました」

「あー、マルコ商会はレモ君いるから、妖精さんいっぱいでしょう?」

「はい。あと、学校とかカルロ商会にある展示コーナーに“プリン係”なるものがあり、なぜかその報告を毎日私のところへ。子供達が報告会。商会内で。放課後は『ここは学童保育所だろうか?』とか思うくらい小学生の数が増えます」

「「あ~」」

「あと、レモを目指しての巡礼者が毎日来ます。いないって言ってるのに…・・・。たまにひょっこり帰ってくるからなぁ」

「「あ~」」

「レモが来ると妖精さん達も来て商会内がもうぐっちゃぐちゃ。ん?カルロ、寝たのか?」

「赤ちゃんだからでしょ?」

「そうだな。そんな混沌とした世界にいたら俺の胃痛も慢性だよ。そういうわけで、特製胃痛にいいハーブティーを頼みます‼」

「切実ですね」

「そうなんだよ。逃げらんないのが商会長だよ。レオナはよく胃痛にならないな」

「へ?私の周りはそんなに混沌としてないし。全く平気よ?」

「いいよなぁ、そんな生活。商会長=胃痛持ちだと思った」

「あなた方が特殊なんじゃない?特にマルコ君の方は特殊よ。事情が」

 俺はマスターが淹れてくれたハーブティーをチビチビ飲んでいた。


「んあっ?俺は寝てたのか?」

「赤ちゃんだからね~」

「赤ちゃんじゃねぇぇぇぇぇ!」

「そうやって叫ぶところが妖精さんに赤ちゃん認定されるところなんでしょうね」

「ふんっ、俺はアマーロ・サワー!を頼む」

「ダメよ、赤ちゃんが。マスター、カルロにはホットミルクを」

「わかりました」

 俺はハーブティー。カルロはホットミルク。レオナだけアルコール飲むのかな?いいなぁ、胃が痛くなければ……‼

「う~ん、どうしよっかな~。よしっ、マスター。アマレットをロックで頼みます」

「わかりました」


 この静かな空間でレオナのアマレットの氷がカランといい音を立てる。彼女は大人だと主張しているよう。

「……俺はホットミルク」

「濡れた体を温めて下さい」

「マスターは優しいなぁ」

 アルコール飲めば体が温まるんだけど、頭から抜けてるっぽい。……赤ちゃんだから?




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