150.
150.
夕食はBBQにしようという事で、車から忘れられていたカルロが主となり炭焼きパーティーとなった。が、大声を出すカルロよりも“夕日の端”に興味深々の妖精さん達は、砂浜を大暴走。
はた目には光の玉が横切る怪奇現象にしか見えないものも、ここに来た人たちにとっては“妖精さんの大暴走”。
しかも、「わーい!」と二コラがついて行った。
これを追うルチア―ナさん・レオナさん。
カルロは『自分は何のために焼いているのだろう?』と思いながらも、男性陣に肉などを振舞う。
「いやぁ、平和ですねぇ」とセレン大使は言うが、カルロにはわからない。そんなセレン大使の肩にはミュートが。ミュートは夕日の端よりセレン大使の肩を選んだ。
セレン大使はまたも幸福過剰胃痛を発症。リアムはデータを取った。
「プリンて焼いたら美味しくなったりする~?」
「わかんねー」
「焼きプリンてあるけど、あれってプリンにバーナーの火を浴びせるんですよね?」
「そうだな。BBQでプリンを焼きました。ってのは聞いた事ない」
「それは効率悪くないですか?最初から焼けばいいじゃないですか!」
「それはもはやプリンという食べ物じゃなくなってるだろ?」
プリンを焼くことについて話している男性陣とは別に女性陣の方は結構大変だった。
「この子たち、速くない?」
「二コラも妖精さんにスピードアップさせられたのかしら?普段よりもずっと速かったわよ。砂浜なんて走りにくいはずなのに!」
「それで、なんで寝落ち?」
「遊び疲れた子供の最後よ。二コラは私が背負うとして、妖精さんは3体ずつ手に乗せられないかしら?あ、私の片手は二コラでふさがってるのよ」
「あらあら、この持ち方で大丈夫なのかしら?私には光ってるとしか見えないから……」
「二コラが起きてればもっとわかりやすかったんだけど、当の本人も寝ちゃってるし」
「仕方ないですね。運びましょうよ」
そうして女性陣が男性陣に合流した時にはすっかり寝てしまった二コラ君と妖精さん達がいた。
「この子たちは車に乗せましょうか?」
「うーん、目に見えるところにいた方が安全ですね。今は運転手までこちらにいますから」
カルロさんが焼いてます。
とりあえず、寝てしまった二コラ君たちは安心できるところにおいて、夕食をいただいた。
「あ、あとでつまめるものも焼いて置いてちょうだい。あとで絶対二コラがお腹空いたとか言いだすから」
カルロさんは完全にルチア―ナさんのパシリですね。
151.
帰りの車の席順も行きと同じだった。ただ…二コラはルチア―ナさんに抱っこされた状態で、妖精さん達が真ん中の席にいる。後部座席には、レモ・カイ・リアムそれに国宝級の宝石×2。
助手席にはセレン大使。レオナは…真ん中の席なんだよぉぉぉぉ。
おっと、心の中とはいえ叫ぶのはよろしくないか……。
俺は運転している。運転手を買って出たのは俺だからな。でもなぁ。俺だって寝言大会に参加したかったよぉぉぉぉ!
「へぇ、カルロさんの孤独指数を記録しますか…爆上がりですね……」
寝言か?
「……カルロ、煩いわよ?」
俺は夢の中ですらルチア―ナに怒られるのか?
「夕焼け……プリンを焼かないでよぉ~!」
……レモにも怒られた?
「……えへへ、夕日のプリン~。大きくて幸せ~」
俺は不幸だよ!
「カルロさんの不幸指数は安定しているのでデータから除外ですね……」
寝言なんだよな?
「二コラ君、脚速いわよ~」
悪夢というんだろうか?さっきの追いかけか?妖精さんが二コラに何らかの力を与えてたんじゃないか?
「効率化のためにプリンを減らします?」
どんな夢だ?
「わ~ん、カイが酷いことをいうよぉ~」
夢がリンクしたのか?
「……平和ですねぇ」
セレン大使にとってはこんなんでも平和に見えるんだなぁ?
妖精さん達も点滅して楽しそうだ。
「わーい!ぼくも虹の滑り台だー!」
妖精さんは当たり前のように滑ってるけど、二コラは夢の中でしか滑れないもんな。満喫すればいい。
「二コラの幸せ指数と妖精さんの幸せ指数の相関性も気になりますね……」
ね、寝言なんだよな?
「おっきいプリンはカイが切れるかなぁ~?」
カイは何でも切るぞ?
「プリンの効率化……」
なんだそれ?
「夕日を切っちゃうのは嫌だなぁ~」
ああ、それはみんな嫌だろうな。
「まだ着かないの?運転下手なんじゃないの?」
ルチア―ナのこれは寝言だろうか?心臓に悪い。
「俺は安全運転を心がけてるんだよ!皆寝てるから、首がガックンガックンするだろう?」
「二コラ、それ以上いくと溺れるわよー」
弁明したのに寝言か?寝言で苦情?
「いやぁ、みなさんの寝言大会面白いですね!データがいっぱい取れましたよ!」
「リアム……お前、最初から起きてたのか?」
「はい、カルロさんの孤独指数・不幸指数なんかも興味あったんですけど、ほぼ定数なんで興味が薄れました!」
「なんだよそれぇぇぇ!」
「煩いわよ!起きたじゃない!着いたの?」
「まもなく到着です」
「リアム君は優秀ね。さ、運転手。うちの子眠ってるみたいだし、うちのそばに送ってくれるかしら?」
「わかりました…」
このように皆で夕日を見ようというイベントは終わったのです。
152.
「レモ……俺、なんか帰りの車でお前を傷つけるような夢を見させちまってみたいで……。お詫びに、バケツプリン作ってきた。すまない!」
「バケツプリン?プリンがバケツなの?」
「レモさん、落ち着いてください。バケツで作ったプリンですよ」
「うわーい!おっきいプリン~♪」
「えーと?14等分?ですか?なんか非効率な気がしますね?」
妖精さん達は大興奮。プリンの端を探そうと躍起になる。
「ぼくはお皿とスプーン持ってくる。おっきいお皿じゃないとダメだよねぇ♪」
カイは切り分けようとしたが……。
「あれ?……なんか内側がとろっとしてる~?」
「プリンの内側がおかしいよぉ」
「カルロさん、これは中心温度が足りていませんね。……つまりこれは生です」
「マジかよ~!うそだろぉぉぉぉぉ!!」
カルロが大声を出したので妖精さん達が逃げた。
「カルロさん……このプリン、可哀想~」
「妖精さん達はねぇ、プリンの端を一生懸命探してるよ。あとねぇ、とろとろしてるのプリンの赤ちゃん?って可愛いけど、不安みたいだよぉ」
「妖精さんの“プリン不安定指数”が上昇してますね」
「リアム!なんでもかんでも指数にすんじゃねー」
カルロが大声を出したのでまた妖精さん達が逃げ出した。
「プリンって焼くんじゃねーのか?」
「はぁ、カルロさんは“プリン知能指数”が低いですね」
「俺でも知ってるよ~。カルロさん……プリンは焼くんじゃなくて“蒸す”んだよ~……」
「バケツサイズなら、中心まで熱が通りにくいので調整をしないといけませんね」
「プリンはね~強火で蒸すと“す”がはいるんだよ~。早く食べたい!って強火にしたら、前にはいったことあるから知ってる~」
「“す”ってなんだ?」
「気泡の事ですよ。食感が悪くなります」
「プリン……奥深し」
「カルロさん、弱火でじっくりだよ~」
「前に待ったんだな。レモは偉いな」
そして蒸すことになった。
「カルロさん……ふたを開けちゃダメだよぉ~…蒸気が逃げちゃうよ~」
妖精さんは蒸気の端を探したり、蒸気の虹ができるのか興味津々。
「で、できたぁぁぁぁぁぁぁぁ!できたよ~」
「カルロ兄ちゃん、頑張ったね!」
俺は何を頑張ったんだろう?
蓋を開け完成したプリンを見る。
「あれ?……なんか歪んでねーか?」
「カルロさん……これは……バケツがとけてるよぉ!うわぁぁん!」
「プラスチックは熱で変形しますからねぇ。蒸しプリンには不向きです」
「そういう重要な事は先に言えよ!またレモを泣かしちまったじゃねーかよ!」
「カルロさんの“素材選択ミス指数”が上昇しています」
「指数にするなって言ってるだろう!」
またまた妖精さん達はカルロの大声で逃げていった。
153.
「ちょっと!なんかバケツプリンに挑戦して失敗してるとか?馬鹿じゃないの?生焼けとか、プラスチックが変形したとか……。プラスチックなんだから変形するに決まってるでしょ?うちの子も楽しみにしてるんだからちゃんとした容器で作りなさいよ!」
「スイマセン」
ここは……このカルロ商会が誇る耐熱ガラス大鉢を使うところだ!
「カルロさん、このガラスきれ~~~」
妖精さん達も光の反射に大興奮!
「これなら熱の伝導率もよく、蒸しに最適」
「そうだろうそうだろう?我がカルロ商会が誇るガラスだからなっ」
「カルロ商会ってルチアーナさんが商会長だと思ってた……」
なんてことを!カルロ商会って思いっきり俺の名前なのに……。
「カルロさん、弱火でじっくりですよ~」
「蓋開けたらダメだよ!」
要領はわかってるんだよ!
「妖精さん達は今回も蒸気の端探してるのとねー。ガラスの中に虹は出来るのか話し合ってるよ」
そうか……。とにかく待とう。
そしてやっとのこと完成!
「できたぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「カルロ兄ちゃん、スゴイ!頑張ったもんね‼
「……まぁ今回はよくやった方じゃないの?」
「これは褒められたのか?」
「カルロさんの“達成感指数”が珍しく上昇しています」
「おい、リアム。『珍しく』ってなんだよ?」
「これは15等分にするんですか?なんだか効率が悪い気が……」
「プリンがいっぱいだ~~~♪」
「夕飯もちゃんと食べるのよ?」
「はーい!あ、妖精さん達はあーんしてあげなきゃ!」
10体いるんだが?整列して待っている。順に食べさせていた。
俺のところには列をなさない。
「“カルロさん不貞腐れ指数”が上昇中」
「単に俺が不貞腐れてるって言えばいいだろ!」
大声を出したため余計に嫌われた……。
その日の夜、
「おい、今日は夜なのに明るくないか?」
「ああ?昼間に妖精さん達がプリン食べたんだって俺は聞いた」
「それなら仕方ないなぁ」
「あのルチア―ナさんが許してるなら、うちもいいか」
「レモ兄ちゃんはプリンの光ってキレイって言ってたよ!ぼくの家の前でも光って~!」
「二コラ君の家、今日は明るいねぇ」
「なんでも妖精さん達が遊びに来てるんだって!」
「それなら仕方ないねぇ」
「ぼくの家にも妖精さん来ないかなぁ?」
「お前が妖精さんとお友達になったら来てくれるかもなぁ」
「明日学校で二コラ君に妖精さんとお友達になる方法を聞いてみる!」
154.
「二コラ君、どうやったら妖精さんとお友達になれるの?」
「う~ん、ぼくは意識してないからなぁ。妖精さんはキラキラしたモノとか好きだよ。あと大声嫌い。大声出すと驚いちゃうの。端も好きだよ?えっとねぇ、虹の端っこ探したでしょ?夕日の端でしょ?地平線の端とあとはプリンの端!」
「僕はダメだぁ。これでもリアリストなんだよね!」
「りありすとって何?」
「現実主義者のことだよ。僕はロマンを解さないから無理かな?(小学1年生)」
「よくわからないけど、カイ兄ちゃんは難しい言葉使うけど妖精さんが見えるよ?ルーチェだけだけど。あとの9体は見えないのかな?聞いた事ないからわからないけど、ピコラとは二人で効率化談義してるよー」
「妖精さんも難しい話するんだね」
「多分~。食べ物はプリン好きだけど、レモ兄ちゃんの影響かなぁ?レモ兄ちゃんがいっつもプリン食べるからなぁ。ぼくも食べるんだけどね。えへへ。このあいだはバケツプリン食べたよ~」
「バケツプリン?」
「うん。カルロ兄ちゃんがおっきいガラス容器いっぱいにプリン作ってくれたんだ♪」
「それって、カラメルソースまでたどり着くまで大変そう……」
「カイ兄ちゃんが15等分してくれたからすぐにカラメルソース付きのプリンになったよ~」
「いーなー」
「えへへー」
「あ、それで明るかったの?」
「そうだったのかなぁ?妖精さんは作ってる時から楽しそうだったし……。食べて大興奮だったのかも」
「あ、あと妖精さんは赤ちゃんが好きだよ?こないだも生のプリン見て『プリンの赤ちゃん?』とか言ってたし」
「あ~それは……」
「うちに赤ちゃんいる~!来てくれるかな?」
「ぼくらが学校の時間に行ってるかもしれないよ?」
「あ、そっかぁ」
少年は残念そうだった。実際、二コラが学校の時間は妖精さん達は赤ちゃんがいる家を巡るツアーをしている。
~レオナ商会にて
「あらあらここが落ち着くから来たのかしら?妖精さん、このあいだバケツプリンを食べたの?お腹いっぱいになったでしょ?美味しかった?」
妖精さんは各々点滅して応えた。
「それはいいんだけどね。夜は外を暗くしなきゃダメよ?夜は暗いものなの。昼は明るいの。そこかしこで明るくて眠れないって話を聞いたわ。特に赤ちゃん!赤ちゃんには昼と夜の時間を身につけてほしいのよ。だから、夜は暗くあってほしいっていうのが新米お母さんの意見よ?」
妖精さん達は赤ちゃんが好きだから、今度から気を付けようと強く光った。
155.
妖精さん達は思う。『夜に光らないように、昼間に光貯めれば良くない?』
結果:
妖精さんは昼間にあちこちでキラキラしたものを探した。
1.ガラスの破片
結構あちこちに落ちているもので、収集も簡単。しかしながら、後に『危ない』とレオナに回収される。
2.ビーズ・アクセサリー
小学生の持ち物がよくなくなるけど、この街の気質というか……「妖精さんが持っていったんだねぇ」で解決。普通なら保護者会とかになりそう……。
3.カイの工具
金属光沢が好き。特にカイの工具はキラキラ。カイに「工具がなくなると困る」と言われて落ち込む。あまりの凹み様にカイも「……許す」となる。
4.レモのプリンのカラメルの照り
独特の反射がキレイで好き。レモが食べる前に回収しようとするので、レモが「プリン~~~~!!」と泣かれて、困って返すことにする。
5.二コラの給食の銀紙
レモの事があったので有無を言わずに持っていくけど、二コラに「ぼくの銀紙返して~」と言われ、あっさり返す。二コラには敵わない。
6.カルロ商会のガラス製品
ガラスの反射が強いので妖精さん達にも大人気だが……。「おい!商品だぞ!」とカルロ
に言われ凹む。大声に驚いたし。
ルチア―ナさんがすかさず、「大声出したら驚くじゃない!」と諫める。
このようにして、妖精さん達は努力をした。でもなんか頑張るほど力が入ってなんだか光り輝くみたい。
集めたキラキラは『キラキラ収集庫』として子供達もたまに様子を見に来たり、あげたりしている。
~レオナ商会にて
なんだかキラキラ集めに疲れた妖精さん達がレオナ商会で癒されている。
「妖精さん達、頑張ってるのね。偉いわ」
妖精さん達は嬉しくてレオナの周りをクルクル飛んだ。
「あのね、キラキラはね?持ち主がいるかもしれないから、勝手に持っていっちゃダメよ?どうしても欲しい時はちゃんとお願いするのよ?」
妖精さん達は強く光って理解した。
「おい、うちの在庫が減ってるんだが?」
「そんな言い方ないでしょ?この商会のものを持ち出した?ダメよ?商品なのよ。お金を出して買うものなの。あなた達が好きなキラキラでキラキラを買うの。こんど二コラとどれならあげるかとか探すわね?だから、ここの物は持っていかないでね?」
妖精さん達は強く光った。
「わかった?アンタみたいに強く言い聞かせてもダメなのよ?」
「なんだか、申し訳ありませんでした」
156.
街の『キラキラ収集庫』。
もう街の人々公認で存在。その場所には極稀に本当に宝があったりする(どっから拾ってきたんだろう?)。
一方で酔っぱらいが酔って、トイレになったりする。その飲んだくれは街の大事な宝を汚したという事で街中の飲み屋の出禁になる。小だからまだいいのだけど……。
ぶつぶつ言いながらも二コラたち小学生が『キラキラ収集庫』の中を掃除する。
「こんなんだから妖精さんに嫌われるんだよ!」
「キラキラしてるのにね!」
小学生たちは一様に布巾を口に当てながらの作業となる。
「こんな大人になりたくないなぁ」
「二コラ君はどんな感じの大人?」
うーん、カルロ兄ちゃんは大声出すから妖精さんに嫌われるし、リアム兄ちゃんはデータばっかりだし、レモ兄ちゃんはすぐ泣いちゃうし……。
「うちの母さんみたいな大人かなぁ?妖精見えないのが難だけど」
「ふーん」
二コラは自分がお婿さん候補に挙がっていることなんか思いもしなかった。そういうところは女の子の方が早熟だなぁと感じてしまう。
「スゴク沢山キラキラ集めたんだねぇ。妖精さん達頑張ってるね!」
妖精さん達は点滅した応えた。
「『キラキラ収集庫』をもっと大きくしないと溢れちゃうよ?」
「そうだね」
かくして『キラキラ収集庫』拡大の話は街中に広がった。
その結果『キラキラ収集庫』は大きくなり、街の一角にキラキラ宝の山ができた。
妖精さん達は満足そう。
「あ、これ母さんの商会のでしょ?勝手に持ってきたらダメって母さんに言われてるでしょ?」
「母さ~ん、『キラキラ収集庫』にカルロ商会の商品があったよ!」
「うーん、帳簿は何もないから商会から持ち出したものじゃないわよ?」
「あ、ぼく妖精さん達に謝らないと、ぼくが間違ったんだもん!」
「ごめんね、妖精さん達。あのね、商会の帳簿から違うってわかったの。ぼくが間違ってたの。許してくれるかな?」
妖精さん達は二コラの目の前で点滅した。
「眩しいよぉ。でも許してくれてありがとう」
その日の夜、俺は久しぶりにSanctuary Silentに行った。
「なんだよ?カルロ、いたのか?」
「俺がいちゃ悪いかよ?マスターに色々愚痴ってたんだよ!」
「そりゃあマスターも大変だったでしょうね」
「……仕事ですから」
「えーと、それじゃあ…」
「ネグローニですね?」
「はい。お願いします。俺のとこは別に俺は存在してるけど、実質作ったり、経理は部下だし、お俺はサインだけって感じかなぁ?」
「俺はなぁ!部下にUMA扱いされてたんだぞ!確かに稀にしか顔出してなかったし。しまいには「カルロ商会の商会長ってルチア―ナさんじゃなかったんですか?」とか言われた。超ショック……」
あーあ、この人こんなだけど結構センシティブなんだよなぁ。俺がカルロの右腕だった頃はそんなことなかったんだけどなぁ?
「そう言えば、俺がカルロ商会にいた時、ルチア―ナさんはどこにいたんですか?」
「有給産休からの有給育休」
一体何年育休?二コラ君1年生なんだけど…。
157.
カルロ商会の内部にキラキラ展示コーナーを作ることになった。
「ガラスの欠片も安全に展示できるし、妖精さんがその方が喜ぶかなぁ?って」
「母さん、ありがとう!妖精さん、感謝で点滅し放題だよ!」
「あらあら、ちょっと眩しいわね」
キラキラ展示コーナーには、捨てるはずだったガラス・子供達のビーズ・妖精さんが拾った謎の宝石・レモのプリンの欠片・カイの古くなった工具・ニコラの銀紙 なんかが展示されることとなった。
「キラキラしててきれだね~」
「妖精さん達も嬉しそうだよ!」
「子供達も手伝ったんだろう?」
「「「うん!」」」
「…俺……商会長なのに何もしてねえ」
「ねぇ?あの謎の宝石って何?」
「妖精さんが言うにはねぇ「プリンの赤ちゃんなの?」って。妖精さんもよくわかってないみたい」
「色はプリンみたいですね」
「光を当てると揺れて見えるのですか…」
カイとリアムで分析をする。
さらに、レモが触ると甘い匂いがした。
「美味しそう」
「食べられそうだよねぇ」
子供達は無邪気に言うが…。
「食べちゃダメだよ~~‼‼」とレモが死守。
リアムは言う。
「文献で読んだことがあります。製作者の感情が高まり、妖精の魔力が合わさった時に宝石は生まれる」と。
「え?ぼくの……魔力なの?」
「そんなに赤面しなくても」
妖精さん達は「プリンの赤ちゃん!」と大喜び。赤ちゃん大好き!
「妖精さん達、宝石の端を探してるねぇ」
街の子供達は言う
「コレがプリンの赤ちゃんの宝石かぁ……」
「やっぱ真ん中に置かないとね!」
「うん、大事にしてね~~~!!」
「レモ兄ちゃんのお願いだもん。頑張る!」
「なんで俺の商会の中心がプリンなんだよ……」
妖精さん達はプリンの宝石を大事~にしている。
見張りは点滅してしっかり、そしてやはり端を探す(習性?)、たまに宝石を撫でる、光って温める。
そんな様子を街の人は
「妖精さんが守っているなら仕方ないねぇ」
で済ましてしまう。だって微笑ましいから。
カルロは心の中で「俺の商会なのに……」と思ってしまう。
「展示コーナーがある時点でもう主役は妖精さんなのよ!」
とルチア―ナさんが言ってしまえば、それまでなんだけど。
街の子供達はこぞって、“プリンの赤ちゃん係”をやろうとする。
「今日はぼくが見守り係するね!」
「それじゃあ私は布巾でケースを磨くね!」
「みんな、ありがとう~!」
「おい、コラ。勝手に係決めるなよ。ここにだって警備員とかいるんだぞ!」
「いいじゃない?妖精さん達はゴツイ男よりも子供達の方が喜ぶわよ」
「レモさん…この宝石内部に未知の甘味エネルギーがありますね」
「レモさんの“甘味魔力指数”が上昇しています」
「えぇぇぇぇぇx!それ何~~?」
「あ、レオナお姉ちゃんも見に来たの?」
「うふふ街で話題だもの。そうそう、妖精さん、コレはね?皆で見るものだから持った帰っちゃダメよ?みんなで見るのよ」
妖精さん達は強く光った。
「どうしても触りたいときは、光ってお願いするのよ?えーと、管理者はルチア―ナさんかしら?ルチア―ナさんにお願いするのよ」
また妖精さん達は強く光った。
街の人達も「レオナさんが言ってくれたから安心だ」となった。
158.
「でもなぁ、やっぱり光の強弱だけじゃ心許ないよなぁ」という、街の声が出てくるのも尤もなことで……。
妖精さん達は頑張った!『プリンの赤ちゃんの宝石を育てよう!』と。
妖精さん達は暇さえあれば、見張り、撫で、光で温め、端を探し、宝石の側に寄り添った。
街の子供達も負けてはいない。
学校が終わったら(休みの日も)、見守り、ケースを磨き、展示の中央に置き、レモのお願いを守った。
そんな子供達にレモは「ありがとう~」と言った。
でも、妖精さん達は宝石が好き過ぎて暴走してしまいそうになるから、そんな妖精さん達にレオナは、
「持って帰っちゃダメよ?皆で見るところだからね?触りたいときは光でお願いするのよ?」
と言い聞かせ、妖精さん達は強く光った。
管理者はルチア―ナさんなので、妖精さん達はドキドキだけどレオナの言う事はきちんと聞いて、ルチア―ナさんの許可をもらってから宝石に触るようにした。
ルチア―ナが管理者となり、完全に宝石が“街の正式な宝”となった。展示コーナーの中心であり、カルロ商会の象徴であり、街の子供達の誇りであり、妖精さん達の守護対象。
「何で俺の商会の象徴がプリンなんだよぉぉ!」
「おだまり!煩いわよ。妖精さんが驚くじゃない」
その時、宝石が光り輝き変化が起きた。
妖精さん達が大喜びをしていることがわかる。
「何が起きたの~?」レモには何が起きたのか全く分からない。
当初、Cランク程度だったプリンの赤ちゃんの宝石がSランクに‼
「ほら見なさい。カルロ商会の象徴なのよ‼」
「俺の商会……プリン……」
「カルロさんの不幸指数が急上昇していますね」
「リアム~!そんなことを指数化すんじゃねー!」
「ほら、そんな大声を出すと妖精さん達が怯えちゃいますよ?」
「そうよ、ちょっと黙ってなさいよ!」
「……はい」
「二コラ君、どうなったの?」
「うんとね?宝石としての価値が上がったんだよ?」
「え~、前から変わらないのに?変なの~‼前から大事なプリンの赤ちゃんの宝石なのに~」
「宝石としてだよぉ。えーっとぉ……」
『二コラはわかるよね?他の子もわかるのかな?』
「え~‼妖精さんの言葉がわかるようになったよ。ん?ちょっと甘い匂い。いい匂い」
「プリンだぁ~~‼‼」
『レモはプリンが好きだもんね』
「うん!」
『だからこの子、プリンの赤ちゃんの宝石なのかなぁ?』
『レモが真っ赤だよ!夕日みたいだね‼』
『わ~、レモの端を探そう!』
「楽しそうで何よりだわ。うちの二コラも楽しそうだし」
「俺の商会……プリン……」
「カルロさんの不憫指数が急上昇中です」
「もう、反論する元気もねーよ……」
159.
カルロ商会にセレン大使がやって来た。
「ほう、これが噂のプリンの赤ちゃんの宝石か……」
『あのね、ぼく、セレンの周りの空気が好きなの』
「ミュートなのか?」
『そうだよ?』
その光は淡く点滅した。
「うっ、幸せ過ぎて胃が痛い……」
「セレン大使の幸福過剰指数が一定値を超えたようですね。データ通りの胃痛の発生。これも貴重なデータとして記録しておきます」
「リアム君か?これはどうなっているんだ?」
「これはですね?プリンの赤ちゃんの宝石がランクアップした結果、その宝石を通してならば誰でも妖精さんとコミュニケーションを取ることが可能だという事がわかったのです。ただし、レモさんが近くにいるとよりコミュニケーションが取りやすくなります。今は光の塊のような妖精さんの姿もレモさんが近くにいるとハッキリと見えます」
「ふむ、レモ殿は今は作業場にいるのかな?」
「作業場でプリンを食べてるかも……おっと」
『『『プリン~、ずるい~!』』』
「妖精さん達も行くかい?」
『『『うん!』』』
作業場において、プリンは欠かせないアイテム。
皆で食べていた。
「わっ、妖精さん達がきたよ!プリン、ズルいってちょっと怒ってるよぉ」
「妖精さん達ように小さいプリンの開発とかしてもらおうか~?」
「あ、それいいかもぉ」
「それはそれとして、問題は現在ですね。現在、プリンの在庫が1コなんです。妖精さん達が食べてしまうと我々は明日プリンなしで仕事を……」
「いつもしてたじゃないですか‼大丈夫ですよ!私も明日来ますね。なんならレオナさんにもお声を掛けましょう!」
「レオナお姉ちゃん?頑張って仕事しないと!できる男の方がカッコいいって母さんが言ってた」
「ルチア―ナさんは何を小学1年生に言ってるんでしょうね。でもまぁ、無能よりは……」
「でしょおぉ」
「皆さんはできる方たちですよ!美しい宝石を作り出す第一人者みたいな感じですから!」
「だいいちにんしゃって何?」
「最先端ってことかな?」
「さいせんたんて何?」
「他の人の一歩先を行く感じ」
「それってすごいの?」(イメージは遠足の先頭)
「時代の最先端ならどうだ?宝石の世界で俺達がトップなんだ」
「うーん、なんかわかった~」
セレン大使がいるので3人は暴走しないでごく普通に動いている。
「あ、レモ殿。レモ殿がプリンの赤ちゃんの宝石の近くにいるとこのミュートの姿を見ることができるとか?」
「そうなの~?俺はよくわかんないけど」
「レモ兄ちゃん、そうだよ!学校じゃプリンの赤ちゃんの宝石とレモ兄ちゃんの話でいっぱいなんだから!」
「俺……恥ずかしい~~」
「そこでレモ殿。私と一緒にカルロ商会の展示コーナーに行ってくれないかな?」
作業場の3人と妖精さん達とセレン大使はカルロ商会の展示コーナーまで行った。
「レモ兄ちゃんが近くにいると妖精さん達がよく見えるねぇ」
「ミュート!そんな姿だったのか!どんな姿でも私はお前が可愛くて仕方ないが」
『そうやって言ってくれて嬉しいよ』
「よかったね~。ミュート~!」
『うん』
ミュートは定位置となっているセレン大使の肩に乗った。




