140.
140.
リアムとしては、この状況をグラフ化したい。
横軸に各自の胃痛指数、縦軸に街の混沌度(平和度)。
尚、カルロの胃痛(筋肉痛)についてはデータが歪むので除外。
「このように胃痛指数を横軸、街の混沌と平和を縦軸にしてグラフにすると、完全に可視化ができるんです!」
「リアム殿素晴らしいですな。これも学会で発表を?」
「うーん、まだまだデータが足りない感じがしますねぇ」
「私のようなものであれば協力しますぞ!」
「セレン殿の症例は珍しいものですし、有難い申し出です」
「うわぁぁん、リアムがまた難しいこと言ってるよぉ」
「レモさんあのですね、横軸が胃痛の具合です。痛いほど右に行きます。今度は縦軸です。縦は街の賑やかさを表してるんですよ。上にいくほど賑やかなんです。マルコさんの胃痛はほら、賑やかになればなるほど痛くなるんですよ?」
「うんわかったぁ、そういう風に見るんだぁ。えーと俺は、あんまり胃が痛くならないの?ならないでしょう?」
「うん、ならない」
「だから、こういう線なんです。ほら、メリオ大使なんて街が賑やかになればなるほど胃が痛くなるでしょう?」
「あ、ほんとだ。メリオさんよく胃が痛くなってたもんね」
「リアム…俺の胃痛が街の平和の指標ってどういう事だ?」
「グラフで表現しました。その通りですよ。数値が表現しているんですから、そうでしょう?」
「うーむ、腑に落ちないが……」
その日の夜、俺・カルロは久しぶりにSanctury Silentに行った気がする。
「マスター、俺の胃痛はリアムにノイズとか言われてグラフから除外された。扱い酷くないか?」
「内臓も筋肉ですので、なんとも言い難いですね……。ただ、カルロさんは筋トレをしまくっている様子。リアムさんもその様子からカルロさんの胃痛は筋肉痛の延長だと判断したのでしょう」
「レモの護衛係として筋肉を鍛えなければとやっていることなのだが……」
「とりあえずアマーロ・サワーをどうぞ」
マスターは何も言わずにグラスを磨き始めた。
「俺だってさぁ、脳筋って言われないようにしてるつもりなんだぜ?でもなぁ、うちの商会のNo.2の印象が強すぎて、どうしても俺が脳筋キャラに……」
「そうですねぇ。優秀だと聞いています」
「こんなんじゃレオナにも好かれないよなぁ」
なんだかバキっという音が聞こえた。
「申し訳ありません。ちょっと備品を折ってしまいました。お耳汚しスイマセン」
「いや、驚いただけだから」
何を折ったんだ?氷割るやつの柄?かなり堅そうなんだけど?マスターは怪力なのか?レオナの事好きなのか?年の差での恋?いやぁ、世の中わからないもんだ。うん。
141.
「レモさん、仕事溜まってますよ。仕事してください!」
リアムが山のようにたまった依頼書をレモに指し示して言う。
「うわぁぁん、リアムが厳しいよぉ」
「泣いて仕事が減るなら、俺も泣きたいですよ……」
「そうなの~?リアムも一緒にプリン食べる~?」
「勤務中ですので失礼します」
「え~?カイも俺も勤務中に食べてるよ?だって福利厚生だもん!あ、ルーチェも食べたいの?うーん、二コラが来たら食べよっか?」
「作業場では二コラ君も一緒なのですか?」
「うん、カイとルーチェと俺の4人だよ!あ、たまにっていうか時間があったらレオナさんも来るけど、レオナさんは最近忙しいみたい」
リアムは思う。『この4人ではデータが取れるだろう。しかし……仕事が進まない混沌の状態となる事間違いなし!』
「あの……話をしているところ申し訳ない。レモ殿やカイ殿が仕事をしているところを見てみたいのだが……」
リアムは思う。『こういうのを渡りに船というのではないだろうか?セレン大使は謎の静寂フィールドを持っているので、セレン大使の周りでは落ち着くのではないだろうか?』
「是非とも、見て行ってください!作業場に案内しますね!」
「リアム……作業場は俺の場所なのに~」
「独占欲出しても仕方ないですよ。皆の作業場ですよ!」
「そうだね!カイの言う通り!わーい、皆でプリン食べよー!」
「セレン大使が作業場にいると、落ち着くねぇ」
「妖精さん達も落ち着いてるよ」
ミュートもセレン大使の肩に乗る。
「レモ兄ちゃん!この石、緑だからかなぁ?森な感じするよー」
「小鳥さんがいたり~?」
「そうそう、リスさんもいるよ!」
「わぁ、かわいいね~」
「とりあえずの処置で濁りは真ん中に置くとして、レモさん、次の角度は?」
「うーん、森の動物さんは傷つけないで~、それでね~森の中に光のオアシスな感じ」
「了解!」
ルーチェも淡い光を点滅させて3人を応援している。
「うーん、なんとも天才な会話をしているなぁ。凡人では理解不能。この会話から美しい宝石が生まれるのだから素晴らしい!」
リアムは思う。山のような依頼書。それを片付けなければならないが、この4人が落ち着くにはセレン大使が必須!セレン大使には毎回見守っていただきたい。もう、お守りのように!外交官としてこの街にいるわけだけど、この作業場はセレン大使なくては機能しない。
レモさんはすぐに泣いてしまうし、カイは効率化暴走するし、二コラ君は年相応だけど、妖精さんと追いかけっこ。
とてもじゃないけど、仕事にはならない。
セレン大使には必ずや来てもらいたい。
えーと、T国としてはレモの技術を手に入れたいハズ。ならば今のように身近で見ることは外交官としても良いことであるのではないだろうか?
T国国王に俺が手紙を書いて、セレン大使が度々マルコ商会の方へと足を運んでくださるように裏から手を回そう。うん、それがいい。
142.
リアムの策略(?)により、セレン大使がかなりの確率で来ることになり、作業効率も上がった。
経理課(経理部?)はそれなりに忙しくなったが、『今までが忙しくなかったと思えば、今が普通だ。』と思える(アレク談)。
「今日もセレン大使来るかな~?一緒にプリン食べたいなぁ~」
「来るといいですね。来たら『なんか仕事しなきゃ!』って思ってプリンどころじゃなくなるんですよね」
「それが悩みなんだけど~」
「ただいまー‼」
「元気だね~。でもここは二コラ君のおうちじゃないよ?ルチア―ナさんに怒られちゃう!」
「なんとなくそんな感じなんだもん。今日はセレン大使来るかなぁ?妖精さん達も結構待ってるんだよ!」
「お邪魔するね」
「こんにちは、大使」
「二コラ君は元気だねぇ」
「えへへ~」
「さて、今日の仕事ですよ!まだまだ仕事はありますよ!」
「レモさんは大人気なんですね。T国でも人気ですし」
それは巡礼者?
「変な宗教じみてる人はヤダよ~」
「私も嫌ですよ!」
「わーい、セレン大使とお揃いだ~」
「こらこら、仕事!」
「レモ兄ちゃん!青い石だから海って感じ?」
「そんな感じ~。この濁りとかウミガメ?」
「あ、そうかも。流石レモ兄ちゃん!」
「へへへ~」
「それじゃあ、その濁りを活かして、カッティングはどうします?」
「海の中に光が入るのって幻想的でいいよね。一筋の光?みたいな」
「そんな感じでやりますね」
うーん、やっぱり大使がいると作業が進むなぁ。
「お久しぶりになるわね。お邪魔しちゃうわよ。あら、みんな集中してるわ。あ、セレン大使。こんにちは」
「レオナ嬢、こんにちは。やはりあなたの声は心が落ち着くようだ。醸し出す雰囲気も」
「うーん、私はただ来ただけなんですけど?」
レオナさんが来てからというもの、作業効率がアップ。データ的には異常値。今日というかレオナさんが来てからだけで、3日分の仕事をこなしている。
セレン大使とレオナさんのコラボレーションは奇跡‼
「レオナさん、来てくれて本当に…本当にありがとう‼」
「私はただ、時間が空いたから顔を出しただけなんだけど……」
「是非ともこれからもちょくちょくと顔を出してください。ただしセレン大使がいる時に限る」
レオナさんがソロだと二コラ君が暴走してしまうだろう。
セレン大使で大人しくなったところにレオナさんが来て、さらに……だろうな。
はて。そのデータはないな。レオナさんがいるところにセレン大使がというシチュエーションが今までなかったから。欲を言えば、そのデータも欲しい。しかし、安定して仕事もしてほしい。ああ、欲望と理性の戦いというんだろうか?
143.
カルロは久しぶりに自分の商会に戻ることにした。なにしろ“カルロ”商会だし。という自負もある。
久しぶりに来ても変わらないなぁ。職員は資料をもって走り回り、受付は対応におわれる。これぞ“カルロ商会”‼
「あら、カルロ?何しに来たの?」
こういうやつだってわかっていてもグサッと刺さるものがある。
「俺の商会に俺が来ちゃおかしいか?本当なら『お帰りなさい、商会長!』くらいいわれるもんじゃないのか?」
「あら?そういえばあなたの商会だったわね。ゴメンなさい。忘れてた」
本当に忘れてたんだと思うと、心が寒い。いや、寒いを通り越して極寒。俺はそんなに存在感のないやつだったか?
ルチア―ナが優秀なのはわかる。が、俺は商会長だ。ちょっとは敬ってくれてもいいじゃん。扱いが雑なんだよ!
「何しに来たの?って仕事だけど?俺に仕事あるだろ?ほれほれ」
寄越せというようにボディランゲージをするが、
「ゴメンなさい!全部私がやっちゃったからないわ」
No.2が優秀過ぎて辛い。
極めつけは職員。これは酷かった……。
「関係者以外立ち入り禁止ですよ?買い物なら、正面玄関から入ってくださいね!」
思いっきり関係者なんだが……。最近の職員は顔も覚えていないようだ。
「あら、カルロまだいたの?せっかくだからお茶でも飲んでいく?」
その喫茶店…俺が作った。福利厚生用に。
「え?商会長?カルロ商会の商会長って本当に存在したんですね。俺はてっきり都市伝説化と……」
「いやだぁ!ちゃんと存在するわよ、一応」
一応って何だ?
「……俺、もうちょっとここにいてもいいか?」
「することなくて暇だけど?それならレモ君の護衛してる方がいいんじゃない?まぁ、好きにすればいいんだけどね」
俺は身の置き所に困って結局自分の商会を後にした。なんで自分の商会でこんな目に遭うんだろう?
普段あんまり顔を出さないからか?なんならリアムの方が知られてるかもな。
「あ、カルロさん。こんなとこで何やってるんですか?」
「こんなとこって……俺の商会なんだが?」
「そう言えばそうでした。俺なんかは昔からの付き合いで知ってるけど、ここの若い職員はカルロさんを見たことないかもなー。アハハ」
「アハハじゃねーよ!さっき関係者以外立ち入り禁止から出てけ的なこと言われた」
「そうでしょうねぇ。もうカルロさんはUMAレベルですよ?」
「ちょっと待て?俺は未確認生物並みかよ!……って完全否定できないのが辛いなぁ」
144.
最近作業が順調だというので陣中見舞いのような形でプリンを持参し、作業場の方へと行った。
そこには、視察だというセレン大使。そして時間が空いてるのかな?レオナがいた。俺は思い切り「陣中見舞いに来たぞ~」と言った。
なんだこの奇跡のような穏やかな空間は⁈
いつもの騒がしい空間とは全く違う。皆が真面目に仕事に取り組んでいる。
俺はレオナに睨まれながら「騒がしくするなら出てって」と言われた。仕方ないので作業所の隅で体育座りをしながらその場にいた。
どういう事だ?
いつもなら、レモが「わ~い、プリン~!」とか言うだろうし、二コラは妖精たちと追いかけっこして遊んでいるよな?そんでカイはピコラと効率化談義をしているハズ!それなのに、どうだ?
二コラは「レモ兄ちゃん、この濁りが使えない?青色の石だからやっぱ海?」とか言ってるし。
レモはレモで「青色=海ってのはワンパターンでしょう~?青空ってのも良くない~?」って返してる。
カイは「だったらこの濁りはどうします?カッティングの仕方とかに影響しますけど?」って。
なんだよ、この謎空間は。妖精たちもいるらしいけど、大人しくしてるってセレン大使が言ってたなぁ。
確かにこの空間は穏やかで落ち着く。昼寝してもいいだろうか?
しばらくすると、カルロは寝た。しかし、寝言&イビキが煩い。
よって、リアムが作業場のそとのカルロの部屋のソファに置いた(雑)。
「カルロさんは寝てても騒がしいのですね」とリアムがメモをした。
その日も作業は驚くほどに順調そのものしかし、事件は起こった。
「ゴメン!どうしても抜けられない会議があるのよ!」
と、レオナさんが作業場から抜けることとなった。これは大変!セレン大使とレオナさんによる奇跡のフィールドからセレン大使のみのフィールドへ。大丈夫かな?作業効率は下がるでしょうけど、3人の行動はどうだろう?
「レオナお姉ちゃんいなくなって寂しいけど、ここは男として頑張らないと!」
「そおだよ~、頑張ろ~!」
「作業効率の低下……」
「そう言うのはリアムがみてるからカイまで気にする必要ないよ~」
「そうだよ!カイ兄ちゃんも頑張ろうよ!ルーチェも頑張るって(応援)」
こうして出来上がったのが、『青空の中の虹』。宝石として天文学的に価値があるらしい。特に光が七色に分散して虹になっているところが素晴らしい技術だと評価が高い。
本人たちはカルロが持ってきたプリンを食べてご満悦の様子。
「やっぱりプリンは美味しいねぇ~」
「福利厚生なんでしょ?難しい言葉わかんなーい」
「作業効率を上げようって頑張ってるんだよ」
「セレン大使もどうですか?」
「いや、この平和な光景を見ているとなんだか癒される……」
なお、カルロは隣の部屋で存在を忘れられていた。寝てるし。途中からいなかったしね。
145.
『青空の中の虹』を依頼主さんに渡すときが来た。
「いやいやいや、私はただ運が良かっただけで。こんな美しい宝石は私には身に余るものです。そうです!妖精さんはキレイな純粋なものがお好きなんですよね?では、この宝石をマルコ商会に寄付いたします!妖精さんのおうちとして使ってください!私が宝石の価値にビクビクして生活するよりも妖精さんも喜びますし、その方がいいですよ!」
俺が頷く前に既に妖精さん達が宝石の中を覗き込んでいるの?いろんな光が宝石を取り囲んでいるのが見える。
「やっぱり妖精さんはこの宝石に興味があるようですし、是非ともマルコ商会さんの方に置いてください!」
マルコは内心困ったが、断れなかった。うーん、すでに国宝級の宝石(ルーチェの家)があるんだよなぁ。
「わーい!ルーチェもうれしい?みんな喜んでるのかなぁ?」
光が点滅して応えた。喜んでいるらしい。
「製作者のレモも喜んでいるようですし、お言葉に甘えさせていただきます。いつでも見に来てください」
「いえいえ、妖精さんのおうちですから!」
狭くないかなぁ?9体が同じ宝石にないることになるんだけど……。
「マルコ兄ちゃん大丈夫だよ!妖精さんにとって宝石の中は広~くなってるから。自分の好きなエリアに行くんじゃないかなぁ?」
「ルーチェも一人で宝石にいるのは寂しいから、仲良しさんを宝石に招待したりするかもね~」
「なんだか楽しくなりそうだな」
「カイもそう思う?」
「まあな、こういうのがあるとあの仕事しててよかったと思えるな」
「そうだね~。とりあえず、皆でプリン食べようか?」
「レモさん、ちょっと待ってください。皆でってここの妖精を含めて?それだと、14等分……。出来なくはないけど……」
「……カイ。人間は一人一個。妖精さんは半分とかダメか?多いか?」
「さんせー!」
「わーい!プリン一個~!」
「……いいらしいです」
「そうか。おまえも苦労してるんだな」
「まぁ、そこそこ」
「俺の分はプリンあるんだろうな?」
冷蔵庫を確認すると、プリンは残り1コ。
「カルロ……そこのリアムと半分にしてくれるか?」
「俺は妖精扱いかよぉぉぉぉぉぉ!」
「カルロ兄ちゃん、大声出さないでよ。妖精さんが驚いてるよ!」
頬を膨らして抗議する二コラはまだまだ可愛いなぁ。
「……スマン。なぜ、リアムがここに?」
「データを取るためです!」
「仕事をしろよ。お前だって、レモに来る依頼の受付業務に経理の仕事があるだろう?」
「どちらも周りが優秀なので……。あ、アレクさんはちょっと愚痴を言ってたかなぁ?」
「アレクの愚痴頻度とかはデータ取んないのかよ?」
「それは灯台下暗しですね。あ、でもアレクさん諦めモードに入りつつあるからデータ外かと……」
「そうか……」
146.
妖精の新居は奇しくも妖精たちに大人気。
あの3人もそれを狙って作ったわけじゃなくて、単に仕事をこなしてただけなんだけどね。
妖精たちの様子は二コラが実況してくれる。
「あのねぇ。虹の端っこを探そうって頑張ってる子がいる。あと、光の元に行こうって頑張ってる子もいるよ!」
それはアレだね。『イカロスの翼』みたいなやつ?実際には宝石に入ってくる光だけど。
「虹って……真上から見るとわっかになってるんじゃ……」
「ええっ!そおなのぉ?」
カイ……ダメだよ、現実的なこと言って二コラ君まで大混乱。
「真上って宇宙の果てから見るんだよね?」
俺はカイの尻をつねりながら言った。
「ああ、そうでしたね。全く、端ってどこにあるんでしょうね?」
「よかったぁ。端、ルーチェも知らないのかなぁ?一緒になって遊んでるよ」
「あとはねえ、虹で滑り台してるの!」
「滑ったあとにお尻が虹色になったりしないの?」
「それはしないよぉ!マルコ兄ちゃんてば、意外とロマンチストなんだから!」
「他には、宝石の中の色を集めてたり。中にいると、ミュートの姿も見えるなぁ、可愛い。
「なんか二コラだけズルいなぁ」
「あ、虹の滑り台が大人気で渋滞してる!」
「両サイドで滑ればいいだろうに」
「でも何回も使うから、大人気だよ!自分の居場所的な場所も確保しないといけないけど、目の前に遊具があるからダメかなぁ?」
それは……不動産屋に行かなきゃいけないのに、パチンコ店に行ってしまう大人みたいな感じか?
「やっぱり欲望には勝てないよねぇ」
一人、プリンを食べているレモをチラッと見てそう言う。あ、そういう事か。わかりやすい。
青系の光を放つ妖精はスピラだけなんだけど、みんな気に入ったみたいで良かった。それぞれが、自分の光に似てる色を収集してるみたい。
「集めちゃっても大丈夫なの?」
「うーん、大丈夫だと思うけど。飽きたら放り出すだろうし!」
子供っぽいなぁ。そんなところが魅力なのか。
「疲れたら寝るの?」
「疲れるのかなぁ?疲れたルーチェは知らないよ?ただぼくと一緒に寝てるけど」
疲れてるのか?ただ一緒の行動をしてるのか?わからん!
このおうち、作業場に置いておくけど商会が休みの時とか大丈夫かな?
「休みの時だけぼくのうちにもってく?」
「うーん、そのことについてはルチア―ナさんと要相談だね」
「ようそうだんって?」
「相談しなきゃってこと!」
「呼んだかしら?二コラがそろそろ帰宅と思ってきたんだけど?」
「あのですね。『青空の中の虹』という宝石ができまして、これがまぁ売れば天文学的な金額かと」
「売らないよ!」
二コラに怒られた。
「依頼主さんが『自分には身に余るから商会へ寄付する』という事で寄付され、現在は妖精さんのおうちとして機能しています。妖精さん達はひどく気に入って遊び場になっているのですが……。それで」
「商会が休みの日ね?」
「はい、まぁ」
「仕方ないわねぇ。二コラも妖精さんがイタズラしないようにちゃんと見張るのよ?」
「わかった!」
「では、商会が休みの時はルチア―ナさんの家の方へ行くという事で」
「わかったわよ。妖精10体は責任をもって預かるわ」
「頼もしいです」
「ぼくも頑張る」
「頼りにしてるからね」
「うん!」
147.
妖精さんが新居で初めて夜を迎える時、それぞれが自分が一番落ち着く場所を宝石の中で探した。
頑張って探し当てた虹の端っこが皆好きみたい。結局塊になって寝てるみたい。
いっぱい遊んだから疲れたのかな?
ルーチェも今日は作業場に泊まるって言ってた。
ぼくは母さんがいるから寂しくないもん!
翌朝、ソルナが光り輝き朝を告げていた。
「あら、ソルナちゃん今日も元気そうね!オバサンも元気にジュース仕込むわよ!」
ソルナは朝にバイトに来るオバサマに大人気。
「まあ、グラッサちゃんもおはよう!どうしたの?このトロピカルフルーツ?アラ大変!傷んでるわ、中までだからこんなのジュースにしたらお客さんがお腹壊しちゃうわ。流石ねぇ。いつもありがとう。助かるわぁ。妖精さん達ってどうしたら喜んでくれるのかしら?二コラ君が知ってるかな?」
グラッサはトロピカルフルーツ妖精なので傷んでるトロピカルフルーツがすぐわかる特技持ち。
「おはようございます」
「あら、おはよう。元気がないわね?いつも大声なのに」
「二コラ君に大声を出してたら、妖精さんに嫌われるって言われたので気を付けてるんです」
「はぁ、なるほどねぇ。嫌われたくないものね。そうそう。今朝グラッサちゃんがね、傷んだトロピカルフルーツを見つけてくれて避けたわよ」
「大手柄じゃないですか!」
「そうなのよ。あのまま仕込んでたら多くのお客様が腹痛になるところだったわ」
平和な朝はこのように過ぎていった……。
「二コラ君!今日は学校休みなのね?」
「うん!」
「今朝、グラッサちゃんが傷んでるトロピカルフルーツを教えてくれておかげでたくさんの人が腹痛にならないで済んだのよ。それで、妖精さん達にお礼したいんだけど、妖精さんってどうしたら喜んでくれるかなあ?」
「オバサンがいつも元気なのが一番嬉しいと思うよ!特に何か欲しいとかないし、そうだよ」
「まぁ、優しい、いいこなのねぇ」
「そうだよぉ。みんないい子だよ!」
「あ、商会の休みの時はぼくの家に持っていくことになったんだけど、あの宝石すっごく高いんだよね?持ち運ぶのに隠して持ち運べるようなバッグがいいなぁ」
「そうだね。わかったよ、喜んでくれるといいんだけど」
「喜んでくれるよ!」
二コラは元気に作業場に現れた。
「あ、レオナお姉ちゃ~ん!」
あれ?この間は凄く静かだったのにどうしたんだろう?
レモは元気に「プリンは14等分だね~」と言っている。
カイは、ピコラと効率化について熱く談義をしている。
他の妖精たちもレオナの周りをくるくると回っている。
え?仕事は?この状況は何?
……この状況でもリアムはデータ取ってるのね。
148.
「あのねぇ、商会が休みの時はこの宝石をぼくの家に持って帰るんだー。妖精さんが寂しくないように!」
「へ、へぇ……」
「レモさん、プリン分けましたよ!」
「すごーい、カイ天才!……小さいけど。レオナさんもどうぞ」
「あ、ありがとう」
本当に小さいわ。14等分したのかしら?
「邪魔するよ」
一気に奇跡のフィールドが完成した。
妖精たちは落ち着きはらった。
「おやおや、休憩中だったのかい?私に気にせずにどうぞ食べて下さい」
「そういえば、仕事中でしたよね。仕事仕事」
「今度の依頼は緑の石?」
「この濁りは……」
「レモ兄ちゃん、アレだよ!」
「やっぱりアレか?」
「それならこっちの濁りは?」
「うーん、タヌキ!」
「キツネじゃだめ?」
「タヌキって感じなんだよぉ」
「そっかぁ」
「となると、カッティングは木漏れ日チックな感じになるように?」
「そんな感じ~」
セレン大使はこういう光景を平和だなぁと見る。
「う、肩にミュートが……幸せ過ぎて胃痛が……」
「それは新しいデータとしてメモさせていただきます」
どこからか現れたリアムは言う。
「次の依頼は…赤い石だ」
「自然で赤って炎とかがすぐ出てくるね~」
「レモ兄ちゃん!夕焼け!」
「おお赤い‼」
「とすると、この濁りは……海との境界線?」
「きょうかいせんってな~に?」
「境目ってことだよ~」
「わかった~!」
「海だから、カモメさんとかいそうだね?」
「きっといるよ~」
「その濁りを活かしたカッティングを俺はすればいいんですね?」
「うん!」
「昼間は青いのに夕日を写した海は赤いよね~」
「見たことないよぉ」
「ルチア―ナさんにおねだりしたら絶対見せてくれるよ!」
「うん、やってみる!」
セレン大使曰く「なんて平和な作業場だろう?」
この日はレオナとセレン大使が揃っている時間が長かったので、処理した依頼数も通常の10倍以上(普段が混沌とし過ぎて作業になっていないんだけど)、二人には是非とも毎回いらしほしい。
と言っても、レオナさんは自分の商会もあるから無理かなぁ。せめて!…せめてセレン大使にはいらしてほしい!
データも取りたいし(本音)。
さっきは幸福過剰胃痛になってらしたなぁ。大使が胃痛はこの街の平和の象徴だと認識しておられるから、全く問題なくデータをとらせていただいたけど。
おーい、俺のことスッカリ忘れてるだろう?
忘れていました。
データを取る必要がないからスッカリ頭から消去されていました。
「リアムさぁ、経理課(経理部?)の仕事はマジでいいわけ?」
149.
一応俺はアレクさんに確認。
「俺、めっちゃいろいろデータ取りまくって経理の仕事してないけど、大丈夫ですか?」
「ああ、あの3人……普段あまりというか全然、全く仕事してないから、たまに仕事がドーンと来ても一日で捌かなくていいから、別段困らない。お前は好きなようにデータを取ってればいい。なんか賞取ったんだろ?そっちの方がスゲーじゃねーの?」
という事で上司の許可は取った。
本日は夕日を見に砂浜の海岸(子供が興奮して崖から落下とかしないように)に行くことになりました。
メンバーは、二コラ君・ルチア―ナさん・レオナさん・セレン大使・妖精さん達・レモさん・カイ・カルロさんに俺リアム。
セレン大使とレオナさんがいれば車の中で妖精さんと二コラ君が大騒ぎという事もないだろう。
ちなみに、カルロさんが運転手役を買って出てくれた。
「は?夕日を見に行く?俺が運転手やってやるよ(レオナも行くみたいだし)」
結構大きめの車を借りた。カルロさんが運転席。助手席にはセレン大使。最後部には俺と妖精さんの家(国宝級×2)とレモさんとカイ。真ん中には二コラ君・ルチア―ナさん・レオナさん。
カルロさんとしては助手席にレオナさんが……とか思っていたかもしれないけど、俺は最後部から皆さんのデータを取りまくりたいと思います。
車の中はセレン大使とレオナさんによる奇跡のフィールドにより、二コラ君も妖精さんも落ち着いたもので、見ているこっちがドキドキしました。
ですが、目的地到着後。タガが外れたというのでしょうか?夕日の力は偉大です。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ、すごいねぇあれが夕日かぁ」
「そうよ?宝石の勉強になるかしら?」
「二コラ君、夕日がなんかプリンのカタチに見えてきた~」
そう言うと思って、プリンを持参しました。
「カイ、人数多いし上手く切れるかなぁ?」
「……人数分ある予定なんですけど。妖精さんの分が足りないかな?」
そんな妖精さん達は到着するや否や、夕日の方へ行ってしまった。迷子になっちゃうよ……。
「俺としては、光の屈折率が気になる……。効率化と似てるのか?」
「……平和ですねぇ」
「レオナお姉ちゃん、ぼく海も初めて見るんだ!」
「あら、良かったわねぇ」
「うん!」
「えーと?俺も夕日を見たいんだが?……ともう誰も聞いてねーな。大人しく車で寝てるかぁ。予定ではレオナと二人きりなるはずだったんだが……」
「カルロさんの“夕日疎外指数”を記録しておきますね」
「それは記録すんじゃねーよ。俺の胃痛とか」
「あ、カルロさんの胃痛は筋肉痛みたいなノイズなのでデータからは除外しています」
「ノイズとか言うなぁぁぁぁ!」
「大声を出すと、より一層妖精さんに嫌われますよ?」
「より一層ってなんだよ?」
「すでに嫌われてるでしょ?さらに一層と言う意味ですよ」
「知りたくなかった。……やはり俺は妖精さんに嫌われていたのか」
「大声出すから……」




