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『この街で、俺はもう一度生きる』ーー異議あるか?  作者: satomi


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130.

130.


 皆の奇妙なやる気は斜め上だったようで……。


~レモの場合


「俺は今日からプリン断ちをする!」

「「おお~」」

…その数時間後、

「うぐっ…ふぐっ…。プリンはやめられないよぉ!」

「レモさん泣かないでください!」

「レモ兄ちゃん、ぼくの分もプリン食べる?」

「それは二コラの分~。一緒に食べる~」


「妖精さんにもっともーっと好かれるように笑顔でいるようにする!」

……数時間後

「顔の筋肉痛いよぉ~。顔にも筋肉あるの~?」

「ありますよ」

「カイはよく知ってるね~。明日筋肉痛になるのかな?顔~」


「俺は仕事を増やすぞ~!」

「やめてください!レモさんが増やすって事は、俺もだけど、二コラ君も仕事が増えるってことなんですから!」

「そっかぁ。ひとりで先走ってゴメンね~。みんなでプリン食べよ~」



~カイの場合


「今日から残業です!」

「残ってやる仕事ないでしょ?子供は定時で帰りなさい!さ、二コラも帰るわよ」

「うん!」



「レモさん、それは作業効率悪いですよ?」

「え~?カイが難しい言葉使うよ~」

 泣かせてしまったレモにプリンを差し出す。

 カイの気持ちは伝わらず。というか、カイは大人っぽい言葉を使おうとしてるのかな?



~二コラの場合


「作業場の掃除をするぞ~!」

 何故か二コラが掃除をすればするほど散らかるので、ルーチェが光で片付ける。


「依頼を受けるぞ~!」

「うわ~ん!依頼書が読めないよ~!」

 カイが通訳をかってでることになった。



~ルーチェの場合


 完全応援。レモが頑張る場合:光が強くなる

        カイが頑張る場合:点滅する

        二コラが頑張る場合:眩しすぎて何も見えない

        カルロが頑張る場合;光が弱まる(大声嫌い)

 


~カルロの場合


「俺も仕事頑張るぞ~!宝石を磨こう!」

「カルロさん、力入れ過ぎ~。宝石が壊れちゃうよ~」


「レモの護衛を頑張ろう!」

「え…?近付き過ぎで怖いよぉ(泣)」

「プリンあげるから泣き止んで」

「わかった~」



~マルコの場合


 やっぱり俺がまとめないとなぁ。

「よし、皆でがんばろう!」

 ルーチェは点滅している

 リアムはメモを取っている

 カルロは筋トレをしている 

 レモが怖がって泣き始めた……プリンあげると泣き止むの?

 二コラが掃除をしている……えっ?逆に汚れてない?

 カイは色々と段取りを組み始めた。……なぜ?

 俺も流石に胃が痛いぞ?



 カイのこの日のルーチェ観察日記

『今日は皆が仕事頑張ると言い出した。みんな方向性が違うのに…

 ルーチェは点滅して応援していた。ルーチェは変わらず今日も可愛い。』



131.


 翌日の事、レモの叫び声がマルコ商会に響いた。

「うわ~ん!顔が痛くて笑えないよぉ」

「ふむ、前日に顔面を酷使したために起きているのか?」

「リアム~、分析してないで何とかしてよ~」

「通常の筋肉痛のようにほぐせばいいのでしたら、存分にレモさんの顔をマッサージしますけど?」

「マッサージ?気持ちよさそうだねぇ~」

「では、失礼します」

「痛いよ~。気持ちいい~。痛いよ~。気持ちいい~」

「どちらなのでしょう?ルーチェも困惑しているように見えるのですが?」

「ルーチェも心配してくれるの?優しいねぇ?」

「それで、痛いのですか?気持ちいいのですか?」

「痛気持ちいい~?マッサージの場所とかによるかなぁ?」

「では失礼して、ここは?」

「痛いよぉ~」

「ではここは?」

「気持ちいい!」

「うむ、一考の余地がありますね。続けてマッサージをするので、痛かったら俺にツッコミ入れて下さい」

「わかった~。データ取るの?」

「もちろんです。なかなか顔面が筋肉痛になる方いらっしゃいませんからね」

「カルロ商会長の筋肉痛もお腹とか太ももとか腕だもんね~」


「はぁ、スッキリした。まだ筋肉痛の名残あるけど、笑えるからよかった」

「それは何よりです」

「リアムもプリン食べる~?」

「俺は3食キッチリ派なのでいただきません。お気持ちだけいただきます」

「美味しいのに~」

「顔の筋肉も休息させてくださいよ」

「カイの言う通りですよ、顔だって筋肉なんですから!」

「はーい」


 データがたくさん取れたリアムはホクホクと作業場を後にした。


「レモ君、顔が筋肉痛だったって聞いたけど大丈夫?」

「さっき、リアムがマッサージしてくれたから、笑えるようになった~」

「俺の筋肉痛より重症だな」

「カルロの筋肉痛より、若い子が筋肉痛なんだから大変よ!しかも顔‼」

「ルチア―ナさんも心配してくれてありがとうございます。もう大丈夫ですよ~。マッサージしてもらったし、カイにも顔の筋肉休息させろって言われたし~」


「おい、マルコ。顔の筋肉の休息ってどうやるんだ?」

「俺に聞かないで欲しいところです」

「顔の筋肉の休息ってそうやるんですか~?」

 きたっ!

「よくわからないけど、リアム君にマッサージしてもらえばいいんじゃないかな?」

「うん、わかったぁ~。朝は、痛くてプリンも食べられなくて大変だった~」

 痛みの尺度がプリンなんだ……。


 一方でカルロの筋肉痛の扱いはというと……

「痛いぞぉ、肩が……腕がぁ」

「カルロさん、また筋肉痛なのぉ?リアム君にマッサージしてもらったら?」

「あいつは「もうデータは十分です」ってマッサージしてくれない」

「そうなんだ~。プリン食べます?」

「プリン……」

「はい、どうぞ~。腕痛いけど食べられますか?あーんします?」

「食べられるわ!美味いなぁ……。筋肉痛が治る気がするぞ!」

「治りませんよ」

「カイ君~、そういうツッコミはダメだよぉ。病は気からっていうじゃん!」

「筋肉痛は病じゃないですよ?」

「そうなの~?」



132.


 ある日、リアムは軽い気持ちで書いた論文をこれまた軽い気持ちで学会に提出した。

 論文のタイトル

 『規模の小さい商会における多層的混沌構造の観察と妖精反応の相関性』

 タイトルは固いけど、要はマルコ商会であるいろんな混沌状態とルーチェの反応の状態。みたいな?

 こないだのレモの顔面筋肉痛はどこをマッサージした時が一番ルーチェが心配で光るかとかそんなのを集めたリアムのメモの集大成。

 ・レモのプリン食後と妖精光量の関係

 ・カイの効率化行動とカオス増幅率

 ・ニコラの掃除行動とエントロピー増大

 ・ルーチェの光反応の統計

 ・カルロの大声と妖精逃避率

 ・マルコの胃痛発生頻度と混沌指数

 リアムとしては自分が集めたメモのものだし。「誰も興味なんか持たないだろう」と思って退出。


 これが思わぬ騒ぎを巻き起こした。

 妖精学会としては「ここまで妖精の光について定量化した論文は初めてだ!」「混沌指数?……なんだこれは、新しい概念か?」「この被験者“レモ”というのは何者なんだ?」「“プリンの摂取量と妖精好感度の相関”!?これまでそのような見地から妖精を見た者などいなかった!」


 と、この論文でリアムは『若手研究者奨励賞』を受賞。

 リアムも知らなかった。


 ある日、職場であるマルコ商会に何やら分厚い封筒が……。

 そこに書かれていたのは、

「貴殿の研究は妖精行動学の新たなる道を切り拓くものです。是非次回の国際妖精学会で発表を!旅費・滞在費などはこちらで全額負担します」

 とのこと。

 

 大混乱のリアムをよそに、

 レモは、「リアムすごーい!なんだかよくわからないけど~」と言う。



 こうなってはT国としてはなんとしてでも国民の一人としたい。

「リアム殿、あなたはT国の宝です。どうか、…どうか亡命だけは……‼」

「いや、俺は今ここに住んでるんで。まだデータも取り足りないし……」

「リアム兄ちゃんはマルコ商会の職員なんだから!」

「リアムは返さないよ~!代わりにプリンあげるよ!」

「だいたいリアムは俺が拾った子だ!」



 T国大使の胃痛はかなりヤバいことになる。

 そんな大使の駆け込み寺(?)がレオナ商会。

「今日は輸出入の輸送ルートの確認だけなので、そんなに時間がかかりませんよ?」

「……レオナ殿の声は胃に優しい……」

「は?」

「いえ、何でも。輸出入のルートですよね」

「はい、えーと。いまこちらに今この商会が抱えている在庫がありますのでご確認を……」

「……」

「……」

「非常にわかりやすい説明で有難い限りです」

「え?普通の説明ですよ?」

「その普通が私にはありがたい」


「ああ、なんて静かで整然としている。天国のよう!」

「商談の場ですよ?」


「レオナぁぁぁぁ、手伝いにきたぞ!」

「はぁ、あなたに必要な事はありません。とっとと自分の商会に帰ってください」


 T国大使は驚いた。この落ち着いた場にカルロ商会長が……。自分のオアシスがなくなってしまう。

 レオナは冷たい目線でカルロを追い払うと、T国大使との商談を続けた。



133.


 カイは論文を書いてみた。タイトル『小規模商会における効率化とその結果』

 

「カイ…論文にしては短いですし、言葉のご使用とかあります」

「え?どこどこ?」

「エントロピーとエンタルピーを間違ってませんか?」

「そうなの?短いのは効率化です!効率化‼」

「なんかごちゃごちゃした状態っていうのはエントロピーですよ?」

「あ、そうだったら違う。恥ずかしい‼」


「わ~ん、カイが難しい言葉使ってるよぉ~」

「カイお兄ちゃんの論文よくわかんなーい」

「あそこで泣いてる子たちがいますよ?」

「急ぎ、プリンあげてくる!」

 ふむ、プリンをあげると効果があると。


「カイ?この呪文のような論文はなんだ?」

「やだなぁ、カルロさんも勉強してくださいよ~!」


「こんな状況じゃ俺の胃痛指数がまた上がる。…リアム的にはデータがとれてOKか?」



 学会の反応や如何に!

「論文としては短い。……しかし読み物として単純に面白い!」

「短いのも効率化では?」

「そう言ってしまえばそうだな」


 T国大使は、「カイも返せ~!」とマルコ商会へ。

「カイ兄ちゃんもマルコ商会の職員なの!」

「カイは上手にプリン切ってくれるんだよ~!プリンあげるから、帰ってください」

「カイも俺が拾ったんだ。知ってるだろ?」

 T国大使は胃が痛くなってレオナ商会の方へと言った。レオナ商会だけが今のT国大使にとってオアシス。あそこに行けば、胃が休まる。そう思っていたのに…。

「レオナ商会長は今日はお休みです」

 世間はT国大使に冷たかった…。胃も痛い。


 そんな中で、レモが「俺もリアムみたいに『~賞』が欲しい~!」と言い出した。

 うーむ、該当する学会とかないだけでしてる事は賞をもらえるくらいのことをしてるんだけどなぁ。


「ねぇねぇ、カイお兄ちゃん!明日仕事お休みでしょ?学校のみんなもレモ兄ちゃん好きだよ!だからさあ、手作りでメダル作って、レモ兄ちゃんにあげようよ‼絶対喜ぶよ?」

 ルーチェもクルクルと旋回して賛成した。


 翌日、放課後に子供達が集まって『レモ専用メダル』を作った。カイも作るのに参加。

「紐の長さもっと長くしないとレモさんの首くらいになっちゃうよ。ああ、それだと長すぎ。俺が実験台になるよ?」

「このくらいだね?」

「そうだね」

 ルーチェもキラキラして皆を応援している。

「ねぇ、賞の名前どうする?」

「プリン大好き賞!」

「妖精に好かれてるで賞」

「泣き虫でも頑張ってるで賞」

「レモがいると明るいで賞」

「俺は『混沌協力賞』かなぁ?」

「カイ兄ちゃんの固いよぉ」

「みんなに好かれてるで賞は?」

「いいよー」

「レモ兄ちゃん喜んでくれるかなぁ?」

「きっと泣いて喜ぶよ?プリン用意しないとね」



 「レモ兄ちゃんは凄いのでここに表します!」と言って二コラがレモに手作りのメダルをかけてあげた。

「えっとねぇ、「プリン大好き賞」「妖精に好かれてるで賞」「泣き虫でも頑張ってるで賞」「レモがいると明るいで賞」「みんなに好かれてるで賞」だよ!」

「いっぱいだぁぁぁぁ。うわぁぁぁぁ。うれしいよぉぉぉぉぉぉぉ」

「……この光量変化、記録しておきます」

「リアムはこんな時に……」

「レモぉぉぉぉぉぉぉ、良かったなぁぁぁ!」

「カルロ、静かにしなさいよ。妖精さん逃げたんじゃないかしら?」

「……この混沌、俺の胃痛指数がまた上がる……」


 この様子を見たT国大使は

「この街は平和だなぁ……そして私の胃痛も少し和らいだようだ」



134.


 そしてT国大使はT国国王陛下へ『胃痛療養のためにこの街に長期の滞在をする』という旨の文書を送った。

「ふむ、すると大使として後任が必要だな」

 そうしてT国から新大使としてこの街にやって来た。マルコ商会もトロピカルフルーツを輸入している手前、ご挨拶に行った。

「初めまして。私はマルコ商会で商会長をしていますマルコと申します。以後お見知りおきを。最近はマルコ商会で加工している宝石が話題になりがちなのですが、しっかりと毎日トロピカルジュースの提供もしております。傷んだトロピカルフルーツを輸入させていただいております。今後ともよろしくお願いいたします。スイマセン。商会の方が何かと忙しいものでこれで失礼させていただきます。誠に申し訳ありません。失礼いたします!」

 はぁ、リアムを連れて来ればよかった…。もう手遅れなんだけど。



「初めまして!私はカルロ商会の商会長でカルロと申します。こちらは「初めまして。私はカルロ商会で副商会長をしていますルチア―ナと申します。以後お見知りおきを。カルロ商会はご存じのように、T国から多くの香辛料を輸入しております。その縁で何かとお世話になる事もあるでしょうが、よろしくお願いいたします。ほら、商会長の貴方も頭を下げて!」

「いやはや、できた副商会長さんですなぁ。No.2がしっかりしている商会はかなりしっかりしていると耳にします」

「恐れ入ります」

「さきほどマルコ商会の商会長がいらしたが、お知り合いで?」

「マルコ商会はもともと、うちの商会長が出資して作った商会です」

「何と⁉」

「特に最近成長し、この国では他の追随を許さないような大きな商会ですよ?」

「それで忙しかったんですか」

「理由は色々あるんですけどね」

 職員が独特……。

「カルロ商会も大きな商会としてこの街でやっています。マルコ商会とは顧客層が異なるので、ライバル感もないですね。カルロ商会は高級感・富裕層向けですが、マルコ商会は庶民向けですね」

「いろいろ教えてくれて感謝する」

「いーえ、外交的なお付き合いをするのですからこのくらい。オホホ」

「では、我々もまだ仕事が残っているのでこの辺で失礼いたします!」

 

「なんなの?カルロ。遮ったりして!」

「『なんなの』はこっちの台詞だ。俺が話してたってのに、割って入るように入ってきやがって」

「ワザとよ。あなたがボロを出さないように先に手を打ったんだから、感謝してほしいくらいだわってどこ見てんのよ?」

「レオナ」



「初めまして。レオナ商会の商会長のレオナと申します。貴国と輸出入の関係はないのですが、今後できればと思っています。我が商会のコンセプトは『女・子供が喜ぶようなもの』を売りたいと考えています」

「ほう?例えば?」

「色鉛筆にしても、持ちやすいもの・可愛いものなんかがいいですね。もっと乳幼児がターゲッ

トになった場合は口に入れても平気なものというようになります。商会の内部も子供が転んでもどこかに頭をぶつけたり、怪我をしないように気を使っています。そのうち大使にも足を運んで実際に拝見していただけたらと思います。スイマセン。まだ商会で打ち合わせ会議があるので、この辺で失礼します!」


「レオナ!」

「何よ?忙しいのよ?カルロにかまってる暇ないの。これから商会内での会議なの。じゃあね」



135.


 一方で、マルコが早く帰るのには訳があった。

 カイが効率化というもの(言葉の響きとか)に味をしめてしまい、商会内の棚を勝手に移動させてみたり、決済すべき書類を分別してみたり(間違ってる)、するからだ。

 こんなことをすると、まずはレモが泣き出す。

「うわぁぁぁぁぁぁぁん!カイが引っ越し作業してるよ~。カイがどっかに行っちゃうよぉ~」(違う)

 そして棚を動かせば当然その裏には埃が……。掃除しようとする二コラ君。でも掃除しようとすればするほど散らかる……。結果、カルロが「お前らぁ、動くなぁ!」とか叫ぶことになる。

 すると怖がってレモは余計に泣くし、ルーチェは逃げ、リアムはデータを取る。俺の胃痛指数がまた上がるってるのでそれを含めて。


 という事態を鑑みての早退なんだけど……。やっぱり勝手に……。

「カイ。勝手に棚を移動させるな!」

「商会長。しかし、効率化を考えるとですねぇ。この棚の場所はココではなくもっとこっちに会った方が……」

 誰か教えてやれ。その棚に収まっている資料を使うのは元の場所がベストだと。

「カイ。効率化という言葉は誰に習ったんだ?効率を良くするためだろう?その棚、慣れた場所にあるのがベストだな。今、変えてしまってはいくら効率化しても慣れるまでの時間を考えるととてもじゃないが効率が悪い」

「なるほど」

 それよりも普段の無駄を省く方が効率化に繋がる。…というのは黙っておこう。



 翌日に目を泣きはらしたレモが出社してきた。

「レモどうした?」

「街の人がいっぱい賞をくれた。ぐずっ、ぐずっ、うわぁぁん」

 思い出し泣き?

「ルーチェが心配してるから泣き止んで!」

 ルーチェが光量MAXで点滅してる。眩しい。

「カイ、何があった?」

「まずはパン屋さんが『レモ君はうちの常連賞!』で、八百屋さんが『レモ君は野菜を褒めてくれる賞』。宿屋は『レモ君は挨拶が元気賞!』をくれまして…」

「それで嬉し泣きかぁ。レモらしいけど、限度があるよなぁ」

「それは俺も思います」

「思うなら、お前ら二人と二コラ君とルーチェはちゃんと真面目に仕事しろよ!」

「「は~い」」



 レモが面白そうって思うような仕事ないんだよなぁ。あ、そういえば。この商会には妖精さんいないのかなぁ?うーん、俺テストギリギリだったしなぁ。ルーチェがいるからいいんだけど、シンボル的なものが欲しいよなぁ。

 レモ作ってくれないかなぁ?面白くなさそうかなぁ?

「カルロさんの筋肉痛について論文書くのは面白くなさそうですよ?」

 いやリアムの基準じゃなくて、レモ基準。



136.


「二コラ~、この商会のシンボル的な宝石の加工とかって興味ある?」

「しんぼるって何?」

「象徴的なって意味。なんだけど~。例えばさぁ?森のリスを見るとこの商会を思い出すとかそういうの」

「えーと、“お鍋を見るとお腹がすく”みたいな?」

「ここは料理屋さんじゃないけどね。この商会にも妖精さんいるのかなぁ?とか思ってさぁ。ルーチェの他にね。俺のテストの結果がギリギリ合格だったけど」

「ルーチェのお友達できると楽しいね!ルーチェはどう思う?」

 光が点滅しているのがわかる。

「ルーチェも楽しいって!」

「レモとカイはどう思うかなぁ?」

「ぼくとルーチェが乗り気だからやってくれるかもしれない!でも丁度いい石あるかなぁ?」


「えー?この商会に妖精さん?いるの?いたら楽しいね~!ルーチェも楽しいね~!」

「そうですねぇ。ルーチェも二コラ君が学校に行ってる間はちょっとつまらなそうにしていますし、お友達ですね!」

「わーい!友達いっぱい集めようよぉ‼」

 そういうことで、商会のメンバー全員テストを受けることとなりました。

 カルロ……再び不合格

「何故だぁぁぁぁ!」

「そうやって大声出すところが妖精さんに嫌がられるんだよぉ」

 初代・2代目ナナイロレンジャーは全員合格。よって14名。と俺。で15名。


「わーい!お仕事お仕事」

「頑張ろうね~」

「プリンも買いましたからね」

「「やったぁ」」


 こうして、依頼順をすっ飛ばしての仕事が始まった。

「レモ兄ちゃん、ここの濁りがいい感じじゃない?」

「うん、なんかイイ感じ~」

「じゃあ、それを活かしてカッティングしますね」


 俺としては15も妖精さんが増えるだろうかと思っていた。ちょっとした小学校みたいな……。


 結果的に9名の妖精さんが増えました。名前つけてあげなきゃ可哀そうだよね。俺はきちんと見えないから、二コラ君に丸投げー。


 結果、ピコラ・モルト・スピラ・グラッサ・リーヴォ・フラミナ・ティント・ソルナ・ミュート と名前がついた。二コラ君ネーミングセンス良し。俺だと危ない。妖精1号・妖精2号…などとつけることになったかもしれない。


 ふと横を見ると、レモが号泣している。

「妖精さんがいっぱいだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」と嬉し泣き。

 カイがそんなレモのためにプリンを用意している。

 二コラがさっそく散らかし妖精スピラと追いかけっこを始め、カイはピコラと効率化談義に花を咲かせ、カルロはフラミナに吠えて逃げられている。そんな様子をリアムが「新しいデータが!」と大興奮。

 俺の胃痛指数は9倍に。


「二コラー、俺には8人しか認識できないぞ?」

「あのねぇ、一人は恥ずかしがり屋さんでほとんど光らないの。ぼくもあんまり見えないよ?ミュートって言うの。確かにいるからね!」


この作業場、今大変なことになってるなぁ。妖精さんがルーチェも含めたら10いる。そして各々好き勝手に動いてるからなかなかのカオスだなぁ。胃が痛い。



137.


 新大使がやってきた。なんでも、この街の主要な商会を回るらしい。

 名刺を見た。セレン=ルーシア。はぁ、名前を知ったそう言えば、旧大使の名前、知らないかも。付き合いは長いのになぁ。

 

「こちらが宝石加工の作業場となります」

「初めてこんなに多くの妖精を見たよ。えーと10体?」

「ミュートが見えたんですか?」

「ええ」

「うわぁぁん!ミュートが孤独じゃなくって良かったよぉぉ!」

 作業場の中はカオスになっていた。

 二コラがスピラと追いかけっこをしており、妖精たちはカルロがこちらに気付いて「大使殿!」と大声を出したことにビクッとしていた。

 大使としてはレモが泣いているにはなんだか癒され、二コラの追いかけっこも元気だな~と微笑ましくその目に映った。ミュートと言う妖精は自分だけは見えているようで、他の人は見えないのか?

 マルコが胃のあたりを押さえ、胃が痛いと言い出すも、この平和な状態を表しているのだなぁと思う。


 カルロがこちらに近づいてきたが内心はドキドキ。

「今日は何用でこちらに?」

「今日はこの街の主だった商会を回ろうと思ってたんだ」

「カルロ殿はこちらで何を?」

「いやぁ、あのですね、私は宝石加工職人のレモの護衛係でして……レモというのはあのさっき泣いてた子です」

「あの子が宝石加工職人?」

「そうですよ?あ、このあとカルロ商会に行くんでしたら、お送りいたします!」

「お願いしようかな?」



「ここがカルロ商会です」

「ようこそいらっしゃいました、大使。商会内を案内いたしますのでどうぞこちらへ。カルロ!レモの護衛をしててください!」

「レモはこの商会にとっても重要人物という事なのですか?」

「そうですよ?宝石加工の腕がいいですからね。レモへの宝石加工についてはカルロ商会とマルコ商会で契約済みです。レモへの受付はカルロ商会。もう、1年は予約が入っているんじゃないかな?というくらい人気の宝石加工職人です。T国からもなんども依頼を受けたと聞いていますが?」

「“妖精が宿る宝石”とかですか?」

「そうですね。妖精が宿るかどうかは宝石の持ち主によりけりですけれど。カルロ商会では他にガラスなんかを得意としています」

 流石に国王から宝石を買い取ったとは言えない……。

「T国から輸入した香辛料はクラッカーとして老若男女問わず愛されていますよ。激辛味の要望がありまして、ロシアンルーレット式に誰に当たるのかわからない。何人にあたるのかもわからない。誰にも当たらないかもしれない。というスリリングなものを売り出したところ、若者に大人気です。酒場でもちょっと酔いが回った方たちがそれを使って遊ばれるとか……。カルロ商会独自のものはやはりガラスですね。カルロ商会ガラスは庶民の間では高級品という認識です」

「副商会長直々の案内ありがとうございます」

「大使様を案内するんですもの。当然のことですよ」



138.


 次にセレン大使はレオナ商会へと足を運んだ。

「ようこそ、レオナ商会へ。先日は中座してしまい誠に申し訳ありませんでした」

「先日も思ったのですが、レオナ殿の声は癒し効果があるのですか?なんだが落ち着きます」

「そのような効果があると言われたことはありませんが?セレン大使を癒すことができるならなによりです。この商会のコンセプトもそんな感じですので」

「あ、本当に子供が怪我をしないようにしているのですね」

「小さい子は思わぬ怪我をしちゃうので、気を使いますよ!あれ?セレン大使の肩の上に妖精さん?」

「この商会のような静けさが気に入ったのでしょうか?ココに来たようですね。マルコ商会の皆さんには見えないようなので、二コラ君すら姿を確認できないと悲しんでいました」

「ああ、あの子は大抵の妖精が見えますからね。好かれますし。名前はミュートですか?ミュートが初めてなんじゃないですか?あんまり懐いてくれない妖精さん」

「静けさが好きみたいですね」

「この商会、開店すると子供達の声で騒がしくなりますよ?」

「そうなんですか、それは残念です。また商談のときにはここに来るか大使館の方に来てくださいね」

「あ、そうそう。胃痛持ちにならないように気を付けて下さいね!」

「??」




「そう言えば、旧大使の名前って……」

「メリオ=サルヴァン殿だよ。お前……知らなかったのか?マルコ商会たちあげる前からの付き合いだろう!」

「面目もありません」

「でもなぁ、大使ってストレス溜まるんだなぁ。胃痛って……」

「メリオさんいい人だよ~」

「メリオさんだけミュートが見えるんだよ!すごくない?」



 セレンが街を歩く。

 レモの泣き声が聞こえる。「元気で平和だなぁ」と思う。

 二コラが追いかけっこをしている。「子供らしくていいなぁ」と思う。

 カルロの大声が聞こえる。「活気があって何よりだ」と思う。

 妖精が10体いる。「美しい光景。T国ではお目にかかれない」と思う。

 マルコが胃痛で苦しんでいる。「これも平和の証だ」と思う。

 ルーチェが点滅する。「おや、癒してくれているのかい?」と思う。

 スピラが暴走している。「楽しそうだなぁ」と思う。


 そんなセレンの肩にミュートが乗るのをみてメリオ大使は酷く驚いた。

 メリオが酷く驚いたのを見た、レモはショックで泣いてしまった。そんなレモを見たカルロは「レモ、何があったんだ?」と叫び、その混沌っぷりにマルコは胃が痛くなった。

 しかしながら、当のセレンはその様子を見て癒されていた。


 マルコの胃痛はカオスに耐えられずに胃がやられるタイプ。

 対して吐血までしたメリオ大使は完全なストレスに耐えられずに胃がやられるタイプ。

 レオナの言うようにセレン大使は胃痛持ちになるだろうか?



139.


 リアムの中で今一番研究したいこと、それが『胃痛の分類化』。

 とりあえず、マルコの胃痛はカオスに耐えきれずに胃痛となるタイプ。

 メリオ大使はストレスに耐え切れずに胃痛となるタイプという事がわかった。


「俺の胃痛は?」

「カルロさんの胃痛というのは、腹筋の筋肉痛の延長なので、研究対象外です!」

「俺の胃痛も研究しろよぉぉぉぉぉぉ!」

「それは筋肉痛であって、胃痛ではありません」


 レモさんも胃痛になるのはなぜ?俺が知らないだけで新しい型か?

 本人は自覚してないところがポイントだな。

 えーっと感情が高ぶりすぎると胃が痛くなるのか……。これはプリンの食べ過ぎか純粋な胃痛なのか区別しにくいな。


 セレン大使の胃痛も新しいタイプ?俺は運がいいな♪

 なんか、幸福過ぎて胃が痛くなる…みたいな?そんなのあるのか?あるんだな。



「レモさん、レモさんの胃痛は“感情飽和型”……非常にレアな例ですよ」

「うわぁぁん、リアムが難しいこと言う~」

「はいはい、レモさんプリン上げますから泣き止んでくださいね?」

 プリンを渡してから、泣き止むまでの時間もキッチリとリアムはメモしていたりする。ついでにルーチェがレモを心配している様子もメモしている。


「メリオ大使、お久しぶりです。メリオ大使の胃痛は“ストレス型”……それも重症例ですね」

 メリオ大使は胃を押さえた。「やはり…ここはやはりレオナ殿に癒されたい!」


「マルコさん、マルコさんの胃痛は“カオス型”……街の指標になりますね!」

 ついにマルコが倒れた。

「あれ?なんか酷いこと言っちゃったかなぁ?データ、データ♪」

「リアム!お前はまず助けろよ!大体、街の指標ってなんだよ?」

「胃痛の具合で、街に活気があふれているとかがわかるんですよ!」

「お前なぁ。目をキラキラさせて言うような事じゃないだろ!」



「この街の胃痛は……平和の証です!」

 リアムは宣言した!


「そうだろう?そうだろう?やはりなぁ」

 と言うのはセレン大使。


 レモはリアムの宣言を聞き、泣いてしまった。

「そんなことないもん。本当に胃が痛いんだよ。うわぁぁぁぁん!」

 この場合は泣き過ぎて胃が痛くなる。


 そしてマルコはこの混沌とした状況でまた胃が痛くなり、メリオ大使は平和なのか?とストレス胃痛と共に思う。


 そこでカルロの大宣言。

「胃痛なんて筋肉で治る!」

「カルロさんはそのうち脳ミソまで筋肉になってしまいますよ?」

 リアムの一撃にカルロもダメージ!


「あなた達全員病院に行きなさいよ!絶対どっかおかしいから」

「病院は怖いよぉ!」

 レモがレオナに甘えだす。カルロはそんなレモを引きずるように無事(?)全員病院に行きました。



「うーん、ストレス性胃炎以外胃痛関連はわからないねぇ。カルロ商会長は筋肉痛だね。冷湿布いるかい?胃炎には胃薬出すけど、必要な人っているの?」

 メリオ大使が全力で挙手。おずおずとマルコも挙手。レモは自覚症状ナシだし。セレン大使にいたっては幸せ過ぎての胃痛なので、胃薬の処方は不必要。

 結局はメリオ大使とマルコの二人だけ胃薬を処方していただき、カルロは冷湿布を。


 この結果をリアムが聞いたら、「やっぱり平和じゃないですか!」と騒ぐことだろう。そしてマルコの胃痛は悪化だろう。




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