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『この街で、俺はもう一度生きる』ーー異議あるか?  作者: satomi


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100.

100.


 レモと一緒に生活することになった人だけが何だか違う感じ。

「どっち食べる~?」

「カップ麺食べたことないから、聞かれてもわかりません!」

「じゃ、二つともあげる~。俺は袋麺食べるから」

 袋麺⁈ そっちも食べたことない。未知の世界がここにはある!

「カップ麺、めっちゃ美味いっす」

「袋麺も美味しいよ?今度食べる?」

「是非!」

「えーと、食後のデザート♪プリン食べよ~。半分こね。プリンを半分こ難しいなぁ」

「食べたことないからわからないです……」

「あ、そうなの?じゃあ、全部食べていいよ?今日はデザート我慢する~!」

 意外な才能発揮!プリンを完全に半分に。

「ふぅ、半分にしました。一緒に食べましょうよ。俺は馬鹿だけど、我慢が体に悪いことは知ってますよ?」

「優しいねぇ。ありがとう」

「すっごい美味しいっす」

「ダメだよ~。アレクさんに怒られちゃうよ?って今更なんだけどね?うーん、『すごく美味しいです』かな?家の中は楽にしていいよ~。家だもんね」

「あの…レモさんにお願いが……。自分に名前つけてくれませんか?」

「え~?ワケアリで本名捨てた系?」

「違います。最初からありません。自分は貧民街で産まれてすぐ、捨てられたんでなまえがないんですよ」

「そうなんだぁ。うーん、カイは?呼びやすいし?」

「由来は?」

「うちで飼ってた犬~」

「犬……。あ、でもレモさんがつけてくれたと思うと元気が出ます。ああ、俺は今日からカイなんだなぁ」



「はぁ?この子、プリンをキレイに半分こにしたの?」

「だってひとつしかなかったから、俺は我慢しようとしたんだけどさ。カイが真っ二つにしてくれたから、二人とも食べれたよ♪」


「ちょっとマルコ!このカイって子すごい才能の持ち主よ。プリンを真っ二つよ?無理よ。キレイに切ろうとすれば、大きさが不均等になるし、均等にしようと思うと形が崩れる。そんなプリンを真っ二つよ?」

 ふむ、手先が器用だと言いたいんだろうか?

「いい人材を発掘したわね。そしてレモが『カイ』って名付けたそうじゃない。完全に懐いてるわね」


 今までは二コラが濁りから直感的に何かを探し出して、レモが形にしてたけど……。

 形にする段階でレモから『こんな感じ~』とか指示出したらすごいものができるんじゃないか?

 レモの『こんな感じ~』って言うのが怖いけど。レモの言葉はレオナが翻訳してくれるかな?


 俺はSanctuary Silentに行ってマスターにも話をしてみた。

「それは凄いですね!そうだなぁ、二コラ君が石の中にストーリーを探して、あとはどう処理するのがいいかをレモが決め、そのカイって子がカッティングすればものすごい宝石が完成しそうですね!」

「うーん、まだカイにはカッティング方法とか教えてないけど技術を習得したらそんな感じになるのかな?他の二代目ナナイロレンジャー達も初代に色々叩き込まれてて大成してほしいな。街の人達とも馴染みそうで良かった」

 カランカランと戸が開く音が聞こえた。

「それもこれも俺がT国であいつらをスカウトして連れてきたからだろう?俺に感謝しろよ?」

「いつもカルロには感謝してますよ(酔ってない時に限る)」

 酔いが回ってまた始まった。

「レモが本格的に偉くなったなぁ。俺は嬉しいぞぉぉぉぉぉぉ!そして悲しい!俺から離れていってくれないでくれれぇぇぇぇぇぇぇ!」

 はぁ、また街角に落ちてるのかな?



101.


 翌日の朝、マルコの予想通り街角に落ちていた。

「マルコ君!この人ってカルロ商会のカルロさんだろう?こんなとこで酔いつぶれてていいのかい?」

 よくないと思います。

 俺はナナイロレンジャーの初代と二代目を呼んで、カルロをマルコ商会のカルロが使ってる部屋のソファに寝かせた。

 はぁ、レモの警護係なんだけどなぁ。


「えっとねーえ、このカッティングはノミを斜めに……」

「あら、レモもやればちゃんと説明できるじゃない!」

「えへへ」

「ノミ持ったまま頭かく動作、危ないじゃない!気を付けなさいよ!」

「は~い」

 レオナに言われるとしょんぼりするなぁ。


「こんな感じですか?」

「あら、カイ。上手ねぇ。ちょっとレモが教えただけでそこまでできたの?」

「なんとなくこんな感じかな?って」

「わかる~。なんとな~くこの方がキレイに見えるかなぁ?とかでしょ?」

「そんな感じです」

 どうしよう。レモの言葉を訳するつもりだったけど、二人がわかり合ってる……。



「二代目ナナイロレンジャー、まずは服装チェックだ!……よし!」

「よっしゃー!」

「誰だ?今大声で叫んだやつは?」

 仲間意識で告発をすることはなかった。

「はぁ、連帯責任だ。全員正座!15分そのままで」

「マジかよ?」

「言葉遣い!」

「本当ですか?」

「本当だ」



 その様子を見ていた初代はちょっと不思議だった。

「俺らあんな事したか?」

「いやしてない」

「アレクさん、ストレス溜まってるのか?」

「経理ができるやつっていないからなぁ」



 またも不思議な才能が……。

「アレクさん、俺経理できます。本当です。あの……俺……今まで内緒にしてたけど」

「元は貴族なんでしょ?わかるわよ。あなただけ妙に姿勢がいいもの。生まれた時からの癖みたいなものかしら?三つ子の魂百までとはよく言ったものよね」


 そこかしこで主にナナイロレンジャーが「おい、あれって三つ子は百歳まで長生きするって意味じゃなかったのか?とか言ってる」。……違うよ?ルチア―ナさんには言えないみたいだからあとでこっそり教えてあげようか?ルチア―ナさん「そんなことも知らないの?」とか言いそうだもんな。ナナイロレンジャー、怖いんだろう。


「元貴族なら、読み書き計算はできるわね。よかったじゃない?アレク君。いい人材が見つかって」

「ああ、まあそうなんですけど」


「ルチア―ナさんは朝からどうしたんですか?」

「なんか、カルロ商会のトップが街角で酔いつぶれて寝てたって噂なんだけど?」

 真実です。回収しました。今は部屋で寝ているハズです。


「レモぉぉぉぉぉぉ!わかりあえる同士ができて俺は感激だぁぁぁぁ!」

「何アレ?まだ酔ってるの?」

「恐らく。酔ってる時の自分の様子を知らないみたいですからね」

「ふーん」

 ルチア―ナさんが不敵な笑みを浮かべる。正直怖い。

「そう言えば、仕事は?」

「うちの商会は部下が優秀だからちょっとくらい私がいなくても平気なのよ。毎日大騒ぎするような仕事もないし」

 確かにこの商会は毎日が大騒ぎだけど…。


 

102. 


 朝はジュースの仕込み。夕方は残ったジュースをゼリー屋さんに送り届け、初代と2代目のナナイロレンジャーが街に繰り出し、情報収集。レモは宝石加工。カイも参加。カイがなぁ……。


 なかなか腕がよくってT国大使から「T国に返せ」とか言われてるんだよね。

 ルチア―ナさんに相談してみた。

「貧民街にいたのを見出したのはカルロでしょ?手のひらを返したようにカイの才能がわかったからって『返せ』は酷くない?他の子は?宝石加工とかそんな技術だけでしょう?せこいこと言うわねぇ」

 そんなルチア―ナさんは怖いもの知らずな事を言うなぁと思う。正論だけど。


 レオナも合流したから、レオナにも相談してみた。

「はぁ?馬鹿じゃないの?自分は貧民街にいる時に見つけることができなかったっていうのに、見つけたこっちに言う言葉じゃないわね。どっちかというと「どうぞ育てて下さい」とか言うもんじゃないの?貧民街よ?自分は見向きもしなかったんでしょ?」

 レオナも辛辣。


「あ、レオナお姉ちゃん!こんにちは!」

 すぐそこにルチア―ナさんがいるからだなぁ。礼儀正しい。

「母さんもいらっしゃい」

 今日は学校が休みの日だから、朝から二コラが商会にいる。

「母さんもレオナお姉ちゃんも聞いてよ!カイ兄ちゃんすごいんだよ?皆で食べようってプリンを3等分してくれたの。ちゃんと大きさとかぜーんぶ一緒だよ?」

 カイ……すごいな。3等分は難しいのに。

「あらあら、朝ご飯足りなかったの?」

「10時のおやつだもん!レモ兄ちゃんも言ってるもん!」

 レモ…大人気ないな。……プリン好きなんだな。



 アレクはあいつを連れてったみたいだけど、大丈夫か?

「お前、名前は?家名付きで」

「リアム=ヴァルシオン」

「なんで貧民街に?」

「俺は特に嫡男ってわけじゃないが、あの家はT国じゃ結構力のある家だったと思う。ある時、って俺がデビュタントに出る前に家が没落。俺はよくわからないが、政争に負けたんじゃないかと思う。それかうまい投資話に手を出して失敗したとか?それからは、親戚を頼りにしたが、嫡男でもない俺は大してうまみもなくほどなくして、俺は貧民街に流れ着いた。そこからは生きるのに必死だった」

「まぁ、苦労したんだな。俺は運よくマルコ商会長に拾われたが、母親がしつこかったな。この国が王制から民主制に変わる時で、母親がいつまで経っても貴族風を吹かせてて参ったよ……。いや、もう昔の事だけどな。あの人とは縁を切ったも同然だ。今何をしてるのか、どこにいるのかも知らない」

「仕事の事なんですけど、俺、マジで経理できます。親父が領地経営まともにしなかったんで俺がしてたんです」

「お前の家が没落した原因ってお前の親父さんの怠惰じゃねーの?」

「あらためて、聞くとそう思ってきました」

「ってことは、計算が得意なのか?」

「そうですね。帳簿がお友達人生ですよ」

「微妙な人生だな……。貧民街で友人に恵まれて良かったな」

「そうですね」



103.


 それからというもの、アレクの仕事量は少なくなり2代目ナナイロレンジャーへのしごきも緩和されるようになった。


 カイとレモは二人で微妙な感じだ。

「ここをこんな感じでカッティングするといいと思うんだけど、どう思う~?」

「そうですね。俺だったら、こうかなぁ?」

「スッゲー、カイ。イイ感じ~」

 これに二コラが加わるともう誰にも止められない。

「ねぇ、お兄ちゃん達。これさぁ、お魚が泳いでるみたいにできるかなぁ?せっかくお魚見えるんだもん。泳いでほしいよ~」

「そうだよね~。カイ、できる~?」

「光の加減でうまくいけばできるかな?二コラ君待っててね!」

「うん!」

 なにこれ。なんなんだ?ものすごい宝石が出来るの?護衛係は何してるの?

「おかしい。目から鼻水が止まらねえよ、畜生!」

 ……。なるほど。レオナは自分の商会忙しいのかな?


「お魚が泳いでる感じにできるなら。小鳥さんが飛んでる感じとかも出来るかなぁ?」

「カイならできるかもね~」

「この炎から不死鳥が生まれるとかできたらカッコよくない?」

「おお!二コラ天才!スゴイかっこいいね~」

「だよね~!」

 なんだ、この空気は。緊張感があるのかないのかわからない。フワフワしている。




 その日の夜、俺はSanctuary Silentに一人で行って、このフワフワした微妙な空気感を伝えた。

「あー、多分。天才同士の語らいみたいな感じじゃないですか?二コラ君は宝石の濁りから何かを見出す天才ですよね?カイはカッティングの天才。プリンを3等分とか常識外れですよ。レモ君はそんな彼らの指揮者みたいな感じでしょうか?それも天才のなせる業ですけどね」

「凡人の俺にはわからない空気感という事か……。あ、そういえば。カルロが拾ってきた中に逸材がもう一人いて、そいつはT国の元貴族だった。だから読み書き計算ができるというわけで、経理の方に回した。アレクの負担が減って、アレクは助かってるみたい」

 カランカランと店の戸が開く音が聞こえて素面のカルロ(久しぶりに見た気がする)が入ってきた。

「マスター、俺にはアマーロ・サワーを」

 普通に注文してる……。

「流石は俺だよなぁ。貧民街で超優良物件を2人(今のところ)も発掘。自分の人を見る目が怖くなるよ」

 なんて最初はすごい俺様キャラでカッコよかったのに、酔いつぶれて。

「カイもリアムも連れてきてよかったぁぁぁぁぁ!あいつらの人生を正してやれたみたいで俺は嬉しいぃぃぃぃぃぃ!レモにも友人がいっぱいで良かったなぁぁぁぁぁぁ!もうT国にとられないだろう。あいつの居場所はココだ!ここなんだよおぉぉぉぉぉぉ!」

 と、泣き潰れた。マスター、ワザと酔いやすいお酒混ぜた?疑惑増えるよ?だって奥に引っ込んで爆笑してるし。俺は笑えない。

「はいはい。わかりましたよ?おとなしく帰りましょうね?」

 と、カルロを仕方ないのでマルコ商会のカルロの部屋に連れて行った。全くそんなだからルチア―ナさんが怒る。



104.


「あ、カルロ兄ちゃん!あのね、今街の子供達の間でカルロ兄ちゃんの声真似が流行ってるんだよ!」

 二コラには悪気はないけどなぁ。うん、俺は知ってる。たまに耳にしてビビるから。

 上機嫌で街中に出て行くみたいだけど、街中はかなりの地獄だと思うよ?

「レモぉぉぉぉぉぉ!俺を置いてかないでくれぇぇぇぇぇ!」

「フン、ぼくの方が似てるもんね」

「レモぉぉぉぉぉぉ!俺を置いてかないでくれぇぇぇぇぇ!」


「あら、カルロ商会長!どうしたの?街に出て」

「あ、いや。たまにはマルコ商会みたいに街中で情報収集もいいかな?なんて思って……」

「ゴメンなさいねぇ。うちの子が勝手に声真似しちゃって。酔うとカルロ商会長、ヒトが変わったようにあんななるんだもの」

「本当なのか?」

「本当よ。あれ?知らなかったの?無意識?いやぁねぇ、無意識であんなことを叫んでるのよ?街の人みんな知ってるんじゃないかしら?」



「この俺が街の人にあんな風に思われているなんて……。もっと、こうジェントルマンなイメージだと思ってた……」

「何がジェントルマンなのよ!あなたは自分がカルロ商会に与えるイメージというものを考えたことないの?高級感が大事なのよ?それをあんな失態……。他にも色々と聞いて回ったわ。この報告書を見なさい!」

~商会長の失態に関する報告書~

・パン屋前にて『レモは天使』と叫んだ

・八百屋前で『俺置いて行かないでくれ』と叫んだ

・橋の上で『孤独な俺の前にレモは光として現れた』と叫んだ

・酒場の前で『俺はレモの盾だ』と叫んだ


「こういう報告が上がってるのよ。だいたい、街角で酔って寝てるとか何?二コラに悪影響があるようなことしないでよ」


「あ‼カルロ兄ちゃん、戻ってきたの?ぼくもできるよ?『レモぉぉぉぉぉぉ!』」

「スゴイスゴイ。二コラ君、俺に声似てる~」

「もう…やめて……」

「え~?似てるのに~」

「俺、恥ずかしい」


「そういう羞恥心があるなら、もう悪酔いして街角で酔いつぶれて寝ない事ね!」

「え~?酔ったら、街角で寝てもいいの?」

「ダメよ?カルロはダメな見本。カルロみたいになっちゃダメよ!」

「うん。ぼくはレモ兄ちゃんみたいになるんだもん!」


「二コラ君!こないだ言ってた。お魚が泳いでるみたいに宝石できたよ。難しかったなぁ」

 通常あり得ないからね。

「先ずはこっちから見て、その次にこっちから見るでしょ?それを繰り返すとお魚泳ぐよ?進まないけど」

「うわっ、本当だ!お魚泳いでるよ!母さんも見てよ~」

「あら、すごいわねぇ。泳いでるわ。カルロは……使えないわねぇ。いいわ。マルコ商会長!こういう宝石唯一無二だし、カルロ商会で扱わせてもらえないかしら?」

「それは、えーっとマルコ商会で生産して、販売はカルロ商会ってことですか?」

「そう。いいもの作ってもマルコ商会に顧客様はいないでしょ?高級路線で」

 それはそうだな。庶民感覚でやってるから。

「いい話ですね。6:4くらいですか?取り分」

「マルコ君は本当に無欲ね。7.5:2.5くらいじゃないかしら?」

「そんなにいいんですか?」

「作ってくれなきゃどうにもならないし、いいわよ?今度正式に契約書を持ってくるわ。二コラ!帰るわよ!」

「は~い」



105.


 レモ指揮で魚が動く宝石の噂はT国まで届いた。


 やはりというか、T国王室から無茶ぶりが『この宝石で神話を表現してほしい』と渡された宝石はDランクだろうな。と一目でわかってしまう宝石。

 神話というのが『炎の中からドラゴンが現れ、国を守護している』というもの。


 レモは「炎の中から産まれるのはドラゴンじゃなくてフェニックス……」とか渋っていた。仕事だから諦めて下さい。


 翌日に来た二コラも「え~?炎から産まれるのはドラゴンじゃなくてフェニックスだよぉ!」とちょっと不機嫌。

「『ドラゴン』って名前のフェニックスにしたらいいんじゃない~?」

「レモ兄ちゃん、やっぱり天才!」

「えへへ~」

 いいのか?でもまぁ神話だし解釈の仕方は千差万別。

「そしたらさぁ、この手前の濁りが炎でしょ?奥の方はお城?」

「そうだねぇ。カイはどう思う~?」

「T国だし、一応ドラゴンを登場させておくのが無難かなぁ?登場するけど炎の中からじゃなくていいじゃん」

 俺にはもう止められない天才ワールド。好きなように作ってください!

 レオナがやってきてくれた。

「『神話を表現しろ』って依頼よ?『再現』じゃないのよ。だから、あなたたちで好きに表現するといいわよ。その神話が『炎の中からドラゴンが現れ、国を守護している』ってだけよ。


 その言葉で皆楽になったようで、楽しそうに仕事をするようになった。このままではいやいや仕事するんじゃないかとちょっとハラハラしたたけど、なんとかなってよかった。



 完成した宝石を見せてもらった。

 炎の中から生まれたフェニックスが城を抱き込み、ドラゴンが城の前に立ちはだかる。二匹が盾と矛のような感じで城を守っている。


 これだけのことをすればT国も許してくれるだろう。

 というより、カイを返せとか言うのは止めてくれ。


 

 結果、T国王族は大満足だったらしい。T国大使もそのまま大使館にいるし、俺としても嬉しい限り。T国国王陛下が毎日のように宝石の光の加減を調節して楽しんでいると聞いた。



 だというのに、作った本人たちはのん気なもので……。

「カイ~、二コラ~、3人でプリン食べよ~!」

「うー、夕飯入らなくなったら困るから、ぼくは我慢する!」

「二コラは偉いなぁ。カイ、袋麺食べる?」

「え?カップ麺を超える美味が?」

「こえてるかはわかんないけど~?美味しいよ?」

「いただきます」



 今度、2代目のナナイロレンジャーを連れて買い物に行ってみようかなぁ?なんて思う。世の中の美味しいものを知ることも結構大事だから。



106.


 私は何をしていたのだろう?

 マルコ商会に送り込んだ宝石加工職人とか全滅。巡礼者化。成功するのはド素人。

 カルロ商会の商会長が貧民街で拾ってきた七人の中にカイがいた。ド級の大成功。才能を見出したのは確かにマルコ商会の人間だがカイはもともとはT国民!我が国の人間。

 尚且つマルコ商会には元貴族の青年がいると聞く。しかも、名門ヴァルシオン家次男!この二人だけでも我が国に返してもらいたい。

「ああ、胃が痛い……」

「どうぞ、胃薬です」

「お前にも苦労をかけるなぁ」

「とんでもございません」


「あ!大使のおじちゃん。おじちゃん昨日酔っぱらって、街に向かって『国王陛下に怒られるぅぅぅうぅぅぅぅ!』とか叫んでたよ」

「他の人には言わないで」

「えー?でも皆知ってるよ?」

「胃、胃が……」

「どうぞ、マルコ殿からのカモミールティーでございます」


 いっそのこと、カイを正式に技術顧問として我が国に招待しようか?

「カイに手紙で招待している旨を伝えよう!」


 悲しいかな。カイは文字が読めなかった。

「リアム~、なんて書いてあるの?」

「ん~?カイを技術顧問として招待したいんだってさ」

「手紙って返事必要なの?」

「普通はそうかな?」

「それじゃあ、『今はここでの仕事が忙しくって無理です』って断っておいて~」

「大使って重要人物なんだけどなぁ。まあいっかぁ」

 リアムはカイに言われたまま返事を書いた。


 返事を見て私は膝から崩れ落ちてしまった。ん?代筆リアム=ヴァルシオン。とある。ヴァルシオン?まさか……あのヴァルシオン家の?


 今度は直接リアム=ヴァルシオンに手紙を書いてみた。

 返事には『確かに自分はヴァルシオン家の血筋だが、貧民街での生活の方が充実していたと言えば充実していた。さらに言えば今の生活の方がずっと充実しているので関与しないでいただきたい。あ、カイも今の方が楽しそうなので、そっちの関与もしないでいただきたい』とあった。丁寧に絶対拒絶。

 嗚呼、私は何か運勢が悪いんだろうか?人脈に恵まれていない?




「レモ、珍しいわね一人でプリン食べて」

「うーん、なんかカイがホームシックなの?なんか考え込んでた。カイじゃないと半分ことかできないから~」

「どーせ私がやったら崩れるわよ!」

「そういうつもりじゃなくて、カイなら完璧なのになぁって」

「あら、カイ。ホームシックなの?」

「ホームシックって何ですか?」

「うーんと、離れた故郷が懐かしくて、懐かしの味とかを体が求めちゃう病気みたいな?」

「貧民街にそんなものありませんよ。それより、今日の夕飯について熟考してたんです!どんな美味しいものが出てくるのか。心の準備をしないと!」

「なーんだビックリした~。もう一個プリンあるよ?食べる?食べすぎですよ~」

 そう言いながらも三等分して3人でプリンを食べてる優しいやつだと思う。



107.


 T国王家からまた依頼が来たとT国大使から聞いた。なんでも『神話の第2章を』とか言う依頼だ。



 しかしマルコ商会としては、依頼は依頼順というものにしなくては、いつまで経っても……ということができてしまうので、あくまでも依頼順ということをT国大使に伝えた。


「えーと、今入っている依頼順とレモたちが依頼を処理する日数を考えますと、およそ半年後に依頼が完了となります。商会は信用第一ですので、順序も守れないようでは信用が失われてしまいます」


という旨の手紙を大使に送った。返事は

「国王陛下の依頼を最優先に!」というものだった。


「全く、順序も守れないんですか?」

「おうさまなのに、順番守れないの?」

「二コラ君も思うだろう?」


「仕方ないわねぇ、直接言ってくるわ」

 ナナイロレンジャーが震え上がったのは言うまでもない。



「あなたがT国大使かしら?私はカルロ商会No.2ルチアーナと申します。用件を言うわ。T国がマルコ商会に依頼してる宝石には私の可愛い息子も関係してるのよ!」

「それはもしや二コラ少年?」

「あら?ご存じ?将来はレモ兄ちゃんみたいになりたいってレモ君にベッタリよ。そういうわけで、教育上良くない『順序も守れない』なんてことはやめてくれないかしら?さっきなんか二コラに「おうさまなのに順序も守れないの?」とか言われたわよ」

「……申し訳ありません。国王にもそのように伝えておきたいと思います」

「わかればいいのよ。私はまだ残った仕事があるから失礼するわ」


「クッ……胃…胃が……」

「胃薬を‼」



 そういうわけで、レモたちの仕事は依頼順に行われた。

「ぼく楽しみにしてたんだ。パン屋のオバサンからの依頼」

「えーと、パン屋に置くのに相応しい宝石がいい。……すごく曖昧ね」


「えーっとねー。パンの精霊さんは絶対羽根生えてると思うんだ。それでね。パタパタするの」

「かわいいね~」

「うん!絶対可愛いよ~‼」


 どうしよう。私にはコッペパンに羽根が生えてるのしか浮かばない‼これが天才と凡人の差なの?


「こんな感じ~」

 二コラ君はまだ小学校入りたてだもんね。そんなに絵が芸術的じゃないよね。

「⁇」

 ある意味芸術的だけど……レモ達はわかるの?

「そうそう、こんな感じだよ~。さすが二コラ!わかってる~」

 ……わかりあってる。私にはわからない世界。



「この濁り使えないかなぁ?レモ兄ちゃん~!あ、ズルい。一人だけプリン食べてる」

「誤解!ちゃんと3等分じゃない、4等分してもらってるから二コラの分もあるよ。レオナさんもどうぞ」

「あら?私の分もあるの?」

「レモー‼俺の分は?」

「あ、寝てると思って4等分でやめてた。起きてるってわかってたら5等分だったんですけどねぇ」

 自業自得だと思う。



108.


 T国大使はごく自然に、ルチア―ナさんに言われたようにT国国王陛下に報告。


「レモ殿が重用している二コラ少年の母親に、「教育上良くない『順序も守れない』なんてことはやめてくれないかしら?さっきなんか二コラに「おうさまなのに順序も守れないの?」とか言われた」など言われました。そのように言われては私はなんとも……」

「確かに正論だ。しかし、王族からの依頼だぞ?」

「はぁ。マルコ商会では順序が重要のようで、今依頼をすると完成は半年後だとか……。待つしかないのか……」

「二コラ少年は他に何か言ってなかったのか?」

「今、取り組むのはパン屋の宝石らしいです。なんでもパン屋において不自然じゃない宝石をいらいしたようです」

「宝石を置いていることが不自然だが、まあいい」

「宝石の中に『パンの妖精がいる』とかなんとか言ってましたけど。可愛らしい子供らしい発想ですよね?」

「パンの妖精?初めて聞くなぁ。興味がある。見に行くことは出来ないだろうか?」

「国王がその王座を空けることは出来ないかと…」

「宰相、お前の知恵で何とかしろ!」

「宝石自体をT国に借りるという事は無理なのでしょうか?」

「依頼順が重要視されているなら、不可能だろうな。ん?大使どうした?」

「胃が痛く……すみませんが退室してもよろしいでしょうか?」

「そんな理由なら仕方あるまい。王族直属の医者もつけよう。早くよくなるように」




 T国大使の国王陛下への報告は大変だったと聞く。

 その一方でレモの方だが……。

「パンの妖精さんてこんなかんじかな?」

 レオナは自身がスケッチした絵を見せた。レオナは決して絵が下手ではない。どちらかというと、美術は得意な方だ。

「違うよ~。レオナお姉ちゃん!こんなだってばぁ」

 何度二コラ君の描いたパンの妖精を見てもわからない……。石が完成するのを待とう。

「ところでどの石を使うの?」

「えーと、パンの色に近いから黄色い石にしようかと思ってる。でも、その石にパンの妖精がいるかどうか……」

 どうしよう⁇本気で悩んでる。

「プリンでも食べて考えましょうよ!カルロ商会長は寝てる……わね(何のためにいるんだろう?)カイ君、4等分にお願いできる?」

 カイはプリンをキレイに4等分にした。

「やっぱりプリンと同じで黄色の石がいいと思うんだけど、どう思う~?」

「ぼくはパンの妖精さんがいればいいよ」

「俺はレモさんに従う~」



 依頼順だけど、今はマルコ商会がレモの宝石の受付場所になってるけど、ゆくゆくはカルロ商会が受付場所になる。


 儲けの取り分が7.5:2.5だけどいいのかな?そんなにいただいて。

 計算面倒くさい(細かく)なりそうだけど、リアムならできるよね?アレクが褒めるくらいだし。



109.


 えーっと、マルコ商会でのレモへの依頼はT国王室からの依頼をラストにして、それ以降はカルロ商会での依頼という事にしたいなぁ。

「そういうわけで、リアム!依頼の受付の引継ぎをこことカルロ商会の間で頼む」

「承知いたしました。今後の依頼は全てカルロ商会で受け付ける事。依頼順を必ず守る事。マルコ商会での受付ラストはT国王室。ということでいいですか?」

「ああ、あと現場で気づいたことがあればリアムの采配で片付けてOK」

「そのように。えーと引継ぎなので今日からでもした方がいいでしょうか?」

「早い方が混乱がなくていいだろう。あと、『レモへの依頼はカルロ商会』っていうのを世間様に知らしめる効果もある」

「わかりました。そのように動きたいと思います」


「残りの~!安心するのはまだ早いぞ。まずは服装チェックだ!……よし、だいぶ良くなってきたな。言葉遣いについてはその場で正すから覚悟しておくように!」

「「「「「はい!」」」」」

「よし、いい返事だ。さて、今日の予定は…ああ。まぁお前らはいつものようにやっとけ!」

「「「「「はい!」」」」」

「アレク君スパルタねぇ。なんか嫌な事があったのかしら?」

「私の事ですか?私は充実した生活を送っていますよ?なかなか骨のある直属の部下もできましたし」

「まぁ、良かったわね。いっつも大変そうだったもの」



 アレクは経理の仕事をしに自分の部屋(経理の部屋)へと戻って行った。

「リアム、まだまだ教えなきゃならない事は山積みだ」

「うーん、一応俺は領地経営をさらっとやってたんですけどね」

「馬鹿野郎!領地経営と商会経営は全然違う。まず、この帳簿の付け方だけど……」

「こんな感じですか?」

「あ、ああ。で、どこで覚えたんだ?」

「領地経営……。でもいちいち計算が面倒なので自動化しますね」

「お前は……天才か?」



 その後、アレクはレモにも苦言を……。

「材料費がかかりすぎてるぞ?コラ、プリン食べてる場合じゃないだろ?」

「だって~、せっかくカイがキレイに真っ二つに切ってくれたから。あ、アレクも食べたかった?」

「……」



 リアムはマルコ商会に戻った後に一度アレクと合流したが、リアムはリアムでレモ達に会っていた。

「パン屋からの依頼は今日中に片付けてほしいんですけど……って今日一体何個プリン食べてるんですか?」

「え~?わかんない。結構たくさん。でもカイが切ってくれてるから、合計で何個かはわからないなぁ」


「リアム~、なんか手紙来たんだけど、読めないから読んで!」

 これ、ラブレターだけど……俺読むの?

「えーっと概要だけ言うとラブレターなんだよ。カイの事が好きです!好き好き!ってかいてある」

「俺は、宝石加工好き好き!だからさようなら。えーっと手紙返すのがルールだっけ?」

「これ、直接渡されたのか?住所とか書いてない。ラブレターだと思ったら受け取るなよ~」

「思わなかったんだもん」


 俺が商会内を歩いていると都合よくもリアムが見つかった。

「リアム、会いたかった!T国大使がお前に会いたいんだって」

「俺は正直会いたくないです。どうせ大使はT国に戻れとか言うんでしょ!」



 俺はリアムを連れてT国大使館に行った。

「なんか先日はT国で胃痛が酷かったらしく……本日も私からカモミールティーとレオナ嬢からレモングラスの差し入れです。早くよくなりますように」

「ああ、リアム=ヴァルシオン殿、どうか……」

「お断りします。今の生活がいいんです。カイの方にも同じように手を回さないで下さいね」

 もうカイはスカウトされ済。断ってるけど。

「胃、胃が……」

「胃腸薬です」


 俺とリアムはごく普通に帰った。リアムがプリプリ怒ってたけど。




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― 新着の感想 ―
マルコ商会には、境遇に恵まれなかった天才児が集まって来ていて、将来有望だね^o^。
感想一覧
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