90.
90.
私はレモの技術を習得してほしくて、マルコに頭を下げなんとか我が国の宝石加工職人をマルコ商会で受け入れてもらっているんだ。
それなのになぜなんだ?
商会から戻ってきた職人は揃いも揃って職人どころか巡礼者のようになっているではないか?
「落ち着いてください。大使。この教本にある『濁り』とは『苦難』の事ですよ?それを中央にというのですから、苦難を受け入れろ。という解釈になるのです」
……ならない。落ち着け!できないからって何を悟り開いちゃってるんだ?少しはどりょくしたんだろうなぁ?
あぁ、胃が痛い。
「大使、これはマルコが大使にとくださったカモミールティーとなります。心が落ち着くようにと。少しは胃が落ち着けばという想いもあるのでしょう」
ああ、この秘書のようにできる職人はいないのか?
もうまるっきりの素人をレモの元に送った方がいいんじゃないか?変に知識があるから、邪魔をして悟りなんかを開いてるんだろう?ああ、国の威信がかかってるというのに何を考えてるんだ?
「大使、あの……商会から戻ってきた職人たちが集まって『レモ教本の解釈会』なるものを開催するようです」
ああ、あいつらは何を考えてるんだ?
そんな事より、技術を少しは得てきて欲しかったのに、何を……。
「レモは無自覚な天才だからなぁ。困ったもんだ」
「それとですねぇ。加えて最近マルコ商会に出入りしている少年がいるようなのですが、その少年のヒラメキとレモの天性の才能が合わさって結構名作ができているようなのです」
「やはり少年というのがなかなかにいい意見を述べるようだなぁ」
「職人的には自分よりも少年の方が……という劣等感も合わさってあんなことに」
「なるほどなぁ」
「少年は預言者扱いされていますよ?」
「なんかスゴイ他責志向というか、自分ができないからってそこまで逃げるか?という感じだな」
「全くその通りですよ」
その頃のマルコ商会にはまだまだT国からの職人が来ていた。
マルコすらも「どうしてこんなに宗教化しているんだろう?」と思っていた。
「それじゃあ、そろそろ帰る頃かな?レモ兄ちゃんバイバーイ!」
「二コラ少年がお帰りになる。預言者の帰宅……」
「うちの子を預言者とか言ったのは誰?」
ルチア―ナさんが商会に現れた。この時点でその迫力にナナイロレンジャーの皆は背筋もよく今にも敬礼しそうだ。
「はぁ、レモ君を護衛してるのはどこの馬鹿よ?あなたが言ったの?うちの子はただの小学生よ!預言者とか宗教に全く関係ないわ。やめてくれない?そういう扱い?」
「は、……はい」
怒ったルチア―ナさんは怖いなぁ。カルロが出てこないわけだよ。
「ごめんなさいね。二コラ。怖かった?」
「んー。全然よくわかんないからぼくは平気だよ!」
「いい子ねぇ。さっ、馬鹿は置いておいてさっさと帰りましょっ」
そう言って、ルチア―ナさんは二コラと帰っていった。
91.
その日もSanctuary Silentに俺はいた。
「マスター、この間はカモミールをありがとう。あんな職人は大使が考えてたのと違うと思うんだ。そして胃痛…。俺も使うけどさぁ。俺も胃にいい酒の方がいいかな?」
「では、こちらをどうぞ」
マスターがくれたのは、リンゴのホットサイダー。アルコールはほとんどないけど、胃に染みる感がいい。
「レモは無自覚な天才だからなぁ。T国大使も大変だよ。これのレシピは門外不出?」
「そんなことはないですよ?アルコールはほとんどないですし、T国大使も大変そうですから勧めてみては?」
「俺がちょこちょこ行くのは変だから、手紙で伝えようかな?」
「それがよろしいかと」
ああ、この店の空気というか雰囲気がいいなぁ。商会も妙に騒がしいし、やっぱりここが落ち着く。……絡み泣き上戸のカルロさえ来なければ。
カランカランと音が聞こえてカルロが来たと思った。
「今日もレモがT国に連れて行かれるんじゃないかと思ったよぉぉぉぉぉ!」
いや、本人全く行く気ないから。それに巡礼者、無理矢理はないだろう。
「レモが有名になってくれて俺は嬉しいぞぉぉぉぉぉぉぉ!」
俺に抱き着くのやめてくれ。涙も鼻水もつくじゃないか!
あ、マスターズルい!奥に引っ込んだ。奥で大爆笑だ。
翌朝、俺は爽やかに起床することができた。マスターのおかげかな?爽やかじゃない要素はカルロ汚れが付いた服!クリーニング代を請求したいけど、本人が覚えてないんだもんなぁ。
T国大使は思う『この際、宝石加工職人と素人の混合使節団』をマルコ商会に送っては?このままだと、自分の‘大使’という立場まで危うい。陛下にからまで「巡礼者を増やすな!」叱責を受けてしまった。もう後がないのでは?ああ、胃は痛いし、もう最後の手段となってしまったのだろうか?
そんなわけで、マルコ商会ではT国から、宝石加工職人とまるっきりの素人さんの混合使節団を受け入れることになった。マルコとしても大使が変わってしまえば、今までのような便宜を図ってもらえなくなったりするやもしれないから、やむを得ない部分がある。
が、受け入れてみるとまるっきりの素人さんには二コラが結構懐いた。
「ねえねえ、お兄ちゃん達、これ何に見える?」
「『濁り』…苦難……」
「ん~、難しいよぉ!」
「俺にはそうだなぁ、森か?」
「そう、そんな感じ~」
「ぼくはね~森の中に小鳥さんまで見えるよ?」
「そうだよね、森だもん。他にも動物いるかもね!」
「わーい、お兄ちゃん、探そうよ!」
T国の宝石加工職人としては何故?自分よりもド素人の方が?しかも預言者様が懐いてらっしゃる……。
92.
「これがね、ドラゴンの頭なんだよ?だからここが体で~。あ、でも全身は見えないんだ。その方がしんぴてきじゃない?」
「わかる~」
一緒にT国の看板を背負って出てきたはずなのに、ド素人の方が二コラ様と親しく……。しかし、自分には濁りは汚点にしか見えないし。ああ、この何とも言えない歯がゆさをなんとかしてほしい!
「うちの息子を二コラ様とか言うのは誰?」
ナナイロレンジャーはついに敬礼をした。
「うちの息子はねぇ。それはそれは可愛い、ただの小学生よ!変に宗教化しないでって前にも言ったはずだけど聞いてないの?」
「申し訳ありませんでした―‼ではなんとお呼びすれば?」
「呼び捨てでも、『二コラ君』でも好きにすれば?」
「母さん!ぼくはおとこのこだもん。かわいいじゃないもん!」
「もうっ、そうやって頬を膨らまして拗ねるところとか可愛いのよ~!今日の夕飯は二コラの好物だからね!」
「やったぁ!バイバーイレモ兄ちゃんと使節団のお兄ちゃん!」
足取りも軽く二コラは帰っていった。
最近、Sanctuary Silentによく通っていると思う。
「大使の要請で職人と素人の混合使節団が商会に通うようになったんだけど、素人さんの方がどうも宝石の濁りを素直に受け止めることができるみたいで、今日なんかは二コラと意気投合してたなぁ。なんか微笑ましい光景だった」
俺の胃痛も治まってきた。代わりに大使の胃痛が……。大使にはカモミールティーを送っておこう。
「今日は落ち着いて酒が飲めるかなぁ?」
「だといいですね」
というのも、俺が店の雰囲気とかを味わおうとしているというのに、カルロが邪魔をしてくるからだ。
カランカランと扉が開くと同時にカウンター席で伏せて泣き出した。
「俺はよぉ、レモが一人前になって嬉しいよ。しかも弟子なのか?二コラは、二コラと使節団の素人さんも仲良くしていて、俺は…俺は……」
と、一人泣き出してしまった。
放っておこう。慰めるとかしない。わざわざ面倒に巻き込まれるようなことはしない。
服だって汚れるんだからなっ。
「マスター、俺はネグローニを」
「おやおや、大丈夫ですか?」
「多分……」
翌朝、街中のど真ん中にカルロが落ちていた。
「マルコ君、カルロさん大丈夫なの?」
「本人はいたって元気ですよ?商会の方もカルロよりも優秀なんじゃ?って人が動かしてるから心配ないですよ!」
街の噂というのは結構無情なもので、「カルロ商会長はカルロ商会に見捨てられて、毎晩浴びるように酒を飲んでいる」だとか、「カルロ商会長はマルコ商会を乗っ取るつもりじゃないか?」だとか噂になった。
落ちてたカルロを拾って(ナナイロレンジャーが)マルコ商会で介抱し、そのまま警護係をしてもらってるだけなんだけど……。
乗っ取るなら、ルチア―ナさんがカルロ商会を乗っ取りそうだなぁ。実力とかあるし。あ、でも二コラの学校行事に必ず参加するいいお母さんだもんなぁ。商会のトップだったら二コラの学校行事に参加できなかったりするのか。うん、そういう意味でNo.2で治まってるのかもな。二コラが成長して、学校行事とかなくなったら商会を乗っ取るかもなぁ。今のカルロなら出来そう。
93.
「なんか大変なことになってるって聞いてココに来たんだけど?」
「あら、あなたはレオナちゃんじゃないの。久しぶりね。大変なことになってるのはマルコ商会よ?うちの息子も、ここの商会長もいるんだけど。あ、うちの息子ね二コラって言うんだけど、その子がT国宝石加工職人使節団に預言者扱いされちゃって、もう大変!なんだかマルコ商会に何しに来てるの?って感じよ」
「宝石の加工方法の技術交流じゃないんですか?」
「なんかあまりにわからなすぎて、教本すらも宗教本みたいになってるのよ。笑っちゃうわよね。ごく普通の事しか書いてないのよ?深く考えすぎなのよ。レモ君は直感型の無自覚天才だからねぇ」
「それはなんか大変そうですね。マルコ君は胃が痛くなったりしないのかな?」
「それが最近来た宝石加工職人とド素人の混合使節団のド素人の方がレモ君の言ってることを理解できるみたいで」
「それはそれで稀有ですね」
「すこしは胃痛が収まったみたい。最悪なのはT国の大使よ。この使節団で結果を出せなかったら、最悪の場合クビね」
「大使の方が胃が悪くなりそうですね」
「そういうことよ」
レオナは大使に胃に良いハーブティーを送ろうと思い、Sanctuary Silentへと赴いた。
「なんだか久しぶりね」
「……そうだな。商会の改革が大変だと聞く」
「まあね、旧おじい様派が地味に残ってたりするから、その人の粛清とか、再編とか?も~やる事がいっぱいよ。でも、すごくやりがいがあるわ!そうそう、T国の大使が胃を悪くしてるっぽくってハーブティーを送ろうと思うんだけど、なんかいいのあるかなぁ?」
「すでにマルコがカモミールティーを送っている。2番煎じとなるが、レモングラスは香で心を落ち着かせる作用がある」
「少し譲ってもらえるかなぁ?大使の容体も気になるし」
「……ああ」
マスターが珍しく磨いてたグラスを割ってしまった。
「マスター!大丈夫?」
「……大丈夫だ」
レオナはその足でマルコ商会へと行った。
えーっと、受付。
「ご用件は何でしょう。すみませんがどちら様でしょうか?」
「グランデ商会のレオナよ。マルコ商会が大変って聞いて来たんだけど……」
「レオナ?久しぶりだなぁ。商会内を案内するよ。受付のあいつはニコ。今街中で噂のレモに会いに来たのか?レモならこっち!」
「マルコ兄ちゃん!その女の人誰?」
「レオナお姉ちゃんだよ!」
「ぼくは二コラ。5才です。よろしくお願いします!」
ちゃんと頭を下げた。ちょこっと見えるつむじが可愛らしい。
「ルチア―ナさんの息子さん?挨拶がきちんとできて偉いわね!」
「えへへ。うんとね、レモ兄ちゃんと宝石見てたの!お姉ちゃんも見る?」
「私はちゃんと見れるかなぁ?」
「これね。緑の宝石でしょ?ココから見ると森に見えない?」
「あら?本当。森ねぇ。あそこには小鳥さんがいるのかしら?」
「うん、そう思うんだぁ。お姉ちゃんもそう思うんだ。一緒だね!」
ニモ君って?どういう風に教えてるのかしら?
「え~?この濁りがなんとなく森に見えない?」
「“なんとなく”……実に奥が深い言葉ですね」
ああ、こうやって巡礼者って増えてるんだ。そして大使の胃が……。
「二コラ様は流石ですな。濁りも関係なく受け入れ、活かし。預言者たる所以でしょうか?」
「はぁ?二コラ君が預言者?普通の男の子だけど?」
「何を言っているのです。この濁りが森に見えたことが何よりの証拠!」
「私にも森に見えたけど?T国って職人どうなってるの?ニモ君は直感型で無自覚の天才よ?それを神格化してちょっとおかしいんじゃないの?」
グゥの音も出ないな。
94.
「レオナ、頼みがある。時間制で構わないから、レモの指導教官補佐をしてくれないか?グランデ商会が今忙しいのはわかってる!でも、レモの言葉を的確に翻訳できるやつはお前しかいないんだよ!」
「そういう風に言われると断りにくいわね」
「レオナお姉ちゃんもマルコ商会に来てくれるの?」
「ああ、無邪気な瞳が私を誘う!いいわよ。ただし、時間制よ?それと本当にグランデ商会が忙しい時はこっちに来れないわ」
二コラがシューンと落ち込む。
「ゴメンね。二コラ君。お姉ちゃんね、これでも偉い人なんだ。だから、忙しくってね。ここに来るときは大丈夫よ?仕事はこなしてくるから!でもどうしても来れない時もあるよ?って話をマルコにしたのよ?ないかもしれないし、わからないわよ?」
「レオナお姉ちゃんもマルコ商会の人だったらいいのに……」
二コラよ……無茶言ってはいけないよ。レオナはグランデ商会の商会長だからね。
それからというもの、レオナがレモのふわふわで直感的過ぎる説明を的確に翻訳してくれた。
「あのね?レモは確かに「なんとなく~」とかよく言うけど、それは自分の直感って事なのよ。あなた達は自分ができないからって無理な事を宗教化して自己正当化してるだけよ?」
T国からの職人たちは何とも言えない。自分たちはどうするべきなのかもわからない。
「まず、第一に宝石の濁りってのは‘汚点’じゃないってのを頭に入れるべきね。それからよ。それと馬鹿みたいにレモの教本の解釈会とか開くのは止めたら?私から見たら馬鹿の集会よ?」
「レオナお姉ちゃん!」
「今日は何が見えたの?」
「あのね。赤い宝石だったから、難しかった~。アレは炎なのかなぁ?」
「そっかぁ、難しいこともあるのね。頑張ってね」
「うん!将来はレモ兄ちゃんみたいにすごい人になるんだ!」
「そうなんだ。いっぱい頑張らなきゃね?」
「うん!」
「レモ、今日の説明の仕方はなかなかわかりやすかったんじゃないかなぁ?」
「マジ?俺、もっと頑張ろう!」
憐れT国からの職人はレモも二コラ君もレオナの言葉一つでヤル気になるのが腑に落ちないだろうな……。
また次の日には、
「二コラ君、素人さんと一緒にこの石を見てみて!」
「はーい!」
「ぼくはお魚が見えるんだけど、何が見える?」
「えーと、水族館みたいな感じかなぁ?」
「そんな感じだよねぇ」
T国からの職人にはその感性は持ち合わせていない。濁り=汚点。
「ちょっとT国の大使館に行ってくるから、二コラ君は他の石も一緒に見てあげて!レモは上手に説明してあげてね~」
「「は~い!」」
久しぶりのT国大使館。
「大使、胃の具合が良くないとお聞きしまして、胃の具合がよくなるようにとハーブを持って参りました。私はグランデ商会の再編も行っていますが、同時にレモの指導補佐にも就任いたしましてレモでは通じない言葉を通訳しています。あと、神格化するのは自分達に技量がないせいだと言いました。少しはお役に立てましたか?」
「とても役に立った。私が求めているのは巡礼者ではなく、高い技術者だ。レモを神格化するのは間違っている。本人たちにガツンと言ってくれて助かる」
「あ、そうだ。レモの教本解釈会のことを私は馬鹿の集まりと言いました」
「いやいや、結果的に言えばそうなる。いやはや困ったものだよ」
「ここ最近マルコ商会で混合使節団を見ました。ド素人さんの方が先入観も何もなく、宝石に向き合うことができていい結果が出ています。宝石加工職人の方は濁り=汚点というのがもう体に染みついているのか、ダメですね。私の商会改革もそうですが、新しく作り直す方が簡単なんですよ。コレを機にレモに教えを乞うた職人としてド素人軍団をマルコ商会からT国へと送り込むのも手の一つですね」
95.
「レオナ嬢の言うように全くの素人軍団を送り込んでみようか?しかし、それではなんだか不安が……」
「大使、あの国というかマルコ商会ではもともとナナイロレンジャーと呼ばれるものたちが活躍していたとか……。レモ殿も元々はナナイロイエローだったと耳にしております。
「うーん、我が国でも精神的にタフなそうだな……茶道を嗜んでいて余程の事ではないと心が乱されないような連中をマルコ商会に送るべきだろうか?」
「ではそのような人材を何人かピックアップして色分けを致しましょう」
「色分けというのは必要なのか?」
「ナナイロレンジャーもそうですが、レンジャーというのは色分けされているものかと思います」
「そうなのか。ではそのようにしよう。頼んだぞ」
「御意」
そういうわけで、元は街のチンピラだったナナイロレンジャーとは異なり、よいこちゃん集団のT国レンジャーがマルコ商会へとやって来た。
ナナイロレンジャーなら……「うわっ、こんなとこで勉強っすか?俺らが?なんか偉くなった気分っす!よろしくお願いしまっす」とか言いそうなところだが、T国レンジャーは「T国より派遣されてきました。しばらくの間お世話になります。よろしくお願いします」
と実に礼儀正しかった。本当に違う。ナナイロレンジャーの皆も。
「俺達あんなか?」
「いや、T国がパクッてるんでしょ?」
「見てるとなんか鳥肌が立つ」
「そんな感じだよなぁ」
「わかる~」
とかそんな感想だった。かくいう俺も気色悪い。しかもなんだか色分けされているらしい。
名前は覚えられないから、色で呼べばいいか(ちょっと酷いのはわかってるけど)。
レモは普通に受け入れてるな。天才だからか?
「スゴイね、色がいっぱいだよ。なんとな~く、強そう!」
この言葉でいきなりT国レンジャーが巡礼者となった。
「なんとなくという言葉は奥が深い……確かに武術の黒帯ではあるが……」
強いじゃん。
学校が終わったようで二コラが合流し更なるカオスが……。
「うーん、この宝石には森は見える気がするなぁ。緑のお兄ちゃんはどう思う?」
「森……この濁ったのが…見える……ような気が……しないでもないかな?」
「見えるよね?一緒だね!」
「「「「「預言者だ」」」」」
「どこの子に向かって言ってるの?」
「うちの子ならただの小学生よ!宗教的に扱わないでよ!全く何回言えばわかるのかしら?」
「あ、母さん!」
「今日は仕事が早めに終わったのよ?早く帰って夕飯食べましょ?」
「ぼくも手伝うね~」
「もう!二コラは優しいなぁ」
「だって母さん疲れてるでしょ?」
癒し系だよなぁ。
二コラが帰って、残ったのはレモと指導補佐のレオナ、それに護衛係のカルロ。
「T国から来た人たち?なんでそんなに巡礼者化してるの?レモは純粋なだけよ!」
「褒められた?えへへ、明日も頑張ろう!」
「ほら、このくらいで喜んじゃうのよ。あなた達は大使の期待を一身に背負ってるっていう自覚あるの?大使が求めてるのは巡礼者じゃないわ。高い技術者よ。その辺を頭に入れなさいよ!」
96.
「だいたいねぇ。あなた達は何をしにココに来たの?レモの巡礼者になるため?違うでしょ?T国を代表して宝石加工職人として大成するためでしょ?レモの技術を学び、出来るようになり。それがどう?自分達をごらんなさい?すっかりレモの巡礼者じゃないの!馬鹿じゃないの?」
レオナ、強いなぁ。なんか商会でストレスをため込んだんだろうか?
「「「「「俺達はどうすればいいですか?」」」」」
「そうねぇ。ナナイロレンジャーと一緒に暮らしてみたら?彼らがどんな為人をしてるのかがわかるわよ」
ナナイロレンジャーが巻き込まれたなぁ……。6人の中で誰が引き取るのか、じゃんけんしてるし。引き取りたくないのか……。まぁ、わかる気がするけど。
ニコとレモを以外の5人が引き取ることになった……。レノは赤レンジャーを。ティーノが黄レンジャーを。エンツォが緑レンジャーをダリオが青レンジャーを。シルヴィオが黒レンジャーを。引き取っていった。
いきなり問題発覚!
「マルコ商会長!あのレンジャー、俺のうち来ていきなり「狭い」「シェフはいないのか?」とか言いだした!」
「俺も」
「「部屋はこれしかないのか?」とかも言いだした」
「「「「「わかる~」」」」」
ああ、金持ちのよいこばっかりを寄越したのか…。違うんだよなぁ。ナナイロレンジャーの結束は強くなるけど違うんだよなぁ。
「レオナ、大使はどうしてこんな連中を?」
「私の話からどうこの斜め上的にいったのかわからないわよ。大使も苦労人よね。恐らくだけど、自活もできないような坊ちゃんはレモの技術がわからないわ」
「どうする?大使も今、崖っぷちだろう?」
「コストがかからないからそこら辺のやつをマルコ商会に送ったとかのシナリオにするか、私が直接行って連れてくるか……」
「レオナは忙しいだろ?俺が行くか?」
「困った時に頼りになるのがこの俺様、カルロだぜ?」
っていうか、今まで何してたんだ?今までも結構困ってたんだけど?
「女性が行くよりも男が行く方がいいだろ?チンピラみたいのを連れてくるわけだし?」
「それじゃあ、私は大使がマルコ商会に連れてきたT国レンジャーは使えない。って伝える。あと、使える人材を直接カルロが探しにT国に行くって話もしてくるわ」
「それを頼む」
T国に行くにしてもT国大使の許可みたいのが必要だし。最初からこうすれば良かった~って感じだけど、まさかの使えなさだったからやむを得ないか……。
「なんかあいつらに家が「狭い」とか言われるたびに、『俺が悪いのか?こんな家に住んでる俺が悪いのか』とか思ってたんですよね』
まったくそんなことはない。文化の違いというか生活の価値観の違いだな。同じ料金なのに、片方は高すぎだろ?とか思い、片方はこれだけ?とか思う違いみたいな?
97.
ナナイロレンジャーは俺の言葉で息を吹き返したようで、普段通りに生活をしたよう。その時にカップ麺だとか、ナナイロレンジャーのお手製料理だとか銭湯だとかでかなりのカルチャーショック状態。
なんかもう、レモに教えを乞う体力もなさそう。
「なんだよ、体力ねーのなー」と、レノは言うけど本当にないと思う。レンジャーって体力が基本なんじゃ……?
一方でT国へと行ったカルロはちょっとした貧民街で人材を探していた。
「兄ちゃん、金持ってそうだな?」
「まあな。そうだなぁ。俺の財産叩きだせば船が5・6買えそうな感じ?」
「マジかよ?大金持ちじゃねえの?なんでこんなとこに?」
「うーん、人材スカウトか。お前も来てみるか?」
「俺の仲間も一緒でいいか?6人いるんだけど」
「おう、二代目のナナイロレンジャーだな」
「ナナイロ?」
「行けばわかる。まぁ、ついて来いよ。行き先はマルコ商会」
「こっちでも有名だぜ?腕のいい宝石加工職人がいるって」
「本人は無自覚だけどな。無自覚の天才って罪だよなぁ」
「レモ兄ちゃん!今日はどんな石を見てるの?」
「うーん、これなんだけど何が見える?」
「らくださん!さばくでらくださんがいるの!」
「そっかぁ。うん、そんな感じで作るね~」
「レモ兄ちゃん、お仕事頑張ってね!」
「T国から来た人たちなんか疲れてるの?」
「二コラ君が気にすることじゃないわよ?」
久しぶりにSanctuary Silentでレオナに会った。
「大使も大変よねぇ」
「クビがかかってるからなぁ。必死で送り込んだT国レンジャーは使い物にならないし。今カルロが探してくるやつらの方が使えるんじゃないか?」
「そういう感じするわね」
久しぶりに氷の音にウッドベースの音、店の雰囲気を味わうことができる。
「T国レンジャーは体力がないって話だ」
「はぁ?レンジャーなのに、体力ないの?そんなだから巡礼者とかになっちゃうのよ。ちょっとくらい脳筋な方が巡礼者になんなくていいわよ!レモもちょっと褒めただけで喜んで……。大丈夫なの?コロッと女性に騙されるんじゃないの?」
「うーん、今は女性よりも宝石を加工してる方が楽しいみたい。ちょっと難しいとさぁ。二コラに何が見えるのか聞いてさぁ。ズルだとは思うけど、いいものができるならいいかな?って」
「二コラは濁りを見る目は凄いもんね。宝石のカッティング技術は流石にないけど。まだ小学生だし。ルチア―ナさんだって危なっかしいから刃物持たせないわよね」
ノミで氷を削り出しているマスターが目に入った。いつもなら開店前にその作業終わらせてるのに……。
「マスターも気を付けて下さいね!マスターが怪我したらどうするんですか?誰も氷をどうにかできないじゃないですか!」
氷の塊を直でグラスに入れるのはどうかと思うしなぁ。
98.
「カ…カルロ、そいつらをマルコ商会に?」
「はい。大使が今までマルコ商会に連れて行ったのは、全滅です。宝石加工職人は濁りがどうしても汚点にしか見えずに巡礼者化。T国レンジャーはお育ちが良い方ばかりだったようで、ついていけずに脱落かつ巡礼者化。成功したのはド素人のみ。今回連れてきたのは貧民街からです。私を襲ってきたやつとその仲間です」
「そんな危険な場所から……」
「いやいや、よいこちゃんをマルコ商会に送り込んでも巡礼者になるのがオチですよ?そういうことで、こいつらをマルコ商会に連れて行きますね!」
カルロは本当にチンピラのようなやつらをマルコ商会に連れてきた。
「へぇ、レモっていいとこで働いてるんすね」
「えーっと、アレク。こいつらの言葉遣いとか仕草の矯正を頼む」
ナナイロレンジャーはかつて自分たちがされたスパルタ教育を思い起こし身震いをしてしまった。
「仰せのままに。まず服装!自分はマルコ商会の一員だという自覚をもって服装をしっかりすること!」
どこからか鞭を取り出した。あれは馬を叩くやつ?
「レモは作業室で作業中だ。まずは言葉遣いを改めろ!」
「「「「「「「は~い」」」」」」」
「伸ばすな!返事は短く『はい』だ!」
「「「「「「「はい」」」」」」」
「懐かしいけど怖いな……」
「あの鞭が怖いんだよ。迫力が増すっていうか……」
「でもよぉ、鞭を持ったアレクも怖いけど、そのままでルチア―ナの姉御も怖いよな」
「それは賛成」
「呼んだかしら?」
「「「「「「姉御ぉ」」」」」」
「なんかカルロ商会長がT国から連れてきたらしいです」
「ふーん、今までのよりは使い物になりそうね。まぁ巡礼者にはなりそうもないわ。二コラ君ならこちらです!」
すっかりナナイロレンジャーはルチア―ナさんが怖いんだなぁ。
「レオナちゃん久しぶりね。うちの二コラはどう?」
「すごく才能豊かな子だと思いますよ?今はレモが困ってる時に二コラ君が助け船を出すみたいな感じになってますし。あれでカッティング技術があったなら無敵ですね。あ、でもあんな純粋に成長するかなぁ?」
「確かにねぇ。いつまでもあんな天使なままでいるとは限らないし。いつまでも可愛い二コラでいてほしいわぁ」
「あ、母さん!今日はねぇ、レモ兄ちゃんがらくださんの石ができたって言うから見せてもらったの。スゴイね!レモ兄ちゃん!ぼくも大きくなったらレモ兄ちゃんみたいになりたいなぁ」
「そうなの?うーん、いっぱいレモに教えてもらいなさい!」
「うん!」
レモから直接教わってるのって二コラだけだと思う。
99.
二代目ナナイロレンジャーとなるべく(?)カルロが連れてきた連中の教育が始まった。
「シャツはズボンの中だ!別に腹が出てるわけじゃないだろ?」
「「「「「「「うっす」」」」」」」
「返事は『はい』だと何度教えればわかるんだ~‼」
ナナイロレンジャーは思う。「頑張れよ」と。ちょっと涙目になるのは勘弁してほしい。昔を思い出しての事だ。
普段この7人はナナイロレンジャーと一緒に生活をすることになった。
「お前……。カップ麺食べたことあるよな?」
「いえ?そんな高級なもの……」
「そうかそうか、これがカップ麺だ食え食え!」
「マジで美味いっす!」
「アレクさんに怒られるぞ~!」
「訂正すると、『本当に美味しいです』なんだけど、家だからいっかぁ。アハハ。ちなみに袋麺という食べ物も存在するぞ?」
「え~?この世にはいったい⁇俺を喜ばせ殺す気ですか?」
「それ、どういう殺し方だよ?笑い死ぬとかはわかるけど?喜び過ぎで死ぬの?」
「そうです!」
「食後は風呂だ~‼ お前、風呂に何日前に入ったんだよ?」
「う~ん、1カ月くらいかなぁ?」
「臭いわ~‼」
「マルコ商会は食品も扱ってるからな。商会職員の清潔感も大事だ!」
「この部屋に風呂はないですけど……?」
「まさかお前……、銭湯に入ったことないのか?」
「銭湯って何ですか?」
「大衆浴場だ。裸の付き合いってやつだな」
「え?裸で入るんですか?初対面の人とかいるのに……」
「何を恥ずかしがってんだよ。どっかの乙女か?」
街中を歩けばそこらの人に話しかけられる。
「マルコ商会のお兄ちゃん?」
「あ、そうだ。こいつ、新しく入ったんだ。まだ言葉遣いとかまだまだでさぁ」
「あら、あなただって昔はそうだったわよ」
「昔の事は言わない約束!」
「そうだったわね。マルコ商会でまた面白いものを作るんだったら言ってね」
「助かります。そうそう、忘れるとこだった。こいつ、よろしくお願いします!ほら、お前も頭下げろよ」
「すいません。よろしくお願いします」
「若いお兄ちゃんによろしくされちゃってオバサンうれしいわ!帰りにパン屋さんに寄ってよ。売れ残りで悪いけど、残ったパンを分けてあげるわ」
「うわー、助かります。ぜひ寄らせてもらいますね!あ、仕事の時間だスイマセン、失礼します!」
「あー、うちもそんな感じだった。T国レンジャーを受け入れた時と全然違いましたよ気分もハレバレです」
「今日のあいつらの服は俺の服を貸しました。服装は家を出る時にチェックしたんだけど、ダメかなぁ?」
「今日の服装は…まぁいいだろう。言葉遣いの矯正はビシバシいくからな。それから姿勢の矯正も。猫背だとそれだけで印象が悪いからな」
「なぁ、俺達は姿勢の矯正とかやったか?」
首を横に振るもの多数。




