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『この街で、俺はもう一度生きる』ーー異議あるか?  作者: satomi


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80.

80.


 二コラ君が学校で宣伝してくれたから、かなりの廃棄量が減ったけどそれでも廃棄量は出ちゃうわけで。

 二コラ君は排水溝へ流れていく、廃棄となったジュースを見て「勿体ないよね…」と呟く。


「ねぇ、これさぁ。ゼリーにしたらダメかなぁ?母さんが昔ゼリー作ってくれたんだ。美味しかったんだよねぇ」

「あらあら。二コラ君が喜んでくれるなら、オバチャンが全力でゼリー作るわよ!」

「えー?力入れたらゼリーのカタチ崩れちゃう!」

「全力で作るじゃなくて、本気で作るわ!」

「うんわかった―‼」

 いい子だ。試作をするとして…。どうやって販売しようか?毎日の廃棄量だって一定じゃないかなぁ。

「給食で出てきて皆が喜んでたんだ!」

「二コラ君、子供達だけで会議をしてみたら?二コラ君が議長だよ!うーんとね、いっつもジュースが廃棄されちゃうけど、うまく使う方法はないかなって皆で話し合うの。皆で話し合えばいいこと思いつくかもしれないでしょ?二コラ君だけだもん!皆でいい話にするんだ。えーとね?ゼリーはいい話だよ。さて、どうやって売りましょうか?とかそういう話をするの」

「うーん、難しいけど皆で話せばいい案が出てくるかも。ぼくだけだったらゼリーまでだよね。どうやってどこに売るかでしょ?」

 どこに売るかは言ってないけど、購買層まで目を付けたのか。かなり優秀な子だなぁ。


 数日後にバイトの街のオクサマが二コラのためにゼリーを作って持って来てくれた。

「二コラ君、どうかな?」

「すっごく美味しいよ。こんなの他のお店で売ってないもんね」

 そういうのも強みになるなぁ。街のオクサマは家にある簡易容器で作ってくれたけど、さてどうするかなぁ?


 その日は子供会議が開かれる日だった。

 二コラ君は立派に議長をしていた。

「この商会でジュースを作ってるのは知ってるよね?毎日売れ残ったら捨てちゃうんだ」

「え~?めっちゃ美味しいのに!何で?」

「えーと、賞味期限?ってやつ。傷んだものは売れないんだよ。もし、ジュースを飲んでお腹を壊した人がいたら、この商会が営業停止になっちゃうの」

「それは困るよ~」

「そうでしょ?だから捨てちゃうんだけど、勿体ないでしょ?それでぼくはゼリーにすればいいんじゃないかな?って話をしたんだ」

「あ、それは美味しそう!」

「食べたい!」

「ゼリーにすれば冷蔵庫に保存で1週間に賞味期限が伸びるんだ」

「「おおっ」」

「でもさぁ、どうやって売るのがいいと思う?」

「他のゼリーみたいにすててOK のパック?」

「それね。ゼリー屋さんじゃないから、パックに入れる技術がこの商会にはないんだ。あ、そうだゼリー屋さんに委託販売って形にすれば良くない?」

「いたくはんばい?」

「材料だけ渡して、加工して売ってよ~って頼むの。売り上げの7割くらいゼリー屋さんに入っちゃうけど、元はと言えば、捨てちゃうものだったし」

「ゼリーのカタチにして売ってくれるなら、マルコ商会は名前だけってこと?」

「そうそう。楽ちん♪」

「「やった。ゼリー食べることができる!」」



81.


「これの難点は、廃棄量が毎回一定じゃない事かなぁ?だってたくさんジュースが売れる時もあればそうじゃない時もあるでしょ?」

「確かになぁ?暑い時はジュースがたくさん売れるかも」

「それを見越してたくさんジュースを作ってると思うけど…」


「ゼリーの他にある?」

「あれあれ!ケーキの上にニュル~ってするフルーツソース!」

「ケーキやさんはトロピカルフルーツなんか高価で使えないからいいんじゃない?」

「パン屋さんとかお菓子屋さんでも使えるよ!」

「ソースなら冷凍保存できるかもね!」

「マルコ兄ちゃんと相談してみる!あ、こんな時間だ。みんなありがとう!すっごい助かったよ」

「俺も楽しかった」

「わかる~。なんかちょっと大人気分」

「二コラは帰らないの?」

「僕は母さんがここに迎えに来るんだ!それまではここの兄ちゃん達に遊んでもらったり、レモ兄ちゃんの石見たりしてるの!」

「「「え~?いいなぁ」」」

「マルコ兄ちゃんに聞いてみるよ。また明日学校でね!」



「マルコ兄ちゃん!ゼリーは委託販売がいいんじゃないか?って話だったよ。それとね……。みんなで話したんだけど、フルーツソースは作れないかなぁ?フルーツソースは需要がいっぱいだよ!」

 委託販売とか需要とかどこでそんな言葉覚えたんだろう?ナナイロレンジャー?ルチア―ナさん?

「フルーツソースは冷凍できるし、瓶詰で冷凍保存できるの!試作すればいいでしょ?」

「あ、ああ」

「あとねぇ、学校の皆も放課後にここに来たがってるの。ナナイロレンジャーのお兄ちゃん達と遊んだり、レモ兄ちゃんの石見たりしたいって!」

「うーん、兄ちゃん達の仕事邪魔しないならいいぞ!」

 頑張れ、ナナイロレンジャー!



「商会長!T国の王族の無茶ぶりっぷりの石ができました!」

 T国の王族も悪ふざけが過ぎるよなぁ。レモを重用してくれてるのは有難いけどさぁ。

 俺と二コラは見に行った。


「この濁りの部分、二コラ君が言うように前面にドラゴン、後面にお城。さながらドラゴンがお城を守っているように完成させました」

「「おお~」」

 俺と二コラからは感嘆の声が漏れる。

「レモ兄ちゃん、天才~‼」

「これならT国の王族も満足してくれるだろう。カルロは見たか?」

「ああ。レモはドンドンと成長していっているみたいで俺は嬉しいぞ!」

 カルロがグズグズ泣き始めた。

「違う!俺は泣いてなんかいないからな!コレはアレだ!……ほらアレルギーだ!」

 なんの?カルロ商会長の威厳はどこへ行ったんだろう?酔ってる時の事覚えてないのかな?



82.


「こ……これは、我が国にこそ相応しい宝石!」

 俺とレモはT国大使館に来ている。宝石を見た大使は涙目。

「この出来栄えなら国王もひどくお喜びでしょう!まさに国宝級‼」

 つい先日までDランク落ちの石だったんですけどね。

 俺にはまたT国の王族が無茶ぶりをしてくる未来しか見えない……。レモが重用されているのは喜ばしいことだけれども。


「本日は土産として我が商会で開発した‘ゼリー’をお持ちしました。T国にすでにありました?」

「いや、食するのが初めてだ。どれ。……ほう、これはなかなか。暑い時なんかにいいかもしれないな」

「そうですね。ツルっとした食感が暑い日にはいいですね。我が国で開発してもいいだろうか?」

「ええ。そのために持ってきました。このゼリーの開発は子供の意見は発端になっておりまして。トロピカルフルーツのジュースが廃棄処分となってしまうのを見て「勿体ない……」と。ゼリーにして冷蔵しても賞味期限は1週間程度なのでT国に輸出してギリギリの賞味期限となってしまうのです。それでしたら、本国で作っていただいた方がよろしいかと……」

「うむ。作り方は?フルーツジュースを作ってゼラチンを入れながら焦げないように加熱し、ゼラチンが融けたら冷やすだけです」

「冷凍は出来るのだろうか?」

「試したことがないですね」

「冷凍も試してみる価値があるぞ。全くマルコ商会は面白いものを思いつくものだ!」

「思いついたのは小学生ですよ?」

「小学生を商会に招き入れるその懐の深さありきであろう!」

 ひどく褒められてしまった。二コラ君の手柄なんだけどなぁ。



 マルコ商会に戻り、フルーツソースの試作を進めた。同時進行でソースを入れる瓶のデザインをレモに頼んだ。

「え~?俺がデザインするの?」

「レモがデザインした瓶ってだけで価値が上がるんだよ」

「そうなの?」

「そうなの!」


「あら、瓶が必要なの?うちの商会も混ざるわよ」

 俺は概要を伝えた。

「面白いじゃない?そこの役立たずは泣いてるばっかりでこっちに情報流れてきてなかったけどね」

「アハハ……」

「レモがデザインするだけで価値上がるのかぁ。俺は嬉しいぞ!っ、目から鼻水が出やがる。畜生!俺は泣いてないぞ!」

 鼻から出るから鼻水なんだよ……。目を真っ赤にさせて言われても説得力ないし……。

「あの泣き虫は放っておきましょう。使いきりたいから、直径が3センチの円形で高さが5センチくらいかしら?」

「そうですね。そこで、また廃棄されるのはちょっと…」


 冷凍保存も可能という事だし、俺はこれを機にマルコ商会初の保冷庫(小)を買うことにした。

場所は、カルロ商会の保冷庫の側に場所があるということで、お借りした。場所も自分で買うことができるだけお金が貯まるといいんだけど……。



83.


 フルーツソースの試作品はなかなか難しかった。賞味期限をとると砂糖を加えるべきだけど、果物本来の味を重視すると、砂糖なし。

「砂糖は少な目で冷凍保存。あと、需要に合わせて翌日販売するんなら冷凍する必要はないな。

高級トロピカルフルーツのイメージが強い、パッションフルーツとマンゴーなんかはパン屋さん、ケーキ屋さんなんかに需要がありそうだ。そこら辺の調査に行ってくるかぁ」


 俺は毎度おなじみになった街中に出て行った。

「マルコ兄ちゃん!また美味しいもの作ってるの?」

「うん、でも売り方を検討中」


「マルコ君。売り方検討中って?」

「うーん、ゼリーなんですけど、委託販売ってゼリー屋さんに知り合いいなくって……」

 俺はついつい乾いた笑顔と共に頭を掻いてしまった。

「そういうのはオバサンに任せなさいよ!オバサンの知り合いがゼリー業者やってるわ。知り合いって親戚よ?連絡とってみるわね」

「助かります」

「何言ってるのよ!街の皆はマルコ商会の味方よ!」


 さて、ゼリーはいいとして、フルーツソース。街のケーキ屋さんとかパン屋さんを直接あたるかぁ。

「マルコ君、どうした?疲れてるのか?」

「いや、うちの商品使うかなぁ?なんて思って」

「なんだなんだ?マルコ君だから面白いものだろう?」

 ハードル上げるなぁ。

「実は…フルーツソースを開発していまして、トロピカルフルーツの」

「そいつは俺ら職人にとっては朗報だトロピカルフルーツそのものを仕入れるのは高級すぎて採算が取れないからな」

「冷凍可能です。あ、まだ試験してないけど、水分と分離しちゃうかも」

「なーに、当日売り切ればいい話だ」

「えっと、瓶売りで直径3センチの瓶で高さが5センチです」

「細かいなぁ。瓶の大きさはカルロ商会に発注したんです」

「はぁ、高級品だなぁ。その瓶」

「デザインはレモですよ」

「家宝かよ!」

 ケーキ屋さんはOK。


「マルコ君!なんか面白いことしようとしてるんだって?」

「フルーツソースの開発です。まだ試作の段階なんですけどね。砂糖を増やすと賞味期限は伸びるけど、フルーツ本来の味が……。砂糖を減らすと賞味期限が短くなるって格闘中です」

「はぁ、毎度のことながら大変ね」

「容器はほぼ決定で直径3センチ高さが5センチの瓶の容器をカルロ商会に。デザインはレモに頼みました」

「なにそのラインナップは!家宝を量産するの?どうしましょ。うちでも買わないと。そして冷凍保存よ!」

「あー、水分が分離するかもしれないですよ~」


 街のオクサマから他の職人さんにも伝わると思う。帰ろう。



84.


 フルーツソースの試作を商会内で行った。

 問題は砂糖の分量……。


「これは、甘すぎて逆に気持ち悪い」

「なんかベタベタする」

「ぼくもこれはやだよぉ」

 砂糖過多は却下。


「これは甘いな」

「これもベタつくな」

「ぼくはこれは食べられるけど、たくさんはいらない!」

 砂糖多めも却下。


「これも甘い!」

「なんでベタつくんだ?」

「これはいいけど、なんかなぁ」

 砂糖小は保留。


「これは、まあ大丈夫だな」

「味は大丈夫か。べたつくけど」

「ぼくはコレが好き!」

 砂糖少量は保留。


「これは、普通だな」

「なんかいつもの味って感じ」

「ジュースと変わらなくない?」

 何もなしも保留。


 そういうわけで砂糖小以下の3種類をシャッフルして試食してもらった。

 何もないのはやっぱり「ジュースと同じ」という意見が多かった。

 ティーノよ……ベタつくのは砂糖のサダメだからあきらめてくれ。

 やはり、二コラ君が「コレが好き!」と言ったやつに票が集まった。


 そんな流れでフルーツソースのレシピが完成!

 と、同時にレモが「こんなどう?」とフルーツソースの瓶のデザインを持ってきた。

 瓶に巻きつくようにドラゴンが。

「レモ兄ちゃん、天才!」

「ドラゴン?」

「何となくです。だって、円なんだもん」

 そういうもんか?俺にはわからない、感性……。



 その後、レモには通常の業務をしてもらった。俺の机に積み上げられた注文書も何とかしてほしいし。

 だというのに、予想してたよ?だとしても、このタイミングは酷くない?


 T国大使からの無茶ぶりがやってきた。

 ものすごく大きな仕事。をレモがするわけだけど……。

 レモは「何で俺なんかが……」って言ってる。本当に無自覚で困る。

 今度の仕事は馬鹿でかい。

 大使が言うには、今度T国の建国333年記念祝典があるらしい。俺なんかはすごい中途半端な数字だなぁとか思うわけだけど、T国では3が良い数字らしい。

 そこで国王が国を象徴するような宝石を即位の象徴として王太子に渡すという儀式をするという話だ。そのときに使う宝石をレモに加工してほしいとこれまたDランクだろう?と思しき宝石を渡された。魔力量はよいし。濁り以外はSランクの宝石なんだけど……。ああっレモが流石に唸ってそのまま卒倒しそうだ。俺も胃が痛くなりそう……。しばらく酒は無理だなぁ。マスターに酒の代わりに胃に良いハーブティーをもらいたい‼


 

 商会に帰った。

 商会の皆に事の次第を説明。

「さすがレモ君ねぇ。T国から依頼が来ちゃうなんて!」

 すっごい無茶ぶりだけど。

「レモ兄ちゃん、すごい!T国?ドラゴン!お城!」

「ああ、二コラもこの石あとで見てな?」

「うん!」


 二コラとレモと二人で石を見てる。

「T国はこんな石ばっかりなのかなぁ?ドラゴンとお城にしか見えないよぉ」

「どれどれ」

 レモが見るとなるほどなぁ、お城を守るドラゴンに見える。前の石と構図がちょっと違うけど。



85.


「これは流石に数週間かかるかな?」

「難しいんだね。レモ兄ちゃん、頑張ってね!」

「おう」

 本当の兄弟みたいで微笑ましい。


「レモ、子供にも好かれて。すっかり大きくなったな。おっと目から鼻水が……」

 鼻水は目から出ません。




 その日の夜、俺は一人Sanctuary Silentに行った。

 ここの静けさとウッドベースの音が響いて心地よい。

「商会内は騒がしいから、ここの静けさが心地いいな。あ、商会長の職業病だと思う。俺も胃が弱くなったのかなぁ?マスター、悪いんだけど胃にいいハーブティーをお願い」

「……何かあったのですか?」

「うちの商会の宝石加工職人が」

「あ、レモさんですか?」

「そうそうってマスターはよく知ってますね」

「街で噂になっているのとカルロさんが酔って口走っていました」

 あー。

「それでそのレモがT国に重用されてるのはいいんだけど、すっごい無茶ぶりをされるんだよ。俺は大使館で倒れるかと思った。多分Dランクの石かな?それを加工してT国の国宝くらいに仕上げるようにって依頼。マジでレモはよく生きてるよ」

「宝石加工が好きなんでしょうね」

「そうだろうね」

「あなたも商会が好きだから、胃が痛くても商会長してるでしょう?そんな感じですよ」

「そうなのかなぁ?」

  

 そんな感じで店の中に緩やかに流れる時間と音を満喫していたというのに、半分酔ったカルロが乱入してきた。

「おお、マルコ~。今日も忙しそうだったなぁ。俺はよぉ。レモが子供に好かれて嬉しいんだよ。しかも大きい仕事まで出来るようになって、畜生。どこまで成長するんだよぉぉぉぉぉ。俺をおいてかないでくれぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 騒がしい。仕事場じゃないから、本気で泣いている。


 マスターもそんなカルロを面白そうに見ている。

 録画という手段があったなら、是非ともしたい。そして素面の時に見せる。



 翌日に俺は街のオクサマの親戚のゼリー屋さんと正式に契約を交わした。互いに契約書もあり完璧。

「あの……うちの取り分こんなに多くていいんですか?」

「構いませんよ?マルコ商会は利益追求型というよりは街の経済活性化の方に力を入れてますから」

 もともとは廃棄処分だったはずのものを使ってるということは伏せた方が良さそうだ。



 さらにはフルーツソースの正式な販売も開始。

 パン屋さん、ケーキ屋さん、カフェは当日配達を希望。量はまだ未定。売ってみないとわからないからね。

 オクサマも買いに来る。冷凍が効くんでしょ?それなら、冷凍庫にも入れておくわよ。

「瓶、可愛いわよね、どうしましょ空き瓶だけほしいわ」

 中身を完食してください。



 噂が噂を呼び、T国大使館まで話を知っていた。

「マルコ商会長!こんなものまで作っていたのかい?水臭いなぁ」

「大使のような方には庶民的過ぎるかと思い、紹介をしなかったのです」

「いやいや、これをだねぇ、ただのパンにつけるだけで、高級感が味わえる!なんて大発明‼」

「これも小学生のアイディアなんですよ?」

「なんと!子供のアイディアとは恐ろしいな。本国でも子供による企画会議(食べもの)をしてみようか?それはそれとして、大使館の方にこのフルーツソースを売ってくれないか?」

「ええ、喜んで‼」



86.


 T国での建国333周年記念式典では大盛り上がりだったらしい。ガラスケースに入っているものの庶民がこぞってレモが加工した宝石を一目見ようと王城に殺到したらしい。

 「はあ、宝石のなかにドラゴンと城が。なんか、この国の国民で良かった。生きててよかったって感じだ」とまで言わしめたらしい。

 と、大使から聞いた。


 一方で、王家に重用されるレモをよく思っていないT国の職人も多くいるらしい。そうだろうな。妾腹だし、伝統を重んじるならアウトだろう。

 技術交流をしたいと弟子入り志願してきたT国の職人に教本を渡したが、まず最初の一文で躓くらしい。「はぁ?なんで濁りを宝石の中央に?濁りは隠すものだろう?」

 この時点でレモの考えと違ってきているんだけど、気づいてないところがスゴイ。それでもレモに直接教授を求めているらしい。

 レモとしては「濁りの位置くらい自分の思う場所に操れないと~」と思ってのまずは『濁りを中央に』ってことだったみたいだけど、それすらもできないのだから仕方がない。濁りを操った後にはカッティングだったけど、濁りを操れないんじゃ話にならない。



 そんな悪意があるからこその護衛係としてカルロがレモの近くに配属されているのだけれど、目から鼻水(涙だろう?)を流してばかりで、役に立つんだろうか?



「レモ兄ちゃん!今度は何をするの?」

「えーっとね。この国のカップルの婚約指輪!」

「えー、ラブラブカップル~?」

「そう、ラブラブ」

「あ、二コラはこの石の濁ってるの何に見える?」

「うーん、えー?なんか気持ち悪いなぁ。♡いっぱい見えるよ」

「やっぱり?俺もなんだよね。気持ちわる~とか思って。そんな指輪でいいのかな?」

「レモ兄ちゃんが作ったならいいんじゃないかなぁ?」


 レモは注文書にある通りにラブラブカップルに♡いっぱいの婚約指輪を送った。注文とはいえ、気持ちわる~と思いながら加工したらしい。珍しいな、いつも楽しく加工してるのに。



 なんだか気持ち悪かったラブラブカップルは数週間でアッサリと別れたらしい。


 ラブラブカップルはレモの悪評を流し始めた。「妾腹」だの「レモの指輪のせいで別れた」だの。

そいつらが言う事に耳を傾けるような人はもういなかった。



 逆に

「レモ君がT国の国宝をもう2つも作ったらしいわよ?」

「あら、じゃあこの空き瓶プレミアがつくのかしら?いつかだけど」

「そうよぉ。そう思って、私はこつこつ空き瓶を貯めてるのよ!」

「数が多いものってあんまりプレミアがつかないじゃない?」

「そうなんだけどさ」

「カルロ商会のNo.2の彼女の子がマルコ商会に入り浸ってるって聞いたわ」

「うちの子もマルコ商会に通わせたいわ~」

「マルコ商会は託児所じゃないのよ!」

「そうなんだけどさぁ」

「気持ちはわかるけど!」



87.


 T国大使は頭を抱えていた。

 自国の職人がレモのようにできれば全く問題ないのだが…。

 教本を見た。

「ウーム、濁りを操ろうとしているのはわかる。しかし、我が国の職人は見習いの時から骨の髄まで濁り=汚点のように体に染みこませているから、理解ができないのだろう。レモはどうやってできるようになったのか?いやはや、才能とは恐ろしいものだ」

 大使は宝石加工の教本を机に置いた。

「先日の子供がアイディアを生み出すというのも恐ろしいことだ。柔軟な姿勢というか、柔軟なプロセス。成長してしまった私達にはもう真似ができないなぁ」


 レモは「濁りを宝石の中央に持ってくるとかカッティング技術の基礎なのに~?」という感じで教本を作ったのだろうな。レモにとって基礎でもT国の職人には今まで触れたことのない概念。弟子入り志願者が多くても、教本は理解できない。

 さらにはマルコ商会にいるという少年が濁りが何に見えるのか言うらしい。それに応えるようにレモは作り上げる。

 

「はぁ、かなわないなぁ……」

 やはり大使は頭を抱えてしまった。



 私にできることと言えば本国での子供企画会議(食べ物に限る)を開催か?

「陛下、あの国にならって子供だけの企画会議を開催してはいかがでしょうか?あの国のマルコ商会では子供だけの企画会議で、トロピカルドリンクを廃棄しなくてはならないのが勿体ないとゼリーにする案、フルーツソースにする案が出されました。そのような案がなければ今頃も廃棄されていたことでしょう」

「ふむ。原産国としても廃棄しなくて済むならばそんなに良いことはないな」

「はい。子供にはちょっと議題を与えるだけで、あとは仲の良い子だけで話してもらうのです。内容は後で報告してもらいましょう!」

「そうだな。よいところはどんどん取り入れていくべきだ。いつまでも伝統に固執していては何も生まれはしない」



 そんな中、T国の宝石加工職人の間ではレモの教本がもう、『技術書』ではなく『悟りの書』として扱われ始めた。


「この『濁りを中央に』というのは嫌なものさえも受け入れろという事でしょうか?」

「そうすると、この『濁り』というのは苦難の象徴?」

「カッティング技術とは、如何にして自らを清めるか?」


 などと解釈をされるようになった。

 濁りについては、個性説・運命説・ドラゴン説・王家の象徴説がある。


 レモが聞いたら「違うよ~」とか言いそうだけれども。


 マルコ商会には職人でありながらも、同時に巡礼者である者が訪れるようになった。

「レモ殿は何故濁りを中央に?」

「え?なんとなく。わかりやすいからかな~」

「なんとなく……これは特に意識はしていないとまさに“悟りの境地”‼ やはり感服いたします」

「かんぷくってなーに?」

「おおっ、これは二コラ少年‼ お会いできて光栄です」

「よくわからないなぁ」



88.


「二コラ、ここにいたの?感服ってのは大感激ってことよ。あんまり使わないわね。それはそうと、レモ君の護衛係は何してるのよ?全く。二コラ、帰るわよ!」

「カルロ兄ちゃんに会わなくていいの?」

「カルロおじさんよ。いいのよ。帰りましょ!」

 そう言って二コラとルチア―ナさんは帰っていった。



 噂というのは恐ろしいもので、レモの婚約指輪の“破局伝説”が街でネタになっていた。そのうち都市伝説になるんじゃないかなぁ?

「レモの指輪は本質を見抜く」

「濁りが♡に見えたら危険信号」(濁りをそのように見える人はまれ)

等々

 

 それでも、街のオクサマは「レモ君に婚約指輪を作ってもらいたいわ」等言っている。既に結婚しているから、後の祭りだと思うけど。俺が間違っているだろうか?



 その日、カルロはカルロ商会にいた。

 商談相手と話をするためだ。

 レモの話が出るたびに「スイマセン。最近目から鼻水が出ちゃって……」などと言っていた。まだ、アレルギー説の方が説得力あるのに。商談中に何をやってるんだか。ルチア―ナさんに怒られるよ~!




 その日の夜、俺は一人でゆっくりとSanctuary Silentの雰囲気とか味わいたかった。

「マスター、最近商会にやってくるレモの弟子入り志願者、なんか変な奴ばっかりでさぁ。ムズカシイ言葉ばっかり言うしさあ」

「この辺をうろついてたりしましたよ。そうですね、見た感じ宗教の巡礼者のようですね」

「そんな感じなんだよな。教本を難しく解釈してるんだろうか?」

「恐らくは……」



 カランカランと店の中へと入ってきたのは、カルロ。

 またしても雰囲気ぶち壊しに来たのか……。

「違うからな!今目から出てるのは鼻水だからな!」

 聞いてないのに……。

「マスター、アマーロ・サワーを頼む」

「あ、そういえばフルーツソースの瓶を何とかしてくれてサンキュー」

「ルチア―ナの手柄だ」

 ちょっと飲んだだけでもう駄目だった。

「フルーツソースの瓶だって、デザインはレモだろう?俺は誇らしいぞぉぉぉぉぉ!」

 はいはい。

「T国の国宝級も2・3手掛けたんだろう?すごいじゃないかぁぁぁ!レモぉぉぉぉぉぉ!この国から出て行かないでくれぇぇぇぇぇ!」

 あーあ、泣いちゃってる。マスターも肩を震わせて奥に引っ込んだ。店の奥で大爆笑かな?俺はレモじゃないし抱き着かないでほしい。



 翌日、T国大使から大使館に来てほしいと要請があったので、大使館の方へと行った。

「我が国の宝石加工職人が不甲斐ないことはわかっている、しかし、頼む!数人でいいからレモの直接指導を受けさせてくれ!」

 大使に頭を下げて、そこまで言われると断れないのが小市民。レモの了承を得てから、停止の方に了解しましたと返事をしました。



89.


 商会の皆に今度T国からレモの弟子入り志願者がやってくるという話をした。

 ナナイロレンジャーは「妙な事を口走る連中ですか?レモ~、気を付けろよ?」とエール(?)を送っていました。

 二コラ君は「ぼくの後輩になるの?不思議~。年上なのに~」って言ってました。

 年上だけど、センスの問題かな?って思うんだけど。



 数日後にやって来た。

「T国よりレモ殿の勉強をしに参りました。よろしくお願いします!」

 ホントに数名。オーディションみたいのしたのかなぁ?精鋭?

  

☆修行その1・濁りを見よう!

 

T国から来た職人は濁りはどうしても汚点にしか見えないよう。 

 そんな中でレモは、「森だねぇ。木がいっぱい」

 「ぼくは小鳥さんを見つけたよ!」

 「え?どこどこ?」

 T国からの職人は早くも心が折れそう……。



☆修行その2・濁りを“中央に置こう“


 T国からの職人は頑張る何とかして中央に置こうとする。

 そんな中でレモが一言「なんで?普通にやれば大丈夫だって~!」


 T国からの職人としては、「応援してくれてるんだろうけど、普通って何だろう……?」

 もはや、頭の中が哲学的になっている。



☆修行その3・濁りを操ってみよう!


 レモは「濁りは動くよ~」と簡単に言うけど、T国からの職人は頑張ってみても動かない。

 レモはしつこく(?)「動くよ!」というし。途中で参加をした二コラに「ほら、ここがドラゴンの頭でしょ?それでね?……」とけっこうその濁りについて説明された。

 T国からの職人的には、二コラ少年の方が悟ってる?と思う。



☆修行その4・これまでの修行についての解釈を行う。


 濁りを見るのはやはり己の苦難に立ち向かえという事でしょうか?

 そして、濁りを中央へは苦難すらも受け入れろという事!

 さらに濁りを操れという事は苦難を自在にコントロールできるようにという事?


 T国からの職人たちはそのように解釈をしたよう。


 レモから一言。「違うよ~。職人としては出来なきゃダメな事を羅列してるだけだよ~」



☆修行その5・巡礼

 

 「ずばり、レモ殿にとっての濁りとは?」

 「うーん、あったらなんとなーくインスピレーションで形にしちゃうから、よくわからない!」

 「『なんとなく』……深い……!」

 「海?よくわからないよ~。



☆修行その6・心を柔らかくしよう!


 T国からの職人はどうしたら子供のような純粋な心を取り戻せるのかを悩んでいた。

 レモが無責任にも「二コラと遊べば~?」とか言うから、本当に二コラと走り回ることになった。遠くでナナイロレンジャーがお気の毒にというような目で見ていた。



 翌日全身筋肉痛となり、本国へ帰ることとなった弟子入り希望者が最後にレモに言う。

「あなたにはやはり手が届かない。届こうとすることが罪深いことだと思い知らされました」

 そんなに筋肉痛が酷いのかぁ。




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― 新着の感想 ―
レモの宝石関係の事業は好調で、トロピカルフルーツ関係は、ゼリーの試作を試しているんだね^o^。
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