61.
61.
俺達マルコ商会(内心は男くさいと思っている)は日々働いていた。…ナナイロイエローはカルロ商会に出向してたけど。
アレクは「アイツ…向こうで変な言葉遣いしてないかなぁ?」とか心配していた。胃に穴が開かないかこっちが心配になる。
「大丈夫だよ。あいつはうまくやるって!」
と俺はアレクに言ったけど、俺もナナイロイエローがちょっと心配胃腸にどうとかはないけど。
街に出れば、
「マルコ商会様様よ‼おかげで買い物がすごく楽になったわ」
とかオクサマからの声を聞くことが増えてなんか俺も嬉しい。そんなときはナナイロイエローはどうしているかなぁ?と思う。
そんな時だけど、カルロ商会で宝石の盗難事件があったらしい。それもT国の王族からの注
文。大口注文だから、カルロもかなり神経質になっていた矢先の話。
「ナナイロイエローとか調子に乗ってるけど所詮は妾腹の子でしょう?」
「あ、俺知ってます。ルカ=ジェリオリーニが本名ですよ」
「……その名前は捨てた。俺はナナイロイエロー」
「プッ、そんな名前かよ?」
「なんだなんだ?騒がしいな?ナナイロイエローについて言ってんのか?こいつは俺が!この目で!探し出した職人だ。文句があるなら俺に直接言え。それと、今さっきナナイロイエローを侮辱していたやつら。とっとと荷物をまとめて出て行け!汚い心はせっかくの宝石を濁らす結果になる。端的に言うとそんな感じだな。性格の悪さは宝石を見ればわかるからなぁ?」
ナナイロイエローを吊るし上げようとしていた男たちは早々に立ち去った。
「えーと、この宝石。Sランクですね」
「王族は何を考えてるんだか、この宝石を分割して王太子夫妻の婚約指輪を作ろうって話だ。しかも二人のイニシャルの傷をつけて」
「分割まではいいですけど、傷はちょっと……」
「だよなぁ?ちなみに、王太子妃となる方のイニシャルがS・Tで、王太子のイニシャルがW・Tだ」
「あ、それならこちらの宝石はどうですか?濁りとしていたんですが魔力受容量はたっぷり何ですよ。濁りの部分が互いのイニシャルのようですよね!」
「おお、ナナイロイエロー。グッジョブ!T国大使にさっそく問い合わせだ。せっかくのSランクの宝石。王太子妃のネックレスないし、ペンダントにした方がいいだろう」
「そうですよね!分割って時点で職人的に血を吐きそうです」
「そんなんなのか?」
「そんなんなのです」
そんなカルロとナナイロイエローのやり取りを心よく思ってない人物がいるとはカルロもこの時は思っていなかったよう。
そんな時にSランクの宝石がなくなった。
疑われたのは、ナナイロイエロー。
62.
「やっぱりなぁ、いつかはやらかすと思ったんだよなぁ」
「イニシャルの宝石だって自作自演ってことも……」
宝石の中の傷みたいなものをどうやって作為的につけるんだ?と思うんだけど。そんな技術聞いた事ないけど?
楽しくイニシャルの石で婚約指輪になる石を作っていたナナイロイエローはかなり驚いた。
はぐれ者の自分はやっぱり疑われるのか…。
妾腹だから…と。
「何回聞けばわかるんだ?こいつは俺が直々に連れてきたやつだから全く疑いがない。ましてマルコ商会の人間だ」
「そうですよ。他の商会の人間だからこそ、この商会の評判を落として……」
「マルコはもともとここにいたやつだ。そんな卑怯な真似をする人間じゃない。マルコみたいに一見ボケーっとしているように見えるけど、本質をよく見ているやつが変な人間を雇用するわけがない。マルコ商会から出向してきているこいつはシロだ!俺が保証しよう」
これは……俺はカルロに褒められてる?貶されてる?なんか微妙。
「俺のせいでマルコ商会長が疑われるのは嫌です!俺が何とかします。あのSランクの宝石の魔力の感じを追います」
「そんなことできるのか?」
「できるかどうかじゃありません。やるんです!」
ナナイロイエローはSランクの宝石の魔力を思い出して、その魔力を追うことにした。まずは裏の宝石商に。さらに裏の宝石商に……。
そんな事をしているのでSランクの宝石は見事にカルロ商会の元に戻ってきたのですが、出費が痛かった。
「でもなぁ、T国の信頼を失うと香辛料の輸入すらなくなるかもしれないから、背に腹は代えられないかぁ」
「なんかスイマセン!」
「ナナイロイエローのせいじゃないだろ?犯人からこの金額を返してもらう。ついでに慰謝料もふんだくる!」
ナナイロイエローは一時的にカルロ商会へと戻ってきた。
「やっぱり『魔力をたどる』なんて不可能なんじゃないか?」
「俺はSランクの宝石を手に出来たけどな。ナナイロイエローのおかげで」
ナナイロイエローを貶めたやつは閉口してしまった。
「なんだよ、ここに犯人いるじゃん。Sランクの宝石と全く同じ魔力の残滓がまとわりついてる人間が」
「ナナイロイエロー、誰だ?」
ナナイロイエローが前後に揺さぶられた。カルロも必死だった。
「あいつ。あいつからSランクの宝石と全く同じ魔力の残滓が……」
「お前、盗ったのか?」
「ヤダなぁ、商会長。あいつが魔力の残滓を見ることが出来るとしてもココにいる全員がSランクの宝石に触っていますよ?Sランクの宝石の魔力の残滓があっても不思議じゃないでしょう?」
「しかし、ナナイロイエローはお前を指さした。この職人が多くいる中でただ一人お前だけだ」
「それって、何か証拠になるのですか?ただの新人の戯言かもしれませんよ?」
物的証拠がないことが弱みとなっている。
63.
「最近、その人がかなりいい車を買いました。それもキャッシュで」
「ほう?」
「俺は女の子がいる店で、派手に遊んでいるって聞きました!」
「へぇ?」
「親戚が亡くなって、思わぬ遺産が入ったんだよ!」
「確かお前……孤児だったよな?どこに親戚いたんだ?」
「ぐっ」
「はぁ、まぁいい。お前が宝石を盗んだ。それで間違いはないか?」
カルロも意地悪だよなぁ。追い詰めるように、尋問するもんな。
「どっちにしろ、俺は職人さん達にキャッシュでいい車が買えるような給与は出していないからなぁ。この宝石を売った金か?残念だけど、車は差し押さえだな。他の者もイロイロと……。宝石の代金だけじゃなくて、俺は慰謝料も請求するから、よろしくな。それから、うちの商会は懲戒免職だな」
カルロは中々にエグイ。
そいつがナナイロイエローをターゲットにした動機は『新入りを陥れたかった』らしい。
まあ、中堅の職人としてはポッとでの職人が王太子夫妻の婚約指輪に使う宝石の加工なんて大きな仕事するのが気に入らなかったんだろうけど、自爆だよなぁ。
警察沙汰にはしないらしい。カルロ商会から犯罪者を出したくないというカルロの思惑。
その日の夜カルロはまた、酒を飲み過ぎで泣き上戸になっていた。俺はマスターがわざとこの姿見たさにストップかけないで飲ませてるんじゃないかなぁ?と思ってたりする。俺は二日酔いとかでストップかけられるから。
「俺はさぁ、Sランクの宝石の加工はあの男に頼もうと思ってたんだぜ?なのにどうしてあんなことを……」
いや、わからないし。俺はナナイロイエローが楽しそうに出向してるのが嬉しい。なんでもナナイロイエローが携わっている宝石は魔力量こそ多いが、傷が……って理由でDランク落ちっていう悲しい宝石。
そんな宝石に命を吹き込むように加工するのがなんとも楽しいようで。
「……皆さんでナナイロイエローに名前をつけましょうか?」
「本人はナナイロイエローってのが好きみたいだけど?」
「マルコさんがつけてくれた名前なら喜びますよ?」
「そうかな?」
ちょっと照れ臭い。ナナイロイエローが喜んでくれるなら、名前をプレゼントってのもアリかな?
「うーん、レモ!」
「では、言い出しっぺの私はネロで」
「俺は、リッキー」
この中から、本人に選んでもらう事にした。
「俺はマルコさんが言った。レモがいいです。レモンっぽいし。黄色っぽい。イエロー感が残って、ナナイロイエローの名残を感じる」
「じゃあ、お前は今日からレモね!」
「俺の名前はレモ…レモか。うん。なんだか生まれ変わった感じ!」
64.
今、現在二つの名前が飛び交っている……。
「ナナイロイエロー!街の子供がなんか知らんがお前に会いたがっていたぞ?」
「え~?何かなぁ?」
「レモ!時間だ。カルロ商会に出向しないと遅刻だ。カルロに怒られるぞ?」
「え?それはコワイ。行ってきま~す!」
レモは速足でカルロ商会に向かっていった。
「マルコ商会長。『レモ』ってなんすか?」
「コラ!言葉遣い。全く油断するとすぐ元に戻るんだから……」
アレクはなかなかスパルタだなぁと思う。
他人にも厳しいけど自分にも厳しいみたいで、帳簿のちょっとしたミスも許せないみたい。
「ナナイロレンジャー、皆名前つけてほしいっす!」
えーっと赤橙黄緑青藍紫の七つだよな。黄色のレモはOK。
「まずはナナイロレッド。うーんと、キャラ的に『レノ』で」
「よっしゃー!俺は今日からレノだぜー!」
今までなんだったんだ?
「次、ナナイロオレンジは美味しそう……」
「俺っすか?」
「違う違う!思いついた名前だよ!『ティーノ』」
「確かに、なんか美味そうな名前っす。俺はどこも美味くないですけどね~」
「次っナナイログリーン!『エンツォ』」
「うっす」
「次、ナナイロブルーは『ニコ』」
「拝命いたしました」
拝命とかどこで覚えた?アレクが教えた?
「次、ナナイロラン?」
「酷いっす自分ナナイロインディゴっす…」
「悪い悪い。名前は『ダリオ』。静かな強さを感じるだろ?ここぞという時に強いんだよ。普段は温厚だけどってやつだな」
アルアルだな。『温厚なやつはキレるとコワイってやつ』。
「最後、ナナイロパープル!お前は『シルヴィオ』」
ナナイロレンジャー(レモを除く)が皆で喜んでるからいっかぁ。そんなに名前が欲しかったのか……。みんな訳ありなのかな?言いたくない事は聞かないけどさっ。
その日の夜、俺はSanctuay Silentで愚痴っていた。
「いきなり名前を付けてほしいって6人に名付け。「レモばっかりずるい~」みたいな?もう、大人だろう?って。でもレモみたいにそれぞれ捨てたい名前があるのかもしれないから深く触れないで、おとなしく名前つけたよ。疲れた~」
俺はネグローニを飲みながら愚痴っていた。
腹に響くようなウッドベースの音も心地良い。
「……それは大変でしたね。名付けって責任もありますし、疲れるんですよね。精神的にも。あとあとでも長く使われるものですし」
「そうなんだよね~」
カランカランと店の戸が開く音が聞こえてカルロが入ってきた。
「おい、レモがT国に目を付けられてるぞ。いい意味でだけどな」
「それはどういうこと?」
「Sランクの宝石を分割しなくても済んだのはレモの功績だろ?あと、王太子夫妻の婚約指輪となる石を発見したって功績もある」
あ~。
「でも、レモはマルコ商会のだからな」
65.
「ってお前が言っても事は外交問題なんだよ。難しいよな。あとなぁ、むこうさんの言い分は王太子妃の家が「妾腹の方が加工した石なんて不吉」とか言ってるらしい。イニシャル入ってるのにな。それからまだあるぞ?婚約指輪は一般的じゃなくて、ペンダントにするのが一般的らしい。加工の仕方が変わってくるな」
「加工の話はカルロからレモに伝えてよ。T国大使とお話しないとダメかなぁ?今度はカルロとレモと俺と大使の4人で」
「だよなぁ。この国から優秀な加工職人が流出するのもどうかと思うが、T国にレモが単身で行ったとして、アイツを守ってやる人がいないだろう?それもどうかと思うんだよなぁ」
婚約指輪という新しい流行を作ってくれるのもまた王太子夫妻だと思うけど、夫妻が伝統を重んじているのならば仕方がない。
王太子妃の家が騒いでいるだけで、王太子妃は何とも思っていないのかもしれないし、T国大使とお話をしてみないとわからないな。こればっかりは。
「お久しぶりです。こちらが我が商会の宝石加工職人のレモです」
「は、初めまして。わたちが宝石を加工していますレモと言います」
噛んでるな。カルロが笑いをこらえつつ、腹を抱えてる……。
「まだ、加工途中ではありますが、大使にご覧になっていただきたく、話題の宝石を持って参りました」
正装で手袋の人が恭しく持って来てる。俺、手袋ない。レモは持ってるのかな?カルロは持ってそうだな。
「こちらがレモが見つけ出しました、王太子夫妻のイニシャルが入っている宝石となります」
「うむ」
話を聞くだけか…。
「単刀直入にお聞きします。妾腹というだけで宝石の価値が下がるのですか?」
「いや、価値がどうこうではなくてな。『妾腹の者が加工した宝石は不吉だ』と昔から言われていてな」
「迷信ですね」
バッサリと言い切った~!
「王太子妃自身がそう言っているのですか?」
「いや、彼女というより、彼女の家がな……。厄介なことに結構な家柄の貴族で」
出た、貴族。面倒だなあ。
「婚約指輪を当方は考えていたのですが、ペンダントの方がと言ったのも王太子妃の家でしょうか?」
大使は頷いた。あまり口に出しては不敬(?)になるのだろう。
「ペンダントの方がチェーンが切れるとか不吉ですよ?」
レモが反撃。確かに、チェーンが切れるとかは不吉。指輪ならその点平気。
「政略結婚なのですか?それならば彼女の家の言う事も聞かないとですが、恋愛結婚ならば本人たちの意向が一番ですね」
「恋愛結婚だと私は聞いている」
そんなら王太子妃の家の人が口出してくるのはどうかと思うけど?
なんとか王太子夫妻の話を聞いて二人の意見をいければいいんだけど……。
66.
大使が意を決してなんとか王太子夫妻を連れ出してくれた。方法は簡単と言えば簡単。王太子に話を通し王太子は影武者を用意。影武者には数日間王太子妃とイチャイチャしている風を装ってもらう(王太子妃役に侍女を用意)。数日間イチャイチャ過ごしてもらう。王家の影もそれを見ているだろう。
本物の王太子(近衛騎士の格好)は王太子妃(侍女の格好)と共に馬車でこの国のT国大使館へ。
それで、俺とレモ、それにカルロはT国の大使館へと行った。
「お前がこの度の石を発見したのか?大儀であった」
えーっと誰に言ったの?レモだよね?
「あの真ん中にいる青年が見つけたんですよ!」
「そうなのか?てっきり長身の男性が見つけたものだと……」
カルロか……。カルロは宝石加工職人に見えないだろう?
それはそうと、二人は妾腹が加工すると不吉だと思っているのかとかいろいろ聞いた。
全くそんなことはなく、「宝石の価値は誰が加工しても変わらないでしょう?」と、あっけらかーんとしたものだった。
「商会としては婚約ペンダントではなく婚約指輪をお二人がしていただくことで、T国のなかで新しい流行が生まれればと思っております」
「それは面白いな。妃の家は反対するだろうが、宝石加工職人としても仕事が変わってより一層切磋琢磨していくことだろう」
王太子は王太子妃の家が伝統を重んじる保守的であることを知っているんだなぁ。
「職人たちも伝統を重んじて保守的だがコレを機に変わっていくのも面白い」
面白いこと好きなのかな?
「それに、この宝石初めて本物見たけどすごいわねぇ。見て見て!宝石の中に私達のイニシャルがあるの。こんなの初めて見たわ~」
「うん、すごいな~。よく見つけたね」
「偶然です。偶然覚えてたんです!」
「にしたってすごいわ~。これは私達の一生の宝よ!」
「そうだな。あと、私達の意向としては婚約指輪を注文する!以上だ」
「私、レモ君のファンになっちゃいそう」
「んー、それはレモ君が私のライバルになるのか?」
「別腹よ!」
何だそれは……。
王太子はT国に帰った。が、王太子妃の家が大騒ぎだったらしい。T国大使から聞いたはなしによると、『妾腹が加工した石を使うし、婚約ペンダントではなく婚約指輪にするとか』それはもう大騒ぎだったらしい。
しまいにはT国国王に直訴までしたらしいけど国王が「迷信で職人を一人潰す気か?」と、一蹴したらしい。
王太子夫妻の婚約式で婚約指輪ブームが起きて、マルコ商会とカルロ商会に注文が殺到。特にレモへの名指し注文が多かった。安価な石で出来るからいいと思うが、レモの指名料が加算されるからどうかと思う。それでも指輪の中に互いのイニシャルがあったりするのは嬉しいようだ。
T国の職人で婚約指輪の石の加工ができれば、商会が忙しくなることもないんだけど、保守的過ぎて、宝石の加工技術も保守的。今までのペンダントに加工することは出来ても指輪に加工することは技術的に不可能。
そういうことで、マルコ商会とカルロ商会がてんてこ舞い、嬉しい悲鳴というわけだ。
67.
この後、T国の宝石加工職人の動きは2つに分かれた。
1.完全にレモを敵視。
濁りを活かす?宝石は色の深み・透明度・魔力量が命だ。濁りを活かすなんて邪道!
2.レモに弟子入り志願。
考えもしなかった宝石の濁りを活かすカッティング技術。今までのペンダントだけに固執しないカッティング方法を是非とも勉強したい!
そういうわけで、マルコ商会にはレモのお弟子さん(候補)が……。
「レモのやつ、凄いやつだったのか?」
「みたいだねー、あはは~」
「お弟子さんになりたい方はこちらに記名をお願いします」
ニコが冷静に仕切ってくれてるけど、商会は大混乱だな。
「日常の仕事をしてくれよ!」
「「「「はい!商会長」」」」
「あら、マルコ君。忙しいみたいね」
「嬉しい悲鳴ってやつかな?商会内が整ってないのにいいのかな?とか思うんですけど」
「いいのよぉ。それにしても、婚約指輪?そんなの街中のこんなオバサンですら身につけてるのに、世の中不思議ね~」
本当に不思議だ。
俺は自分の商会に戻った。
「えー、俺が弟子?なんで?」
「レモさんだけなんですよ!絶妙な宝石の濁りを利用したカッティングができるのは!」
「そんな事言われてもなぁ。俺はなんとなくやってるだけだし……」
「なんとなく?うおぉぉ!天才っているんだなぁ。無自覚なんですか?」
「俺は楽しく宝石加工してるだけだし、人様に教えることなんてできない!」
「「「「「「そんなぁぁ」」」」」」
そんな時に俺はT国に招待された。俺が招待されたというか、レモが招待されたんだけど。レモを単身で行かせられない。そんな時カルロがレモと一緒に行ってくれるようだ。心強い。俺はT国と少しは外交的に人脈づくりのためにも同行。アレクはレモに弟子入り志願をする商人について書類を作るために同行。
すると、ナナイロレンジャーのやつらも「俺も行くー」と騒ぎ始めた。
「お前達には俺が留守の間にマルコ商会に来た仕事をなんとかするという仕事があるだろう?」
と、言っておいた。諭したというんだろうか?
俺達はT国へと行くこととなった。
国王陛下の招待(ちょっと胃が痛い)なので、王城へと行った。
「この度は、我がマルコ商会のレモを評価していただき誠にありがとうございます」
「初めまして、私はレモと申します。高く評価をしていただき光栄に思います」
「うむ、レオ殿のことは我が王太子より良く聞いている。また、この国の職人も多くそちらにというかレモ殿に弟子入り志願をしているとか?」
「大変光栄なことなのですが、私は自分が思ったように宝石を加工しているだけで、他人に教えることができるような技術は持っていません」
「ほぉ、感覚派の天才か……」
「国王、発言の許可を」
「よかろう」
許可がいるの?面倒だ。話しかけるタイミングとかわからん。
「レモ殿を王太子夫妻の専属職人としてT国に迎え入れたく思います!」
「む、……むりです!俺はマルコ商会のレモです」
「ふむ。では技術交流という事でこの国の職人と交流をしてほしい」
「あの、私はマルコ商会のアレクと申します。初めまして。T国の宝石加工職人さんはレモに対して、畏怖の念を持っている者もいますが、レモのように伝統とはかけ離れた方法に反感を持っている者がいると聞いています。後者はレモに危害を加える可能性はないでしょうか?」
68.
「なるほど。確かに言う通りだな。では、王城で『レモとの技術交流』という名前で交流を行うのはどうだろう?」
「それは……危害がない代わりにこの国T国の技術をレモが見ることができません。‘交流’ではないのです。職人は交流するでしょうけど。職人の交流で構わないのでしたらその方法で」
「『レモの技術交流ツアー』とかだとどうだろう?予めレモ殿に来てもらいたい工房にレモ殿が足を運ぶという形になるが……」
「予め予約した工房がレモを攻撃しないという保証はないのです。ですので今のようにレモに教えを乞いたいという者にマルコ商会の方に来ていただく他はないですね」
「レモ殿の安全第一だな」
「意見が一致しましたね」
アレクを連れてきてよかった。王族との交渉役になった。俺じゃ無理。
結局は商会で何とかするしかないのか。
商会に戻ると、ニコがレモの弟子入り志願者を纏めていた。すごい量。なんでも、T国ではカッティング技術も保守的過ぎて婚約指輪一つ作れないというありさまらしい。
まずはレモがどうこうよりも、婚約指輪くらい作れるようになったほうがいいんじゃないか?
「商会長!その時にレモさんの濁りすらも利用したカッティング技術を習得したいんです」
はぁ、なるほどなぁ。
その日の夜、俺は久しぶりにSanctuary Silentに飲みに行った。先客がいた。カルロ?
既に酔い潰れていた。マスターの作為的なものか?
「レモはできるやつだと思っていたよぉ。ここまで大きくなって、俺は嬉しいぃ!そして、T国から無事に帰って来れて良かった。正直、T国に取られるんじゃないかと思ってたんだよぉぉ!」
「あー、はいはい。マスター、俺にも一応ネグローニを」
「レモがもっとスゲェやつになったら俺らから離れて言っちゃうのかなぁ?俺は悲しいぞぉぉぉ!どぉする?マルコぉぉぉぉ!」
どうもしない。レンジャーの解散かぁ。
俺はそんな泣いているカルロを横目にグラスを鳴らし、ネグローニを飲んだ。氷の音とウッドベースの音が心地よい。
願わくはこの後カルロに両肩をつかまれて前後に揺さぶられたくない。
絡み泣き上戸だった日の翌日(当日?)はカルロが二日酔いらしい。マスターがペットボトルみたいなのに二日酔いに効くマスター特製のハーブティーを持たせてくれたから生きてるだろう。
マスターもカルロのあの姿を面白見たさで酔っぱらうのわかってて止めなかった贖罪の気持ちがあるんだろうな。
69.
レモがT国大使館に呼ばれた。俺じゃなくてレモが呼ばれた。
「待っていたぞ、レモ。恥ずかしながらなぁ。我が国の保守派がこの宝石の加工をレモに持ちかけよった。色の濃さと、魔力量はSランク。しかしながら、どうにも濁りがなぁ…。で、この宝石を、国王に相応しい宝石に生まれ変わらせてみろ!っていう無茶ぶりだ」
すごい無茶ぶりだなぁ。でもまぁ、T国の職人が丸投げしてきた宝石をレモが生き返らせたら……向こうの面目が丸つぶれだなぁ。
レモが宝石をジーっと見る。
「大使…えーっとF・Tというのは国王のイニシャルですか?」
「ああそうだが?何故君が知っている?」
「宝石に書いてあるから……」
書いてある?油性マジックとかで、落とし物防止のイメージしかない。
「えーっと濁りがそういう風に見えるのでそれを活かしてカッティングすれば国王に相応しい逸品となるのでは?と思います」
すっげー。俺にはわからない世界だ……。Sランクだし。
「けっこう大きくTって濁ってるからT国に相応しいですね!」
危うい!…危ういぞ‼
一歩間違えれば、「お前の国なんかこの大きく濁った国のようだ」とも受け取れる。ギリギリのところでレモは無邪気に「キレイな宝石にするよ~♪」って言ってるんだろうけど、レモの性格とかよくわかってない人が聞いたら、そういう風にとられちゃうかも。嗚呼、カルロじゃないけど俺の胃も危うくなってくる。
商会長って職業的に胃腸虚弱になるの~?
その宝石を持ち帰って、商会でレモは楽しく宝石加工……をするつもりだったみたいだけど、弟子入り希望者が宝石加工の様子を見学したいと。
「これじゃあ、集中できないよ~」
と、レモは言うので、T国国王陛下に献上するものでもあるし、見学はやめてもらった。
現在、マルコ商会はアップアップしています。
通常業務は続けたいし、トロピカルジュースに、レモの弟子入り志願者。
これは……嬉しい悲鳴なんだけど。部署を開設すべきだなぁ。
えーと、レモは宝石加工一択。
アレクは経理。
ニコがレモの弟子入り志願者の受付。
他のナナイロレンジャーはいつもの業務してほしいなぁ。街の言葉を聞き入れたり。
レモがSランクの宝石加工終わったみたいなので、T国大使館に持っていった。
「これは……。国王もさぞかし満足することでしょう。ここだけの話、国王は王太子夫妻の婚約指輪にあるイニシャルがちょっと羨ましいなぁと呟いたことがあるんですよ。本当に内緒ですからね」
口外したら、本当に首が飛びそうだから、口外しない。怖い。




