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カルロ商会で宝石の加工職人を募っているらしい。
なんていうか…。意外。
うちの商会のナナレンジャーのうちの一人が宝石の加工職人の家系らしい。手先が器用だと思ってたんだけど、意外過ぎて思い至らなかった。チンピラだったし……。ナナイロイエローがねぇ。
そんなことをカルロに話すと「そりゃまたカルロ商会とマルコ商会のコラボ企画になるな」とか言われた。そんなつもりは一切なくて、アイツが宝石加工で職人として稼いだ分はそのままアイツの稼ぎにすればいいと俺は思ってる。
「うーん、ただあいつが職人としてできるってだけだし、職人としての稼ぎはそのままアイツが手に入れればいいと思ってるからコラボ企画とは違うかな?」
噂によると、アイツはアイツで思うところがあって、家を出てきたらしい。
無理強いをするように、宝石の加工をさせたくないし、アイツの好きなようにやらせたい。
「俺は商会長の役に立ちたいっす!」
「コラコラ!言葉遣い‼」
「俺は商会長の役に立ちたいです!」
商会内だったら言葉遣いはどうでもいいんだけど、公ではね……。アレクが頑張って指導してるなぁ。
「俺はお前に無理をさせたくない。宝石加工が嫌ならしなくていいんだ。お前にはその逞しい体があるんだ。何も宝石加工をしなくても、仕事は他にもあるだろう?」
「うおぅ!商会長はなんて優しいんだ!」
誰かと比較したのかな?
そんで、宝石加工技術を比較する場所にて。
「久しぶりです、兄貴。兄貴が家を出てからになりますか?あれからというもの、俺が家を継ぐために宝石加工の技術を勉強したんですよ?と言っても、兄貴が家にいる時から俺の方が宝石加工の腕とか良かったんですけどね。あ、呼ばれたので失礼しますよ」
「おい、あんなのが弟なのか?あれじゃあ家も出たくなるよなぁ。なんだあの嫌味さは?」
「あいつは本妻の子なんですよ。俺は一応兄貴ですけど、妾の子。だからあんな態度なんですよ」
カルロもあんな性格の悪いやつと仕事したいと思わないと思うんだよね。
「おい、マルコ。ナナイロイエローの弟、性格悪すぎないか?」
「悪すぎですよ。もー、俺ですらプンプンです」
「いや、お前がやっても可愛くもなんともないんだが……。性格の悪さが加工した宝石に表れて、商品としてダメだな。見る人見ればどんな人間が加工したのかわかるからな。『カルロ商会』が雇ってるとなると商会の名前にも傷がつく」
「なんだかゴメンなさい」
「おっ、ナナイロイエロー!お前はどんな感じ?おお、粗削りだけどいいじゃん?他の商会にない感じで俺はこういうの好きだぜ?」
ナナイロイエローはとんとん拍子にカルロと契約をすることになった。
俺は内心ナナレンジャーじゃなくて、ロクレンジャーになるのかなぁ?なんて思っていたのに、本人の意向でナナイロイエローはマルコ商会に在籍し続けることとなった。宝石加工はカルロ商会でするらしい。
「俺は『マルコ商会』が好きなんですよ!」
そう言いきるナナイロイエローの笑顔がカッコよかった。
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その日の夜もだけど、宝石っていう高級なものの大口契約できたのが嬉しいのかな?ちょっと酔うとすぐにカルロは饒舌になる。
「マスター、マルコのとこにいるナナイロイエローってやつなかなか腕がいいんですよ。まだまだ粗削り感はあるんですけどね?俺にはわかる!あいつはモノになる!」
マジで?放っておいたら街のチンピラになるところだったやつがねぇ。大出世。
「俺の商会に来て欲しかったのに、マルコ商会がいいって言うからさぁ。マルコのどこに魅力があるんだぁ」
俺の両肩を掴んで、前後に揺さぶるのは止めてほしい。ああ、ちょっとしか飲んだ後じゃなくて良かった。めちゃくちゃ飲んだ後にコレをやられたら、絶対に吐く!あまり利用したことのないここのトイレで吐くということになってしまう。
そんな俺達を見守るだけで、カルロを止めてくれないマスターがちょっと憎い。なんか微笑んでる?そして、いつものようにグラスを磨いてるんですね。
「ハイハイ、カルロの方がイケメンで長身。俺よりもお金持ちだし、女の子ならまぁカルロのところに行くでしょうね」
「そうだよな?お前もそう思うだろ?何でなんだよ~!」
カルロの意外な実態、胃腸虚弱に続き、泣き上戸なのか?
「あ、そうだ。カルロ。コレを機に俺に宝石の事をちょっと教えてくれよ」
「いいだろう」
カルロがふんぞり返った。まぁ、カルロらしいといえばカルロらしいけど。
「宝石の美しさを決める要素は3つ!色の濃さ・透明度・魔力受容量(魔力の入りやすさ)だ。色の濃さは、まあ濃い方が良い。透明度も澄んでる方が良い。たまに一部が濁ってたりするんだよ。それだけでアウト」
「うわー厳しい」
「そうだ、厳しい世界なんだよ。そんで魔力受容量だけど、多ければ多いほどいいに決まってる。魔力なんか使えるやつは一部の人間だけどな。それでS~Dにランク付けされる。Sランクが3つの要素が最高ってやつだな。対象が王族とか大使館になるけど、まぁそれだけ高級品だ。Aランク:高級品。Bランク:一般の良品。Cランク:安価だから加工してアクセサリーにするのが一般的。Dランクになると、魔力受容量はないし、濁りもあるって代物だな。そんなのは工芸品になるか、職人の練習用だな。まぁ、こんな感じだ」
ナナイロイエローは全部把握してるんだよね?すごいなぁ。
「Sランクの宝石って加工することあるの?」
「まだしたことないけど、将来的にあるんだろうなぁ。王族が宝石の原石を持ち歩くか?アクセサリーにしてるだろう?」
恐ろしい金額になりそうだ。それより、職人的に光栄だけど加工する手が震えそう(小心者)。
「加工職人としては、Sランクの宝石との出会いってのが嬉しいんじゃないか?」
そういうものなのか?俺にはわからない。
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ナナイロイエローは翌日からマルコ商会から出向するという形でカルロ商会へと行くことになった。
「こいつは俺が探し出した宝石加工職人だ。文句は言わせねー。技術はまだ粗削りかもしれねーが根性がある」
「マルコ商会から出向してきたルカです。よろしくおねがいします」
「悪い。お前の名前、マジで知らなかった…」
「俺は‘ナナイロイエロー’でいいんですよ。そっちの方がなんか愛着があります」
そういう事で、ナナイロイエローはカルロ商会でもナナイロイエローと呼ばれているらしい。
本名は嫌いなのかな?昔の家の事とかあるし。
「ナナイロイエロー。これどう思う?」
「うーん、この濁りさえなければSでいけたかもですね」
「お前、何もないのに魔力受容量がわかるのか?」
「何となくですけど、あってました?」
「……ああ、まぁその通りだけど、驚きだな。マルコに言っておくか」
「なんか恥ずかしいですね」
「何を恥じることがあるんだ?自信を持てよ。自分の長所っていうか強みになるところなんだから」
「でも、勿体ないですよねー。濁りがあるばかりにランクダウン……」
「まぁ、落ち込むなよ。そこがお前らの腕の見せ所ってやつだ。この濁ってる部分をうまいこと削ってSランクとして加工するんだよ!」
カルロは結構簡単に言ってたらしいけど、ナナイロイエロー曰く「すっごい難しい注文」らしい。
ちなみにアレクの母親が買いまくっていたのはAランク程度の宝石。それでも庶民には超高級品。
それを買いまくってたツケは溜まるわけで、カルロ商会からアレクの母親への支払いの催促は非常によく行くようになった。
「ほら、貴族だったクセっていうの?身の回りに宝石がないと落ち着かないっていうか……」
「そんな体質とか現象は聞いた事がありません」
男性だと、色気(あるのか?)で懐柔されると困るから、女性職員が行っているらしい。
「はぁ、そんなクセがあるとしても、借金も存在するんですよ。そっちもしっかりと返済していただかないといけないんですよ。元・貴族とかそんなのは関係ないですよ?」
そんな事を言われて、アレクに泣きついてきた。
「なんですか?自分の都合がいいように俺を利用しようとしないでください。持っている宝石を売ればいいでしょう?足りないでしょうから、屋敷の絵画とか無駄な装飾品。それでも足りなければ、屋敷自体の売却。最悪の場合、貴女自身の身売り。身売りは無理がありますね。オバサンですし」
「オバ……オバサンだなんて」
「ええ、オバサンですよ。都合よく息子にたかる寄生虫のようなオバサンですね」
アレクの母親は顔を真っ赤にした。
「もういいわよ、あんたなんか当てにしないわ」
「そうしてください」
「金輪際寄り付かないんだからっ!」
「嬉しい限りです」




