55.
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カルロの宝石の顧客にはアレクの母親もいるらしい。どうやって支払うつもりなんだろう?アレクの母親については踏み倒されるのがオチだと思うけど?
数日後、俺はカルロに呼び出されてカルロ商会の帳簿を見せられた。
「いいんですか~?他商会の商会長に帳簿なんか見せちゃって」
「まぁ、黙って見ろ。ここの数字おかしくねーか?」
宝石を扱ってるんだよなぁ。にしては数字がオカシイ。
「この前後の月と比較すると歴然」
明らかにおかしかった。
「カルロ、これって横領?」
「馬鹿、カルロ商会内で言うなよ。誰がやってるかわかんないんだから」
っていうか、これ。帳簿を管理してる人も適当に仕事をしているもんだなぁ。俺がいなくなって、なんか楽してるのか?
「それならマルコ商会へお越しください」
カルロを連れてマルコ商会の本店へとやって来た。
「で、なんなの?この明らかな証拠の残し方。おかしくない?犯罪はもっとこっそりわからないようにやるものだけど……」
「話は聞かせてもらったぜ?」
「お前達!仕事はどうした?」
「今日に限って依頼が少なくってすぐ終わりました。で、その証拠を掴めばいいんですか?」
「いや、証拠はこの帳簿で十分で、問題は誰がコレをやってるかなんだ。人海戦術で頼む」
「なんだかわからない戦術だけれど、俺達はやりますぜ?」
ドヤ顔をしたマルコ商会の職員たちは街中へと行った。
「あいつら、大丈夫か?」
「やる時はやるから、大丈夫でしょう。それよりも、宝石を売ることに浮かれて人を見る目も無くしたんですか?宝石の顧客にはアレクの母親もいるらしいですけど。あの人がどうやって支払うつもりなんですか?アレクの母親については踏み倒されるのがオチだと思いますけど」
「お、おう」
「貴族気分で買い物をしてるんでしょうけど、ただ庶民ですよ?身元とか年収とか調べてるんですか?分割払いも踏み倒されますよ?」
年収なんてなさそうだよな。あの母親。
「あ、あの母親の影で横領してる?」
「あり得ることだな。また、うちの商会から犯罪者かぁ」
カルロが元気なくなった。
「T国大使になんて言えばいいのか。俺、もう恥ずかしいっ‼」
「俺なんかそのまま恥ずかしいですよ。あの母親の存在が恥ずかしい」
アレクの言葉はカルロに響くのか?
「あの親から生まれたという事実が恥ずかしい。だから、街中に逃げたというのに……」
アレクが話を続ける。
「ただの俺の推理なんで聞き流して下さって結構です。黒幕は帳簿をつけていた方も含めて複数人。カルロ商会長を侮っている人物です。帳簿くらいじゃわからないってタカを括っているんでしょう。だから、明らかな証拠が、その証拠を消すことがなかったことから、帳簿をつけている人間も黒。かなり年嵩の中間管理職の方ではないでしょうか?マルコ商会長という目の上のたん瘤がいなくなったことで、好き勝手に動いているんでしょうね。以上です」
「理にかなってるな」
56.~カルロ視点
うちの商会はこれでも若い世代中心の商会だからなぁ。中間管理職でそれなりに年嵩の人間っていうと、アイツだなってすぐ浮かぶ。
ただ、証拠が帳簿しかないんだよなぁ。
「カルロ商会長!街の質屋にあたったところ、ここのところ同じ人間が宝石を質に入れるという話です!」
「それって……」
俺はそいつの耳に疑ってた人物の特徴を言ってみた。
「そうそう!質屋の親父さんも同じようなことを言っていましたよ。ちょっと太り気味かな?って感じで、それなりの地位にいるんじゃないかな?って人。見た目は、まぁ所謂親父ですね。オッサン?やたらと汗っかきなタイプって言ってました」
はぁ、俺が疑ってた男と当たった。
その質屋の親父さんが物的証拠かな?
「質屋に持ち込まれるのは、品質的に全く問題のないものらしいですよ。なんか、武勇伝のように「商会長に『品質に問題があって市場には出せません』って言ったらはじかれた」とか言っていたらしいです」
そんなことを言ってたな。直接確認をしなかった俺にも問題がある。しかしだ、部下を信用しての行動だったのだが?
「カルロ?そいつを尋問して、懲戒免職にした方がいいんじゃないか?早いうちに。尋問はお早めに。俺みたいに尋問しようと思ったら、翌日から長期の有給消化をされる恐れもある」
「そうだな。即尋問をしようと思う」
俺は商会に戻るや否やそいつを呼びつけて、尋問を開始。
「お前。商会の宝石で私腹を肥やしてただろう?」
「何を証拠に?」
「俺が証拠もなしに部下を疑うと思ってるのか?」
「まず最初におかしいと思ったのは、帳簿だな。ある月の数字が前後の月の数字と全然違った。おかしいだろ?まあ、おかしいと思わなかった帳簿をつけていたやつもどうかと思うんだが」
「では、その者の仕業ではないのですか?」
「何がだ?」
「えーと、私腹を肥やしているのは!」
「うーん、帳簿の数字だけなら全く証拠として弱いんだよね。それで街の質屋の話によると、お前の容貌にそっくりな人間が最近出入りしているって話を聞いたんだよね。あと、そいつは武勇伝のように「商会長に『品質に問題があって市場には出せません』って言ったらはじかれた」とか言っていたらしいんだよね。誰だか知ってる?」
呼び出した男の顔色が青ざめて行くのがわかる。
「でさぁ、街の質屋が言うにはそいつの容貌がお前にそっくりなんだよね。面倒だから、その質屋の親父さんに来てもらった」
「あ、この人だよ!ここ最近うちの店にやたらと宝石を売りに来ては武勇伝のようにカルロ商会長を貶めるような事言ってたのは!」
「ジ・エンドだな。お前を今日付けで懲戒免職とする。退職金とかでないぞ。出る予定だった退職後の福利厚生もナシ!じゃあな!」
「帳簿をつけてたやつはどうなるのですか?」
「どうなると思う?」
「私の罪を見逃して、見返りにちょっとの宝石をてにしていたんだから、あいつも懲戒免職だ!」
「だそうだ」
実は、壁一枚向こうにスタンバってもらっていた。逃げないようにマルコ商会の屈強な男を側に置いて。
「ということだ。何かいうことあるか?」
脱力してしまったようだ。膝から崩れ落ちている。
57.
その日の夜、特に申し合わせたわけじゃないけど、Sanctuary Silentに俺達は集合した。俺達っていっても、俺とカルロだけど。
「何でなんだかなぁ?マルコのところにはいい人材が集まる?俺の商会は犯罪者出すの2回目だぞ?」
「それはほら、俺の人徳ってやつじゃないですか?」
ちょっとドヤ顔で言ってみた。
速攻で両頬をひっぱられた。痛い…。
「なにしゅりゅんでしゅか?」
「随分生意気言うようになったなぁと思って」
「まぁ、俺も成長しますからね」
「ん?俺の身長越えてないじゃん」
カルロの身長越えるの無理だって!高身長設定なんだから‼
「はぁ、これから商会内の整理だなぁ。人材の良し悪しなんかどう見ればいいんだか……」
「カルロは頭堅いなぁ」
「お前はグリグリされたいのか?」
「いや違いますよ~」
それは嫌だ。禿げる!痛い!頭蓋骨は無事なのか?
「簡単ですよ。ターゲットの人物の近くにさりげなくコインを落とすんです。そいつが懐に入れたら、アウトですね。すぐにカルロの元に持ってくるような人材は忠実な部下でしょう。ジーっと見つめる人もいるかもしれませんね。そういう人は企画立案に向いてるタイプですね。そういう感じです」
「なるほどな。それは確かに簡単で分かりやすい」
マスターはグラスを黙々と磨いていた。
ウッドベースの音も心地よい。
翌日、カルロは俺が言った方法を実行したらしい。幹部候補に。そしたらまぁ、信頼できると思ってたやつはアッサリと着服。すぐに尋問して、幹部候補だってやつが全くのヒラ社員になったらしい。
すぐにカルロに「落としました!」と申告したやつは見事幹部に昇格。そのくらいの忠誠心がないとなぁ。やっぱりじーっと見つめるやつもいたらしい。まさかとは思ったんだが、そういうやつは企画立案する部署に配属したと聞いた。
そういう意味では俺は恵まれた環境なのかな?社員に慕われてるし。アレクは俺LOVEを公言してるな……。
なんだかんだとナナレンジャーも街中では大活躍してるしなぁ。
そんな中で、俺はアレクに相談を受けた。
「あの…すごくいいにくいんですけど。俺の母親、予想通り宝石の支払いが滞ってるらしくて俺に泣きついてきたんですよ。「助けてよ」って」
やっぱり。というか、なんというか……。
「それな。自分と母親が逆だったらあの母親はどういう反応をするだろうと考えれば、自ずと答えは出ないか?」
俺的には、『あなたが勝手に出て行ったんでしょ?お金がない時だけ縋って来ないでよね』とか言いそう。
「お金の工面の方法だけど、今まで買った宝石を売ればちょっとは足しになるだろう?あとは貴族としての財産?かなりありそうなイメージなんだけど?」




