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「海賊のアジトの断定に困ってるってマスターに聞いたわ」
結局、俺達はSanctuary Silentに来た。目的はレオナがいたらいいなってのと、マスターのハーブティー。
「まだ、胃痛?情けない男共ね!」
マスター(君の父親)もだよ?激辛味を決めるのはかなりの重労働。胃が。
「そうねぇ、私なら港の外れの倉庫街かしら?そこにグランデ商会が持ってる一画があるって聞いたことがあるわ」
港かぁ。海賊がうろついても海運業者もいっぱいいるからな。マッチョが多そうなイメージだけど、海運業者もかなり日に焼けてるマッチョだし……。
倉庫街に保冷庫(倉庫)を運ぶのは自然な行動だよな。目立たないし。突然街中に倉庫が現れるより全く自然。
「よし、明日にでも倉庫街でカルロ商会の保冷庫を探すか!」
「商会長。そうは言っても、倉庫なんてどれも同じに見える……」
「そうだろう?そう思って予め上からしか見えないように、あの保冷庫には『カルロ商会』って名前がついてるんだよ」
金属に名前を?? 彫ってあるってこと?それとも焼き印みたいな?よくわかんないけど、カルロ商会のものだという事がわかるような仕掛けが施されてるってことだよね?
翌日、俺と商会長は港の外れの倉庫街が見下ろすことが出来るちょっと高台のところから、倉庫街を眺めた。
「おー、おー、見てみろ?かなりガラの悪い連中が『カルロ商会』って書いてある保冷庫をグランデ商会が持ってるって言ってた倉庫街の一画に運んでるぞ~」
ちょっと楽しそうに双眼鏡を覗く。
こういう時は商会のトップで良かったんじゃないかと思う。双眼鏡なんてこの世界じゃまだまだ普及してないものだからな。せいぜいがオペラグラスか?それじゃあ、この距離の保冷庫を探し出すことは不可能だろう。
「あ、本当だ。思いっきり『カルロ商会』って保冷庫の上面て言うんですか?そこに書いてありますね!」
「そういうわけなんで、市警団の皆さん。どうぞ、彼らを捕縛してください。市警団長さんは証拠にこの様子をどうぞ見て下さい」
団長さんもビックリだろう。まさかの保冷庫上面に商会の名前がドーンと。ちょびっと書いてあるなら、『イタズラ』とか言い逃れができるけど、ドーンと金属そのものに彫金?で名前を書いてあるから、イタズラじゃ無理だろう……。
見ているとわらわらと、市警団さんが倉庫に近寄り、海賊さん達を捕縛していった。
うーん、彼らはただの実行犯なんだよなぁ。
市警団的には海賊の摘発でOKなのかな?
カルロ商会的には誰の指示で動いていたのか口を割らせてほしい。保冷庫の場所からして旧グランデ商会の残党なのは確かなんだけど。
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後日、海賊さんがアッサリと口を割ったと連絡があった。
海賊さんは『イノウエ』という人物の指示でこのような行動にでたらしい。
ハッキリ言って、保冷庫よりもすぐそこにある純金のインゴットのほうが魅力的だったという話だ。そうだろうなぁと思う。
さて、『イノウエ』なる人物だけど……。
俺をイジメていたやつの名前か。グランデ商会長に切り捨てられて、それっきり旧グランデ商会の残党にすらなっていないと思っていたんだけど、違うようだなぁ。
これはいろいろ動機がある中に、『イノウエ』の俺への復讐もあるんだろうか?まぁそうだろうな。俺は過去として切り捨てたんだけど、『イノウエ』は結構根に持ってるみたいだな。
「マルコ。また、あいつと対峙することになるのか?大丈夫か?」
「俺はもう大丈夫です。『イノウエ』が過去に囚われ、固執し過ぎなんですよ。何が何でも俺よりも上でありたいんでしょうか?」
「はぁ、それなら努力すればいいのになぁ」
「努力が嫌いな人種なんですよ。世の中にはそういうのもいるんです。自分がすべきことを他人に押し付けたりと」
「それは本当に努力が嫌いというか、面倒な人種だな」
「ですよ?」
そんな会話を商会長としていた。前よりも前を向いて生きることが出来るようになっている。よかった。
「市警団より我が商会の保冷庫がこの区画にあるとの連絡を受けてココに来た。この保冷庫は間違えなく、我が商会の保冷庫」
「保冷庫なんて、どれも似たようなものでしょう?証拠はあるのですか?」
「うーん、ちょっと高台からこの保冷庫の上面を見てみるといい。思いっきり『カルロ商会』って書いてある」
カルロ商会長から奪うように双眼鏡をとって、高台へと旧グランデ商会の残党の一人が行った。
「バカな……」
「あんなにデカデカと金属に彫ってあるんだ。悪戯ではない。本気だ。これが証拠だ。保冷庫、及びその中身は返してもらうぞ?」
『イノウエ』の口角が上がったのが見えた。
「そんな……保冷庫の中が空?」
「いやぁ。カルロ商会さんがまさか空の保冷庫を海運しているなんて思いもしませんでしたよ。保冷庫はこれからお返しに行く途中でした」
うわースッゲー「自分に罪はない」アピール。でも……。
「ブラックペッパー500kg シナモン200kg オニオンパウダー300kg……まだまだ出てきますが、全部言います? 積荷のはずのものです。どこへ行ったんですか?」
「おい、イノウエなんとか言い返せ!」
「いや、あの香辛料は旧グランデ商会の残党の保冷庫の中……」
小声で話してるつもりみたいだけど丸聞こえ。
「へぇ、カルロ商会の保冷庫に入っていた積荷をそのまま盗んだんですか?なかなかの罪ですね?市警団の方もいらしてるんですよ」
市警団の方が旧グランデ商会の残党の方々を一掃。全員捕縛。
保冷庫に盗まれた香辛料を入れ戻し、場所もカルロ商会の場所へと移動した。
その後香辛料の質の低下が懸念されたので、T国大使に検査していただいたが、それほどの低下は見られないという事で、カルロ商会としてはホッと一息ついた。
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ホッと一息ついて俺は商会長に街中の声がどうなってるかを聞いてこいという指令を商会長から直々に受けた。
こういうのも、直々に受けられるって信頼されてるのかな?ちょっとした優越感。信頼されてなかったら無理だよね。サボり癖のある部下だったら、街中でサボってそうだもん。
「あら、マルコ君。今日は街中?お休みなの?」
「違いますよ。色々落ち着いたし、皆さんの生の声を聞きたいなぁっていう商会長のお言葉かな?」
「そうね、マルコ君なら話しやすいわ。商会長さんってイケメン過ぎて近寄りがたいっていうか、雲の上の人みたいなんだもの。マルコ君が不細工ってわけじゃないのよ!マルコ君だってうちに娘はいたら……って思うもの。うちには息子しかいないのよねぇ」
「いいじゃないですか!孝行してもらってくださいよ」
「してくれるといいんだけど、せめていいお嫁さん連れて来てくれないかしら? あら、ゴメンなさいね。市場調査?偽のクラッカーの時は酷かったわよ~。家族が揃って「お前、料理下手になったんじゃないか?」とか言うんですもの」
「それは災難でしたね」
「やっぱり本物じゃないとダメなのよ~」
「あ、マルコの兄貴!」
俺はいつアイツの兄貴になったんだろう…?
「激辛味。最高ですね。あれはすごいスリリングで何とも言えないですよ。最初に当たっても最後まで油断ができないところがなんとも言えないす。最後までドキドキですよ。今度兄貴も一緒にやりましょうよ~」
そういわれても……激辛味の商品開発の段階で相当胃がやられたから、もうごめんなんだよなぁ。
「あ、マルコ兄ちゃん!激辛味は僕にはまだ無理みたい。もうちょっと大きくなってからまた挑戦する!」
頬を膨らませてる少年可愛いなぁ。
「頑張れよ!いつかは絶対に余裕で食べれるんだからなっ」
「うん!」
「あ、マルコさんか。うちの酒場でも、激辛味のクラッカーは好評だ。それと共に酒も進むみたいで。酒場のオーナーとしては嬉しい悲鳴ってやつだ。あの‘ロシアンルーレット’ってやつ?はほろ酔いになったお客さんがなんか賭けてやってるなぁ。全員外れだった場合とか、全員アタリだった場合とかどうするんだかなぁ?とか思いながら見守ってるよ。アハハ!」
豪気な方だなぁ。
俺はカルロ商会に戻って商会長に報告した。
「主婦層はやっぱり本物じゃないとって意見で、他は今のところ激辛味が好評ですね。あの‘ロシアンルーレット’形式が若者はスリルを求めているようですし、酒場では賭けに使われているようです。……あ、賭けって金品を賭けるんじゃなくて、次の日のプレゼンをしろとかそういうのです」
「酔いが回って気が大きくなってるところでとどめか?その時酒場の主人は?」
「どうなるか見守っているようです。豪気な方でしたよ?複数人当たったらどうするんだ?とか考えていましたから」




