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第一三話 極彩上陸

 極彩色の島。新世界にいくつも点在する有人島の一つにして、旧世界における邪神戦争の余波を受けたこの島は大地のみならず、循環する天然の魔力さえも影響を受けてしまい、自然環境のみならず、島内に存在していた神殿や遺跡などは軒並み変貌を遂げてしまう。

 そして、それに乗じたのかは不明だが、かつて邪神に仕えていたとされる九人の女王が霊脈を通じて顕現。 


 彼女たちは各々が島の支配権を宣言し、一方的に自身の結界を発動。これに伴って島は環境そのものが崩壊してしまい、半年を周期に女王とそれに隷属する魔力が切り替わるようになってしまった。


 これに対して島民は霊脈の完全除去と女王の討伐を冒険者管轄協会に依頼。しかし、従来の冒険者ではとても対応ができず、協会は異邦人に絞って依頼を再発行。開拓遠征として実力を問わず、才覚と実力、及び幸運を重要視するレイドイベントへと改変させたのだ。


 「・・・っていうのが、基本的な極彩色の島の現状と概略だ。第六級冒険者相当とは言っても参加資格自体に制限はない。勿論、魔物のエサであってもな」


 「女王か・・・それってつまりは覇権争いっていうか・・・沽券を示したいだけじゃね?」


 「まぁそうだな。大言壮語ではあるが、その本質はあくまでも莫大な魔力を内包した幽霊だ。問題なのは、その幽霊が島一つを操れるだけの能力を有していることと、それが半年周期で入れ替わるという事実のみ」


 船内へと搭乗し、発着までの待機時間の間に概要と内部設定をキリカが開示する。

 九人の女王とは旧世界を統治していた邪神の幹部にして、全員が邪神の婚約者という非常に羨ましい集団であったが、彼女達は全員が賢者によって滅ぼされている。それが何の因果か復活したとあっては、祓うべきなのは事実だろう。


 「俺たちの目的はその解明と現女王の強いる独裁政権の打倒にある。とは言っても、基本的にはレイドイベント限定の報酬やらお前みたいに技術値の大幅取得が目的の奴が大半だろうがな」


 「・・・でも、倒したからって島の現状が改善されるってワケじゃないんだろ?」


 「あぁ。実際問題、過去三回とも女王を叩きのめして終わってはいるが、結局は魔力残滓が刻まれたまま、肝心の霊脈破壊は行えずに終いだ。だからこそ第四回遠征が開かれてるワケだしな」


 極彩色の島は異邦人であるプレイヤーにとってはただの稼ぎ場程度の認識なのだろう。それが悪いとは思わないし、カイトもその認識で臨む以上、彼らのことは責められない。

 だが、困窮している人間が居る状態を慢性化させたままなのを放っておけないと考える思考もまたカイトの内に燻っていた。


 「半年開催なのは単純に女王の復権によって環境が変貌するからであって、女王さえ打倒すれば残り期間の平和は保証される。どちらにせよ仮初めだけどな」


 その意を察したのかは不明だが、キリカがそう付け加える。それは冒険者としての情けではなく、友人としての気遣いであり、キリカはただ言葉を続けた。


 「だからまずは楽しむことを考えろよ。あくまでイベントなんだ。物語よりもお前自身の成長と楽しみがなきゃ始まんねぇからな」


 「あぁ、そうだな・・・!」


 その通りだ。自己の満足なくしてゲームは成立しない。そしてその在り方が千差万別ならば、自分の欲望にこそ付き従うのが吉であり、物語や諸事情はそれに追従するものなのだ。


 決意を新たにして、カイトとキリカは出発する。それは紛れもない冒険譚にして、冷酷と夢想が相まみえる幻想空間への船出だった。少なくともカイトはその気でレイドイベントへと参加したのだ。


 「さっっっっっっぶううううううううううううううううううううううッ!?」

 

 ―――そこは極寒だった。


 冷酷どころか冷風によって心身が凍結しそうになる。拡張神経によってご丁寧に再現された感覚は北国どころか北極クラスの暴風と低温度をプレイヤーに提供し、お陰でシバリングが全開となったカイトは上陸早々にリタイアしそうになるも、キリカの火系統魔法によって何とか再起。

 そのまま停留所から第一の村とされるスリーズを目指すべく、積雪した地面を踏みつつ進行した。


 「ヤバい・・・完全に装備を間違えた・・・。初期装備を強化しまくってたのがここに来て仇となるとは・・・・・・」


 「道理で防具に既視感を覚えたはずだ。お前、プラス値だけで乗り越えようとしただろ」


 「ま、まぁな・・・。ここで良い装備を確保する気でいたからよ・・・それに、魔物のエサだと生産とか強化金額が倍になるから下手に強化できなかったんだよ・・・」


 現実世界ではアメリカ大陸の文化が堪能可能な商業エリアが視界も霧氷で半ば遮られているとあっては景気よくショッピングなど行えないだろう。

 それどころか寒冷対策を怠った者がリタイアしてゲームを解除している様を見ていると確かに六級相当が求められるのにも納得がいく。


 それでも、何もかもが寒波に埋められた道なき道を進めば、いつか灯りを幻視するもので、実際に光属性の結晶体がはめ込まれた街灯を拝んだときには本当に幻覚を疑うほどの感動をカイトは覚えていた。


 「さて、ここが俺たちにとっての前線拠点となる第一の村スリーズだ・・・って、おい、しっかりしろ。幻じゃねぇぞここは」


 「・・・オアシスだ。銀世界のオアシス・・・。ありがたや、ありがたや」


 完全に平伏したまま五体投地の体勢に入った友人を捨て置きつつキリカは地図を確認する。


 極彩色の島は変容した土地や環境下であっても東西南北の先端付近に村が配置されている。それらが現状唯一の活動拠点にして島民の生活圏であり、そこから中心に向かうにつれて獰猛な魔獣が定住する獣道や古代文明の遺跡が行く手を阻む。

 中央には九人の女王が顕現を行う《虹脈城》が構えられており、女王の統制開始直後から一週間のみ防壁を変換するべく顕界し、異邦人にとっては前任者の防壁を現女王が塗り替えるまでが事実上のタイムリミットとなっている。


 そして、スリーズを含めた四つの村では宿屋や武具屋、加工屋に道具屋などの必需品から島民の運営する冒険者ギルドまで完備されており、前線基地としては基本内容を揃えている。


 「取り敢えず、ギルドを目指して移動するぞ。情報やらクエストやらはそこでしか手に入んねぇからな」


 「えぇ・・・つったって、俺、天言式のクエスト受けらんないんだが・・・。っていうかそれ以前に、魔物のエサに対して扉を開けてくれる温情がギルドにあるとは思えねぇけど・・・」


 クエストには大まかに《天言式》と《対話式》の二種に区分けされている。前者は予め異邦人に与えられた能力にして、人々の不安や苦痛、嫌悪などの負の感情を感知して、その根源の情報を得る天啓であり、それらは冒険者ギルドやコマンドにおいて受注が可能となっている。


 対して、対話式は名の通り、住民などの会話から依頼を受ける形式となっており、討伐対象などの依頼は実際に問答しなければ判明しない仕様となっている。


 カイトは後者については受注可能だが、前者の天言式を発動させる冒険者ギルドの《賢託ノ社》については使用不可として触れた瞬間に弾かれてしまう。そのため、カイトは先ず冒険者として認可される所から始めねばならなかった。


 「・・・まぁ、お前がそうしたいならそうすりゃいいが・・・しかし残念だな。折角スリーズにはプレイヤーにも人気な受付ジョーが居るってのに・・・勿体ねぇな・・・あの人の魅力ときたら老若男女を問わねぇってのになぁ・・・」


 「―――行きます」


 何と分かりやすい男なのだろうか。流石は妹の友人にまで手を出して尚、反省のはの字もない蛮勇である。恐らくすでにカイトの脳内はピンク一色にして脳内麻薬が溢れまくっているのだろう。

 ここまでの扱いやすさは、カイトの将来を美人局による他殺だと予期してしまうほどキリカを不安にさせるものだった。


 「すぐに行こう、疾く行こう。さっさと行こう。女にあんだけモテてるお前が認めるほどの美貌なんだ。きっととんでもないデンジャラスでグラマラスな美人さんに違いない。というわけで、速く目指そう」


 「・・・お前、よく今まで詐欺とかに遭わずに生きて来れたな」


 「ハッ、問題ねぇさ。俺はまとめサイトとかのエロ広告もちゃんと吟味した上でタップする男だからな」


 「そもそも一八歳未満の壁を易々と破ろうとするんじゃねぇ」


 致命的なまでの倫理観のなさと法律に対する関心のなさは余計にキリカを不安にさせ、されど幻想的な村の風景はそんな焦燥さえも飲み込み、両者を冒険者ギルドへと誘った。


 ギルドは村の中でも最大規模の大きさを誇りながら、それでも村の景観を損なわない空色と雪の交じった色彩をしており、扉には巨大な不死鳥とも鳳凰とも解釈できる鳥の絵が彫られていた。


 扉を開ける。内には冒険者の喧騒と賑わいのみが活気と共に伝わってきて、それらに受付嬢の可憐さが加われば、冒険者のやる気も満ちるというものだろう。しかも情報交換という建前さえあれば話しかけられるなど、つくづく異邦人とは役得との紙一重なのだとカイトは悟る。


 眩い光が二人を包み、カウンターの女性が美麗な笑顔で微笑む光景を夢想する。斯くしてそれは今この瞬間を以て現実となり――――。


 「オウオウオウッ!!キリカじゃねぇかッ!あの魔剣に見初められたお前が今回の遠征にも参戦とは、これはいよいよこの島の安泰も待ったなしだなッ!!ガッハハハハハハハハハハハハ!!」


 ――――ハゲのオッサンがいた。


 筋骨隆々、皮を豪快に鞣した鎧を纏い、されど剛腕には一切の装飾を付けずに己の肉体美を誇示する男。それはカイトの目が狂っていなければギルドのメインカウンターと思われる場所を占拠しており、可愛い女のどころか先行していたプレイヤーの姿も相まって、女っ気が一つも感じられないただただむさ苦しい空間が形成されていた。


 「―――キリカ君?」


 「あ?だから言っただろ、あの人が第一の村スリーズ名物。泣く子は黙らせ、喜ぶ子は怯ませ、されど冒険者には有益な情報と確かな経験に裏打ちされた知識からマッピングまで行ってくれる、我らが冒険者ギルド受付担当のジョー・アランカムさんだ」


 「んだよチクショオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」


 見事に騙された。恐らくは末代に至るまで馬鹿にされるだろう単純な言葉の綾に浮かれていた過去の自分が恨めしい。


というか、カイトの単細胞を無駄に刺激して、キリカに利点が存在するのだろうか。そう考えると、キリカに対する憎しみが尋常ではないほどに増大されかけたが、本人も単純にいびりのつもりだったのだろうと悟り、深く自制した。


「それでお前らも正式な手続きを受けに来たって所か」


「あぁ、遠征任務は天言式だからな。まずは賢託を受け取らねぇと」


 冒険者ギルドの最奥に聳え立つパイプオルガンを小型化したかのような機械仕掛けの石版。それこそが天言を授かりし冒険者のみが起動できる《賢託ノ社》にして、∀ROにおけるクエストボードに他ならなかった。


 「ほら、カイト、さっさと起きやがれ。テメェは魔物のエサなんだから俺とパーティを組んでねぇと遠征任務が受注されねぇんだよ」


 賢託は主に街に設置されている神殿による住民の祈願、もしくは巫女や九つの国家を統治する王が直に依頼を提示することで発生する任務の二つに大別される。

 今回の場合は後者であり、冒険者ギルドの管轄任務に割り込む形で、人涯の王が局地的な異常気象を乱発する極彩色の島を憂いて本任務への共同戦線を発表した。


 「第一国際交流島での参加券はあくまでも島への入国許可証に過ぎない。その上で現地から到着報告をすると同時に遠征任務を受諾する必要性があるんだよ」


 完全に干からびたカイトの首根っこを掴みつつ賢託ノ社の中央に手を置く。すると、全体から第四の賢者が浮かび上がり、人涯の王の直筆によって記された依頼書が両名のインベントリへと流し込まれた。


 「これで正式に遠征任務に参加決定だ・・・っておい、いつまで項垂れてんだテメェはッ!?」


 友の甘言に踊らされ、それを盛大に打ち壊されたカイトは最早、物言わぬ屍と化していた。それを哀れに思ったのか面倒くさくなったのかは不明だが、丁度四人パーティが抜けたテーブル席へと腰を掛けて、カイトはそのまま叩き込んだ。


 「さてと、じゃあジョーさん。いくつか話を伺ってもいいっスかね」


 「あぁ、構わねぇぞ。何てったって魔剣使いの頼みだ。無視はできねぇだろ」


 そう言ってジョーが向かいの席に豪快に座るとその衝撃で机が一瞬跳ね、突っ伏した体勢のままだったカイトは見事に額を反動によって殴られると、そのまま悶絶して今度は地面へとへりくだっていった。


 「あ?なんだ軟弱だな。魔物のエサだってのにここまで来れたってのは相当だと思ったんだが」


 「・・・・・・アンタのガタイの所為だろうがコンチクショー・・・」


 カイトの恨み節はただ虚空を凪ぎ、誰の耳にも届くことなく霧散する。それはカイトにより一層の虚しさを覚えさせ、ただただジョーの筋肉に対して憎悪の目線を向けることしかできなかった。


 「で、現在の極彩色の島についてですが・・・」


 「あぁ、現在の気候は正に絶対零度のそれだ。雪息も目じゃねぇだろうぜ。それにあの女は天体まで操りやがる。お陰でただでさえ滅茶苦茶な星の運動がさらにあべこべだ」


 現在の極彩色の島は深夜である。無論、現実や∀ROでは現在時刻から換算すれば昼過ぎなのだが、女王の魔力によって限定的な天体魔法が島全域を覆っている状態にあった。


 「恐らくは最初ん時のアースガルズの魔力を流用したんだろ。天体操作は地属性の究極形だからな。自然環境の変貌には俺たちも慣れきってる。けどな・・・今回の氷の女王が鎮座した場所が問題なんだ」


 途端に深刻な面持ちとなったジョーの表情を見てカイトが少し意外そうに鑑みる。しかい大半の人間からすれば呼んだらすぐにジョーが自ら対話の席に座るという方が異常であり、既に冒険者ギルドには水面下ではあるものの人だかりができつつあった。


 「いままで奴らはもぬけの殻になった虹脈城だけを利用していた。だが・・・氷の女王はあろうことか数少ねぇ島の秘宝が眠る《八迦の夜城》まで占拠しやがったんだ。その所為で秘宝も台無しだ。お前らにはこれの安全も確保して貰いたいと考えてる」


 極彩色の島は表向きには遠征任務として認知されているが、その本質が期間限定のレイドイベントである以上は当然ながら恒常とは異なる規格の報酬が用意されている。

 具体的には通常では手に入りにくい素材や武具の類、そしてそれ自体が個数制限の枠に収められている《極彩装備》の存在だろう。


 「あれが解放されちまえば被害は極彩色の島だけじゃ済まなくなる。恐らく人涯の王サマがお前らを派遣した理由もそれだろうぜ。何せあそこのはひでぇ臆病モンときてる。何処かで噂でも聞きつけたんだろうさ」


 「・・・確か人涯の王は開拓関連の政策については消極的でしたよね」


 「あぁ、だが今回は事が事だからな。向こうも焦ってんだろ」


 極彩装備は魔法武具の内でも特殊枠に類する装具であり、一騎当千と不撓不屈を象徴する魔力を内包したそれを一度でも纏えば天変地異さえも思うがままとされている。

 これの獲得には発生条件付きのユニーククエストの攻略及び、女王戦における立ち回りを考慮し、特殊シナリオを発生させなければ入手不可の仕様となっている。

 つまりは、極彩色の島遠征における最重要報酬にして、それ自体がもう一つの物語を展開する存在に他ならないのである。

 しかし、キリカにとってはそれ以上に冒険者ギルド管轄の任務にわざわざ、人涯の王が今更、態度を変えて関わる理由が見えなかった。


 「―――俺たちの望みは他でもねぇ。この島の解放と平穏だ。それが叶うのならお前らにだって頼るし、悪魔にだって魂を売ってやる。宝物が必要ならいくらでも捧げたっていい。これはそういう戦いなのさ」


 それは酒場を仕切る男でも、ギルドを統括する気前の良い人間でもない、一人の島に生きる者としての怨恨と憎悪の籠もった声であり、改めてこの世界のAIの優秀さと島がどれだけ極限状態へと追い込まれているのかを両名に再認識させるものだった。


 『―――島に在留する全ての生命に勧告する』


 突如、冒険者ギルドに響く女性の声。見れば周囲一帯が光属性の映像伝播に浸食されており、全方位がたった一つの玉座を映していた。


 遍く天を集約したかのような空色の長髪に、宝玉さえ霞むほどの洗練さを宿した碧眼。服装は紺碧色のドレスなのだろうが、背後に漂う六芒星に似た霧氷の輪が彼女の絶対性と神秘を証明させている。

 華奢な痩躯の肉体は少女のそれでしかなく、されど感情どころか起伏さえ喪失した双眸が彼女に荘厳をもたらし、何よりも静謐を体現したその身形は無謀にも彼女の領土を侵した冒険者に否応のない畏怖を与えていた。


 『我が名は氷の女王エンリヴァーガル。――ここは我の領域なり。ここは我の天空なり。ここは我の絶海なり。侵犯、略奪、騒乱、それら一切は絶対零度の名の元にただ凍てつくのみである』


 「―――」


 『されど、抗いは止まず、絶えぬ雨となって我が身を震わす。故に我は勧告する。島の浄化を勧告する』


 「・・・な、何だとッ!?」


 『我は霊体。されど意志を持った個我なり。自我はただ貴様らの淘汰のみを使命として、ここに勧告する。足掻きも、藻掻きも、貴様らの這いずりさえも我は許容しない。ただ侮蔑して淘汰する。生命体はただ我の奉仕でのみ価値を有する。それ以外の自由行動を我は認可しない』


 女王の勧告の意味は至極単純だった。自身と自身に平伏する生命以外の徹底排斥と島の漫然掌握。それは文字通りの宣戦布告であり、冒険者にとっては本格的な遠征開始を示す合図に他ならなかった。


 『故に我は決断した。この大地に巣くう羽虫の淘汰を。そして、我が終式魔法の解放を。刻限は七日後。虹脈城の消失と共に顕現させる。服従は容認せぬ。―――ただ凍てつけ』


 開戦の狼煙が上がる。冒険者ギルドは活気に渦巻き、それぞれがそれぞれの目標を果たすべく行動を行おうとする渦中で二人の少年も今、その中心へと飛び込まんとしていた。


 「さて、ここからが本番だな。とにかくまずはルールのお復習いをしつつアイテムを――」


 ふと、傍らに立つカイトの様子がおかしいことに遅れて気づく。それは今にも倒れそうというよりも状況自体に疑問符を抱いたまま静止しており、キリカに思いっきり背中を叩かれるまでビクともしないほどであった。


 「いっ!?」


 「しっかりしろよ。慣れねぇのは仕方ねぇがこんな未知を前にしといてらしくねぇぞカイト」


 事実、ゲーマーレベルにまでは至ってないとはいえ、ゲームに対する前提条件に刺激と興奮を求める人間がカイトである。

 それが先から心ここにあらずの状態に陥っているのは原因不明の異常であり、キリカでさえも正体が掴めなかったが、やがてキリカの意を感じ取ったのかその口を開いた。


 「・・・いや、さ。偶然とか他人の空似とかならいいんだけどさ」


 「あ?何だってんだよ」


 「・・・・・・さっきの氷の女王ってさ、ウチの妹にそっくりじゃね?」

 










極彩色の島についてのおさらいコーナー! 第一回


1.仕様と現状


 極彩色の島は新世界における有人島の一つにして、旧世界における邪神幹部である九人の女王の魂魄に呪われた大地でもある曰く付きの島。半年を周期として一人の女王が交代制で島を支配しており、入れ替わる毎に島の環境が一変するため、この名称がついた。

 女王は霊体ではあるものの、莫大な魔力を有しており、島の霊脈を通じて全域を統治している。その具体的な女王間の力関係は不明であるが、島民は四つの村を除いて全滅しており、存続が危ぶまれている。


2.冒険者の立ち位置


 冒険者はこの危機を救うべく派遣された遠征隊として本イベントに参加する。通常ならば冒険者ギルドからの依頼として出航するのだが、今回に限っては人涯の王の名まで記載されており、普段の任務とは毛色が異なっている。しかし、本質は限定武具と貴重な素材、大量の技術値取得が目的なのは変わらないので、プレイヤーのノリはそこまで変化していない。


3.極彩装備について


 極彩色の島に伝わる旧世界の遺物にして、下手に干渉すれば世界を転覆させるとまで言われる絶対兵器の総称。プレイヤーからは本イベント限定の装備であり、魔法武具では最高峰の火力を内包している。

 入手は基本的に装備毎に用意されたユニーククエストを進行させ、尚且つ女王の討伐中に発生するシナリオを閲覧しなければならない。

 通常は遠征任務とは別に極彩装備の探索が行われるのだが、今回に限っては女王に保管場所を占拠されたため、同時進行となる。


 これ以降の設定等については本編で明かされ次第、ここに概略を記載していく予定です。

 

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