裁判
「それにしても。 よく町長の座まで登りましたね。」
眼鏡にスーツを着た 町長の仲間。 ベレッジはそう言うと 目の前に散らばっていた札束を数えた。
この世界には金がある。 一ゴルドが1000個集まると千ゴルドとして札束が利用できる。その千ゴルドが山のようにあるので ここはもう天国よりも良いところだなとベレッジは考えていた。
それに 町長 ヘルホルギス・ベッカ は顔を歪めると薄気味悪く笑った。
禿頭の頭にカッターシャツを来て その口にはタバコが挟まっていた。
「簡単なもんさ。 単純に裏の手を使ったのさ。 」
ベッカはそう言うと そこにあった針を持つと 壁に掛けてあるダーツ盤に向かって投げる。
カン と音を立ててそれに刺さる針
それを見ると ベレッジは お見事 とベッカを褒めて 手を叩く。
それに調子に乗ったのか ベッカは更に五本ほど針を持ち 投げようと構えた 時だった。
「ヘルホルギス様!!」
突如としてドアから飛び出して来た部下に思わず投げようとした針をベッカはそれを見ると手を止めた。
「なんだ? ちゃんとノックをしてから入れ。 注意しろ。」
「す、すいません。 しかし大変なことが!!」
それに謝った部下はそう付け加えると汗を垂らした。
「? なんだ そんな慌てることか?」
その動揺に気付いたベッカがそう言うと。
「はい。 ただいま この町に魔王が向かっていると言う情報が入りました!!」
その1つのワードに二人は目を剥いて驚愕した。
「なぜだ!! 間違いじゃないのか!?」
思わずにベレッジがそう言うも。
「いえ。間違いありません。 あの偵察部隊からですから。」
「チッ。 困ったことになったな。」
ベッカが舌打ちをするとそう唸った。
偵察部隊とは、ベッカがこの町に仕向けた見張りのような者たちのことだ。 勿論 彼らとベッカの間に立ち入るような関係が無いことは承知しているので 彼らがそのような嘘を流す可能性は低い。
そう考え ベッカは立ち上がると すぐにスーツを着て、正装となり部屋を部下とともに出た。
「魔王の狙いのめどはついたか?」
早足でベッカが言うと 情報を読み取る電波式の機械を見て部下は言う。
「今 情報が入りました。...........これは。」
「?どうした?」
部下の反応にはてながついたベッカはその機械を横から覗き込む。とその内容を見る。
そこには
『この町の代表者と話がしたい。』
そう書かれたメッセージが届いていた。
「どうします?」
そう聞く部下に当然のようにベッカは足を早めて........
「行くしか無いだろう....」
冷や汗を流してそう言った。
「私を忘れないで欲しかったなぁ。」
部屋に取り残された状態でベレッジはそう呟いた。
そしてベッカは部下に連れられ 魔王が先についているという町憲裁判所に入った。
「相手は魔王だ。 しっかりと考えろよ。 でないとこの町ごと消し去れるぞ。」
部下達に改めてそう念を押すと ベッカはその大きな扉を開いた。
そこは とても広いロビーとなっており そのベンチのような所で その人物は座っていた。
長い桃色のツインテールに何かと童顔の少女。 服は高貴な者達が着ている 正服だった。
「客は待たせる者じゃないぞ......人間。」
そのプレッシャーを放つ一言を発した瞬間 観覧の貴族の数人が気絶した。
このアストフィアは観覧の場が設けてある ただし ガラスがその観覧場と裁判場の間にある。 このガラスは音を通さない。単に 部外者からの暴言を妨げるため。という物だ。聞こえないので 裁判の話は 観覧場の上あたりに 今でいうスピーカーのような装置がそのまま流す という仕組み。 だがしかし 本当の理由は その機械にある。聞こえない、そしてその機械を通じてしか聞かれない。 ということは、その機械で内容をいじり 偽の裁判の内容を流すこともありなのだ。
つまり 裁判でどんな事を言っても内容を機械で変えてしまえば何を言ってもいいのだ。 勿論これを考えたのは ベッカであり この行動から様々な裁判を偽の勝利で埋め尽くした。
その聞こえないガラス越しで貴族が気絶したのだ。
それを自分の目で見ると ベッカは背筋を凍らせる。
今まで通りの暴言では 自分の威厳以前に自分の命が消える。
そう考えるとベッカは少し震えながらも 口を開いた。
「すみません。 準備があったもので.....」
「ふん。 次からはきっちりとしろ。」
次という言葉が気になるが 今はどうこの状況を回避するか......ベッカは頭がそれだけで染まった。
ともかく 今は魔王が何を欲しているか......そう思い至り ベッカは口を開く。
「それで魔王様。 今回はどんなご用件で?」
その言葉に魔王は 目を見開き その邪悪で輝く黄土色の瞳でベッカを見据える。
その瞳に吸い込まされそうな気分になった自分を必死に抑え ベッカは返答を待つ。
「この町を寄越せ。」
その一言にベッカは全身から冷や汗が止めどもなく流れた。
つまり 分かりやすくいえば、この町を支配しに来た。と言っても過言ではない。
「........つまりこの町を支配する。ということでよろしいでしょう....か?」
動揺を抑えつつ ベッカがそう言うと魔王は表情1つ変えずにベッカを見据える。
その瞳がベッカの心を見つめるかのように ベッカは嫌な感覚で体内が満たされるのを感じた。
「では 仕方がありません。」
ベッカはため息を吐くと 本当に見透かされていないか心配になりながらも タバコを口にくわえる。
それを見た魔王は ピクリ と眉をひそめ 直後
「おい。誰の前でタバコを吸っている。 ゴミが。」
魔王がベッカの目の前に突如として現れた。
その動きに観覧場の貴族達は血の気が引いていく感覚を覚える。 が
ベッカはなんとか冷静さを保っていた。 なぜなら 今 魔王の心臓に向かって 対魔王殺戮弾が放たれたからだ。




