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町の様子

「ですから。お兄様の言う 仕事 という物は この世界でいう クエスト という物と同じだと言ってるんですよ。それがなんでわからないんですか? 本当に馬鹿ですね。」

「馬鹿ですみません。」

そんな会話をしている二人を眺めながら 俺は手前に置かれているカップに手を伸ばし 中の液体を飲み干した。

あの後 無事に町に着いた俺達は 休憩がてらに 前の世界でいう カフェに来ていた。

因みに フィルのあの態度の変わりようはどうやら俺の考えが当たったようで この町の者にもそんな暴言を連発していた。 ので、フィルには人間に接する場合はできるだけ俺と同じ対応するように言い聞かせた。

(まだ暴言が少し混じっているが.......)

さて、今後について考えるとしよう。

まず 拠点 ではなく家だ。

俺の手元になんとか生活し得る(ゴルド)が一ヶ月程度ある。勿論そんな(ゴルド)で家を買えるわけもなく。仕方なく 気は引けるがクエストを行うことにした。

内容はその町によって変わるようだが この町はクエストの報酬として貰えるゴルドは多い。さらに雰囲気も賑やかで良い町だ。

と、フィルから聞いたのだが..............

そこで思考を止め 窓ガラスからその景色を眺めて 俺はため息を吐く。

「ここのどこが雰囲気の良い町なんだよ.......」

そこにはゴミ山がいくつも道を塞ぎ 雲であたりは暗く とても廃れた。 貧相な光景だった。


ここはある時まではそれはそれは賑やかで楽しげでとても活気のある町だった。

しかし、 この町の町長が突如として職を辞めたという。 そしてその町長の枠に乱入して来たのが 今の町長、ヘルホルギス・ベッカ という男だ。 彼は町長の座に着いた途端に 町民から 税 と称し 月に2、3万ゴルド(日本でいう二、三十万)という大金を納めさせて この町のゴルドをむしり取ったのだという、 それからというもの、彼は町を導く町長というお面を被り その裏で ゴルドを町民から奪い取る悪質な町長とその町として 数年前から続けているという。


「それがこの町の全てだ。」

男は俺にそこまでいうと 黒ずんだ絶望を表したような目で俺を見据えた。

そこには、暗く 雲で太陽が隠されて 少しの明かりでなんとか見えるほどの道で 俺は男と向かい合っていた。

「ありがとう。 これは情報料だ。家族にも分けてやれよ。」

そう言うと 俺はその男に 五万ガルドを渡そうと手を出した。

「すまない。 こんな話するだけでガルドなんか取っちまって.......」

男は申し訳なさそうに顔を下に向ける。 心は優しく こんなこともしたくは無かったのだろう。と思い、その男の脱力した手に俺はゴルドを握らせた。

「気にするな、 家族を税から守るんだろ。」

そう言い聞かせ、男を抱いてやると 男 家族の夫は道の真ん中だろうと構わずに俺の手の中で号泣した。その後 頭を何度も下げて 電灯の付かない暗闇を申し訳なさそうに歩いて帰って行った。

「良いのですか? あのゴルドは生活費の半分もありますよ?」

体を透明にしていたフィルがそう言い 俺の視界に現れた。

「良いんだ。 どうせ俺は (ゴルド)なんかうまく使えないしな。 それよりも。」

そう言葉を止めると そこに体育座りしていた子供に俺は目線を向けた。

先程から気になっていたのだ。 そこらへんに子供はいるが、この様な者は今の所見ていない。

ボサボサに汚れたその髪にはゴミが少しばかり着いており その服さえも見てられないほどの有様だった。

その子供に俺は歩み寄ると、腰を下ろし 声をかけた。

「君、名前は?」

その言葉に酷く怯えた子供は顔をこちらに向けると 不安だらけの瞳でこちらを見つめた。

「.................ナマエハ、ナイ.........」

その機械が話したかのような声の硬さと震えた声には この子供がどれほどの苦難を乗り越えてここにいるのかがよく理解できた。 俺は なんでここにいるの? 家族は? そう聞こうと口を開いたが、 直後。

キーーーーーーーーン

頭にそんな金属音と共に頭痛が走った。

「!! お兄様!!」

フィルの声がかすれて聞こえる 目眩がして 目の前が暗くなる。 平衡感覚が失われ どこが上か下かが理解できなくなった。 さらに激しい痛みが精神を(むしば)む。 そのあまりの精神ダメージに 俺は立てなくなりバランスを崩した。 そのあまりの行動に目の前の子供も動揺を隠せていなかったが、 今の俺はその思考を()ぎる記憶に集中して気がつかなかった。

鎖を首に繫れて、連れて行かれる仲間に泣きながら手を伸ばし 目の前が(ゆが)む。 久しぶりの食べ物を他の大人に見つけられて 取られた瞬間を、 仲間が目の前で買収され叫び手を伸ばしてきた様を、 俺は自分で見たかの様な感覚に(おちい)った。

「大丈夫ですか!! お兄様!!」

「先輩!! しっかりして下さい!!」

そんな声が聞こえ始めて 俺は意識を取り戻した。 先程の光景はなんだったのだろう。 そう浮かんだ記憶が目の前の人物の手を見て理解できてしまった。 子供の腕が 先程の光景の手と形が 色が 手相さえも一緒だった。 それがその子供の記憶だったという根拠には情報が少ないが 今はそんな事を考えている場合ではなかった。 視界が歪んで見えた。 子供が俺を覗き込んでいるが それすらも分からない。

この子は........これほどまでに酷いことを見ていたのか...........

そう痛感すると。 俺は立ち上がり首を垂れ 前に自分が言っていたことを思い出していた。

「俺は 鎖に縛られない自由を手に入れるために 普通になりたかったんだったな。」

気付けば口が開いていた。 それを聞くと 陣内とフィルは目を見開き 目の前の子供はそのボザホサの髪から 薄黒い瞳で俺を見据えていた。

「そうだった。 普通......ねぇ。」

そう口にすると同時に またもや頭痛がした。 今度は 大量の景色だ。

気付けば汚いゴミを漁っていた。 騙して金を奪っていた。 ゴミを片付けるのを諦めて寝て過ごした。 家も税金に取られて 朽ち果てた。 何もかも嫌気がさし 天国へ飛び込んだ。 居なくなった母に会いに行こうとした。


「どこが自由だ。............くそったれ。 何が自分が楽できたらいいんだ!!」

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