道中
「先輩。 次の町ってどこにあるですか?」
陣内が尋ねたので俺は一応答える。
「ルーズベルトにいた店長の話によると、 ここから北に進んだところらしいな。」
「北といえば私の城の方向も北ですね。」
そう言うのは6大魔王(....っていうか言いにくいから略して ロマ でいいかな?)の魔法導師。フィル。
っというか.........
「お前。城とか放置でいいのか?」
それに魔王はにこやかに答える。
「勿論ダメですよ。 けれど お兄様のあの痺れるセリフに感動しちゃいましたから、もうどうでもいいかな?と。」
「良いわけねぇだろ!! っていうかその呼び方やめろ!! 俺はお前の兄とかじゃないんだよ!!」
俺はキレそうな勢いで突っ込む。
「では、私はお兄様を何と呼べば良いですか?」
「普通に慎二でいいだろ!!っていうかお前の一人称変わってないか!?」
「あぁ...まさかお兄様の名前を聴ける日が来るなんて.....私はどうすれば....」
後半の話 聞いてないなこいつ。というかまだ会ってから2日程度だぞ? まだ。
俺が呆れていると、そこで陣内が口を開いた。
「ねぇ フィルちゃん。 あの 獄火炎術? の他にどんな術が使えるの?」
そう言った直後 周りの空気が変わった。
「うるさいぞ人間。」
「「へ?」」
その凍てつくような冷たい口と冷徹の目 という魔王の本性を現したフィルに、それは見事に俺と陣内の声は重なった。
「お前のような人間に我の名を呼ぶ権利などない。」
フィルは陣内を睨み付けると 冷たい声を吐いた。
あれ? なんかこいつ 厳しくなってない?
そう思ったが、陣内は口を開く。
「じ、じゃあなんで先輩はいいんですか!!」
その声に魔王はため息を吐くと、
「我が惚れたから と何度言えばわかるのだ。 このゲス猿め。」
そのツインテールの容姿からには感じ取れないプレッシャーを放つフィルに思わず腰を抜かす陣内。
勿論俺は立っている。(運動部やってて良かったなぁとこの時思った。)
というか。 何? この変わりよう。 特に陣内が悪いことをしたとは思えないが.........
っていうかどう考えてもどSだろこれ。どういうことだよ........
そう頭を抱えると陣内が俺の後ろに隠れた。
いや、俺の体は特に大きくないのに異世界来てから後ろに隠れてばかりの陣内がとても弱そうに見えて仕方がない。 勉強が得意で プロポーズをした事もある(振られたが)あの俺の親友はどこ行ったんだろう......
そんな感じで歩きながら悩んでいると、
「因みに 我はこの世界にあるほとんどの魔法 魔術 結界 が使える。 まぁ 我が使うのは大体が魔術程度だがな。」
あ、答えてはくれるんだ。
やはりこいつは少しはいいところがありそうである。
ところで、
「なぁ。フィル。」
「なんでしょうか?シンジ兄様?」
あっ まさか 俺だけがこんな扱いなのか? という思考がよぎるが またべつの機会でいいか。と考えをそらした。
「まだ前の方が良かったんだが......もういいや。 っで この世界には魔法とかの他にどんな事がある?」
そう。 他の事を俺と陣内は知らない。
陣内がラノベで読んだ程度の知識では明らかにこの世界を生きていくのは苦難をしいられるだろう。
なので俺は考えた。 元々住んでいたものに聞いてみれば良いのではないかと。 それもとびきり強い者に。
理由はいたって簡単だ。 経験が豊富だから。 というわけで聞こうとしたのだが.....
「ええっと先ずは....人間がこの世界にいる根拠 そして絶滅への未来の事はお分かりで?。」
「聞きたくねぇよそんなの。虚しくはっちまうだろ。」
気になるが 今はそんな事を聞きたいとは思わなかった。 みんなもそうでしょ?
「そうですか........」
しゅん となったフィルになんとか説明を促すと フィルは大量の情報をくれた。 さすが魔王だ。
まず レベリングルーズ ゲームでいういわばレベルのこと。
この世界には勇者や魔王がいれば 魔物もいる。 その魔物を倒すとレベルが上がり 身体能力が上がるそうだ。
なお、魔王軍の者たちは 生まれた時にレベルは決まっているらしくレベルが上がる事はそうそうないと言う。
次に この世界の文明について、 どうやら陣内が来た時に言ったとおりで、この世界全体の文明は自分達がいた文明のほんの一粒程度の力しかなかった。 なので ほとんどが手作業という始末。 どうにかしないとな。
次が魔術と魔法 結界について、 この世界の者にはMPという魔力の量を表すものが存在する。それを使って先ほどの3つを使う事ができるらしい。名前分けされている時点でわかってはいたが、この3つは全て違う力だという。
魔法は 杖や魔法棒などを持っている場合に発動できるようだ。魔法の内容のほとんどが回復などで攻撃型の能力は無いようだった。 MPは他の2つよりは消費するようだ。
今度は魔術 これは呪文や詠唱を唱えると発動できるようで、 魔法とは対照的に 攻撃的な能力のようだ。MPはあまり消費しないようで大体の者はこの方法で戦いなどは行うようだ。
最後に結界 これは札や小道具などで文字通り 結界という守るための壁を作ること。 つまり攻撃魔法もMPも使わないらしい。 初めはもし魔物と戦う時に使うのはこれはいいなと思ったが。「これには発動するのに時間が掛かるので準備中に魔物に倒されたりしますからね。」というアドバイスを聞いたので 結局 諦めた。
「あとは何を聞きたいですか?」
フィルがそう聞く。
「そうだな。 あっそうだ。 この世界のお金を効率よく稼げる仕事ってある?」
それは単純に今後のための保険だった。そもそも店長からもらったこのお金だけでは家も買えなければ 一年過ごすのもままならない。なので聞いたのだが。
「あの、すみません お兄様 仕事ってなんですか?」
「え?」
今回で何度目かの変な声で返答してしまった。
どうやら仕事の内容とその意味はこの世界では無いようだった。
仕方ない 一応こちらの世界が知りうる事柄を全て頭にぶち込むか。
そう考えた時。
「先輩。 町が見えて来ましたよ。」
...............
もう少し遅くたどり着いてもいい気がする。




