23話 勇者の家系
「…なんか買って帰るか」
帝都の中を歩きながら、俺はそう呟いた。
俺のせいで坂口さんには色々と迷惑をかけたし、お詫びとして何か買って宿に行くか。
何を買って行こうか考えていると、ふと肉まんと書かれた看板に目が留まった。
肉まんって…コンビニとかで売ってるあの肉まん…?
気になった俺は、皇帝一押し!と書かれた文字を尻目に、肉まんを一つ買って食べてみた。
美味っ!フワフワで柔らかいし、肉汁は凄くジューシー…ボリューム感もあって、まさしく最高の肉まんと呼べるだろう。
帝都の肉まんを気に入った俺は、三つ程追加で買い宿へと向かった。
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「神影君、あれはどういうことですか!?」
坂口さんが待っている宿の部屋に入ると、俺はいきなり坂口さんに言い寄られた。
「どういうことって言われても…何のことかさっぱりなんだけど…?」
質問の意味が分からない俺は、坂口さんから距離を取りながら質問の意味を聞いた。
「なんで今まで勇者の家系だということを黙って居たんですか!」
「は?勇者…?」
勇者の家系を黙っていたということで何故か怒られた俺は、その場でフリーズしてしまった。
勇者って、ゲームとかでよく出てくるあの勇者…?しかも俺がその家系…?
「い、嫌ぁ~…間違えなんじゃないかなぁ~…?アハハハ…」
何のことかさっぱりの俺は上手く誤魔化そうとした。
じいちゃんからそんな話聞いた事なかったしね。
「誤魔化さないでください!ベムラート家と名乗れるのは勇者ラムロ・ベムラートの子孫のみです!」
「…どういうこと?」
聞き覚えのある名を言った坂口さんに、詳しく話を聞いてみることにした。
坂口さんが話してくれたのは百年以上前の昔話。
今から百年以上前、魔神アークが女神ラミレナに反旗を翻し、第一次神魔大戦争と呼ばれる世界大戦を引き起こした。魔神アークの軍との戦力差に苦戦を強いられた女神ラミレナは、対抗策として異世界から勇者と呼ばれる人物を呼び出すことにした。その勇者の名はラムロ・ベムラート。初代勇者にして、最強と謳われた人物だ。勇者ラムロは魔神アークの軍勢に臆することなく戦い、破竹の勢いで戦力差をひっくり返し、そして魔神アークを打ち滅ぼしたという。
うん、俺じいちゃんからこんな話聞いた来ないね。何なら勇者の家系とか全く知らなかったし…
「このお話、この世界だと有名だよ?本当に知らないの…?」
「うん…」
俺が勇者ラムロのことを全く知らないと分かった坂口さんは、少し呆れたような顔で俺を見て来た。
そんな顔されても…街には一か月に一回行くか行かないか程度だったし…普段は稽古ばっかりだったし…
というか、恐らくじいちゃんは勇者の家系だということを俺に話したら、俺が調子に乗ると思って離さなかったんだと思う。
別に話したところで、当時の俺ならほら話と思って相手にしなかったとおも……あれ?俺が勇者の家系ということは…じいちゃんも勇者の家系ってことでしょ?……しかも年齢的に勇者の孫ぐらい…今までほら話と思っていた話、全部本当のことだったかもしれない…!
家に帰った時、墓の前で謝ろう。そう胸に誓って俺は話題を変えることにした。
「あっ、そうそうこんなの渡されたんだよね」
自然な流れで俺は話題を変えようと、ジャンヌから預かった書類を坂口さんに見せた。
「話題変えようとしてない…?」
「…」
坂口さんの鋭い指摘にぐうの音も出ない中、俺は坂口さんに書類を手渡した。
「…Cランクの冒険者証明券推薦状…?」
「そう、裁判のお詫びとして用意してもらったんだ」
上手く話題転換することができて、内心ガッツポーズしながら推薦状について説明する。
「明日ぐらいに取りに行くつもりなんだよね…ついでに坂口さんも取りに行く?冒険者証明書はあったら色々と便利なんだって」
「そうなの…?じゃあ私も取りに行こうかな?」
「じゃあ明日は冒険者証明書を取りに行こうか」
「うん!」
明日の予定が決まると、坂口さんは何やらそわそわし始めた。
「その、神影君…その袋って…」
恐る恐る坂口さんは俺の持っていた肉まんが入った袋を指さして来た。
「ん?ああ、肉まんだよ。お店で売ってて、一個食べてみたら美味しかったから買って来たんだ」
部屋にあったテーブルに袋を置き、中から肉まんを一つ取り出して坂口さんに渡す。
「…た、食べて良い?」
「お、おう…」
目をキラキラと輝かせ食べて良いか聞いてきた坂口さんに、少し驚きながら食べる許可を出すと、坂口さんは美味しそうに肉まんを食べ始めた。
何だろう、パタパタと動く耳と尻尾が見えた気がする…
後で幻覚魔法と幻覚魔法への対策について教えてもらおうと思いながら、俺も自分の分の肉まんを食べることにした。




