21話 裁判騒動
セントウルにある帝国唯一の裁判所、帝国裁判所。そこでは軽罪から重罪などの裁判が行われ、皇帝直属軍団の本部でもある。
「これより帝国裁判を開廷する…!」
裁判官らしき男はガベルを叩いて裁判の始まりを宣言した。
「被告人は前に出て名前を言ってください…」
裁判官に言われた通り、俺は座っていた椅子から立ち上がり、裁判官の前に出た。
俺の裁判は扇状の部屋で行われることになっている。俺の後ろには裁判を見学しに来た者達が大勢座っており、その中には坂口さんの姿もある。
そして俺は視線が集まる扇の付け根部分に、傍聴席に背を向けて立たされており、俺から見て右側に弁護をしてくれる車掌が、左側にあの女性が、そして正面に裁判官が居る。
「ラムト・ベムラート」
裁判官に言われた通り名を言うと、この部屋に居る全員がざわつき始めた。
えっ?俺何か不味いこと言ったか?
「…静粛に!」
裁判官はガベルを叩いて静かにさせた後、俺から見て左側に座っている俺を尋問していた皇帝直属軍団の女性の方を見た。
「それでは事件の捜査を担当した皇帝直属軍団最高指揮官ジャンヌ・オルク。被告人の起訴内容を朗読してください」
裁判官に指示された軍人女性ことジャンヌは椅子から立ち上がって持っている紙に書かれてあることを言い始めた。
「被告人は4日前、星雲鉄道のラミスタラ王国発、軍事帝国ラーテス行き寝台特急スター0にて、列車を襲った盗賊のリーダーギルダを過剰防衛により殺害した容疑が掛けられています。被害者に非があるとはいえ、殺害は明らかな過剰防衛であり、我々皇帝直属軍団としては法律通り懲役15年、労役25年を被告に求刑します」
ジャンヌは淡々と俺の容疑と課せるべき刑を述べ、席に座った。
過剰防衛にしては刑が重すぎるような気がするが、人を殺したとなると、これぐらいはすべきなのだろう。
だが、俺は無罪だ。無罪なのにこんな刑を受ける必要は無い。
「それでは弁護人及び証人の星雲鉄道の寝台特急スター0、星雲列車スター1の車掌を務めているワイス。被告人が無罪という弁護を行ってください」
「はっ、はい!」
弁護人席に座っていた車掌こと、ワイスは緊張しながら姿勢よく立ち上がった。
「ラムト様は襲撃者を食い止めてくれていたのです。それに、証拠としての映像にはラムト様は大鎌を持っていますが、大鎌は元々乗車前に預かっていた物で、ラムト様に言われて大鎌を届けた際にはその盗賊は絶命していました。現場には盗賊達が連れていだろう吸血鬼が大暴れしていたので、恐らく吸血鬼にやられたのかと…」
「ほう?」
ワイスの発言をジャンヌは興味深そうに聞いていた。
「私共の見解としては何者かが車内での戦闘を録画し、それを加工することでラムト様が殺人犯になるようにでっち上げたとしか考えられません!」
ワイスは先程までの緊張を吹き飛ばすように、机をダンっと叩き、俺の無罪を証明してくれた。
「そもそも鑑定魔法を使えば、大鎌に盗賊の血が着いていないことが分かるでしょう!いくら達人でも刃に血が着くはずです」
「……確かに、鑑定魔法による鑑定結果が出されていませんでしたな…」
「なに?私は鑑定結果は提出済みだと聴いたぞ?」
ワイスの発言に、裁判官が思い出したように結果が出ていないことを言うと、ジャンヌは険しい表情をして自分が聴いたことと食い違いが起こっていることを述べた。
「証拠の大鎌を直ぐに持ってきなさい。鑑定は私がここで公平に行おう!」
裁判官はジャンヌの後ろで待機している兵士達に命令し、公平性を保つために自分がこの場で行うことを宣言した。
そして裁判官に命令された兵士達は大慌てで俺の大鎌を持ってきて、裁判官に届けようとしたその時、
「誰だ貴様は…」
ジャンヌが大鎌を持ってきた兵士に帯刀していたサーベルを首筋に突きつけた。
「な、何をするんですか、ジャンヌ団長…!」
サーベルを突きつけられた兵士は冷や汗を流し始めた。
「私を甘く見ないことだな、部下の顔や声は全て覚えている……だが、貴様の顔や声は見たことも聞いたこともない…貴様がこの裁判の仕掛け人…いや、その関係者か…」
「な、何を言って…!」
ジャンヌに睨まれている兵士は、ダラダラと冷や汗をかき明らか焦っていた。
「皇帝直属軍団に堂々と紛れるとは…いい度胸をしているな……言え、誰の命令だ?」
冷や汗を流している兵士にジャンヌは容赦なくサーベルを突きつけ脅した。
「い、言えるわけがなっ」
そう兵士が言いかけた時、兵士の胸に魔法陣がいきなり現れた。
「不味い!」
「お、お許しください!私は貴方様のため──」
兵士の魔法陣が光ったと思った次の瞬間、大爆発が起きた。
「無事か!」
いつの間にか大盾を持って、裁判官達を爆発から守っていたジャンヌが声を上げる。
「なんとか…」
「魔力切れ〜……」
俺は超速で大鎌を回収したあと、傍聴席の前に立って大鎌を回転させ爆発を防ぎ、俺が防ぎきれない場所は坂口さんが氷の壁を作って爆発を相殺し皆を守った。
だが、スキルを一気に使ったせいか坂口さんは魔力切れで倒れてしまった。
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「……ふぅ、これで私達が関わっているという証拠は隠蔽できたね」
帝国などの人の国で情報収集に使っていた人間の奴隷の反応が無くなったのを確認したルリスは、閉じていた目をゆっくりと開けた。
「よろしかったのでしょうか?処分してしまって」
奴隷に刻印しておいた火魔法で、爆発を起こしたルリスに吸血鬼は起爆してよかったのかと聞いた。
「う〜ん…まぁ小言は言われるかもしれないけど、また補充すればいいだけだから、気にしないでいいよ」
殆どの魔族達にとって人間は物にしか過ぎず、元人間であるルリスは魔族に生まれた以上その認識に従っている。そして今では人間を殺めることになんの抵抗も抱かなくなっていた。
「嫌がらせもできたし、私達はそろそろ戻ろうか」
「はっ、ですが…道中で新しい奴隷を調達しなければいけませんね……」
「そうだね〜、まぁそこら辺のを連れ去ればいいでしょ!」
人間にとって恐ろしい会話をしながら、二人はどこかへ消えていってしまった。




