19話 軍事帝国ラーテス
「あ〜…疲れた……」
大鎌を車掌に渡し、朝食を乗せたワゴンを部屋に持ってきた俺は自分が寝ていたベットにダイブした。
「あははは…お疲れ様」
疲れている俺に、坂口さんは苦笑いしながら労いの言葉をかけてくれた。
「取り敢えず、俺はシャワー浴びてくる…坂口さんは朝食を済ませといて」
「うん、分かった!」
かいた汗を流したいと思っていた俺は、坂口さんに朝食を食べとくように伝え、シャワーを浴びに行った。
シャワー室で早速汗を流しながら獲得したスキルを確認する。
今回吸血と眷属化以外は獲得できた。まぁ、吸血と眷属化は吸血鬼の代名詞のようなものだし、手に入れたところで宝の持ち腐れになってただろうな。
後で時間があれば血液操作と本能解放、怪力を試してみようと思う。今すぐここで試してみたいが、今やれば列車を破壊してしまう可能性がある。
本能解放とか使用した際には大変なことになるのが目に浮かぶ浮かぶ。
という訳で、スキルを試したいという好奇心を抑え、今はセントウルに着くまでゆったりとしようか…
汗を流し終え、俺は頭を拭きながら部屋に向かった。
「あっ、ほかへり」
部屋に帰ると、出来たてのパンを口に頬張っている坂口さんが居た。
ハムスターみたいで可愛いと、思いながら俺も朝食を済ませることにした。
朝食は数種類の出来たてパンとベーコンエッグ、レタスとトマトに、様々なフルーツが入ったヨーグルトだった。
前の世界と変わらねぇ…
そんなことを思いながら朝食を食べた。
食後にはコーヒーとかも出てくるらしいし、今はゆっくりと寛ぐとするか…
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「申し訳ございませんルリス様…目標の捕獲または暗殺に失敗致しました……」
分身体を飛ばして事の顛末を見届けていた吸血鬼は、作戦が失敗したことをルリスに伝えた。
「あの吸血鬼ちゃんもやられちゃったの?結構気に入ってたんだけどね〜」
いざっと言う時のために送っていた吸血鬼の顔が気に入っていたルリスは愚痴を述べる。
「後始末はどう致しましょう?予定通りに人間共が奴隷として扱っていた吸血鬼が、暴走したという事で宜しいでしょうか?」
自分達が関わっているという事実を隠蔽するため、盗賊達を事前から消すことを考えていた吸血鬼は、吸血鬼で起きた事件により全員死んだということにして良いかと、ルリスに聞いた。
余談だが、アジトに残っていた盗賊達には、誘導させた強力な魔物に襲わせたため、今頃全滅している頃だろう。
ルリスは少し考えた後、あることを吸血鬼に聞いた。
「戦闘って記録してるんだよね?ちょっと見せて〜」
「はい、複数の分身体を通して記録しております…それが如何なさいましたか?」
吸血鬼はラムトと襲撃者達の戦闘を記録した水晶玉を取り出し、記録されている映像を見せた。
「………これ、このギルダって奴が死ぬ所、加工して黒の魔物狩りがやった…ということにしない?ここだと殺人は御法度だからさ…!」
「お言葉ですが、乗務員とかの発言でバレるという可能性が考えられますが…」
ルリスの提案に吸血鬼は苦言を呈する。だが、ルリスは笑みを浮かべて
「このままアイツにやられっぱっていうのは癪だからね、嫌がらせ感覚でやっちゃって!」
と言った。
「はっ!」
ルリスから命令を受け、吸血鬼はすぐに行動に移った。
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『え〜…まもなく〜、軍事帝国ラーテス大帝国都市セントウル〜、セントウル〜…この列車はこの駅までです。お降りの際は忘れ物などないようご注意くださ〜い』
アナウンスが流れ、俺は窓から線路の先を見てみた。
線路の先には鉄でできた城壁が立っており、城壁の上には大砲が所々に置いてある他、外側は大きな谷が出来ていた。
少し速度を下げて寝台特急スター0は谷に架かった大橋を渡り始める。
谷底は水が激流として流れており、落ちたら大変なことになるのが見てわかる。
そして橋を通り城門を潜り抜けると、そこは摩天楼を中心に放射線状に作られたスチームパンクを連想させる都市だった。
俺が少年心を擽られ目を輝かせて街を見ていると、寝台特急スター0は摩天楼の隣に建設されている大きな駅のホームに入っていく。
『御乗車ありがとうございます。セントウル〜、セントウルです。お忘れ物のないようご注意ください。寝台特急スター0のご利用誠にありがとうございました。』
寝台特急スター0は徐々に速度を落としていき、ブレーキ音を出しながらホームに止まった。
「…本当にこれで大丈夫なの…?」
少し生地が薄いハンカチで顔が隠し、ハンカチが落ちないように帽子で頭と挟んでいる坂口さんは俺に聞いてきた。
魔法無効化地帯では変化が使えない。そのため、苦肉の策としてこれをしてもらうことになったのだ。
決っして、途中から少し面白くなってやったのではない!決っっっしてだ!!
準備を終え、俺らも降りることにした。
帝国内の探索に心を躍らせながら、寝台特急スター0から出ようとすると、
「あ、あの…お客さん……」
車掌が気まづそうに俺を停めた。
「どうしたんだ?」
「それが…その……実は…です、ね………」
俺の質問に車掌は何も言わず外を指さした。
車掌が指さしている先を見ると、
「良くぞ来たな旅人よ…我らが誇る帝国を旅するみたいだったようだが、貴様の旅はここまでだ!」
ホームに軍服を着た長髪の女性が仁王立ちで立っており、女性の後ろには銃を持った兵士達が銃口を俺に向けていた。
「旅人…貴様を殺人容疑で貴様を逮捕する!」
「はっ!?」
見覚えのない罪を言われ、俺が唖然としている中、女性は俺に手錠を付けた。




