18話 魔物狩りVSドラキュラ
「グッ!ガ…ッアァ……!」
突然、吸血鬼が頭を手で抑えて苦しみだす。
「なんだ?何が起きっ──」
突如吸血鬼が苦しみ始めたことに襲撃者達が戸惑い始めた時、吸血鬼は苦しみながら近くに居た襲撃者の胸を凝血させた血で貫いた。
「うっ、うわあぁーーー!!」
目の前で仲間を殺された襲撃者達は、発狂して我先に逃げようとした。
「落ち着けお前───」
発狂し始めた部下達を落ち着かせようとしたギルダだったが、大きな声を出したせいで暴れ狂う吸血鬼の標的にされ、首を切り落とされた。
「ガアァーーーーー!!!」
吸血鬼の暴走は止まることなく、吸血鬼は悲痛そうな叫び声を上げながら自身の身体から無数の赤い針を出た。
吸血鬼が出した無数の赤い針は枝分かれしながら周りに居た襲撃者達を貫き、無差別に殺し始めた。
だが、悲劇はこれだけで終わらなかった。
「シャァーー!!」
吸血鬼に最初殺された襲撃者が、まるで吸血鬼のような姿となって俺に襲い掛かって来た。
恐らく映画やアニメでよくある吸血鬼の仲間を増やす能力で、吸血鬼になったのだろう。
と、言うことは…
俺は転がっている死体に視線を向ける。すると首を切り落とされたギルダ以外の襲撃者の死体がピクっと微かに動いた後、鋭い牙を生やし目を充血させて立ち上がった。
流石にこれはマズイ…吸血鬼一体ならなんとかなったが、十数体居るとなったら、武器も魔法も使えない今の状態だと捌ききれない。
別に煉獄とかで燃やしてもいいのだが、ここは列車の中…やった暁には大量の借金を背負うことになるだろう。それだけは勘弁……と、なると…ここで使える攻撃ができるスキルは…煉獄、猛毒玉、強酸液、覇気ぐらいか。煉獄、猛毒玉、強酸液は外した時に周りに影響を与える可能性があるから、あまり使いたくは無い。仕方ない、試したことはなかったが…覇気発動!
初めて覇気を使ってみると、俺から出た覇気を浴びた吸血鬼達はピタッと身動きを止め、唸りながら俺を睨みつけてきた。
どうやら覇気が効いているようだ。
覇気で吸血鬼達を抑制しながら、思考加速で吸血鬼達を倒す方法を必死に考えようとした時、魔力感知に反応があった。
「お客さん〜!お受け取り、くだ…さい!」
声がしてきた方を振り返ると、車掌と客室乗務員の女性が俺の大鎌を持ってきてくれていた。
車掌は女性と共に大鎌を俺向けて投げてくれて、回転しながら飛んできた大鎌を俺は受け取った。
「サンキュー、危ないから離れといてくれ!」
大鎌を届けてくれた二人に礼を言い、戦いに巻き込まれることがないように離れてくれと伝えたが、車掌は女性を逃がして自分は残った。
「私は星雲鉄道の車掌であります。お客さんだけに侵入者の相手をさせる訳には行きません!」
と言い、車掌は背中に背負っていたスコップを構えていた。
「スコップでどうにかなる物なのか?」
スコップで対処できるのか疑問になって、そう車掌に聞いてみると、車掌は
「意外とスコップ一本でどうにもなりますよ。これ、一般常識ですよ?」
さも一般常識のように、スコップでどうにかなると言ってきた。
そんな一般常識知らないんだけど…
「…壊しても大丈夫か?」
「ええ、やり過ぎなければ構いませんよ」
壊してもいいかと車掌に聞いてみると、車掌はやり過ぎなければいいと許可をくれた。
「ガァーー!!」
吸血鬼達も覚悟を決めたようで、最初の吸血鬼が俺らに目掛けて無数の血の針を飛ばしてきた。
血の針を防ぐために俺は前に出て、超速を使用して大鎌を回転させ、盾代わりにして血の針を防いだ。
だが、吸血鬼は攻撃により失った血を自己再生で再生させて、再びぶつけるという無限ループを行ってくるため、このままでは攻めることが出来ない。
どうしたものか…
反撃する方法を考えていると、
「お客さん、避けてくださーい!」
車掌に言われた通りに俺は物陰に隠れてしゃがんだ。
「行きますよー!車掌流スコップショットォー!」
俺が物陰に隠れたのと同時に、車掌はスコップでいつの間にか持っていたボールを打ち出した。
ボールは飛んでくる血の針をいとも簡単に壊しながら突き進み、一体の吸血鬼の胸を貫いた。
「ガッ…アッ…ァァ……」
コアである心臓を撃ち抜かれた吸血鬼は、まるで砂が崩れるかのように消えていった。
車掌…俺が思っていたより強いかもしれん。
吸血鬼を一撃で屠った車掌の強さに内心驚きつつ、俺は物陰で身を守りつつ様子を伺う。一方で吸血鬼の的になっている車掌は飛んでくる血の針を掛け声と共にスコップで打ち返していた。
本当にスコップ一本でどうにかなるものなのか…
自分の一般常識を改めようと思いながら、俺も反撃に出ることにした。
思考加速と超速の同時使用で、血の針を避けながら前に出て大鎌で数体の吸血鬼の頭を跳ね飛ばして怯ませた後、心臓ごと胸を切り裂き後ろへと下がった。
『スキル【強奪】の発動に失敗しました。』
普段ならば、スキルを奪うのに成功したこと教えてくれる声が、今回は失敗したことを伝えてきた。
…心当たりがあるとすれば、今倒した吸血鬼達はつい先程まで人間だった故、獲得したスキルが完全に定着出来ていなかったのだろう。
思い返してみれば、暴走を起こした吸血鬼以外はスキルを使ってない。
なら、まだ自己再生も発動できないはずだから、今が倒すチャンスだろう。
俺が大鎌を構え直したその時、寝台特急スター0が山岳から平原へと抜け、薄暗かった車内に窓から眩い光が差し込んできた。
「ギィッ…ギィャァァァーーーーー!!!」
窓から差し込んできた光を浴び、吸血鬼達が叫び声を上げて苦しみ始める。
恐らくあの光は太陽だ。
吸血鬼の弱点の一つである太陽の光を浴びた吸血鬼達はあっという間に灰になって消えて言った。
「グルルルルルル……!」
襲撃者の吸血鬼が灰となり、最後に暴走を起こした吸血鬼が残った。
太陽の光で焼かれても、自己再生で回復させて耐えているのだろうが、自己再生より太陽の光によるダメージの方が強いため、徐々に焼かれている面が多くなって来た。
このまま放置してもいいかもしれないが、俺はこの吸血鬼に引導を渡すことにした。
「狩りの時間だ…!」
痛みで跪いている吸血鬼。俺は痛みを感じにくいように心臓を大鎌で狩り取った。
『スキル【強奪】の効果により複数のスキルを獲得しました。
獲得したスキルは以下の通りです。
【血液操作】【自己再生】【本能解放】【感知】【怪力】
なお、スキル【統合】により、【自己再生】【感知】は各種の強化スキルに組み込み消失しました。』
スキルを奪えたことを聴きながら、俺は吸血鬼を見た。
コアを破壊された吸血鬼は身体が灰となって崩れ始めており、まだ耐えていることが不思議なくらいだ。そして完全に消滅する直前、
「……あ、り…が……と………う……」
吸血鬼は何故か俺に礼を言い、灰となって消えていった。




