17話 車内戦開始
「チッ、乗られたか…!」
操縦室にて、少年は自身のスキルで列車に複数の侵入者が居ることを確認する。
少年のスキル【操作】は、他者から自分の物と判断されている物の状況を把握したり、一定の範囲内ならば自由自在に物を操ることができる。
「たたた、大変です!」
少年が招かざる者達の対処方法を考えていると、慌てた様子で車掌が入って来た。
「どうしたんだ?」
慌てて入って来た車掌に何があったか聞くと、車掌は息を切らしながら答え始めた。
「ほ、本部への救難信号が発信できないんです……システムを確認してみたら、何者かによって壊されていました…!」
「~〜〜っ…あーーーー!なんでこうなったんだーーー!!!」
次から次へと問題が起き、少年のストレスは大爆発した。だが、今はそんなことをしている暇は無い。少年は直ぐに冷静さを取り戻し車掌に指示を出す。
「乗客や貴重品を四両目より前に移動させろ!最悪の場合4両目より後ろの客車は捨て重量を軽くさせる…!」
「承知致しました!」
指示を受けた車掌は敬礼した後、指示通りに乗客と貴重品を前の車両に移動させることにした。
車掌が客車に戻った後、少年は炭水車から石炭ではなく魔力が結晶石化してできた魔石を取り出し、それを焚口戸の中に入れて燃料を追加する。
魔力で動いているこの蒸気機関車は、魔力を込めれば込めるほどパワーが上昇するのだ。
少年が蒸気機関車の速度を上げていると、タンっと後ろから足音がしてきた。
「手を上げろ、ガキ…!」
少年は後ろから知らない男にナイフを首元に突きつけられ、言われた通りに両手を上げた。
「列車をさっさと止めろ!」
「…」
男は少年をナイフで脅しながら、蒸気機関車を止めるよう言うが、少年はそれを無視した。
その反応を見た男は青筋を浮かび上がらせ、
「さっさと列車を止めろってんだろ!クソガキ!!」
と、少年を怒鳴りつけた。
だが、少年は男を睨みつけ、
「お前らのような輩のために、ダイヤルを乱す必要なんてない」
平然とした様子で男に言い指を鳴らした。
「このクソガキィ!」
男が少年にナイフを振りかざそうとしたその時、蒸気機関車が大きな音を立て、火花を散らしながら急ブレーキをかけた。
「なっ!」
いきなり急ブレーキがかかったことで男はバランスを崩し、その際出来た隙を少年は見逃さず、男を思いっきり蹴り飛ばして蒸気機関車から強制下車させた。
「まっ…お前らを倒すためにダイヤルが乱れるのは妥協するが……」
強制下車させた男にそう言い捨て、少年は蒸気機関車の速度を元に戻し、セントウルへ急いだ。
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「おっと!」
突然急ブレーキがかかり、俺はバランスを崩しそうになるが、壁に手を着いて何とか保つことが出来た。
体勢を整えた後、俺は再び走り出し、先頭車両から八両目の車両で、寝台特急スター0を襲った襲撃者達と遭遇した。
「おいおい、まさかターゲットが自らやってきてくれるとは……今回はツイてるな〜」
襲撃者達のリーダーらしき者は、一歩前に出てそのようなことを言ってくる。
あれ?また俺狙われているパターン?もしかしなくても…この襲撃俺のせい?坂口さんとかじゃなくて?
人生二度目の人間による襲撃が一回目同様俺目当てだと分かり、少しの間唖然としてしまった。
「なにボーッとしてんだ!」
そう言ってリーダーらしき男は投げナイフを投げてきたが、俺は飛んできたナイフを軽々と避け、解析を行った。
リーダーらしき男の名はギルダと言うらしい、まぁ部下達も含めて大したスキルは無かったのだが…
解析結果を見た俺は、何故か居る吸血鬼に目を向け、もう一度吸血鬼を解析してみた。
【Anonymous】
種族 吸血鬼
保有スキル 【血液操作】【自己再生】【本能解放】【眷属化】【吸血】【感知】【怪力】
名前が無い点は有難いが、色々と不安にさせてくるスキルがあるのが気がかりだ。
どうしたものか…人相手なら体術で勝てるけど、コアである心臓を破壊しない限り無限に再生して蘇る吸血鬼は、拳だけで勝つことは出来ない。せめて武器があればな〜…
武器を車掌から貰っておけば良かったと、後悔しながら俺は先頭車両の方へ向けて走り出した。
「おいコラ!待ちやがれ!!」
ギルダの怒鳴り声が聞こえるが気にしない。
武器とかがないのに、吸血鬼に挑むほど俺は馬鹿では無い。
今は車掌と合流して、武器を渡してもらうのが最善手だろう。
「お客様?何をなされているのですか!今は大変危険なので早く部屋にお戻り」
「そんなことより、俺の大鎌を持ってきてくれ!早く!!」
「それまた何故…ん?」
車掌と出逢えた俺が大鎌を持ってきて欲しいと頼んだ時、追ってきていたギルダ達が投げナイフを飛ばしてきた。
「な、何事です!?」
俺と車掌は飛んできたナイフを咄嗟に避け、飛んできたナイフに車掌は驚いていた。
「襲撃者が入ってきたんだ…俺が食い止めとくから、早く武器を持ってきてくれ、一名武器がないと対処出来ない奴がいるんだよ!」
「わ、分かりました!ですが、無茶だけはしないでくださいよ!」
状況を理解してくれた車掌は、俺に無茶をしないよう釘を指した後、慌てて大鎌を取りに行ってくれた。
「ガキ風情が…一人で俺達に挑もうってか?舐めんじゃねぇぞ!!」
目にも止まらぬ速さで、ギルダは投げナイフを飛ばしてきた。
咄嗟のことに上手く反応することが出来ず、俺はナイフを避ける際右腕を投げナイフで切ってしまう。
痛みを我慢しながら、止血しようと左手で傷口を覆い塞ごうとした時、ある違和感を感じた。
血が出ていないのだ。
「もしかして…高速再生……?」
「なに、ごちゃごちゃ言ってやがる!」
俺がそう呟くと、ギルダが再び投げナイフを飛ばしてきた。
ナイフが飛んでくる中、俺は試しに思考加速を発動させた。
思考加速を発動したことによって、自分含めた周りの動きが鈍くなる。
なるほど…スキルも使えないと思っていたけど、スキルは使えたのね……今思えば煉獄耐性が使えていたな……
思考する速度を数百倍に引き上げ、俺は自分の勘違いに内心恥ずかしくなる。
だが、これは嬉しい誤算だ。スキルを使えれば、吸血鬼を倒せる可能性が出てくるし、大したスキルを手に入れてない襲撃者達は秒で倒せる自信がある。
手始めに襲撃者達を倒すことにしようか
思考加速を使用しながら、俺は超速も発動させた。
自身の動作の速度を数百倍に引き上げる超速と思考を数百倍に引き上げる思考加速は、とても相性が良く。並列で使用すると、実質時の流れを遅くしたのと変わらなくなる。
ノロノロと飛んでくるナイフを俺は軽々と避け、悠長に歩いてギルダに近づき、拳を十数発食らわせ蹴り飛ばした。
「ぶげへらァ!」
思考加速と超速を切ってみると、変な声を出しながらギルダは後ろに居た部下達と吸血鬼を巻き込んで後ろへと吹き飛んだ。
これ程まで吹き飛んだ理由は、ついでで発動させておいた威力上昇の影響だろう。
さてと、スキルが使えると分かった所で、反撃開始と行きますか…!
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「参りましたね…まさかこれ程まで盗賊達が弱かったとは……」
寝台特急スター0に並行するように分身体を飛ばして車内の様子を見ている吸血鬼は、ラムトにワンパンで重症を負わされたギルダ達を見て、人間を信じた自分を恥ずかしく思っていた。
自分が車内に赴けば、多少は良い方向に事が進んでいただろう。だが、自分達が直接手を出すのは主により禁止されている。
「……はぁ、仕方ありません…あれをやるしかないようですね」
今の状況を挽回するために、吸血鬼は切り札を使うことにした。
そして吸血鬼は背筋が凍るような声で、
「少々早いですが……我が眷属吸血鬼よ…本能を解放せよ」
と、眷属である吸血鬼にたった一つの命令を下した。




