16話 特急襲撃
薄っすらと明るくなりつつある早朝、軍事帝国ラーテスに入った寝台特急スター0は真っ白な蒸気を上げながら険しい山の中を力強く走る。
「調子はどんな感じ〜?」
ルリスは部下の様子を見に、山の上から様子を見ている部下の元に現れた。
「人間共の配置は完了しております。監視役としてそこら辺の人間を吸血鬼させました…我々と違って弱点は多いですが、監視役の傀儡としては十分でしょう」
「うんうん、準備万端だね…でも油断はしないように!」
「はっ、もしもの時はアレを発動させます」
部下がしっかりと準備を整えているのが分かったルリスは、満足そうな表情をして寝台特急スター0を見た。
「さてと…神影とアイツがどうするか見物だね〜」
ラムト達がこれから起こることをどう対処するか、ルリスは心を躍らせた。
────────────
「おや、お目覚めでしたか」
車掌は設置型の転移装置で、車両から操縦室へ移動し、操縦室にいる人に声を掛けながら持っていた暖かいコーヒーが入ったカップを渡した。
「まぁね……コーヒーありがと」
操縦室にある椅子に座っていた少年は、車掌からコーヒーを受け取って少し冷ませた後飲み始めた。
「しかし…幾ら暖房があるとはいえ、日がまだ昇っていないの山の中は冷えますな…」
少し身震いした後、車掌は両腕を擦りながら当たりを見渡した。
「だね、余りにも寒かったから毛布持ってきちゃったよ…」
寒さに納得しつつ、少年は車掌に羽織っている毛布を見せた。
車掌は少し毛布を見た後、あることを問いただす。
「……もしや、また寝ずに運転していたのではないですよね?」
「……」
寝ていないことを指摘された少年は、車掌が視界に映らないように顔を背けた。
「寝るように何度言えば貴方は聞くんですか!?」
「だって俺、寝な過ぎて不眠を手に入れちゃったんだし…別にいいじゃん寝なくて良くなったんだからさ……」
「寝れないとしても疲れを取る必要はあるでしょ!」
スキル不眠があるから睡眠は要らないと言う少年に、車掌は少し大きめの声量で注意した。
この軽い言い争いは、二人にとって朝の日課のようなもので、言い争いをやってから二人の朝は始まる。
今日もまた平和な一日が始まる。そう思っていた。
次の瞬間、蒸気機関車の走行音を大きく上回る爆発音が鳴り響き、列車全体が大きく揺れた。
「な、何事です!?」
「分からないが緊急事態なのは間違いない!急いで本部に連絡!乗客へのアナウンスも忘れるなよ!」
「は、はい!只今ー!!」
車掌が突然の爆発に動揺をする中、少年は冷静に車掌に指示を出し、それを聞いた車掌は大慌てで客車の方へと戻って行った。
────────────
「なんだ!?」
ぐっすり寝ていた俺は、唐突な爆発音と揺れに驚き飛び起きた。
「ん〜…何〜?何かあったの〜?」
目を擦り欠伸をしながら、坂口さんも起きた。
やっぱり危機感が足りないような気がする…
呑気な坂口さんを見ていると、
『とっ、当寝台特急スター0は、只今正体不明の敵から攻撃を受けぶへぇっ!』
アナウンスが流れ始め、今の状況を説明してくれたが、再び起きた爆発音と大きな揺れのせいで話が進まない。
『ですがご安心ください。寝台特急スター0は特殊な魔法結界と頑丈な装甲により防御は万全ですので!…あ痛っー!』
再び爆発音が鳴り響き、大きく列車が揺れた。
魔力感知で列車に異常がないか見てみると、車掌の言う通り高い防御力のお陰で列車全体に傷1つ確認できなかった。
「で、でも何でまたいきな──キャッ!」
ようやく目が覚めた坂口さんは、揺れに耐えるために壁にもたれかかっていたが、大きな揺れを受けて悲鳴を上げた。
「何処から攻撃を受けてるんだ!?」
魔力感知をフル活用して、俺は攻撃が飛んできている方向を探った。
探ってみると、爆弾樽が山の上から雨のように降ってきている事は分かったが、犯人が誰なのかは分からなかった。
爆弾樽の雨が降り注ぐ中、寝台特急スター0は徐々に速度を上げ始めた。
恐らく、猛スピードでここから逃げ出すつもりなのだろう。
俺もせめての援護として、魔力感知をフルで活用して相手の出方を伺った。
「……来る!」
「えっ?何が?」
魔力感知を発動していた俺は、線路の先に十数名の何者かが待機しているのが分かった。
「坂口さんは絶対部屋から出ないでくれ!恐らく戦闘が起きる!」
「でも神影君は…?」
「俺は大丈夫、だから待っててくれ!」
坂口さんに部屋から出ないよう釘を刺した後、俺は部屋から出た。
魔力感知で襲撃者の様子を伺っていると、襲撃者達は列車が目の前を通過した後、強化系魔法で身体能力を引き上げただろう、襲撃者達は人が絶対出せないスピードで走り列車の後を追ってきた。そして列車に追いつくと、最後尾の展望車から列車の中に乗って来た。
「武器はないし…魔法も使えない……体術で勝負か」
武器も魔法も使えない俺は、じいちゃんに叩き込まれた体術で相手に挑むことにした。




