15話 寝台特急のご馳走
軍事帝国ラーテスとラミスタラ王国の国境付近、両国の都市から離れたその地域は盗賊達の溜まり場となっていた。
「…で?魔族が俺らに何の用だ?」
盗賊達のアジトの一室、盗賊達を纏め上げている頭領のギルダは、酒瓶を片手に自分の正面の席に座っている吸血鬼を睨みつけながら威圧を放つ。
「明日の早朝、セントウル行きの寝台特急スター0からローブを羽織った男を連れてきて欲しい。生死は問わない」
吸血鬼から依頼されたギルダは、ドンっと足をテーブルの上に置き、椅子にもたれかかった。
「報酬は勿論あるんだろうなぁ?別にお前でもいいんだぜ?魔族の素材は高値で売れるからな…!」
ギルダはそう言うと、指を鳴らして武装した部下達を部屋に招き入れた。
だが、吸血鬼は焦ることなく話を続ける。
「勿論だ…寝台特急スター0にはとある国の王女や貴族…更に高価な品が大量に積まれている…それをどうするかは貴様ら次第だ…我々はローブ男の身柄を渡してもらったらそれでいい」
「悪くはねぇ条件だな…」
吸血鬼から報酬の内容を聞いたギルダは、報酬に目が眩み始めた。
(もう一押しだな…)
吸血鬼は人間の欲深さに呆れつつ、依頼を受けるようにもう一押しする必要があると判断した。
「我々の仲間を一人派遣しよう…そうすれば成功率は上がる上に、依頼の確認がすぐできる」
「……いいぜ、その依頼引き受けよう!」
ギルダは吸血鬼の依頼を引き受けることを決めた。
「交渉成立だ…では、明日の早朝寝台特急スター0が通る線路の付近で会おう…」
交渉が成功した吸血鬼は、寝台特急スター0が通る線路の近くで落ち合うことを約束し、無数の蝙蝠の姿になって去っていった。
「ボス、良かったんですかい?あんな怪しい奴の話を信じて…」
吸血鬼が去った後、ギルダに部下が依頼を受けてよかったのかと聞くと、
「はっ!魔族程度どうってこともないだろ…監視役の奴を殺し、例のローブ男を俺らが奪う…そして奴らから更に報酬を頂くんだよ」
「流石ボス!前に商人から奪った対魔の武器を出してきますね!」
「阿呆!そういうのはバレないようにカモフラージュしとくんだよ!」
ギルダは酒を一口吞んだ後、そう答えた。
普段人としか戦わない盗賊達は知らない…魔族の強さとその狡猾さに…
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「失礼致します。車内点検に参りました」
俺らに一言掛けてあの車掌が入って来た。
「え~っと、夕食と朝食を部屋に持ってくれるよう頼める?」
「全然構いませんよ」
恐る恐る夕食と朝食を持ってこれないか聞いて見ると、車掌は快く承諾してくれた。
「…本当にいいのか?」
「えぇ勿論です。お客様方が訳アリなのは魔法検査時に分かっていました…ですがご安心ください。私達に危害を加えるつもりがないと分かっている以上、私達はお客様方の秘密を探ろうとは致しません。ですから、今はセントウルに到着するまでゆっくりとお寛ぎください……では良き旅を!」
俺らが聞きたかったことを全て答えてくれた車掌は、敬礼して部屋から出て行った。
まさか、全部お見通しだったとは…まっ、お陰でゆっくりできそうだが
「信じていいのかな…?」
「いいんじゃない?秘密は守ってくれると言ってるし…夕食を楽しみに」
不安そうな顔をしている坂口さんを安心させようとした時、
「失礼しま~す!夕食をお持ちいたしました!」
部屋の扉が開き、客室乗務員らしき人が夕食をワゴンで運んできてくれた。
「本日のメニューはオニオンスープ、有機野菜のサラダ、出来立てのフランスパン、そしてメインがブランド牛のローストビーフで~す!」
そう言いながら、客室乗務員の女性はテーブルに二人分の料理を並べた。
「それでは、何かありましたらそちらの壁にあるベルを鳴らしてお呼びください!」
壁のベルを教えてくれた後、女性は一礼した後ワゴンを持って部屋から出て行った。
部屋中に料理のいい匂いが漂い始める。
「……こんな豪華な物、この世界で食べるのは初めてだな…」
並べてある料理から輝きを感じながら、俺は椅子に座り直した。
「えっ?そうなの…?」
向かい側の椅子に座りながら、坂口さんは不思議そうに聞いてきた。
王族と辺境の地で住んでいる人の料理を比べないで欲しい。
思わずそんなことを言いそうになったが、ここは押し込めることにした。
「まぁね…」
苦笑いした後、ローストビーフをナイフで一口大にカットした後、フォークで口に入れた。
「…うまっ……!」
ローストビーフを一口食べた俺の口から出た感想は、ただ美味いの一言だった。
口に入れたローストビーフは肉の旨味がこれでもかと詰まっており、噛めば噛むほど肉の旨味が口中に広がる。
「う~ん!美味し~!」
舌が肥えた王族を唸らせるほどのローストビーフとなれば、俺みたいな市民にとってはこの世の物とは思えない程の絶品料理だろう。
「…次は~……」
ローストビーフを少し堪能した俺は、最後に食べる分を残してオニオンスープに手を出した。
しっかりと息を吹き込んで冷ました後、俺は口に含んだ。
息を吹いて冷ましても湯気が立つほど熱々なオニオンスープを口に含んだ時、俺は違和感を感じた。
オニオンスープの味はしっかりと玉ねぎの旨味を感じれて美味しいのだが、何故か熱くない…何なら水のように一気飲みが出来そうだ。
だが、その疑問はすぐに解決した。
熱さを感じないのは、俺が炎龍から奪って強化させた煉獄耐性の影響だということに…
こんなことにも耐性発動するのかよ!?…でも、パンを触った時は温かさを感じたから、触っても怪我しない程度の温度なら耐性は発動しないのか…?
耐性が発動する基準を考えながら、豪華なご馳走を食べ進めた。
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「私はもう寝るね~…」
食事を済ませ、食器を客室乗務員の女性に渡した後、シャワー室があるということで先にシャワーを浴びに入って来た坂口さんは、変化を解いてベットにダイブして寝始めた。
まさかシャワー室まであるとは…何でもありだなこの列車…
そんなことを思いながら、俺は大体の者が寝ただろう時間に、シャワーを浴びに行き、ゆっくりと身体を休めることにした。




