14話 寝台特急スター0
「よし、成功」
無事宿前に転移することが出来た俺は、坂口さんをゆっくりと下ろした。
「いきなりお姫様抱っこしないでよ!」
「わ、悪い…時間が欲しかったからつい…」
坂口さんに叱られつつ、俺はフードを深く被って駅に向かって歩き始めた。
十数分程歩いた場所に大きめの駅が見えてきてた。
あの駅こそが、ラミスタラ王国に唯一ある星雲鉄道の停車駅だ。
「あっ、そうそう私達が乗る列車、お父様が予約してくれたって」
思い出したかのように、坂口さんは座席の予約をしていると俺に伝えてくれた。
至れり尽くせりとはこのことだろう。
国王に改めて感謝しつつ、俺は国王から貰ったパスで、坂口さんは元々持っていたパスで改札を通った。
「え〜っと、確か乗る列車は〜…あっ、あの寝台特急スター0だ!」
坂口さんが指を指している先には、昔ながらの蒸気機関車が止まっていた。
ん?待って、今寝台特急って言わなかった?
「え〜っと、出発時間は夕方6時…今は5時半…もう乗れそうだね、乗っちゃお!」
少し戸惑っている俺を置いて、坂口さんは寝台特急スター0という列車に向かって歩き出した。
寝台特急って、泊まれる列車だよね?前世でもそれなりの値段したのに、この世界ならばもっと高いのでは???
国王のお節介に内心困惑しながら、俺は坂口さんの後に続いて寝台特急スター0に乗ろうとした時、
「ああ、そこの方々少々お待ちを!」
先頭車両の方から声が聞こえてきて、声がした方を向いて見ると、ニッコリマークが書かれた紙で顔を隠している車掌らしき人が居た。
「寝台特急スター0に乗る場合、荷物検査と魔法検査をする必要があるのです。あっ、荷物検査で出て来た武器は終着駅までこちらで預からせてもらうのでご心配なく」
「まぁ、そういうことなら…」
車掌から荷物検査と、魔法検査という物をする必要があると言われ、俺らはそれに応じることにした。
「いやはや助かります…犯罪を事前に防ぐために星雲鉄道の列車に乗る際には、こうした厳重な検査をする必要があるので」
車掌はまず、俺の荷物から見始めた。
見えているかどうかは分からないが……
俺の荷物は衣服と金貨が数枚入った袋、数冊の本だけだったため、問題なく許可が降りた。まぁ大鎌は預けることになったけど。
「おや?これは…?」
坂口さんの荷物を見ていた車掌は、小箱を坂口さんの鞄の中から取り出した。
「あっ、それは重量軽減を付与した小箱よ…中身は旅の資金の金貨」
そう言いながら坂口さんは、箱を開けてぎっしりと金貨が詰まっている箱の中を車掌に見せた。
というか、また俺が知らない魔法が出てきたんだけど?え?俺結構魔法コンプリートしているつもりだったんだけど……
坂口さんは至極当然かのように小箱のことを車掌に説明し、それに対して車掌は
「そういうことでしたか、これは失礼しました」
謝りながら小箱を丁寧に鞄に入れ直し、坂口さんにも荷物を返した。
「さて、後は魔法検査だけですね」
俺が先程から気になっている魔法検査と言うものが始まった。
車掌は大きめの虫眼鏡を取りだし、虫眼鏡越しで俺らを見始めた。
「魔法検査って、どういうものなんだ?」
虫眼鏡越しに俺らを見ている車掌に、魔法検査について俺は尋ねてみた。
「ああ、説明がまだでしたね…星雲鉄道の列車は車内全体が魔法無効化地帯となっているのです。これは魔法を使った犯罪を防ぐためなのですが、付与系魔法や強化系魔法などの事前に発動させる魔法は防げないため、この特殊な虫眼鏡で危険な魔法を仕込んでいないか見るのが義務付けられているのですよ」
「なるほど」
車掌から魔法検査について詳しいことを聞いた俺は、大人しく検査を受けた。
「はい、御二人共問題なしですね…では、武器をお預かりします」
「…形見だから丁寧に扱ってよ?」
「ええ、もちろっ──」
魔法検査も合格し、最後に武器である大鎌を車掌に渡したら、車掌は危うく大鎌を落としそうになった。
「お、思っていたより重いですね〜…」
「そう?」
重そうに大鎌を持っている車掌を不思議にそうに俺は見た。
普段から持ち慣れてるから違和感なかったけど、もしかしてこの大鎌って相当な重量があるのか?
そう思っていると、車掌は大鎌を台車に乗せこちらを見てきた。
「それでは、寝台特急スター0で快適な旅をお楽しみにください!!」
車掌は俺らに敬礼し、そのまま大鎌の乗せた台車を押して先頭車両の方へと去っていった。
「それじゃあ私達の部屋に行きましょ!」
坂口さんにそう言われ、俺達は寝台特急スター0に乗り込み自分達の部屋を探した。
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「ここかな?」
坂口さんは四号車にある一室の前で足を止めた。
どうやらそこが俺らの部屋らしい。
「お邪魔しま〜す」
そう言って坂口さんは先に部屋の中に入り、それに続くように俺も部屋の中に入った。
何故部屋が別々では無いのかと思ったが、ペアの部屋の方が別々で取るより安かったのだろう…うん、きっとそうだ。と思うことで自己解決させた。
部屋に入ると、シングルベットが2つそれぞれ壁に寄せられて並んでいて、小さなテーブルと二人分の椅子がそれぞれ置かれていた。
「ベットにダーイブ!」
坂口さんはそう言って無邪気な子供のようにベットに飛び込んだ。
坂口さんがベットに飛び込んで足をパタパタとしている中、俺はテーブルの上に置いてあった説明書を見ていた。
説明書を椅子に座ってみていると、ベルの音が外から聞こえてきて、それに続くように汽笛が鳴った。
『え〜、まもなく一番線からセントウル行き、寝台特急スター0が発車致しま〜す。乗り遅れの無いようご注意くださぁ〜い』
アナウンスが流れてきたので、窓越しにホームに置いてある時計を見てみると、発車時刻の6時だった。
『セントウル行き寝台特急スター0、発車致しまーす!』
再びアナウンスが流れると、力強い汽笛が鳴り響き、ゆっくりと動き始めた。
うんうん、やっぱり列車が走る所は何歳になっても飽きない。
走り出した蒸気機関車に少年心を擽られていると、
『毎度御乗車ありがとうございます…この列車は大帝国都市セントウル行き、寝台特急です。まもなく各部屋に車掌が参ります。ルームサービスを所望される方はお申し付けください…』
アナウンスが再び流れた。
「…夕食と朝食、この部屋で食べてもいいのかな?」
「えっ、なんで?」
夕食と朝食をこの部屋で食べていいのかと思い、俺がそう呟くと、坂口さんはキョトンとした目で理由を聞いてきた。
坂口さん、貴女王女だという自覚はあるのか?
「いや、食堂車とかで食べるとなる他の乗客と食べることになるからそれは避けた方がいいな〜っと思ってさ…1回変化を解きたいでしょ?」
「確かに…」
俺の説明を聞き、坂口さんは納得してくれたようだ。
もう少し危機感を覚えてくれないかな〜
そんなことを思っていると、坂口さんはある事に気がついた。
「あっ、そういえば車掌さん…なんで変化を使っている私を通したのだろう?」
「そういえばそうだな…車掌が来たら色々と聞くか…」
色々と車掌に聞きたいことが出来た俺達は、車掌が来るまで待っていることにした。




