13話 始まる旅
式典が終わり、日が沈みかかっている中、じいちゃんが使っていた大きめのローブを着ている俺は、荷物を持って城内側の入口に居た。
何故式典が終わってそうそう出発しようとしているのかと言うと、俺の見送りとかで沢山の人が来て、それによって事故が起きないようにするため…というのは建前で、本音は単に俺が恥ずかしいからだ。
後は坂口さんが変な奴に狙われないようにするため、というのもある。今回坂口さんはお忍びで王になるための修行をすることになっている。なんでも何世代か前にとある国に向かう途中で、当時の王子が暗殺されかけたそうだ。そのためそれ以降の代はお忍びで修行をすることになったとか。
以上の理由を述べて、俺は何とか国王を説得することに成功できた。
次の目的地は軍事帝国ラーテス。世界一大きな国として有名な場所だ。
ラーテスの都市セントウルに行く方法は色々とあるが、今回はラーテスが開発した蒸気機関車が走っている路線星雲鉄道で行くつもりだ。
星雲鉄道はラーテスと同盟を組んでいる国の王都とセントウルを繋げている鉄道で、ラミスタラ王国にも通っているのだ。
この世界では最新鋭の技術ということで、少々値段は張るが、便利さや都市に着く速さならば断然こっちだろう。それに星雲鉄道の1回の乗車料金は市民にとって、とてもじゃないか手を出しにくい金額のため、正体がバレる可能性が低くなる。
という訳で、終電に乗ることにしたのだが…
「…本当に貰っていいんですよね?」
「勿論、我が娘を連れて行ってくれる見返りの1つじゃよ」
国王からパスを貰った俺は貰っていいのかと再度確認を取った。
なんせ国王から貰ったパスは星雲鉄道の定期券なのだから。
タダでさえ1回の乗車料金が高いのに、定期券となったらそれはもう市民では絶対手を出すことが出来ない金額になることだろう。
そんな超貴重なパスを無料で譲るとは、国王太っ腹過ぎないか?
そう思いながらパスを受け取っていると、
「お待たせ…!」
出発の準備を終えた坂口さんがやってきた。
「よし、王女様も来たことだし、出発と行きますか…!」
坂口さんが来たことで、城を出て星雲鉄道の駅に向かおうとしたその時、
「た、大変です!」
慌てた様子で兵士がやってきた。
もうこれ以上ゴタゴタは勘弁してくれよ?
俺がそう願っていると、国王が兵士から何があったか聴き始めた。
「何事だ?」
「実は…王女様が旅立つことは情報は漏れていないのですが、黒の魔物狩りが旅立つという情報が外部に漏れていたようで、黒の魔物狩りを人目見ようと城の外に多くの人達が集まっています!」
「嘘!?」
兵士から人が集まっていることを聞いた俺は、魔力感知で城の外を見てみることにした。
城の外には人がギュウギュウに集まっており、とても外に出れそうになかった。
「…どうすんだこれ、隠れて出て行こうにも俺らの顔はバレてるし……」
どうするか坂口さんと話し合おうと俺は坂口さんの方に顔を向けた。
「幻覚魔法変化…」
坂口さんを見ると、坂口さんはポンっと音を立てて髪の毛を黒色のショートヘアに変えていた。
「えっ、何それ?」
思わず声が出た。
「何って…幻覚魔法で他人から見える姿を変えたのだけど……えっ、知らないの?」
至極当然かのように坂口さんはそんなことを言ってくるが、俺はそんな魔法は知らない。
「我ら王族や上級貴族御用達の幻覚魔法じゃよ、まぁ一般人は幻覚魔法を使う機会が無いがない故、あまり知られていないがな」
国王から幻覚魔法について詳しく教えてもらった俺は、内心坂口さんを羨ましく思った。
幻覚魔法とか絶対便利やろ……後で教えてもらうとするか。
後で幻覚魔法を教えてもらおうと思いつつ、今は城からバレずに出る方法を考えることにした。
「…………やっぱり、あれしかないか〜」
しばらく考えた後、空間魔法による転移で城から出ることにした。
「王女様、少し失礼しますよっと」
「えっ、ちょっ!」
俺は一緒に転移できるように、坂口さんをお姫様抱っこで持ち上げた。
「それじゃあ国王様、行ってきます!」
「ねぇ、少し待っ─────」
「空間転移」
空間魔法を発動し、俺と坂口さんは俺が泊まっていた宿の前まで転移した。
「……のうミレドよ…いつでも結婚式ができるように準備しておいた方が良いか?」
娘がお姫様抱っこされた時、喜んでいるように見えたラミスタラ王国国王ヴァロス・ラミスタラは、隣に立っている王宮近衛師団団長のミレド・ランドーラに結婚式を何時でもあげれるように準備しておいた方が良いかと聞いた。
「…そうですね……その方が良いかと」
ヴァロスの問いにミレドはその方が良いと断言し、暫くの間二人で魔物狩りと王女が居た場所を見ていた。
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(…してやられちゃった……)
近衛兵の一人は転移したラムト達を見て、そのようなことを心の中で思う。
(う〜ん、神影のことだから簡単に倒せると思っていたけど、そうは行かなそうだな〜)
ラムトを神影と呼ぶ近衛兵の正体は、ルリス・ハーラン、またの名を転生者樋川 真理。隠密部隊藍色隊長の吸血鬼だ。
今回、彼女が王宮近衛師団の者に扮してラミスタラ王国に潜入している理由は、主であるレアンに黒の魔物狩りを捕獲もしくは暗殺するように命令を受けたのである。
黒の魔物狩りが旅立つという情報を漏らしたのは、勿論彼女である。
城の前に人を集め、民衆に紛れさせた眷属達にラムトを誘拐させる、もしくは暗殺させようと思っていたのだが、ラムトが空間魔法で転移したせいで作戦の変更を余儀なくされた。
(まっ、それくらいの力が無かったら、炎龍にやられていたか…)
そう考えつつ、ルリスは次の作戦に出ることにした。
ターゲットであるラムトが向かっている軍事帝国ラーテスの首都セントウルには、魔物などの侵入を防ぐために強力な結界が貼られている。それのため、魔族である自分達が入るのは不可能に近い。故に乗っていることが分かっている星雲鉄道で始末しなければならない。それならば、乗っている列車ごとラムトを排除するのはどうだろう?いやダメだ、もし魔族が列車を破壊したとバレた場合、帝国率いる同盟軍との全面戦争が起きてしまう。いくら魔族とは言え、人間の数には負ける。だから魔族が直接手を出すことはレアンの命令がない限り禁止されている。それ故にラミスタラ王国を弱体化させる為に大量の魔物を襲わせたのだが、ラムトによって魔物の大群は全滅。魔物使い達は力を使い過ぎたことによって、当分動けそうにないと工作部隊黄色から連絡があったため、魔物達を襲わせることは出来ない。自分達が手を出さず、目的を達成させるには…
「………強盗…か……」
バレないように窓から城を抜け出したルリスは次の作戦を思いつき、準備を整えるように眷属達に命令を下した。




