《世界》の無限の可能性と仮面
世界のクラスを変更しました。自分の勉強不足で今まで読んで下さった読者の皆様に、何度もご迷惑お掛してすみません。
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名前 :天城・白夜 性別:男
クラス :無能者
ワンド :[世界・無能者]
ソード :
カップ :[全種類]
コイン :[無職]
筋力 : D (SS) ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
耐久 : D (SS) ★★★☆☆☆☆☆☆☆
敏捷 : C (SS) ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
器用 : D (SS) ★★★★★★★★☆☆
魔力 : D (SS) ★★★★★★★☆☆☆
幸運 : A (SS) ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
属性 : 火 水 風 土 雷 氷 光 闇 木 鋼 時 空
スキル :【取得】【連結】【斬撃】【持久】【黒魔】【魔力】【舞踊】
【儀式】【召喚】【操作】【統率】【白魔】【浄化】【防御】【変更】【強撃】
【威圧】【体術】【魔導】【予感】【占術】【抜刀】【察知】【盗取】【投擲】
【潜伏】【鑑定】【鍛冶】【打撃】【使役】【テイム】【付与】【調整】【解析】
【射撃】【狂化】【支援】【演奏】【刺突】【加速】【迷彩】
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そこには条件を満たし、新たに習得した様々なスキルや上昇した【ステータス】が表示されていた。
「うん、[敏捷]がかなり上がってる。それにスキルもだいぶ増えてる」
まあ、半日ぐらい大蛇の魔獣と追いかけられていたら、こんなにも上がるよね。と感慨深く眺めていると、
「……うん?」
自分の【ステータス】にある二つのスキルに目がいく。
「【連結】【迷彩】なんだろうこれ? 僕の知らないスキルがある」
この一ヶ月の勉強で基本クラスが持つスキルは全て記憶している。
だが、この二つは勉強時に使った資料に載っていた記憶がなかった。
……なんで【迷彩】があるんだろう? それにこの【連結】は……。
じっと【ステータス】を見つめながら僕は思考する。
ステータスに表示されるスキルの能力は大体、その言葉通りの意味である。
とするなら、この【連結】が意味する言葉は、連いで結びつける……。
「――あ!」
僕はミドガルズオルムから追い付かれそうになった――あの時の記憶が甦る。
……そう言えばあの時、僕は咄嗟にスキル同士を繋いでスキルを使ったんだ!
ならばと、僕は近くの地面から適当に石を拾った。そして片手に持っている石を眺めつつ、
「………『斬撃付与』」
【斬撃】は、斬撃系攻撃や術技に威力補正がかかるスキルである。また【付与】は、武器や道具に魔法や属性を付与することができるスキルなのだ。
この二つのスキルが連がり結びつくのを感じ――
そして一つのスキルとなって発動――片手にある石に付与された。
それを僕はゆっくりとニ十メートル先にある大木目掛けて、
「『射撃投擲』」
スキルを唱え、その石を投げた。すると、その石はニ十メートル先――狙った場所に当たり、大木の表面が剣で切ったような跡がついた。
やはり、と僕は【ステータス】から見た時、この【連結】は能力同士を繋いで一つのスキルとして発動させるスキルであると予想していた。
そして発動させたことで確信に変わると、頭の中でもう一つの効果も詳細に把握することができた。
この【連結】は常時、任意、条件――三つある発動条件の制限を解除し、繋ぐことで自在にスキルを発動させる事ができるスキルのようだ。
……凄い! このスキルがあれば、僕はもう誰にも蔑まれることもなくみんなと一緒に居られる!
僕は嬉しさのあまり笑みをこぼした時だった。
「ほう、ずいぶん懐かしいことをしているのう」
串焼きの枝を折って爪楊枝代わりとしているクロアが声を掛けてきた。
そのクロアの足元に、食べ終えた串肉の枝が地面に散らばっていた。
「師父との修行の時によく師父が使っていたスキルではないか」
「やっぱり知っているだクロア。【連結】って《無能者》のクラススキルなんだね?」
そう聞く僕。何故かその確信が自分の中にあった。
「小僧の言う通りじゃ。【連結】は〝世界〟のクラスだけが持つ固有スキルの一つじゃ」
新しいオモチャを見つけたような目でクロアは肯定しうなずく。
「じゃあ、この【迷彩】について知っていたら教えてほしいんだけど」
「それは知らんが心当たりはあるのじゃ」
じゃあ、と問おうする僕よりも、先にクロアが口にする。
「だが、断る! 小僧、答えは己で導き出せなのじゃ」
「え!? どうしてクロア。教えてくれたっていいじゃないか!」
不満を漏らす。それを腕を組むクロアは心底面白そうに、
「我が教えたところでなんになるのじゃ、小僧? そもそもクラスやスキルも既に小僧自身の一部じゃ。他者に聞くよりも己自身が一番理解できる筈じゃ」
そう呟き漏らし僕を見守る。それはまるで自分を誰かと重ねて見守っているようだった。
そんな状況で僕は座ったまま、う~んと唸りながら戸惑う。
「……いや、理解できるってどうやればいいの?」
「考える必要はないじゃ。ただ目を閉じ、己の内なる声を聞き、感じとればよい」
クロアに言われた通り、僕は目を閉じて実践してみる。
視界が暗闇に包まれる。その中で、自分の内にある力から優しく囁きかけてくるかのように、ある言葉が頭の中に浮かび上がる。
「――『習得』」
と、僕がそうスキルを唱えた瞬間だった。
膝の上に置いてあったミドガルズオルムの魔石が強く光ると、自分の中に何かが流れ込んでくる感覚とともに魔石が消えていく。
その現象を見届けた僕はゆっくりと【ステータス】を開き、確認する。
「……さっきまで無かったのに。【超再生】っていうスキルがある!」
そう、自分の【ステータス】にあるスキル欄に【超再生】が追加されていた。
これで僕は理解した。〝世界〟が何故、万能クラスと呼ばれていたのかを。
【習得】は条件を満たすことでスキルを増やす技能。その真の能力を持つ故に――
〝無限の能力を集め使う者〟それこそが《無能者》――〝世界〟のクラスの真価だったのだ。
「だったら、ビッグフットの能力である【迷彩】が【ステータス】に存在するのも説明がつく」
僕は腰にあった荷袋を手に取り、中を確かめてみる。そこにはあの時、ゼル爺からお守り代わりに貰ったビッグフットの魔石が無くなっていた。
どうやら魔石を消費することでスキルを習得できるらしい。
それでも下級クラスである僕が、まだまだ強くなれる可能性を見つけることができた! と荷袋を中を覗き込みながらそう思った。
今後、新しいスキルを手に入れる為に魔石を調達するか、と僕が胸を踊らせていると、
「……見事じゃ小僧! よくぞ己で答え導きだしたのじゃ。……それにしても成程のう、師父はそうやってスキルを増やしおったのか……」
長年の疑問が解決したかのように声を弾ませ、
「これはお主にお礼をしなければならんのう」
足元しか見えないクロアがそう言った。
そんな御礼なんて、と照れる白夜はニコニコせずにいられず、顔を上げた。
その先に三日月ような笑みを浮かべるクロア。ただし、指の間接をボキボキと鳴らしながら、正面に立っていた。
「……………クロア。言動と行動が一致してないけど?」
「いやいや、合っておるぞ小僧? いきなり我の目の前で報酬を台無しにするお主のお礼なのじゃからのう」
……感謝のお礼じゃなくって、報復の方のお礼参りだったの!?
いや、それよりも! とクロアを見つめた。
「報酬が無くなったから……護衛の件は?」
「……安心するのじゃ。それは我が先に言い出したことじゃ。責任持って仲間の元に送ってやる」
「そっか、やっぱりクロアは――」
優しいな、と僕が言葉に出そうとした時だった。
「それに気まぐれとはいえ、傲慢の魔王たる我がその程度ことをできぬなぞ。我の沽券に関わるしのう」
どうやら優しさじゃなくプライドの方だったらしい。
うんまあ、仕方ないよね、と僕は立ち上がり、穴の空いた胸当てに右手を添える。
「『防御付与』……まあ、ないよりはマシかな」
【防御】と【付与】を繋げたスキルを発動させてクロアと向き合う。
この【防御】は通常時、受けるダメージを30%軽減し、防御体勢時にはダメージを半減させる条件発動型スキルである。
穴空きの胸当てに防御系スキルを付与し、今の自分に出来る限りの防御力底上げを行う。
いつでも殴られる準備を整え向き合う僕に、クロアは感嘆な声を漏らす。
「ほう、逃げずに我に大人しく殴られる覚悟とは………ククク、なかなかに胆が据わっておるのう小僧」
「仕方ないよクロア。報酬を勝手に使った僕が悪いんだし」
苦笑いを浮かべ、僕は顔を守るように両腕を構える。
「……それにクロアから逃げきれる自信がないからね」
そもそも格上の【ステータス】を持ち、更に神速のスピードで動ける化け物相手に逃げきるなんて到底、不可能な話だ。
それに奇妙な縁だが、折角仲良くなれそうな魔王との関係を崩したくなかった。
また、クロアを通じて他の〈七罪魔王〉と戦いではなく、話し合いで鍵の件を解決しようと打算もあった。
……そもそも魔族が攻めてきている訳でもないのに。わざわざ戦争という最悪の選択をする必要が無いんだ!
僕はそんな事を思いつつ、向き合う。すると、クロアがいきなり笑い始めた。
「フッハハハ! ずいぶんとお人好しじゃのう小僧? だが、気に入ったのじゃ!」
心底愉快そうに笑うクロア。まるで心を読んでいたみたいに言う。
「えっと、じゃあ許してくれるのクロア?」
戸惑いながら僕は一縷の望みを賭けて彼女に聞いてみた。
「うむ! なかなかに面白かったから空と大地、どちらか選ばせてやるのじゃ」
「結局、殴られるの!?」
笑顔でシャドーボクシングするクロアに、ツッコミを入れた。
すると、彼女はキョトンした様子で、
「それはそれなのじゃ。手加減はしてやるから早くどっちか選べ、ハクヤ」
なんて理不尽な!? と脳裏によぎる。
「何じゃ? 空と大地のダブルセットが良いのか?」
「…………………」
クロアに促され、「……じゃあ」と諦めて口を開けた時、――【予感】スキルが発動し危険を知らせた。
ならば、僕は自身のスキルを信じ………一つの選択肢を選んだ。
「空でお願ぃ(ドッ!)――グハ!?」
それを口にした瞬間、僕の腹にクロアの拳がメリ込み、宙に浮き上がった。直後、クロアは跳び上がり、上下右左ナナメと殴る蹴る――格ゲーのような追撃を連続で叩き込む。まさに空中コンボだ。
止め処ない空中コンボを重ね、徐々に星が舞う夜空へ――
「―――――――――」
悲鳴をあげる暇もなく、十七連コンボを食らった辺りから僕の意識が途絶えた。
◇ ◆ ◇
すたっ、と三十連コンボを決めたクロアは地面に着地した。
そこに気絶した白夜が落ちてくる。
クロアは白夜の頭部を右足でタイミングよく受け止め、そのまま刈り取るように下段回し蹴りで落下の衝撃を流しつつ、地面に仰向けに着地させた。
そしてクロアは興味深そうに地面に寝転がる白夜を観察する。
壊れかけた軽装鎧は完全に壊れ、顔や身体の所々が青アザだらけの状態だった。
だが、すぐに白夜の身体からアザが引いていき、怪我の一つもない無傷の状態になっていく。
「ふむ、どうやら【超再生】が発動したか。……ククク、ハクヤには言っていないが、お主の考えも手の内も全部、我には丸見えじゃたのじゃ」
そんな白夜を眺めながら、悪戯っぽい笑みを浮かべる。
(……と言っても覗けるのは表面意識だけじゃが)
おまけに集中して見ないと発動しないのがこのスキルの欠点である。
その欠点のせいで、あの時の白夜が何を隠そうとしたのかは解らなかった。
「………それにしても」
寝息を立てている白夜を、じっと見つめた。するとクロアは微笑み浮かべ、
「弱々しいクセにムダに芯が強い所、何処と無くお前に似ておるのう。シロ………」
片腕に巻いた赤いバンダナを愛おしそうに優しく撫でながら沈痛な声を漏らす。
しばらくしてクロアは顔を上げて、満天の星空を眺めた。
「……百年だそうじゃ。お前が此処で死んで百年経っておるそうじゃ……だが我にとっては、ほんの数分前の出来事じゃ」
鮮明に思い出す。
(……今でも、あの時のシロの顔や感触が覚えておる)
腕の中で微笑み、冷たくなっていく身体、そして最後に口にした――
「あの言葉も今でも耳に残っておる。……それなのに我、我はお前を弔うことも出来ずに百年も眠っておった! ………すまん、すまんのじゃ、シロッ!!」
クロアは悲しみに満ちた声でそう叫んだ。
顔を両手で覆い隠し、瞳から溢れだそうするものを必死に押し止めようとする。
(……ああ、心を引き裂くこの感情が我を剥がしていく、あの頃の弱い私に戻ってしまう)
耐えようとするが漏れてしまう、自分の心を守るために。
「……またじゃ、また、独りぼっちになっちゃった……母様、師父、シロ。なんでみんな、私を置いて逝っちゃうの! ……どうして世界は私から大切なものばかり奪い去っていくあぁぁ、ああ……」
誰ひとり見ていない広場で嘆く。そこには先程までの強気な姿はなく、今の彼女は家族にはぐれた迷子の幼い子供のようだった。
ツラい現実から膝が崩れそうになった。そんな時だった、頭の中に――
――こらクロア。また、そんな泣きそうな顔して笑いなさい。どんなに辛くても笑って楽しく生きる。お母さんと約束したでしょう?
とても懐かしい大好きだった、母様の言葉が甦る。同時に、
――もう泣きたくなければ強くなれクロア。じゃから今だけは泣け、そして明日から楽しく笑えるくらいこのジジィが強くしてやる約束じゃ。
フッハハハ、と笑う師父と初めて会ったあの日の事を思い出した。
「……そうだ約束。母様と師父との……二人の約束」
守らなければならない。だって自分は誓ったのだ。
美しく咲き乱れる桃源郷。
二人が眠る、大切な思い出での場所で――
どんなにツラくても泣かずに強く、そして楽しく笑って生きていく、と。
「そう誓ったんだ。二人の墓の前で……でも」
もうこの世にいない二人の笑顔を思い浮かべながら。
「今だけ泣くだけは許してください……そうすれば、また我に戻りますのじゃ……う、う」
空から見守ってくれる二人は頷いてくれたようにクロアは感じた。だから、
「うわぁあああん、シロ!? 何故、我より先に死んだ! お前が死んだなら誰が我の後始末するのじゃ、この親不孝者め! ひぐっ なのに何故、救えなかった我を恨まなかった!! よりにもよってあんな言葉を残すのじゃ愚か者めぇ……う、うぅぅ……」
しばらくクロアは涙を流しながら、あの時の無念を言葉に変え、百年後の夜空に向かって吐き続けた。
◇ ◆ ◇
そして数分経って、ようやく気持ちが落ち着いてきた頃に、クロアは涙で濡れた顔を袖で拭った。
「……過ぎ去った過去はもう戻らん。だから、くよくよしてもしょうがないのじゃ。それにシロの仇はあの時に取っておるしのう」
そう呟くと、自分の中に一つの疑問が生まれた。
「それにしても、あの痴れ者は一体どうやって〝ダンテの門〟を越えたのじゃ?」
大空洞にあるバルク大陸とエノク大陸――二つ大陸を遮る空かずの門。
彼処は鍵の所持者にしか開けられない筈じゃ、と小首を傾げる。
「……普通に考えば鍵を所持する人族じゃが、しかしあやつはあの時〝あの御方〟と言っておったのじゃ……」
あのプライドが高いあやつが、己に劣る存在に敬称を使うのか?
あり得ん、と我は思った。人族の寿命は魔族と違って短い。もしも、あの御方が人族ならとっくの昔に死んでおる筈じゃ。
しかも、我が統治するジャヒームは大空洞から離れているし、そもそも今の魔族は人族とはあまり接点がない。
それに――
「呪いの事を知っておったあの白槍のジジイは、我に大人しくバルクに帰れと言っておったのじゃ」
そう、ハクヤから事情を聞いている最中、白い槍を持ったジジイと戦っていた記憶が蘇った。だが、我はその後の記憶が何故かないのだ?
「限界がきた辺りまでは覚えておる。そこから……確か幼子の声が聞こえたような、う~む? …………まあ、良いか」
どうやっても思い出せんのなら仕方ないのじゃ、と我は記憶を掘り返すのを諦めた。
それに今は、もっと考えるべきことがあった。
「シロを拐かし、この地に呼び寄せたあやつが口にしたあの御方……」
鍵を所持し、先代魔王の息子である奴が、今まで敬称を使っていた相手――
〈傲慢〉以外の〈憤怒〉〈色欲〉〈強欲〉〈嫉妬〉〈怠惰〉〈暴食〉。
「――七罪魔王の誰かが我を嵌めたと言うことか……まったく、随分と舐められたもんじゃ……」
そう口にすると我は自然と残虐な笑み浮かべ、身体の所々からパチパチと火花が発生する。
確かに、連中に恨まれる事をした心当たりある。だが、それでも!
「我からシロを奪っておきながら、タダで済むと思っておるのかあやつらッ!!」
夜空に怒鳴りながらも、頭は冷静に思考していた。
……しかし、クセの強いあやつらが何故、わざわざ奴に協力するのじゃ?
戦闘狂の〈憤怒〉
色狂いの〈色欲〉
守銭奴の〈強欲〉
性悪婆の〈嫉妬〉
引きこもりの〈怠惰〉
学者肌の〈暴食〉
と、改めて考え、はっと気付いた。
「しまったのじゃ!? よくよく考えればあの連中、まともな奴が我以外いないではないか!」
髪をかきむしりながら、手掛かりになりそうな記憶を探る。だが、
「ダメじゃ……疑う要素がありすぎて、誰が犯人か分からん!! うにゅ~こういう時は……」
頭の後ろで手を組んで我は地面に寝転がった。
「寝る! 取り敢えずバルクに帰った後で考えるのじゃ……ふあ~ん」
流石に今日は疲れたのじゃ、と大きな欠伸を漏らす。
あやつらをシメるせよ、戦うにせよ《傲慢》の魔王具が必要じゃ。まずはエノク大陸から探さねばならん。
今後の方針を思い浮かべ、我は重くなる瞼と格闘しながら、チラリと近くで寝るハクヤを覗く。
「それにハクヤを仲間の元に届けたら、ふあ~、魔王具を探す旅をするかのう……ついでに三百年前にやり残したババ様の墓を探すのじゃ……」
一言文句を言う。それが、母様が生きていた頃の唯一の望みじゃたしのう。
「……まったくあの時、〈強欲〉の爺が連れ戻し来なければ……見つけておった……ふにゅ~、筈じゃアダ………バさ、くぅ~~」
眠気に負けた我は「くぅ~くぅ~……」と寝息を立てる。
◇ ◆ ◇
煌めく星空の下。草木の囁きを子守唄に、白夜とクロアは眠りにつく。
東の夜空から、自分達を見守るように一つの星がひときわ明るく輝いていた。
そうして、二人の物語が次章へと紡がれる。その先に待ち受ける波乱万丈な未来へ、白と黒は進んでいく。
最後まで読んで頂き有難うございます。これで一章の最終話になります。
次に二章から始める前に初の閑話に挑戦して始める予定です。なので今後もよろしくお願いします。
感想や指摘、誤字指摘などを頂ければ幸いです。