誘拐事件
リュウの父親もアナの寝室の見張りに実習生とついた夜、事件は起きた。
「リーレ卿!リーレ卿!」
その大声で私も目を覚ました。
アナの部屋の見張りをしていた兵士が慌ててやってきたのだ。
「どうしたのですか?」
「猊下の寝室から大きな物音が聞こえて、呼びかけてもお返事がないのです!」
「許可します。
すぐに猊下の寝室に入ってください」
しかしアナの姿は寝室には無かった。そして窓ガラスが割られ、何者かが侵入した痕跡も見られた。
連れ去られたのだ。
「閣下、リュウ殿の姿も見当たりません」
お父様執事、イザックの言葉にみんなが戸惑った。
ちょうどその時、イザックの持っていた無線機がなった。
「リュウです」
小声で若干聞き取りにくいが、リュウの声だった。
「アナ様を連れた者を追って来たのはいいのですが、応援をお願いしたいです」
「猊下は今どこに?」
お父様がイザックから無線機を奪う。
「郊外の2丁目の空き家です。
私は近くの飲み屋にいます。
アナ様の無事は確認できておりません」
「わかった、すぐに応援に行く」
すぐにお父様が兵士たちに指示を出す。
私は意を決した。
「お父様、私も連れて行って下さい!」
「危険な場所に我が子連れて行く親がいると思うか?」
「アナがケガをしていれば、魔力で役に立てます。
それ以外はお父様様のお側を離れません」
私の真剣さが伝わったのか、お父様は同行許可してくれた。
リュウと合流した私達一行。
その途端、空き家から光が放たれた。
アナだ!
「突入!」
お父様の合図で一斉に空き家へ入る兵士たち。
私とお父様、実習生兵士とリュウの父親は固唾を飲んで見守った。
「鎮圧。
猊下、ご無事です!」
その言葉にホッとした。
空き家の中に入るとアナは壁に寄りかかって疲れ切っていた。
急に土下座の姿勢になるリュウ。
「申し訳ございません、未然に防げず…」
「仕方ありません。
私も予想していませんでした…
リュウ、あなたならすぐに助けてくれると思っていましたよ。
皆もありがとう。
叔父上」
「はい、何でしょうか?」
「王宮に知らせないとまずいと思いますが慎重に…
あまり大事にしたくはありません」
「わかりました」
お父様と話を終えると、アナは跪いている私を見た。
「心配して来てくれの?
ありがとう」
アナはこんな時でも猊下だった。




