表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣人族はアホじゃないのだぁ  作者: 雪だるま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/65

53

 王宮《白夜宮》の中央回廊は、夜になると妙に静かだった。


 昼間は貴族や役人が歩き回っている場所だが、深夜近くなると足音すら減る。


 その静かな回廊を。


「のだぁ〜〜〜♪」


 銀髪の巨大男が上機嫌で歩いていた。


 レイである。


 なお。


 片手にプリンを持っていた。


 完全に帰宅途中だった。


 その時。


「レイ殿」


 近衛士官が敬礼する。


「陛下がお呼びです」


「のだぁ?」


 レイがきょとんとした。


「今からなのだぁ?」


「はい」


 数秒。


 レイはプリンを見た。


 そして。


「急ぎなのだぁ?」


「……かなり」


「むむっ」


 レイは真剣に悩んだ。


 プリンを食べ切るかどうか。


 なお国家機密級呼び出しである。


 数分後。


 ちゃんと完食してから向かった。


 獣人族だから。


 以上。


 白夜宮奥、王族私室区画。


 普通の貴族ですら滅多に入れない場所だった。


 そこへ通されたレイは。


「のだぁ!」


 ちゃんと膝をついた。


 最近かなり礼儀正しい。


 獣人族基準では。


 国王カルパスは書類へ目を通したまま口を開く。


「近いうちに外国使節団が来る」


「のだぁ?」


「北西同盟国だ」


 レイは数秒考えた。


「難しいのだぁ」


「理解しなくていい」


 カルパス王は即答した。


「お前に必要なのは一つだけだ」


 静かな声。


「晩餐会へ出ろ」


「のだぁ?」


 レイの耳がぴくっと動く。


「美味しいのだぁ?」


「王宮料理だ」


「のだっ♡」


 即落ちだった。


 カルパス王は少し頭痛を堪える。


 本当に単純で助かる。


 そして困る。


「ただし」


 国王は続けた。


「お前には“立っていてもらう”」


「のだぁ?」


「王族の後ろだ」


 レイは首を傾げた。


「なぜなのだぁ?」


 数秒。


 カルパス王は少しだけ考えた。


 そして。


「威圧だ」


 率直だった。


「外国は“強さ”を見る」


「のだぁ?」


「この国には世界最強がいる」


「王家直属だ」


「それを見せる」


 レイは数秒固まった。


 そして。


「のだぁ!!」


 感動した。


「吾輩、飾り筋肉なのだぁ!?」


「……まあ近い」


 レイの尻尾がぶわぁんっと揺れる。


 完全に嬉しそうだった。


「承知しましたのだぁ!」


 どやぁ。


「その日はちゃんと王族たちの後ろに立ってますのだぁ!」


 カルパス王は静かに頷いた。


 実際、それが目的だった。


 国家外交は舐められたら終わる。


 特に今の時代は。


 西部は不安定。

 東部は魔物被害。

 南方貴族も怪しい。


 だからこそ。


 “この国にはまだ圧倒的暴力がある”


 と見せる必要があった。


 そして。


 レイはその象徴としてあまりにも便利だった。


 世界最強。

 若い。

 兵士人気が高い。


 しかも。


 銀髪高身長で見栄えまで良い。


 外交向きすぎる。


「……陛下」


 レイが真顔で聞いた。


「静かに立ってた方がいいのだぁ?」


「出来るならな」


「むむっ」


 レイは真剣に考え始めた。


 そして。


「……もう遅い」


 低音で呟いた。


 カルパス王が顔を覆う。


「それはやめろ」


「のだぁ!?」


「絶対にやめろ」


 かなり本気だった。


 一方。


 数日後の外交晩餐準備は、王宮全体を巻き込む騒ぎになっていた。


「レイ様用の礼装は!?」


「肩幅合うものがない!!」


「また仕立て直しだ!!」


 衣装係たちが半泣きである。


 レイは規格外だった。


 身長。

 筋肉。

 尻尾。


 全部が面倒。


「のだぁ?」


 レイ本人は鏡前でぼんやりしていた。


「なんかキラキラしてるのだぁ」


 金刺繍礼装。


 王家直属遊撃兵専用の正装だった。


 普通の兵士には許されない。


「レイ様、本当に格好良い……」


 若い侍女がぽつりと呟く。


 実際。


 危険だった。


 銀髪。

 金刺繍。

 高身長。


 しかも最近は剣姿まで様になってきている。


 王都女性人気がさらに壊れ始めていた。


「のだっ♡」


 褒められてレイの尻尾が揺れる。


 完全にご機嫌。


 その頃。


 王族側では別の計算が進んでいた。


「外国側へ、“王家管理下”を強く印象付けろ」


 カルパス王は側近へ命じる。


「レイ単独ではなく、“王家の英雄”として見せる」


「承知しました」


 そこが重要だった。


 もし。


 レイが“自由な英雄”と認識されれば。


 外国勢力が接触してくる。


 金。

 爵位。

 婚姻。


 何でも使う。


 だから。


 最初から見せる。


 この怪物は王家所有物だと。


 一方。


 当の本人は。


「のだぁ〜〜〜♡」


 礼装姿で鏡を見ながら。


「静かに立つ練習なのだぁ!」


 真顔で“強者の立ち方”を研究していた。


 なお。


 使用人たちは全員、笑いを堪えるのに必死だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ