表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣人族はアホじゃないのだぁ  作者: 雪だるま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/65

15

 灰霧街道。


 白い霧。


 雪。


 そして。


 異様に静まり返った森。


 先ほどまで大量にいた白い影たちは、霧の奥へ消えていた。


 兵士たちはまだ緊張していた。


「……逃げたのか?」


「いや、まだいる気がする」


「レイ様のおかげで怯んだだけでは……」


 一方。


「むむっ……」


 レイは真顔だった。


 珍しく。


 本当に珍しく。


 考えていた。


「のだぁ……」


 腕組み。


 尻尾停止。


 獣人族基準では完全に知性モードである。


「レイ様?」


「のだぁ?」


「どうしました?」


 レイは少し考え込んでから言った。


「……今さら思ったのだぁ」


「はい」


「殴れるか試してなかったのだぁ」


 兵士たちが静まり返る。


「…………」


「…………」


「…………」


「今さら!?」


「うむ!」


 レイはどや顔だった。


「大事なことなのだぁ!」


 なお今までやっていたこと。


・尻振りダンス

・悪口作戦

・精神攻撃


 順番がおかしかった。


 だが。


 レイ本人はかなり真剣だった。


「むむっ」


 そして。


 近くにいた若い兵士の腰を見る。


「のだぁ?」


「え?」


 次の瞬間。


 しゅっ。


「のだっ♡」


 兵士の剣が消えた。


「…………え?」


 レイが持っていた。


「借りるのだぁ!」


「は、はいぃ!?」


 若い兵士は真っ赤になった。


 レイが。


 レイが自分の剣を使っている。


 脳が焼けた。


「お、おおお俺の剣……!」


「のだぁ?」


 レイは剣をぶんぶん振った。


「軽いのだぁ」


「使ってるゥゥゥ!!」


 若い兵士は感動で震えていた。


 周囲の兵士たちもざわつく。


「すげぇ……」


「レイ様が剣を……」


「普段木の枝か素手なのに……」


 実際かなり珍しかった。


 レイは基本的に武器を使わない。


 理由。


「重いのだぁ」


 終わっている。


 なので今の状況は、兵士たちからすると歴史的瞬間だった。


 若い兵士など完全に涙目だった。


(家宝にする……)


 本気だった。


(子供に語り継ぐ……)


 危険だった。


 一方。


「むむっ……」


 レイは剣を構えていた。


 かなり適当。


 なのに妙に様になる。


 顔が良すぎるせいだった。


 白い霧。


 雪。


 銀髪。


 長身。


 剣。


 絵になりすぎていた。


 兵士たちは思わず見惚れる。


 そして。


「のだぁ〜〜〜」


 レイは霧の中へ歩き出した。


 静か。


 雪を踏む音だけ。


「レイ様……!」


「危険です!」


「のだぁ?」


 レイは振り返った。


「何かいたら切るのだぁ!」


 理屈が単純すぎる。


 だが。


 実際、それで大抵なんとかしてきた男である。


 兵士たちは止められなかった。


 霧が濃い。


 視界が悪い。


 白い。


 静か。


 普通なら恐怖で動けない。


 だが。


 レイだけは。


「のだぁ?」


 きょろきょろ。


「どこなのだぁ?」


 完全に散歩感覚だった。


 その時。


 ぬるり。


 霧の奥。


 白い腕。


 細長い指。


 異形。


 兵士たちが悲鳴を飲み込む。


「レイ様後ろ!!」


 だが。


 レイは。


「のだっ」


 振り向きざま。


 ぶんっ。


 剣を振った。


 速すぎた。


 白い影が。


 ずるり。


 真っ二つになった。


 静寂。


「…………」


「…………」


「…………」


 レイも止まった。


「のだぁ?」


 白い影が地面で痙攣している。


 黒い液体。


 異臭。


 そして。


 死んでいた。


 レイはしばらく見下ろしていた。


 数秒後。


「……切れたのだぁ」


 兵士たちがざわつく。


「効くのか!?」


「物理効くのかよ!!」


「今まで何だったんだ!!」


 レイ本人もびっくりしていた。


「のだぁ……」


 真顔。


「意外なのだぁ」


 その感想なのか。


「もっと早く試せばよかったのだぁ……」


 兵士たちは心の中で総ツッコミした。


 だが。


 レイはもう動いていた。


「のだぁあああ!!」


 霧の中へ突撃。


 白い影たちが現れる。


 細長い腕。

 異様な顔。


 だが。


 今のレイには関係なかった。


「切れるなら簡単なのだぁ!!」


 ぶぉんっ!!


 剣が振るわれる。


 速い。


 重い。


 雑。


 なのに異様に強い。


 白い影たちが次々と両断されていく。


 木ごと切れる。


 雪が舞う。


 霧が裂ける。


 もはや嵐だった。


「のだぁああああ!!」


 兵士たちは呆然としていた。


「……すげぇ」


「剣使えるんだ……」


「いや才能だけだろあれ」


 実際その通りだった。


 技術ではない。


 筋力と反応速度がおかしいだけ。


 なのに強い。


 理不尽だった。


 数分後。


 霧の中は静まり返っていた。


 白い影たちは全滅。


 レイは。


「のだぁ〜〜〜」


 剣を肩に担ぎながら戻ってきた。


 返り血。

 雪。

 銀髪。


 妙に格好良かった。


 若い兵士は完全に脳を焼かれていた。


「俺の剣……」


 うるうる。


「レイ様が使った……」


「のだぁ?」


 レイは剣を返した。


「ありがとうなのだぁ!」


「は、はい!!」


 兵士は震える手で受け取る。


 そして。


(洗わない)


 本気だった。


(絶対洗わない)


 周囲の兵士たちも羨ましそうだった。


「いいなぁ……」


「レイ様の剣だぞ……」


「家宝じゃん……」


 完全に宗教だった。


 一方。


 当のレイは。


「のだぁ〜〜〜♪」


 もう別のことを考えていた。


「お腹空いたのだぁ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ