幕間・誰かの残響
【イエソド九層――朽ち果てし神殿・???】
それは祈りだった。
いや、あるいは願いであり、そして怒りであった。
もういない誰かのそれであり、そして今を生きる誰かのそれでもあった。
残響。
イエソドの九層……ここでは石の回廊を伝って、誰かの声が木霊する。
祈りが、願いが、怒りが――残って、遺って、そして響く。
ここは神殿。
だが、朽ち果てている。そこに何が祀られ、何が祈られ、何が願われていたのか、知るものはどこにもいない。
しかし神殿というからには、その中心に据えられているモノは明確であろう。
信ずる者たちが皆死に絶え、記憶から消え、信仰が消え失せた今でも、ソレは未だにここにあった。
ソレはただ待っていた。ひたすらに待っていた。
残響となり果てた今も尚、ソレはただ待ち続けた。
たった二つのものがここまで来ることを待ち続けた。
どちらか一つでもよかった。片方だけでも目的は達成できる。
だが今は違う。
今、それらは確かに、同時にこの層に居る。
正しく僥倖。怒りと歓喜がそれを満たす。
祈りと願いが像を結ぶ。
過去と現在の誰かたちの祈りと願いが形となって顕れる。
――来い。ここに来い。
擦り切れ、ぼやけ、思考なんてものはもうとっくのとうにできなくなった残響は、ただそう願う。
己の目の前にその二つが現れるのをただ待ち続ける。
その二つ――後継と、怨敵を。
大変申し訳ございません、わかりやすいように構成を分割いたします。




