File50 五反田洋
俺は九鬼泰照。暴露という闇の行為をしている情報屋だ。
今回の依頼者は有名人だった女。声優の木島佑子であった。
「では、依頼内容を」
「私の人生を壊した男を…暴露してください!」
木島は苦しみを吐き出すかのように語り始めた。
木島佑子は『キジマユーコ』として、声優業を行っていた。
彼女の声はいわゆる美声であり、沢山のファンも獲得していた。
先輩声優も木島の実力を認めており、彼女は『新進気鋭声優』として、メディアに取り上げられていた。
だが、ある狂人の魔の手が彼女に迫っていることを、彼女は知るよしも無かった。
それは、二日前の夜の事だった。彼女にある一通のメールが届いた。それは、マネージャーの五反田洋からのものであった。
『私と付き合ってください』
唐突な告白。しかし、木島はそれを断った。
何故なら、彼女には付き合って二ヶ月の彼氏がいたからであった。
『すいません。私には彼氏がいるので…』
木島は五反田にそう返信し、寝ることにした。
次の日。仕事のため、木島はスタジオに向かうバンに乗っていた。
運転手は五反田。気まずい空気が車内に溢れていた。
「木島ちゃん。昨日はごめん」
「いいえ。私の方こそ…」
そして、交差点で車は止まり、五反田は木島に水の入ったペットボトルを渡した。
「そうだ。最近は暑いから水分補給したほうがいいよ」
「ありがとうございます」
木島はそれをなんの疑いもなく、それを飲んだ。
その瞬間。
「うっ…なんだか、眠…い…」
急な睡魔に襲われ、木島は寝てしまった。
「う、うぅん…ここは…」
次に木島が目覚めたのはどこかの廃ビルの部屋。
「おぉ。五反田さん、目覚めましたぜ」
近くにいた茶髪のチンピラらしき男が、五反田の名を呼ぶ。
「えっ、あなた、誰ですか…?」
木島がその男に質問をするも、奴は何も返さなかった。
そして、部屋に入ってきたのは五反田であった。
「五反田さん!」
「全く。何で私の告白を無下にしちゃったかなぁ。今から君は後悔することとなる」
「やっ、やめてぇぇぇ!」
木島は五反田に文章で表せないような辱しめを受けた。
その地獄の時間は本人も覚えておらず、夜になる頃にはそれも終わっていた。
「ふぅ。もう満足だ」
「うっ、うぅ…」
木島はトラウマを植え付けられた。そして五反田は木島に言う。
「君はもう声優を辞めて、私と付き合って欲しい」
「な、何故…」
「何せ、君は私と一緒にいるべきだ」
「ぐっ…この事は警察に」
「無駄だ。私はとある半グレと関わりがあってね。何をしても無駄だ」
「そんな…」
「まぁ、今日のところは帰してあげよう。安谷さん。お願いします」
「はい」
安谷は木島を強引に連れ、外に出した。
「あっ、そうだ」
安谷が木島に言う。
「もしサツや彼氏に言いつけたら、さっきのヤツをネットにばらまいてやるからな」
そして、安谷が廃ビルに戻る。
「…」
木島はもうなにも言うことも出来なかった。
唯一幸いだったのが、五反田が妊娠を避けたことぐらい。
木島は何もかもに絶望しながら、苑頭町にある家に戻った。
夜の苑頭町は繁華街の顔を見せていた。すると、木島はある男に会った。それは、藤松会のヤクザ、立花貞行であった。
立花が時折アパートの大家と会っているのを木島は見たことがあるのだ。
(意味がないかも知れないけど…もしかしたら…)
「あの…」
木島は覚悟して立花に話しかける。
「どうしたんだい?お嬢さん」
「実は…」
木島は立花に自分が遭った事について話した。
「ほう…それは絶対に許せんな…半グレの奴らは俺たちが何とかするが、その五反田ってのはカタギだ」
「じゃあ、どうすれば…」
「ここでは話せん。俺の行きつけのバーで話そう」
そして、二人はバー『トーノ』に入った。
「いらっしゃ…おぉ。立花さん、その女性は?」
「遠野。俺がこの女性に話す事は口外するなよ」
「は、はい!」
そして、席に座る。
「それで、話は…」
「これだ」
立花はメモに暴露屋の情報を書いた。
「ここに行って、カス共の事を話せ。そこの代表は、必ずそいつを社会的に抹殺する」
「は、はい」
そして、ここに訪れたという。
「どうか…どうか奴らを…あのゲスどもを暴露してください!」
木島は、憎しみの神が取り憑いているかのような怒りを吐き出していた。
「分かりました。では、奴らに悪夢を見せ、ブタ箱と地獄に送ります」
俺は五反田らの事を調べあげた。
五反田洋。41歳。声優事務所『ノア』の職員。半グレ団体『ドープ』と関わりがあり、そこの新人声優を拐っては自分の欲を満たしている。
俺は五反田の情報をマスコミにばらまいた。
その結果、五反田は事務所をクビにされ、強姦罪等で逮捕。さらに木島を含める今までの被害者女性から訴えられ、金も搾り取られた。
残るはドープ。どうやらチーム暴札の傘下であり、黍出町の南部にいるのだとか。
俺はドープ壊滅の為に奴らの所に行くことにした。




