File45 アメジスト社と吉木天昌会
俺は九鬼泰照。暴露を日常的に行っている情報屋だ。
今回の依頼者は、意外な形で会った。
ある朝、暴露屋の事務所に向かっていると、ビルの前に倒れている男がいるではないか。
「大丈夫ですか!」
俺はその男に駆け寄る。男の意識はまだ途切れてはいなかった。
「な…なにか食べるものを…」
「救急車は」
「それは駄目だ…追手に…殺られるかもしれない…」
俺は男の事情を察し、すぐに事務所の中に入れた。
中では、既に比嘉がいた。
「おはようございま…って、誰ですかその人!?」
「比嘉、なにか食料はあるか?」
「飲むタイプのゼリーなら」
「それでもいい!この人に渡してくれ!」
「分かりましたぁ!」
比嘉がゼリーを持ってくると、俺は男に渡した。
「これでもいいかい?」
「あぁ、なんでもいい…それをくれ…」
俺は男にゼリーを飲ませた。
「………ふぅ…何とかなった」
「もう大丈夫ですか」
「あぁ」
俺は男をソファーに寝かせると、先程の言葉を思い出し、ソイツに投げかけた。
「そう言えば、さっきの追手に殺されるとは、どういう事で?」
「それは…私の勤める企業と、それに関するヤクザ組織の事で…」
「はぁ…(ヤクザ組織?もしや武蔵野会か?)」
「そうだ。まだ名を言ってなかった。私は苫野徹と言います」
「苫野さん。一体何が…」
「私は貴方達がやっていること知っています。確か、人を社会的に失墜、所謂暴露をするとかなんとか」
「要するに、暴露屋を知って、命の灯火が消えまいとここに来たのですね」
「はい。私は、あの企業とそのヤクザ組織を落としてほしいのです」
そして、苫野は寝ながら語り始めた。
苫野の勤める企業『アメジスト社』は、水胡浦区の隣、老汐区にある会社であり、ブラック企業であった。
社員をこき使い、上層部は何もしない。まさにあってはならない会社であった。
さらに、アメジスト社は老汐区を根城とする吉木天昌会と組んでおり、アメジスト社を辞めようとするときには、吉木天昌会の者に脅されるという。
アメジスト社には寮があり、その寮は会社の隣にあった。
無論、寮から逃げ出そうにも、吉木天昌会の者が寮を監視している為、脱走することができないのだ。
過去に一人、寮から逃げ出したことがあったが、それは失敗に終わったのだとか。
だが、苫野は何があってもここから脱走すると考えていた。その為に苫野は脱走仲間を集めた。計三人。苫野と同じ考えの者が三人集まった。
そして、脱走計画が始まった。
それが始まるのは、深夜3時。監視が薄くなる時間帯であった。
皆は、寮の周りにある壁を越え、そこから逃げ出した。
脱走者が出たという情報が上層部の耳に入ったのは、時間の問題であった。
社長の岡谷は、自分の会社を暴露させないために、吉木天昌会の構成員を使って、脱走者を追わせたのだ。
実は会社のスマホはGPS機能が付いており、苫野達はそのスマホを持ったまま逃げ出してしまったのだ。
そして一人、また一人と捕まる中、残ったのは苫野と同僚の河谷だった。
二人は逃げ出してから何も食べておらず、死が近付いていたのだ。そして、苑頭町に入る直前、河谷は死んだ。餓死であった。
苫野は逃げた。
苫野は、脱走直前に暴露屋の事を知っていた。彼は死にそうになりながらも、暴露屋に訪れようとしたのだ。
そして、今に至る。
「どうか…奴を…奴らを落としてください!」
「分かりました。奴らを地獄に落とします」
その瞬間、苫野は目を閉じた。
「なっ…」
「闇医者に運べ!」
比嘉は苫野を伊佐さんの闇病院に運ばせた。
そして、俺はアメジスト社と吉木天昌会を調べ上げた。
アメジスト社はまさにブラックであり、悪人が動かしているかのような会社であった。社長の名は岡谷敬二。悪事を当たり前かのようにやっている。
吉木天昌会。組長は吉木哲治。先程も言った通り、老汐区を根城にしている指定暴力団。アメジスト社と組んでおり、社長とは仲が良い。
さらにその組織は俺がかつて潰した多喜組とも仲がよく、敵の敵は味方という事で、多喜組が潰され、武蔵野会がチーム絵札側に付いた際に武蔵野会についたのだとか。
俺は情報をまとめ上げ、マスコミ各所にそれを暴露しようとした時であった。
暴露屋の扉が無理やり開けられる。
「おいゴラァ!藤松会の奴は死ねやぁ!」
入ってきたのは、黒スーツの男二人。男達は、いきなり発砲を始めたのだ。
「うわっ!」
俺はすぐにノートパソコンを持って机の下に屈む。
この机は防弾仕様だが、ここに近付かれては困る。
俺は奴らの弾切れを見極る。そして、発砲が一旦止んだ。
「仕方ねぇ。椅子は新しく買うか!」
俺は椅子を持ち上げ、片方にそれを投げた。
「ぐわっ!何だぁ!」
そして俺は机から拳銃を取り出し、椅子を投げた方に発砲。
「がわっ!」
「なっ!」
その弾は奴の眉間に入り、即死した。
「お前は尋問だ」
もう片方には肩に発砲し、銃を使えないようにした。
「がばぁっ!」
俺はドスを取り出し、奴の顔に突きつける。
「お前、どこのもんだ?」
「けっ…そんな事、死なねぇ限り言うかよ!」
「はぁ…そうかい」
その答えにため息を付き、俺はドスで奴の左耳を切った。
「ぎびやぁぁぁ!」
「これでも言わないと?」
「い…言います、言いますぅ!」
「それで、誰の差金だ?」
「よ、吉木天昌会の者ですぅ!殺さないでぇぇ!」
「あぁそうかい。じゃあ、先に地獄に行ってろ」
「ぐぶしゅっ」
俺はソイツの首の骨を折り、比嘉に電話をかけた。
「大丈夫か…」
何コール目かでやっと比嘉が出た。
「そっちはどうだ」
「いえ…少しキツイです」
比嘉の息は荒れていた。
「おい!何があった!」
「何か、吉木天昌会って名乗る奴らが襲ってきて、病院で少し戦いました…たまたま桑江の兄貴もいたんで、一緒にやってくれましたが…少しばかり入院しそうです」
「そうか…すまない」
「いえ、全然」
そして、比嘉は電話を切った。
「ちっ…吉木天昌会、アメジスト社…汚えことをしやがる」
俺はすぐにアメジスト社の事を暴露した。
それにより、アメジスト社の上層部は逮捕された。
残るは吉木天昌会。奴らは絶対に滅ぼす。




