File37 富崎将生
俺は九鬼泰照。社会の癌を取り出していく情報屋だ。
今回の依頼者は、中年の男。名を宮川研一郎と言った。
「依頼内容を」
「うちの息子を間接的に殺したゲス監督を落として貰いたい」
そう語る宮川はまさに怒りで叫びそうであった。
宮川の息子、宮川真那都(以下息子さんと呼ぶ)は、日本の名門サッカーチーム、好山セルドのMFとして所属していた。
息子さんは、日本サッカー界では『ファンタジスタ宮川』と呼ばれており、その実力は本物。
一流のサッカー選手を四人抜きしたり、いろんな試合でハットトリックを決めたり、何回もMVPに選ばれたりと、優秀な成績を収めていた。
しかも、海外リーグへのオファーも沢山来ており、人生は最高であった。
しかし、そんな男を嫌う男が一人いた。
それは、同じ日本の名門サッカーチーム、寺角ステンデルの監督、富崎将生であった。
かつて息子さんは、この寺角ステンデルに一時期入っていた。
しかし、チーム内でのイジメや、監督から冷遇されていた事もあり、息子さんは、チームを抜けて好山セルドを入ったのだ。
その際、監督であった富崎が憤怒した。何故宮川が抜けんたんだと。しかし、富崎本人はチーム内で冷遇している自覚が無く、何故抜けたのかは分からなかったのだ。
その矢先、宮川が海外リーグへのオファーを貰ったという情報を聞きつけ、富崎は怒りが頂点にまで上ったのだ。
そして、富崎は人の道を外れる行動に出る。
ある時、好山セルドの練習場に行くために車を使って向かっていたときの事。
息子さんの車は、赤信号で止めていた。すると、目の前から何かがやって来る気配がした。
何とそれはトラックだった。トラックが逆走し、こちらに突っ込んできたのだ。
そして、息子さんは車から出る前にトラックと激突し、死亡した。
宮川が息子の死を知ったのはそれから数時間後の事であった。警察から息子の死を知らされ、病院で布が掛かった息子を見て、宮川は泣いた。
警察は最初、これを事故だと判断した。しかし、トラックのドラレコから運転手が誰かから電話を受けた後に事故が起きたのだ。
そして、その電話内容を警察が調べると、それは富崎からの宮川真那都殺しの指示であった。
警察は、殺人教唆をした富崎を逮捕しようとした。しかし、警察は逮捕する事は出来なかった。
しかも、その事件は打ち切りとなった。
無論、宮川はこのことに納得が行かなかった。
宮川は警察に絶望した。その時、宮川は伝手を借りて暴露屋に訪れたのだ。
「お願いします!どうか…どうか奴を………落としてくれぇっ!」
「分かりました。奴に地獄を見せます」
俺は、富崎の事を調べた。
富崎将生。59歳。寺角ステンデルの監督。彼は宮川の事を毛嫌いしており、宮川への嫉妬心は人一倍高く、宮川殺害時に借金まみれの友人を使い、殺害させた。
更に、俺は意外な人物に富崎の事を聞いた。
俺が向かったのは、蛇尾刑務所。そこに奴がいた。
俺は面会を頼み、奴に会わせてくれた。
「どうも。俺はアンタのせいで滅茶苦茶だよ」
それは、元サッカー評論家、桜庭昭彦。
彼も殺人教唆でブタ箱に入った男だ。まぁ、原因は俺なのだが。
「それで、何のようで?」
「富崎将生の事について聞きたい」
「富崎?あぁ、寺角ステンデルの監督のか」
「そうだ」
「ソイツは俺がゲロを吐くほどに下衆なやつだ。何なら奴は、今まで目の上のたんこぶの選手を、消してきたんだ」
「そうなのか」
「奴が現役時代に同期だった一流選手、岡林広文を消したのが始まりだ。サッカーやってるやつは金がたんまりとある。奴は金を使って警察に賄賂を渡して、今日の今まで逮捕されてこなかった」
「そうか。情報感謝する」
俺は蛇尾刑務所を後にした。
俺はこれらの情報を元に、富崎の情報をマスコミに売った。
その結果、富崎の元に批判が殺到。更に監督業を降りる事になり、それと同時に富崎は逮捕された。
富崎は警察にこう語った。
「俺は悪くない。強い奴らが悪い」




