File33 暴走したNo.2
俺は九鬼泰照。組織に仕えるナンバー2と戦う情報屋だ。
遡ること数日前。最近、不可解な事件が苑頭町で起きている。
それは、藤松会の構成員の死体が色んな所で見つかる事である。
ある時は路地裏、ある時はビルの屋上、ある時は組の事務所の前…と、誰かが藤松会に喧嘩を売っているのだ。
被害者は計5名。しかも、死体には共通点があった。それは、体の骨の一部が粉砕されている事と、死体の上には、必ず『クローバーの葉っぱ』が乗せられている事であった。
それに藤松会直系の組、緒方組が憤怒していた。
組長の緒方康作はこう語る。
「うちの組織のもんが何者かによって死んでいる。それは絶対に許せないことだ。殺した奴は徹底的に排除する」
そうして、緒方組は、組員殺しの犯人探しに奮起していた。
そのことに俺が関わるようになったのは、昨日の事であった。
ある時、緒方組長が俺を呼んだ。
「なぁ、九鬼。この事件の犯人を誰だ?いくらでも出す」
しかし、この事件の犯人はまだ分からず、緒方組長にこう言った。
「いや、まだ犯人はわからない。犯人が分かったら、すぐに情報を送るよ」
このとき、俺は知らなかった。この事件の犯人が、あの男だなんて………
次の日、俺が事件の犯人について調べている時であった。急に俺のスマホの音が鳴り響く。
「はい。九鬼です」
「九鬼ぃ!今すぐにうちの事務所に来てくれ!死にそうだ!」
相手は緒方組長だった。
「何があっ」
俺がすべてを言い切る前に緒方組長は電話を切った。
(これはマズイ!)
俺は退院したばかりの比嘉、伊波を連れていき、緒方組事務所に着いた。
俺は扉を開ける。そこには、二人の死体。
「なっ…」
「まさか…お前たちは待っていろ!」
俺は二人をおいて急いで組長室に入る。そこには、衝撃的な場面が見えた。
「ヒィィ!」
奥には怯え、座り込んでいる緒方組長。その前には、チーム絵札ナンバー2、黒畑純紀であった。
「あぁ、やっと来たのか。遅えよ、九鬼」
何と黒畑は緒方組長の右足をハンマーで粉砕した。
「ガバァァ!」
「なぁ!」
「さぁ、九鬼。よくも幹部達を殺ってくれたよ。今、ここで死にな」
そう言って、黒畑はハンマーをこちらに振り上げる。
「フゥン!」
「うおぉ!」
俺は何とか後ろに避ける。
「だが、獲物がハンマーなら、分かりやすい!」
俺は拳銃を取り出す。しかし、黒畑は狡猾であった。
「出させねぇ!」
何と黒畑は俺の出した拳銃をハンマーで吹き飛ばした。
「何ぃ!」
壊れた拳銃が組長室の床に散らばる。それを見た瞬間、俺は覚悟を決めた。
「仕方ない。接近戦だ」
俺はポケットからメリケンサックを取り出す。
「メリケンサックか…面白い!なら、地獄で喧嘩でもしてろやぁぁぁ!」
黒畑がまたハンマーを振りかぶる。
「ケッ、一度見た攻撃は二度と通じるか!」
俺はすぐに懐に入り、ボディーブローを決めた。しかし、黒畑にはあまり効かなかった。
「なっ、コイツ…」
「不思議だよなぁ。お前のボディーブローが効かないなんて。うらぁ!」
黒畑がハンマーを降ろし、ハンマーの持ち手部分が俺の頭を強く打ち付ける。
「くはっ!」
一瞬視界が真っ白になる。
「オラヨぉ!」
黒畑が腹を蹴る。
「うげっ!」
それに俺は軽く吹き飛ばされた。
「かはぁ…」
「冥土の土産だ。見ろ」
黒畑が服を脱ぐ。そこには、サラシが巻かれていた。
「何枚も、それにギチギチに巻いといてよかったぜぇ。さぁ、来いよ。もう一回!」
「チィ…」
俺は根性で立ち上がる。
「負けるかよ…この九鬼泰照が…お前のような半グレに!」
俺はスーツを脱ぐ。
「さぁ、来い!幹部達を殺したその拳で、俺を殺してみろ!」
俺は最速で奴の懐に潜り込む。
「うらぁぁ!」
全力アッパー。しかし、奴は動じない。
「お前はぁぁぁ…」
黒畑が俺の首を片手で掴む。
「ぐふぅ…」
「くたばれぇぇぇ!」
俺は最後の足掻きで、奴の目に指を突っ込んだ。
「かばぁぁぁ!」
目をやられた痛みで、黒畑は俺を放し、目を抑える。
「やりやがったなぁァァァ!このカスがぁぁ!」
黒畑が無闇矢鱈にハンマーを振る。それには緒方組長も怯えていた。
「ひっ!ひぃぃ!」
「ここかぁぁぁ!」
何と奴は緒方組長にハンマーを振り下ろそうとした。
「させねぇぇ!」
俺は高速のスライディングにより、緒方組長の死は免れた。
「はぁ…はぁ…」
「緒方組長、早く逃げて!」
その言葉により、緒方組長はこの場を去った。
「九鬼ぃぃぃ!」
目から血を流す黒畑の顔はまさに牛鬼の様であった。
「貴様はァァァ!今ぁ!ここでぇ!」
黒畑がハンマーを持ち特攻。
「殺ってやるぅぅぅぅ!」
「うおおおおぉ!」
黒畑がハンマーを振りかぶる。
「くぁぁぁ!」
俺は全身全霊で、奴の顔に右のストレートを決めた。
「くぶふぇぁぁぁ!」
苦しい叫びを上げると、黒畑は倒れた。
「はぁ…はぁ…はぁ…くそっ…」
俺は倒れた黒畑を見た。その時、黒畑はボソボソと語り始めた。
「クローバーの花言葉ってのは…『約束』、『幸運』、『私を思って』………そして、『復讐』だ………俺は仲間や部下を殺された恨みを藤松会の奴らで晴らし、復讐した……クローバーの葉っぱを乗せたのは、いわゆるお遊びって奴だ……俺は死ぬ。でも………お前がいつか地獄に来るまで、地獄の鬼から罰をいくらでも受けてやるさ……」
すると、奴はポケットから短刀を取り出し、喉に刺した。
「くふっ」
奴は、リーダーに仕える、『クローバー』だったのかのしれない………。




