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暴露屋∼社会的に殺す情報屋∼  作者: 蔵品大樹
第一部 藤絵戦争
40/139

File23.5比嘉編 兄貴と会った過去

 そういえば、今の兄貴と出会ったのは、数年前にもなるのか。

 俺は、憧れの兄貴である佐伯の兄貴の死体を見ながらそう思った。




 俺は比嘉哲巳。兄貴の死体を見て泣いたヤクザだ。

 「ぐっ…ううう…」

 「佐伯の兄貴…」

 俺は伊波や舎弟を連れて、兄貴に言われた通り、例のビルの屋上に来ている。しかし、そこで見たのは非情な現実であった。

 「佐伯の兄貴…嘘でしょう…」

 俺はその途端、頭の中で過去がフラッシュバックした。




 俺は孤児だった。しかも、名も無い。2歳の頃、とある孤児院に拾われ、そこで働いてた神父様から比嘉哲巳と名付けられた。

 そこで同い年の男の子、後の同期である伊波にも出会った。

 学生時代、俺は荒んでいた。相棒である伊波を引き連れ、各地の不良たちをボコして回っていた。

 その時にはまだ孤児院に住んでいたが、17の不良であった俺たちを神父は孤児院から追い出した。

 あてもなく、繁華街をフラフラとする毎日、そこで、俺はとある男に出会う。

 「なぁ、あんたら、俺の元で住まねえか?」

 その男は金子啓児(かねこけいじ)と名乗った。

 金子は無償でアパートの部屋を貸してくれて、まさに俺達にとっての救世主(メシア)であった。

 しかし、これは後に分かった事だが、金子は苑頭町上部にある町、功楼(こうろう)町で暗躍する半グレ集団、『暴雷(ぼうらい)』のリーダーだったのだ。

 だが、当時の俺等は何も知らずに金子を救世主だと考えていた。

 それから1年後、金子は当時18の俺達をとある倉庫に呼んだ。

 「比嘉、伊波。今から俺の言う事を聞け」

 「は、はい…」

 すると、金子はカバンからナイフを二本取り出した。

 「こ、これは……」

 「これで、この人を殺っちゃって」

 金子が出した写真には、後に兄貴分になる男、佐伯直俊が写っていた。

 「あ、あの……流石に人殺しは…」

 「お前ら、タダで家に住もうなんて考えるんじゃねぇぞ」

 金子は一枚の紙を取り出した。そこには、見たことのない金額が書かれていた。

 「お前らは働くんだ。な?」

 「は、はい…分かりました」

 俺達は味わったことのない大人の圧によって従わざるを得なかった。

 当時の佐伯は、まだ幹部にもなっていない構成員であったが、カチコミで沢山の敵を倒したことからこの時から『戦神の佐伯』と呼ばれていた。

 金子はいつか自分が殺されるのではないかと危惧し、殺害を俺に頼んだのだ。

 そして、俺達は佐伯がいつも寄る苑頭町の中華屋で待ち構えていた。

 それから数分後、佐伯が一人で出てきた。

 「(よし、チャンスだ!)うおおおおおおお!」

 しかし、俺は失敗してしまった。それは、構えが弱かったこと。そして、声を出してしまったこと。

 「なんだぁ?」

 佐伯が振り向いたとき、俺はその圧に怯えてしまった。

 「この佐伯を殺そうとするなんざ100年早いんだよ!」

 佐伯の本気の腹パンにより、俺は倒れてしまった。

 「かぁ………」

 「もう一人いるな?」

 佐伯は伊波をとっ捕まえ、俺達を駐車場に停めてあった車に乗せた。




 数分後、佐伯が声を上げた。

 「着いたぞ」

 佐伯が車を止め、バックドアを開けた。

 「ここは…」

 「ウチの事務所だ」

 そこには、大きなビルがそびえ立っていた。どうやら、藤松会直系高瀬組の事務所なのだとか。

 「入れ」

 「はい…」

 俺達は佐伯の言った通りに事務所に入った。

 「佐伯、このガキ達は?」

 佐伯の兄貴分らしき男が言う。すると、佐伯は思ってもいなかった事を言った。

 「こいつらは、今日から俺の舎弟にする予定の奴です」

 「はぁ?何言ってんだ?」

 俺達と男は驚く。

 「な、なんで俺達が…」

 「こいつら、俺を殺そうとしたんです。その胆力を買ったのです」

 「何ぃ?佐伯を殺そうとしただぁ?藤松会舐めんじゃねぇぞ!」

 すると、男は懐から短刀、ヤクザ業界で言うドスを抜いた。

 「木田(きだ)の兄貴!」

 「けっ、ウチを舐めたものはこうなるんだ!死ねぇ!」

 木田がドスを振り上げたその時。

 「なんの騒ぎだ!」

 向こうから、一人の中年男性が現れた。

 「あっ!桂田のオヤジ!」

 この男、桂田義成は当時まだ会長ではなく、まだ組を継いだばかりであった。

 「全く、俺が組を継いで一週間でこんな騒ぎか?」

 「いや、オヤジ、このガキ達が、佐伯を殺そうとしたんですよ」

 「ほう…」

 桂田は俺の顔をジロジロと見た。

 「な、なんだよ…」

 「この顔、一回も殺しをしたことがない顔だな。誰からの差し金か?」

 俺は桂田の圧に押され、正直に答えた。

 「それは、金子、金子啓児という男です!」

 「金子啓児か………分かった」

 すると、桂田は俺と伊波にビンタをした。

 「うっ!」

 「ぐっ!」

 頬を抑える俺達に、桂田は言った。

 「確かに、佐伯を殺そうとしたのが本当なら、許されざる行為だ。しかし、俺がとある条件を出して、お前たちがそれに望むのなら生かしてやろう」

 「それは…」

 「高瀬組に入れ」

 断ったら死ぬかもしれない。俺達は覚悟を決めた。

 「はい!入ります!」

 「俺も、俺もそうします!」

 「分かった。じゃあ、お前たちは佐伯の元で働いてくれ」

 そう言って去ろうとする桂田、否、桂田のオヤジ。すると、木田の兄貴が問を投げた。

 「オヤジ!なぜコイツ等を!」

 「それはな、佐伯の言うとおりだ」

 「佐伯の?」

 「あぁ。佐伯はどうやらコイツ等をウチに入れようとしたじゃないか。ただ、それだけのことだ」

 「は、はぁ…」

 「そうだ。名を聞いていなかったな。名は?」

 「比嘉哲巳です」

 「伊波章です」

 「そうか。わかった。佐伯、あとはよろしく頼む」

 「はい。了解いたしました」

 オヤジは去り、木田の兄貴は佐伯の兄貴に舌打ちをしたあと、その場を去った。

 「じゃあ、お前ら、これからよろしくな」

 「はい!」

 「はい!」

 俺たちは佐伯の兄貴の元で礼儀、武器の使い方等を学んだ。

 ちなみに、金子率いる暴雷は、佐伯の兄貴の手により壊滅。金子は兄貴による拷問で死んだ。




 俺は誓った。

 「絶対、絶対にチーム絵札は全員…ぶっ殺す!」

 俺は、心に炎を燃やした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 比嘉さんと伊波さんにとっては、佐伯さんが恩人のような関係だったんですね……。 チーム絵札と武蔵野会の、いつ裏切るか分からない関係を見た後で、こちらの佐伯さん達の絆の物語を見て、とても複雑な…
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