その5
それからコウジはアルバイトを始めた。日中はホームセンターの裏方スタッフとして、夜中は飲食店で厨房スタッフとして、ダブルワークで一日10時間近く働いていた。その生活スタイルが二か月ほど続いた、とある日の夕方、午後7時頃の事。
テツヤ「・・・何か、借金でもしてるのか?」
そう言われてコウジは困惑した表情で答えた。
コウジ「・・・いや。・・・何で?」
テツヤ「・・・ただ、別に、そこまでして働かなくてもいいんじゃない?10時間働くなんて・・・。」
テツヤも困惑した表情で質問してきた。
コウジ「別に時間はあるからよ、取り敢えず生活費と遊興費は、しっかり稼いで置きたいだけさ。」
テツヤ「・・・そうか。・・・それなら、まぁ・・・。」
テツヤは取り敢えず納得して、食事に気を向けた。二人はとある居酒屋に来ていた。週に一回のペースでこうして会って、近況を報告していた。
テツヤ「・・・それでこの先どうするんだ?」
コウジ「・・・まだ特に、考えてない。」
するとテツヤは目線を上に向けて、呟くように言った。
テツヤ「・・・例えば、このままそのバイトで、上手くいけばそこで社員になるとか・・・?」
コウジ「バカ言え!それはあり得ない!そもそもそれ目的でやってないからな!今は単なる通過点と言う
か、社会勉強的な感じだ。それに他の仕事にも興味があるし、業種も様々だからな。」
とコウジは強く否定して、テツヤを諭した。
コウジ「・・・やっぱり社員、仕事を続けるからには、それなりの使命感とか、内容や待遇、そんな条件
があるからよ。」
テツヤ「・・・他に何だ?どんな条件だ?」
コウジ「・・・変に聞いてくるな?何か良い、当てがある仕事でもあるのか?」
テツヤ「いや別に。ただ聞いただけだ。」
特に意味は無かったにせよ、コウジは何となく条件を口に出した。
コウジ「・・・そうだな、う~ん、例えるなら、・・・好待遇。ボーナスとか有給とか、福利厚生、定期
昇給や昇格とか、残業代もしっかり貰えて・・・。」
テツヤ「何か金の事ばかり気にしてんな。」
そう言われてコウジは戸惑いながら付け加えた。
コウジ「そんな事はない!もちろん!それなりの使命感とか、社会に貢献する、その、地域にとって役に
立つような、頼られる仕事とか、な。」
テツヤ「・・・スゲェ内容盛りだくさんな条件だな。」
そう言われてコウジは、これまた戸惑いながら否定した。
コウジ「・・・そうか?そんな事ないだろう?・・・あるはずだ、どこかに。そんな仕事が・・・。」
とコウジが答えると、テツヤは一拍間を空けて、コウジに告げた。
テツヤ「・・・あるとするなら、・・・それは公務員だな。」
それを聞いてコウジの考えや思っていた事が、見事ビタッと一致した。
コウジ「ああっ!!それだそれ!あるじゃん!それが!」
大声を上げてコウジは理想を見つけた。
コウジ「そうだそうだ。いやむしろ、今一番の、この世の中でベストな仕事じゃん!」
テツヤ「・・・俺のような、市役所職員か?」
コウジ「市役所じゃなくても、公務員は他にもあるだろ?」
テツヤ「・・・他?・・・警察、消防士、刑務官、自衛隊もか?」
テツヤの挙げた業種にコウジは少し難色を見せたが、とにかくこれからの進むべき方向は固まった。
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