その3
1995年、あれから4年が経過した。その年の5月某日、コウジはテツヤと久しぶりに会った。時刻は午後7時頃、二人は高校時代最後の時を過ごした、あのファミレスにて食事をしていた。
コウジ「・・・二人からの連絡はないのか?」
テツヤ「カズキからはたまにある。でもマサトはないな。そうそう、カズキは向こうで就職したって。」
コウジ「・・・そうか、大阪で就職して・・・で、マサトはわからん、か。」
4年後の現在、二人とも地元に住んでいる。コウジは大学時代、他県に住んでいたが、一週間前に地元に帰ってきた。テツヤは高校卒業しても、ここ地元で暮らしていた。
テツヤ「昔は一緒にいたのにな。」
寂しげな感じでテツヤが言うと、コウジも同じ気持ちになりながらも、テツヤに説いた。
コウジ「仕方ねぇよ。4年も時間が空いたらそれなりに、向こうで新しい友達や、仲間ができたりするも
んな。それに大人になって社会人となったら、昔の価値観はすっかり変わるさ。」
テツヤ「・・・そういうもんか?」
コウジ「そりゃあ、ここを出て、ここにはない何か、刺激だったり経験したりして、それにのめり込んだ
りしたなら、わざわざ地元に帰る事もないだろ?」
テツヤ「へぇ~。」
実はコウジもカズキと同じ、大学時代そのままに、その県で一度就職していた。が、二か月でその職を辞めて、そして地元に帰ってきたのである。
テツヤ「ここにはない何か・・・例えば?」
コウジ「例えば!?・・・ここよりかは都会だろ?」
二人の地元は市ではあるものの、そこまでの規模ではない。テツヤは高校在学中に、公務員試験を受けて見事合格し、卒業後すぐに地元で市役所職員として働き出している。
テツヤ「しかしこのご時世、せっかく就職できた会社を、よくもまぁ、あっさりと辞めたよな?」
この質問にコウジは全てを語らずに、敢えて端的に伝えた。
コウジ「・・・それでもやっぱり、どうしても我慢できない事があったんだ。」
テツヤ「・・・そうか。」
テツヤはそれ以上聞く事はしなかった。
コウジ「・・・お前は良いよな。市役所で公務員で。・・・一生安泰だな。」
そう言われてテツヤは恐縮しながら答えた。
テツヤ「本当だな。まさか社会がこんなに、一変するとは思ってもみなかった。」
二人が高校生だった頃は、世の中バブル景気で、誰しも高揚していた。そしてこれが延々と続くと思っていた。がしかし4年を過ぎた今、全てが弾けて無くなって、不景気になって勢いも失せて、いきなり社会は閉塞感に包まれた。そんな時期に大学を卒業した者はみな、いや大卒に限らず職を求める者たち全員が、なかなか仕事に在りつけないでいたのであった。




