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異世界の動物園に丸裸で展示されてるんですけど!? 〜自炊と奇行でなぜか爆バズり中! 快適スローライフですが服だけ下さい〜  作者: 海岸線の夕日
シーズン2

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31話 梅干しサワーを注文する

ドワーフのガラム親方が造った『ハダカザル酒』によって、毎晩の晩酌ライフを手に入れた佐藤創太だったが、アラフォーの元社畜の贅沢な欲望はさらに加速していた。


(日本酒も美味いけど、お風呂上がりにはやっぱり、シュワッと冷たい梅干しサワーが恋しくなるな……)


創太の手元には、以前自作した「自家製・梅干し風あんず」がある。あとは、炭酸水と、甲類焼酎のような比較的クセのない強いお酒があれば再現できるはずだ。


創太は檻の前にやってきたナターシャを引き留め、必死の形相で謎の猛烈ジェスチャーを開始した。「あのドワーフの親方に直接、お礼と新しい注文を伝えたい!」と全力でアピールしたのだ。


ナターシャは「か、神が、我が国の天才醸造師を直々に指名された……!?」と受け取り、大急ぎでガラム親方を檻の前へと呼び寄せた。


「おう、ハダカザル! わしの酒を気に入ってくれたようだな!」


檻の前にやってきたガラムに対し、創太はさっそく、自らの理想の梅サワーを伝えるための「高度な難題」を投げかけ始めた。


まず、器に注いだ日本酒の中に、あのシワシワの梅干し風あんずをゴロリと投入する。そしてマイ箸を使い、器の底で親の仇のようにグイグイと梅を細かく叩き潰した。


だが、日本酒独特の米の香りと梅の酸味を嗅ぎ比べ、創太は「うーん、匂いが合わないな。これじゃなくて、もっとクセのない、ガツンと強い甲類焼酎みたいなベースの酒がいいんだよ」と、激しく首を振って酒を指差す。


さらに、両手で泡が弾けるシュワシュワした動きを激しく表現し、「ここにシュワシュワの炭酸水を入れたいんだ!」と熱弁した。


もちろん言葉は通じない。結界の向こうで見守っていた一般の観客たちは、その不可解な奇行の数々に怯え、パニック寸前でざわつき始めた。


「おい、ハダカザル様が、せっかくの最高級銘酒の中に、あの『赤い呪毒(梅干し)』をブチ込んでグチャグチャに破壊しているぞ……! なんという冒涜だ!」


「せっかくのドワーフの傑作を侮辱しているのかしら!? 怒りのあまり処刑の儀式を始めたのよ!」


「いや、手で何かを爆発させるような不気味なジェスチャーもしている! あれは絶対に大量破壊魔法の詠唱だ! 逃げろ、巻き込まれるぞ……!」


観客たちが困惑と恐怖で阿鼻叫喚の渦に包まれる中――ただ一人、お酒に関しては天才的な感性を持っているドワーフのガラムだけは、その意味を完璧に理解していた。


ガラムの脳内で、創太のジェスチャーが超高速で翻訳されていく。


(……待て。米の香りが強い日本酒では、この赤い果実の強烈な酸味と喧嘩して香りが死ぬ、と言っているのか!? だからベースは蒸留を繰り返したクセのない強い酒(焼酎)に変えろと! さらに、発酵の泡ではなく、純粋な水に『弾ける気泡』を高圧力で溶け込ませた未知の聖水で割れと、そう命じているんだな……!?)


ガラムの鳥肌が総立ちになった。そんな規格外の酒の飲み方、この世界には存在しない。


「な、なんて恐ろしいお方だ……! 酒の美味さをさらに高次元へ引き上げる、新たなる『カクテル』の概念を、直感だけで紡ぎ出してやがる……!!」


ガラムは深く感動し、創太に向かって壊れんばかりに力強く胸を叩いた。


「分かったぜ、ハダカザル! わしの職人魂に懸けて、お前の求める『究極のシュワシュワ梅酒サワー』を完成させてみせる!」


◇


ハダカザル酒のメガヒットにより、動物園の最重要ビジネスパートナーとなったガラム親方は、今や園のバックヤードにフリーパスで出入りできるようになっていた。


ガラムはさっそく血眼になって不眠不休で開発した、炭酸水とクリアな酒を使った『ハダカザル・梅サワーセット』を大事に抱え、檻の中の創太に届けるために廊下を歩いていた。


すると、向こうからちょうどオオカミ主任、トカゲ係長、そしてナターシャの3人が歩いてきて、ガラムと鉢合わせになった。


「おう、みんな。ハダカザルに頼まれた新しい酒が完成したから、今から届けてやるところだ」


ガラムが何気なく見せたそのセットを確認した瞬間、オオカミ主任とエルフのナターシャは、同時に顔を真っ青にして「ひえええええっ!?」と悲鳴を上げ、ガタガタと震え出した。


ナターシャは怯えた声で話しかける。


「ガ、ガラム親方! なんであの『赤い悪魔の実(梅干し)』を使っているんですか!? あれはハダカザル様の呪毒を凝縮した危険物ですよ!」


オオカミ主任も続く。


「そうだ! 例の試食事件で我らをトラウマにした、あの恐怖の赤い果実ではないか! 怖い、恐ろしい……! 思い出すだけで胃に穴が空きそうだ!」


あの時の大炎上のトラウマが、二人の脳裏に深く刻み込まれており、梅干しを見るだけで白目を剥くほどの恐怖に怯えてしまったのだ。


そんな二人を横目に、伊達メガネをクイクイと上げながら、トカゲ係長だけがニヤリとゲスなビジネスマンの顔でマニアックな提案を切り出した。


「おやおや、お二人とも相変わらず臆病ですねぇ。あの梅干しおにぎりには、ドワーフなどのごく一部の熱狂的な『コアなファン層』がついています。これを販売すれば……」


しかし、強欲かつビビりなオオカミ主任は、トカゲ係長の提案を全力で突っぱねた。


「ダメだダメだ、却下だ! 万が一にも売れ残ったら、すべて園の損害になるんだぞ!」


勝手に怯えて勝手に販売を却下する上層部を前に、ガラムは「……はぁ? 何を言ってんだこいつらは」と、心底呆れ果てた顔で冷めた視線を送っていた。


ガラムは最初からこの酒を商売にする気などさらさらなく、ただ純粋に、職人としてハダカザルへ届けたいだけだったからだ。


「おいトカゲ、誰が売るなんて言ったよ。これはハダカザルへの個人的な贈り物だ。じゃあな、わしは届けてくるぜ」


内輪揉めを始める3人を残し、ガラムはフンと鼻を鳴らしてそのまま普通に歩き去り、檻の創太の元へと梅サワーを届けに向かったのだった。


◇


だが、それからしばらく経っても、ガラムが一向に戻ってくる気配がない。


「……遅いですね。まさか、あの呪毒の果実にやられて、どこかで倒れているのでは……?」


ナターシャが青い顔で呟くと、オオカミ主任とトカゲ係長も顔を見合わせた。不吉な予感に駆られた三人は、大急ぎで創太の檻へと向かう。


しかし、檻の前に到着した彼らの目に飛び込んできたのは、想像を絶する衝撃的な光景だった。


「ヒィハァァァーーーッッッ!!! 梅サワー最高ぉぉぉ!!!」


「ガハハハハ! 最高のシュワシュワだぜ、ハダカザルぅ!!!」


そこには、完全に酔っ払って理性を無くした創太とガラムが、肩を組んで激しくステップを踏みながら踊り狂う姿があった。


しかも驚くべきことに、職人のプライドをどこかに脱ぎ捨てたガラムは、創太とお揃いの「裸に藁スカート姿」という、文字通りの『ハダカザル2号』へと完全変態を遂げていたのだ。


「大変だ! ハダカザルが分裂したぞ……!?」


「2匹に増えてるわ! なんて奇跡的な繁殖力かしら!」


『新種のハダカザル出現』の噂はSNSで一瞬に広まり、観客たちが大波のように檻の前へと殺到! さらに、異変を察知して駆けつけたガラムの弟子たちが、あまりにも恥ずかしすぎる姿を晒す師匠を目撃し、檻にしがみついて号泣し始めた。


「親方ぁぁぁ! 何をしているんですか親方ぁぁぁっ!」


「ドワーフ最高の天才醸造師が、ハダカザルに洗脳されて野生に還っちまったぁぁぁ!」


弟子たちの悲痛な嘆きが響き渡る中、その混沌とした大盛況っぷりを見たオオカミ主任のビジネス脳が、恐怖を消し飛ばして大興奮で覚醒した。


「す、すごい! ものすごい客の入りだ! おいハダカザルども、もっとやれ! もっと激しく踊るんだ! 今日の入場料収入は過去最高だぞォォォ!!」


我を忘れてゲスなヤジを飛ばすオオカミ主任の横で、トカゲ係長はフツフツと湧き上がる欲望を抑えきれなくなっていた。創太たちが美味そうに煽っている、あの冷たい梅サワーを自分もどうしても飲みたい。


「おやおや、美味そうなお酒ですねぇ……。よし、私もその神聖な儀式(カクテルパーティー)に混ざるとしましょう!」


そう言うや否や、トカゲ係長はその場で猛烈に脱衣し始めた。


泥酔する2匹

歓喜する観客

泣き叫ぶ弟子

煽るオオカミ

トカゲの脱衣


そして、呆然とするナターシャ


あまりにもカオスすぎる地獄絵図を前に、唯一正気を保っていたエルフのナターシャは、「……うん、見なかったことにしよう」と完全に現実を拒絶。


スッと現場から何事もなかったかのように立ち去るのであった。


待遇はついに「職人の魂を震わせ、未踏のカクテル文化を切り拓いた酒の絶対神」レベルへ。だが、どれだけ天才ドワーフと高度なセッションを交わして極上のサワーを開発しても、創太の身体を包む「服」だけはいつまで経っても未開発のままだった。

参考AI画像 梅サワーを飲む2匹のハダカザルのシーン


挿絵(By みてみん)

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