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異世界の動物園に丸裸で展示されてるんですけど!? 〜自炊と奇行でなぜか爆バズり中! 快適スローライフですが服だけ下さい〜  作者: 海岸線の夕日
シーズン1

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19話 大炎上する

園内のレストランで「魔法の卵かけご飯(TKG)」の販売が始まって以来、異世界には空前の生卵ブームが巻き起こっていた。


だが、そのブームが動物園の外へと広がり、一般の家庭や他の飲食店が真似をし始めた頃、担当飼育員のナターシャは強い危機感を抱いていた。


(異世界の卵には病原菌が多いのよ。魔法で無菌化(クリーン)していない生の卵なんて食べたら、大変なことになるわ……!)


ナターシャはブームの前に、園の公式SNSで注意喚起を投稿していた。しかし、投稿はまったく伸びず、ネットの海の底へと埋もれていった。


「主任、係長! 大変です、街の食堂でもTKGの模倣メニューが出回っています! このままでは絶対に事故が起きます。生食は危険ともっと大々的に警告を出すべきです!」


ナターシャは緊急会議で訴えたが、オオカミ主任は鼻で笑った。


「フン、そんなのほっとけ。うちの秘伝の調理法(※ただの生食)を勝手に真似して腹を壊す方が悪い。むしろ、一般に安全な食べ方が流行ったら、うちの売上が減るじゃないか」


「そうですよ、ナターシャさん。我が園の独占ビジネスを守るためにも、余計な警告は不要です」


トカゲ係長も目先の利益に目が眩み、ナターシャの警告を無視した。


そして数日後――


ナターシャの不吉な予感は、最悪の形で的中することになる。


「お腹が、お腹が痛いお……!」

「街の食堂で卵かけご飯を食べたら、家族全員が病院送りに……!」


ネットの海に、生卵を食べて激しい腹痛を訴える異世界人の悲鳴が溢れかえった。腹を壊す者が続出し、医療機関は大パニック。


すると、怒りの矛先は一瞬にして「発祥の地」である動物園へと向けられた。


『ゲテモノを流行らせた悪徳動物園を許すな!』

『ハダカザルとかいう新種の魔獣が、人間を毒殺しようとしているに違いない!』


炎上の飛び火は凄まじく、檻の中のハダカザル(創太)まで「人類の敵」「呪いの珍獣」としてネット上で猛烈に批判されるようになってしまったのだ。


「ど、どうしてこうなった……! 我が園は安全なものしか出していないのに……!」


あまりのバッシングの凄まじさと株価の大暴落に、オオカミ主任は完全にパニックに陥った。


豆腐メンタルだった主任は精神的に追い詰められ、そのままストレスでダウン。


バックヤードのベッドで「もうダメだ、倒産だ……」とガタガタ震えて寝込んでしまった。


「責任者を出しなさい!」

「ハダカザルを今すぐ処分しろ!」


園の受付には怒り狂ったクレームの電話が殺到し、ナターシャは朝から晩まで頭を下げてその対応に追われた。


さらに園の正門前には、怒れる群衆による大規模な抗議デモが発生。


トカゲ係長は「ひぃぃ! 結界を破らないでください!」と、冷や汗をダラダラ流しながらデモ隊の対応にてんてこ舞いになっていた。


動物園は、まさに絶体絶命の危機を迎えていた。


だがその時、ネット上のひとりの観客が、過去のタイムラインから“あるもの”を発見した。


『おい……見ろよこれ。動物園のエルフの飼育員さん、大昔に「生卵は危険だから真似するな」って公式SNSでガチの警告出してたぞ……!』


埋もれていたナターシャの過去の投稿が、奇跡的に発掘されたのだ。それが拡散されるや否や、世間の空気は一瞬にして手のひらを返した。


『本当だ! 飼育員さんは最初から警告してくれていたんだ!』

『悪いのは警告を無視して生で売った食堂と、勝手に真似して腹を壊した奴らじゃないか!』

『ナターシャさん、なんて聡明でプロフェッショナルな飼育員なんだ……!』


ナターシャの徹底したプロ意識と、彼女の圧倒的な美貌(ギャップ)も相まって、彼女の人気は以前のアイドルブームを遥かに凌ぐ「聖女」のような領域へと爆発。


動物園のクリーンな衛生管理が証明され、バッシングは一瞬で鎮火。一件落着となったのである。


そんな、外の世界で自分のせいで大規模なバイオハザードと大炎上、そして奇跡の逆転劇が起きていたことなど、佐藤創太は1ミリも知らなかった。


「ふぅ……。ここ数日、外がやけに騒がしかったな。お祭りでデモ隊でも歩いてたのかな?」


創太は自作の藁のスカートをカサカサと揺らしながら、お気に入りの高級露天風呂に浸かって長風呂を楽しんでいた。


風呂上がりに、ナターシャが丁寧に【浄化魔法】をかけてくれたピカピカの卵を割り、極上の醤油を回しかけて、最高のTKGをガツガツと掻き込む。


「やっぱり、うちの園の飯は世界一安全で美味いなぁ。ナターシャさん、今日もごちそうさま!」


全裸のおっさんは、自分の食い意地が世界を揺るがす大騒動を起こし、最終的に担当飼育員の好感度を天元突破させたとも知らず、お腹いっぱいになって幸せそうに藁のベッドで眠りにつくのだった。


待遇はついに動物園の危機を救ったヒーローレベルへ。だけど、服は未来永劫もらえない。

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